聖地(北海道)ツーリング その３　上陸そして支笏湖にて泊

　
　
　
　
　
　
　
　
　
　
まさに原野以外なんにもない！ 東苫小牧港のフェリー桟橋から午後９時前に解放された。苫小牧市街を通り抜け、夜10時近くに支笏湖湖畔のモラップキャンプ場に着いた。途中、北キツネの絵が書かれた「動物注意」標識が珍しい。
夜遅いため常夜灯の明かりを頼りに下り坂をオートバイのエンジンを切って静かに場内に入った。すみやかにテント設営を始める。テント内に夜具を放り込みエアマットに息を吹き込み広げ、ようやく落ち着いた。今年もこうして来ることができたぞと一(ひと)作業ごとの実感がうれしい。

どこかのテントから赤ん坊が火がついたように泣いてるのが聞こえてくる。
不意に遠く過ぎ去った我が家の家族キャンプを、幼かった子供達の泣き顔や笑顔を思い出しちょっとセンチメンタルな気分になる。私はいつからこんな一人旅を始めたのだろうか。

夜食を済ませシュラフに入り、丸めた革ジャンを枕にしてテントを見上げる。枕元に置いた携帯ラジオの低い音量が眠りを誘ってきた。さっきの赤ん坊は泣きやんだみたいだ。

朝、テントから抜けだし空を見上げる。ラジオが予報した通りあまりよくない。がっかりする。
洗面と水くみがてら湖畔を歩く。霞む対岸、ひんやりした空気が気持ちいい。本土？ では朝からあれだけ暑かったのをもう忘れかけている。

近くのテントからぬいぐるみを抱いた女の子が泣きそうな顔をして出てくる。
ママ、ママと呼びかけトコトコ歩き回る。「どうしたの？」と私が話しかけてもぬいぐるみを強く抱きしめ無視して歩き回る。ママはトイレでも行ったのかな、まあケアだけしてればいいか。程なくママが帰ってきて一安心。女の子も私も。
また不意に独り立ちして沖縄にいる自分の娘を思い出した。あの子は寝るときに私の口に足の指を突っ込んで寝たんだと娘の小さな指を思い出す。どんな格好で私たちは寝てたんだろうと思い出し笑いする。

後ろとなりの中年キャンパーは旭川から来たとのこと。
奥さんは腰痛、飼い犬も死んでしまって一人で来たそうだ。
定年間近で仕事を辞めてしまったと吐き出すように話し、
「ヒマはいくらでもあるんだ」と少しもうれしそうな顔をせずに言った。
飯を炊くガスコンロの炎を見つめる背中がさびしそうだ。
独り旅、まあ人のことは言えないか。

さてテント撤収だ。今日は洞爺湖を回りニセコを走り、積丹へ向かおう。頼むから晴れてくれ。

その２
その１