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2014年01月14日

スペインの宝石ペガソ(Pegaso)

スペインの宝石ペガソ(Pegaso) 前回のブログ記事でナルディの双胴ルマンカーNardi Bisiluroを紹介しましたが、ほぼ同時期にスペインにもPegaso Z-102 Bisiluroという双胴マシンが存在しました。また、これらペガソのレーシングマシンを運搬するトランスポーターも大変ユニークな良い形をしています。
今回は、これらスペインの至宝ペガソのレーシングマシンとトランスポーターをご紹介したいと思いますが、ペガソのレーシングマシンの話をするには、まずはミッドセンチュリー期のスペインに突如として現れ消えていった、超弩級スーパースポーツカーPegaso Z-102から話を始めないといけません。

戦前のスペインには、イスパノ・スイザ(Hispano-Suiza )という有名な高級車・航空エンジンメーカーがありましたが、戦後同社の工場や生産設備、スタッフを受け継いで国営の商業車製造会社ENASA(Empersa Nacional de Autocamiones S. A.)が設立され、トラックやバスの製造を行っていました。
ENASAの代表であるウィフレート・リカルト(Wifredo Ricart)は戦前のアルファロメオで設計部門を統括していた人物ですが、彼がスペインの威信をかけてPegasoの名で(Pegasoはスペイン語でペガサス=天馬)世に送り出したのが、1951年のパリ・サロンでデビューしたZ-102です。

Z-102は、オールアルミ、ドライサンプのV8ツインカムエンジン(2.5L、2.8L、3.2L)、トランスアクスル、ド・ディオンリアサスペンション、進歩的なプラットフォームシャシー等々、コストを度外視してリカルトのエンジニアとしての理想を追求した車で、ディチューンしたGPレーサーにロードカーのボディーを被せたようなスーパーカーでした。

こうした凝りに凝ったエンジンやシャシーに、カロッツェリア・ツーリング(Carrozzeria Touring)やフランスのソーチック(Saoutchik)などのコーチビルダーが腕をふるったアルミボディーを架装し、純銀製のエンブレムや象牙のシフトノブ等で飾ったPegaso Z-102は、当時R-Rシルバー・レイスが$19,000、キャデラック・エルドラドが$13,000であった時に$29,200もした超高価な車でした。

日本にも、かつて川本 稔さんという愛好家所有の1954年製Z-102B Berlinetta Touringが生息しており、CGの1978年7月号やSuper CG No.34(1996)で紹介されていたので、古くからのCG読者なら記憶に残っているかもしれません。






ペガソの顧客リストには王侯貴族や富豪のスポーツマンなどが名を連ねてはいましたが、キャデラックの倍以上の値段のGPレーサーに近い複雑で非実用的な2シーターでは販売台数はおのずと限られたものとなり、ENASAは1958年に乗用車の生産からは完全に撤退しました。1951年から58年までに生産されたZ-102はわずか86台といわれています。
その後もENASAはPegasoの名でバスやトラックの生産を続け、現在はフィアットの商用車部門イヴェコ(Iveco)の傘下に入っています。

前置きが大変長くなりましたが、レースにも意欲を燃やしたペガソは先ず1952年のMonaco GPに2台のZ-102を送り込みましたが、プラクティス時に発生したトラブルのためレースには出走しませんでした。
その年のルマンにも車の準備が整わず、国内のヒルクライムレース等である程度の成績を残すに留まりました。

Pegaso Z-102, #54 Palacios/Jover, Monaco GP 1952
1952年のモナコGPにエントリーした2台のZ-102の内の1台を再現した、スペインDaz Hobby製の1/43ミニカーです。レトロな形がなかなかイイですね。




翌1953年のルマンの為に、2基のスーパーチャージャーで過給された2.5Lエンジンを搭載した特異な双胴シングルキャノピーのZ-102 Bisiluroを2台準備しましたが、不運にも工場の火災でダメージを受けたため、実際のレースにはコンベンショナルな形態のZ-102 BS/2.8 Touring barchetta(2.8Lスーパーチャージャー1基)が2台出場しました。
しかし、またまたペガソの上に不幸が襲いかかり、ワークスドライバーのJuan Joverがプラクティスで大クラッシュして重傷を負ったため、チームは本戦に出場せず引き揚げました。
唯一ペガソが見せ場を作った、翌1954年のカレラ・パナメリカーナでも、一時はトップのフェラーリを追い上げて3位に付けながらまたまた大クラッシュを演じてリタイアとなってしまい、国際レースでは目立った成績を上げることなくペガソのレース活動は終わってしまいました。

