
その1でご紹介したアルファのサポートバン達に引き続き、その2ではアルファの大型トラックやバスシャーシーを利用したレーシングカートランスポーターをご紹介します。
Alfa Romeo 500
500は1937年から1945年まで製造された3tクラスのトラックで、6.1L 75phのディーゼルエンジンモデルの500RE、ガソリンエンジンモデルの500B、ガスジェネレーターモデルの500BRの3種類がありました。
また軍用バージョンは、イタリア陸軍で第2次大戦終了まで広く使われました。
戦後あのFerrariを創設するエンツォ・フェラーリ(Enzo Ferrari)は、元々はアルファの車でレースを行っていたアマチュアレーシングドライバーでしたが、1929年に自分のレーシングチームScuderia Ferrariを設立しました。
そして、1933年にアルファがワークス活動を休止してから1938年にAlfa Corseとして再開するまでの間は、実質的にアルファのワークスチームのような立場でレース活動を行っていました。その頃のアルファのレーシングカーに、あのFerrariの跳ね馬のエンブレムが付いているのはこういう経緯があるからです。
Scuderia Ferrariでは、当初LanciaやCeiranoのトラックシャーシーをもちいたトランスポーターを使用していましたが、1937年頃からはAlfa Romeo 500のトランスポーターを使用しました。
この写真を見ると、少なくとも3台の同型トランスポーターを所有していたようです。
1/43ミニカーの世界では、米国のExotoから非常によい出来のものが発売されています。
後ろのドアが開閉できるので、車両の積み込み状況を再現できます。
時代考証的にちょっと合わないのですが、1935年のAlfa Romeo 16C Bimotoreと組み合わせてみました。
これは、強力なパワーのメルセデスやアウトウニオンのシルバーアロー軍団に対抗するため、Bimotoreという名の通りフロントとリアに3.2L直8エンジンを搭載した怪物GPカーです。
ちょっと余談ですが、500のトランスポーターの前にScuderia Ferrariで使用されていたCeirano C47 CRAトランスポーターのミニカーもABC Miniaturesから発売されています。
手前の車は、シルバーアロー軍団相手に奮戦していた1934年のAlfa Romeo P3 GPカー(Rio Models製)です。
500のトランスポーターは、戦後のF1創成期を席巻したTipo 158/159 Alfettaの時代もAlfa Corseで使用されていました。
この時代の500トランスポーターのミニカーもExotoから発売されています。
#1は1950年シーズンのTipo158(Western Models製)、#22は1951年シーズンのTipo159(Minichamps製)で、いずれも伝説の名ドライバー ファン・マヌエル・ファンジオ(Juan Manuel Fangio)がドライブしたF1マシンです。
Alfa Romeo 800
800は1940年から1947年まで製造された5.5tクラスの大型トラックで、当初はイタリア陸軍用として導入されました。8.7L 108phのディーゼルエンジンモデルの他に、ガソリンエンジンやガスジェネレーターモデルもあったようです。
800は、Ferrari創成期の1948年~1951年にかけて、Scuderia Ferrariのトランスポーターとしても使用されました。
このミニカーはイタリアのGila Modelliから発売されていましたが、その存在に気付いた時は既に絶版になっていて、未だに入手できていません。これは、ネットから拾ってきた写真です。
Gila Modelliは、Robelto Gilardoniさんというイタリアの古い働く車オタクのオヤジが一人でやっているガレージメーカーなのですが、イタリアの古いトラックやバスや特装車の分野では非常に頼りになるメーカーです。
このトランスポーターは、1950年に白とグレーに塗り替えられるまでは、黄色と赤の派手なカラーに塗られており、Tronからこの時代のミニカーが近日発売予定になっています。これは買い逃さないように絶対手に入れねば・・・・(笑)
Scuderia Ferrariで使用されていた800のトランスポーターは、1951年にイタリアのプライベートチームScuderia Marzottoに売却され、1954年まで使用されました。
Gila ModelliはScuderia Marzottoバージョンもちゃんと作ってくれています。
1952年シーズンにScuderia Marzottoからレースに出走した Ferrari 225S Spider(Gamma Models製)とのショットです。
Alfa Romeo 450
450は戦前の430の改良版として1947年から1959年まで製造された大型車で、エンジンが80hpから90hpにパワーアップされると共に、ドライバーキャビンが延長され長距離運転時の快適性が向上しています。
このGila Modelliが再現したトランスポーターは、多分レーシングカー用ではなく1950年代使われたアルファの市販車運搬用のものと思われます。
手前の車は1954年のAlfa Romeo 1900 Sport Spider(Yow Modelli製)と1955年のコンセプトカーBat7(Bizzare製)です。
1952年のDisco Volante Spiderと1953年のDisco Volante Coupe(いずれもBizzare製)と並べてみました。
Alfa Romeo 900
900は800の発展型として1947年から1954年まで製造された9tクラスの大型トラックで、9.5L 130phのディーゼルエンジンを搭載しています。
この時代のAlfa Corseでは、900の連結トレーラータイプの大型トランスポーターが使用されていました。
これは、1953年のルマン24時間レースのパドックで撮影された写真です。
900のトランスポーターもGila Modelliがちゃんとモデル化してくれています。
上に乗っている3台の6C 3000 CM 3.5は、1953年のルマンに出場し、残念ながらいずれもリタイアに終わった車達です(Tron製)。
手前の#602は同年のミッレ・ミリア(Mille Miglia)に出場したファンジオの車で、首位を走行中にタイロッドが折れたにもかかわらず、前輪の片方がふらふらになった車を超人的なテクニックでねじ伏せてゴールまで走りぬき2位に入った伝説の車です。
Alfa Romeo Mille(1000)
Milleは8~11tクラスの大型トラックで、11L 163~174phのディーゼルエンジンを搭載しています。1958年から1964年まで製造されたこのMilleが、アルファが自社生産した最後の大型商用車両となりました。
1960年代後半から1970年代のAutodeltaのトランスポーターとして、Milleが使われています。
このMilleのトランスポーターは、ABC Miniaturesがモデル化してくれています。
前回の記事でご紹介した、AutodeltaのF12サポートバンやGiulia SWと並べてみました。
手前の2台のTipo33/2の内、#20は1968年のデイトナ24時間レースで5位入賞、ロングテールの#39は同年のルマンで4位に入賞した車です。
このMilleを最後にアルファ自製のレーシングカートランスポーターは終焉を迎え、1980年代以降は、以前の
トランスアクスルアルファの記事や
DTMの記事でご紹介したような、IVECOのボックストレーラーが使用されています。