
皆様こんにちは。
今日はRJ1スバルR1の修理のお話です。
先日、お取引先の修理工場まで出張での仕事に行きました。
依頼されていたお車の点検が終わり、ご挨拶をして帰ろうとした時にそちらの社長様から、「エンジンチェックランプが点いてるので、ついでにちょっとテスターつないで見てくれるぅ??」と言われました。
「ウチのショボい診断機では、O2センサーヒーター回路異常って出るんだけど、その診断機でも同じかねぇ?」と。
早速診断テスターをつなぎ、故障コードを読み出します。
やはり、同じくO2センサーB1S1のヒーター回路断線とでました。
私は、「O2センサーのヒーター回路断線と出ますので、とりあえず単体テストしてからの最終判断した方が良いですよ 」と伝えると、「ダメなのは2つあるうちのどっちかな?」と聞かれました。
そちらの修理工場様でのテスターではそこまでの診断が出来ない様でしたので、
「触媒上流側、ボンネットを開けて見える方で、エキマニについている方が故障と出ています」とお伝えしました。
もう片方のO2センサーはリフトアップして下側から見ないと見えません。
「ありがとう‼とりあえずこの車は中古車屋からの依頼なので見積を先方に送ってみる。」との回答でした。
そして、本日お電話があり、「言われた所のセンサー交換したけどエンジンチェックランプ(警告灯)が消えないんだけど‼」とお電話があり、最優先で駆けつけました。
早速診断テスターで通信を確認しながら状況をお伺いします。
O2センサーは上流側、下流側ともに交換した。
中古品ではなく新品を使用した。
締め付けトルクは計測していないがガチガチには締めてない
診断テスターはスバルのプログラムでテストした。
OBDでは試していないとのこと。
O2センサー単体テストはしていないこと(してないんだ…)。
でした。
すると、やはりO2センサーヒーター回路断線のコードが出ています。
あっ、しかし…。今回は
O2センサーヒーター回路断線B1S1
O2センサーヒーター回路断線B1S2
と2つのコードが出ています。
両方とも新品に交換したのにオカシイ…。
以前RC1のスバルR2でO2センサー回路を点検した時のO2センサーヒーター回路を思い出しながら、もう一度問診です。
センサー交換をした時、
バッテリーマイナス端子は外したか。
センサー交換する際はSSTを使用したか
センサーがカジりついていたり破壊しての取外しはなかったか
センサー配線をニッパー等で切ったりしなかったか
を確認すると、取り外したセンサーをみせてくれました。
ねじ山カジや破壊、配線切断など無くO2センサー用ソケットを使用しておられました。
ここから先は診断テスターだけではなく、サーキットテスターを使用して点検をしなければならないのでお預かりして詳しく調べる事になりました。
もちろん取り外したセンサーも一緒にお預かりです。
まずは取り外したセンサーのチェックです。
不良出ていた上流側のセンサーをチェックするとヒーター回路抵抗値が∞Ω、つまり完全に断線しています。
下流側のセンサーをチェックすると、23Ω。断線はしていませんし、ヒーターの抵抗値としてはまず妥当であると判断しました。
そして、車両側のチェックです。
上流側センサーのカプラーはカムカバーの真上で丸見え、とても点検しやすいです。まずはテストケーブルを使いヒーター回路の点検です。
ヒーター抵抗値が約3Ω。これ、明らかに少ない…。
車両側カプラーでO2センサーの電源を調べると、電源が来ていません。グローブBOX奥のヒューズをチェックするとエンジンヒューズが切れていました。
このヒューズはO2センサーのヒーターに直接電源を供給し、エンジンECUでアースにコントロールされています。
ヒューズを交換後、O2センサーヒーター回路に電流計を接続して計測してみます。直接ECUに接続して大電流が流れてしまうとECUを破壊してしまう可能性があるからです。
センサーの電源側を結線すると3.5Aの電流が…。明らかに流れ過ぎです。うう~ん、やはり新品のセンサーがダメとしか考えられない。
ん??
あれ??