Pegaso Z-102, #28 Joaquin Palacio Pover / Pablo Julio Reh Cardona/ Celso Fernandez, Le Mans 24h 1953
1953年のルマンには、プラクティスで大クラッシュしたJoverの#29号車とこの#28号車がエントリーしました。
この1/43ミニカーは、スペインのKit Car 43というショップが制作した大変珍しいものです。




1954年のカレラ・パナメリカーナに出場したJoaquin Palacio Pover /Celso Fernandez組の#10号車の実車写真です。


ルマンの為に開発されながら使われることなく終わってしまった前述の双胴マシンZ-102 Bisiluroは、速度記録車として1953年にベルギーJabbekeの公道を使ったトライアルに参加しましたがエンジントラブルのために記録達成は成らず、代わりにルマンで使用されたZ-102 BS/2.8 Touring barchettaを駆るCelso Fernándezによって、1km平均速度243.079 km/hを始め、ジャガーXK120が持っていた記録を破る4つの国際速度記録が達成されました。

Z-102 Bisiluroの実車写真です。








こちらは最近製作されたレプリカですが、NardiのBisiluroと異なりパワートレインは通常のFRの配置のままで、左側胴体にはルマンに出場するためにレギュレーション上必要なパッセンジャーシートが配置されているようです。




Pegaso Z-102 Bisiluro, 1953
Bizzareから発売されているZ-102 Bisiluro の1/43ミニカーです。




Jabbekeで速度記録を作ったCelso FernándezのZ-102 BS/2.8の実車写真です


私は持っていませんが、Kit Car 43から1/43ミニカーも発売されています。


こうしたZ-102レーシングカーを運搬するトランスポーターは、ENASAのZ-401バスシャーシーを流用して自社製作したものを使用していましたが、その流線型の特異な形状からBacalao(スペイン語で魚のタラ)と呼ばれていました。
なんとも良い形をしていて、私の最も好きなトランポの一つです。










運転席はエンジンの真上の中央に配置されています。


うれしいことに、スペインのHispania Modelsという今まで聞いたこともないメーカーが1/43ミニカーにしてくれました。
後ろのハッチも開閉でき、非常に素晴らしい仕上がりです。








ブログ一覧 | 模型、ミニカー (その他) | 趣味
Posted at 2014/01/14 17:28:11

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この記事へのコメント

2014年1月14日 18:27
トランスポーターに激しく萌えます(*´Д`)ハァハァ

アルファも昔のトラポがおされでしたね
コメントへの返答
2014年1月14日 19:04
このトランポいいでしょ?

多分、1940年代に造られたGMの全米宣伝ツアー用バスFuturlinerあたりの影響を受けてるんじゃないかと思いますが、その当時の人が考えた未来的な形がレトロモダンでステキです!!
http://blogs.yahoo.co.jp/mulberry9966/8846233.html
http://en.wikipedia.org/wiki/File:GM_FuturLiner_at_Flint_2011.jpg

2014年1月14日 18:36
こんばんは!このトランスポーターがツボの方がこの後続出する予感(*^▽^*)現物は残っているのでしょうか?
コメントへの返答
2014年1月14日 19:01
こんばんは!!

形といいカラーリングといい最高ですね!!
今回の記事を書くためにネットで画像を漁りましたが、最近撮られたような写真はなかったので、現存はしてないんじゃないでしょうか?
2014年1月14日 20:37
奥深い世界です。
色々なドラマがあり、それらが模型化されている!勉強になりました。
コメントへの返答
2014年1月15日 0:22
日本ではほとんど知られていないペガソですが、スペインの人々にとっては、うたかたの夢のような存在であったとはいえ、貧しく世界から遅れた存在だったスペインが世界をあっと言わせることができた伝説の車として、今でも誇りにされているようです。

そんな国の遺産となる車達を、ちゃんと自国のメーカーが模型化してくれている所がえらいですね。
2014年1月14日 20:51
こんばんは!!

