散文 204

皮肉なことに

そして不名誉なことに

「下し最速」を証明する日がきてしまった。

荒れ狂う腸内環境

打ち寄せる便意の波


その間隔が狭まるほど
焦燥感は高まった。




そもそも小学生の頃より腹は弱かった。

トイレ個室に入室するということには大きな覚悟が必要で

人目を忍び異国に行くようなもの……




遠足のバスでのトラウマも記憶から離れない。


急遽バスを停めて民家のトイレをお借りしたのだが

水洗トイレではなく

いわゆるボットン便所

便の跳ね返りでおつりを盛大に

尻に頂いた。

泣きっ面に糞とはまさにこの事




長い峠を下ると

果てにはＴ字路がある

やたらと派手なラブホテルが目印だ


極彩色のネオンが無慈悲に便意を助長する。


右に行ってもローソン
左に行ってもローソン


不思議なＴ字路だ。

「右も左もわからぬ」とはこのことかもしれない

朦朧となりながら

どちらのローソンを選択するか迷った瞬間


信号機は無情にも

黄色になり

すかさず赤にかわった


通常より早くかわった気がした……






その時ついに


背徳感をともなう諦めというやつが訪れのだった。



とうとうトイレという夢の小部屋には到達できなかった。


もっと速く走れたならと

ドラテクの不甲斐なさを知った。


下り最速ではなく


下し最速……。


まさしく夢に終わった。


いみじくも今

大腸の具合で大統領が辞任する。


自分も潮時を考えねばなるまい。






その次の日

レカロのフルバケから脆弱なノーマルシートに変更したのは








言うまでもない。