このセンサーのヒーター回路って…確か…。
と思っているうちに電流値が下がっていき、0.7Aほどに。この位だと適正値だな。でも、オカシイです。
エンジンECU側(アースコントロール側)の接続をしていないのに電流が流れています。
これって…。先程切れていたヒューズはIG電源ではなくバックアップ電源。と言う事は、このままだとキースイッチ位置に関係なく電流は流れ続け、バッテリーが上がりますし、ヒーターがアッと言う間に寿命がきちゃいます。
ヒーター回路のアースコントロール側端子を一瞬アースに接続してみると、15Aの電流計が振り切れ、同時に先程のヒューズがまたもや溶断しました。
これでヒューズが飛んでしまった原因、診断結果の理由が繋がりました。
①上流側O2センサーのヒーター回路断線(最初の故障)
↓
②エンジンチェック警告灯点灯➡故障診断・B1S1ヒーター不良
↓
③O2センサー上流側、下流側共に交換
↓
④バッテリーを接続し、診断テスターで故障コード消去できない。再度故障コード読み取り上流、下流ともに故障コード検出。
⑤キースイッチをONにした瞬間、エンジンECUがO2センサーヒーターを作動、この瞬間にエンジンヒューズが溶断、上流、下流のO2センサー共に電源が供給され無いため両方のO2センサーの故障コードが出力。
⑥交換したセンサーによる故障被害拡大。
となっていたと思われます。
不可解な流れが掴めました。上流側O2センサー単体でののヒーター回路を点検します。
ヒーター抵抗値約3Ω。
ヒーター電源側端子↔センサーボディ間約3Ω
ヒーターECU側端子↔センサーボディ間約0Ω
そして、センサー配線を揺すると…
ヒーター抵抗値約0Ω
ヒーター電源端子↔センサーボディ間約0Ω
ヒーターECU端子↔センサーボディ間約0Ω
ん。バッチリショート。
面白そうなので、O2センサー側の端子も含めて点検。
ヒーター電源端子↔センサーアース端子間約0Ω。
ヒーター電源端子↔センサー出力側端子間計測不能。
ヒーターECU端子↔センサーアース端子間約0Ω。
ヒーターECU端子↔センサー出力側端子間約740Ω。
もはやこのセンサー、意味不明です。
新品なのに…。しかし、新品不良を申告するのは大変責任が重いです。事実をしっかりお伝えして、上記の理由から新品の部品が不良と判断しましたとご説明をしました。
すると…修理工場の社長様が「ウチも依頼元の中古車屋さんから部品が送られてきたんです。社外部品ですよ、それ。」
………(-_-;)。
「あっ、ああ、そうなんですね」。社外部品=粗悪部品と決めつけるのは短絡的すぎますが、今まで社外部品で素晴らしい物って経験無かったりします。そして、社外部品メーカーの名前を聞いて…「ああ、それなら新品不良の可能性が高そうですね」と言ってしまいました。
もちろん、社外部品の全てを否定するわけではありません。社外部品と言ってもOEMも有ればバルク品もあります。そして、コピー品も有れば再生品、リビルド部品って時もあります。しかし、今回のメーカーはダイレクト点火コイルでも痛い目にあっていますし、カム角センサーや汎用リレー等でも苦労させられた経験がありましたので…。
今回のO2センサーは純正価格29500円、恐らく社外は
半分以下だと思います。
んん~。
マジで制御に関わる大切な部品は純正をオススメします。
今回のトラブルはエンジンECUに障害が出るような回路故障ではありませんでしたが、最悪の場合エンジンECUの破壊等重大な故障を誘発しかねない事もあります。
社外部品を選択する時は、価格の安さという恩恵が受けられますが、あくまでも社外部品と言うリスクも同時に入手しているのです。社外部品には保障がついているものが多くなりましたが、果たして社外部品の不具合や不良の影響で他の部品が壊れてしまったものまで保障してくれるのか、そしてそれに伴う点検費用、作業工賃まで見てくれるのか…。あ、そんな事を求めては行けませんね…。
念のため下流側O2センサー求めては点検しました。
とりあえずは大丈夫そうですが、ヒーターの抵抗値が約55Ω。センサーの温度などによっても多少は上下すると思いますが、基準値からは大ハズレです。
こちらも合わせてご報告、修理工場の社長様は、「社外はやめた方が良いって報告しておきます下流側も責任が持てないです」と伝えますとのことでした。
今回も社外の新品部品でハメられましたね…。