ついにスペインまで行っちゃいましたかー。
このカッコ良くない感じがカッコいい、という非常に変態なクルマですよね。

トランポも変態の極みだし。しかも実車はかなりデカそうですよね。ナマで見たら、キモくて迫力ありそう。

まさにRossoAlfaさんでしか扱えないネタですね!
コメントへの返答
2014年1月15日 0:44
こんばんは!!

前回に引き続き、今回のも最高レベルの変態度ですね(笑)
でも、このトランポは本当にカッコいいと思うけどな~。
全長11m、全高3.5m、全幅2.5mだそうなので、トランポとしては特にでかい訳ではなく普通サイズじゃないでしょうか?
でも、あの形と色のおかげでパドックではかなり目立つ存在だったと思いますよ。

今回のネタはかなり資料調べが大変で、昨日丸一日つぶれました(笑)
ペガソの歴史やZ-102の市販車については、CGの記事にも詳しく記述されてるし、資料は比較的容易に見つかるのですが、レース関係については日本語はおろか英語の資料も少なくてほとんどスペイン語です。
数少ない英語の資料と自動翻訳で訳分からない日本語になったスペイン語の資料とかなり格闘しました(笑)

解説や実車写真だけでなくミニカーと組み合わせている所が私のブログ記事の最大の特徴ですが、Z-102 Bisiluro以外のミニカーはほとんどスペイン国内しか流通していないようなものなので、ほとんど皆さん目にしたことが無いものばかりだと思います。
トランポも含めて、ペガソのミニカーをこれだけ一堂に会することができるのは、日本広しといえども中々居ないだろうと自負しております。
2014年1月14日 23:36
この凄まじい知識は毎回スゴすぎです!

出張の移動時間にゆっくり読ませていただいています(^^)
コメントへの返答
2014年1月15日 0:50
変態ミニカーに嵌っていると、自然に実車の変態知識も入ってくるという訳ですね(笑)
でも、当然細かい所まで全部頭に入っている訳ではないし、最近だんだん物忘れも激しくなっているので(笑)、↑のように結構資料調べは大変です。

まあ、そうした苦労も趣味の楽しみということなので、じっくり読んで頂けると大変うれしいです。
2014年1月14日 23:46
カラーリング素敵!キャッ!
ッて感じですね
コメントへの返答
2014年1月15日 0:53
形だけでなく、この色使いもステキ~ですね。
中々日本人では出来ない感性だな~。
2014年1月15日 12:40
いつもながら非常に読ませる内容が盛り沢山で楽しませて頂いております。

コレクションがまた凄い…。

独特のトランポもまた素晴らしい。

自国の文化や伝統などを重んじる姿勢、
是非、日本もそういう国となるよう我々もまだまだ頑張って行かなければと思いますね。
コメントへの返答
2014年1月15日 23:56
こんばんは!!
日本も、EBBROの中谷社長という信念を持った方がいたおかげで、かなりマイナーな車も含めて1/43ミニカーで日本車の歴史をしっかり辿る事が出来ます。
国産車の発展の歴史を後世に残すため、海外需要がほとんど期待出来ないようなマイナー車まで、採算をある程度度外視して発売して行く姿勢には頭が下がります。
2014年1月16日 21:50
Bacalaoが気になって気になって
運転席からの写真なんて、ちょっと飛行機っぽいっすね~
コメントへの返答
2014年1月17日 3:16
これがツボにはまるとは、もっちょさんも変態度高いですね(笑)
外見的にも、レシプロ旅客機の機首みたいです。

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「@hikaru1322さん、お気遣いありがとうございます😊 無事岡山Dに到着しましたが、車を降ろしたらミッション警告灯が消えていました(アルファあるある)😓 ギアポジションセンサー異常のエラー履歴が残っていたので、このセンサーがお亡くなりかけているのかな?😰」
何シテル?   06/08 16:08
セクシーな赤いイタリア娘をこよなく愛するRosso Alfaです。 ちょっと古めのレーシングカーとそのサポートカー、トランスポーターのミニカー収集も趣味の一つ...
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