2023年06月12日
帝の都が京にあるころから東国へ通ずる道として拓かれたが、
その頃から東にある峠は難所であった。
もとはその峠の麓に宿駅があった。
今ある風早の宿駅はその頃にはなかった。
その時代のお話がたくさん伝わっている。
今宵は私の祖父が或る夜話した物語を紹介しよう。
祖父はこういって話を切り出した。
母親は物語は好きで嫁ぐときにたくさんの古典を嫁入り道具と一緒に長持に入れて持ってきた。
あるとき、その母が話をしてくれたという。
子の旅籠の前を通る東海道は鎌倉のころにもあって、都と鎌倉を行きかう人が多くあったと。
ここにある平家物語を読むとき、とても悲しい気持ちになる。
富士川の戦いのこともそうだけれど、平宗盛という人の人柄を思うと、どうにも涙すると。
父の清盛は強い性格だったけれど、その子の重盛や宗盛は、意気地なしだった。親子なのに、これほどに性格が違うのは母親の影響なのか、甘やかされたのか、わからないけれど。
平家の最期は壇ノ浦の戦いと思われているけれど、清盛の血を引くもので、建礼門院は生涯を全うしたし、家督ということでは宗盛とその子清宗は、壇ノ浦で死にきれず源氏に拾われてしまった。
鎌倉に送られて頼朝と対面したのち、京へ戻された。この道を四たび通ったことになる。
宗盛親子を京から鎌倉へ、鎌倉から京へと連れて行くのは義経であった。
一行が、この風早を過ぎてはるか西の篠原に差し掛かったころ、
義経は平家打倒を掲げて自ら元服をしたその地を通り過ぎたところだった。
義経はその時を思い出す。
そしてここに宗盛を連れていることを思う。
わが父を殺めた平家、その平家の頭首がここにいる。
つづく。
Posted at 2023/06/12 02:02:10 | |
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書き物 | 日記
2023年06月03日
今は昔
二つの都市を結ぶ街道筋の宿駅での出来事を綴る
古代から近代まで数知れずの人たちが、それぞれの人生を通過し、歴史に刻まれた
東西一里に渡る街道一、いや、この国一の宿駅。
長細い舌状台地に築かれたその宿駅は 東の江戸見附に岩井一里塚があり
西の京見附には潮見坂一里塚がある。この先少し行ったところに追分があってその先は、
この国のもう一つの街道、内陸の山側を通ってその二つの都市を結ぶ街道に繋がっている、西野街道との追分があって、そばにある川の名前からくろち追分という。
この宿場は東西に長く道筋はこの街道1本しかなく、間口に合わせて地租が課税されるので、奥行きは1町くらいは裕にあるのだが、その先は南北ともに段丘崖になっている。
西の端が舌状台地の端なので東側を除けば、その段丘崖によって天然の要害となっている。東側には16町先には昼なお暗い街道一二を争う難所のかに坂峠があって、東らか攻めてくるものを寄せ付けない。
西の端からその行く手を見下ろせば、松並木が浜に沿って西に向かて伸びてゆくさまがさながら龍のように思えるように美しい。
この宿駅は規模が大きいので、本陣が2つ、脇本陣が3つ、旅籠は10を数える。2000人ほどが住んでいるだろうか。
私はこの宿駅で親から受け継いだ旅籠を営んでいる。
様々の目的でやってくる人たちにくつろぎと旅の情報を提供するのだが、中には訳ありの道中のものもいる。
たまたまこの家に生まれたので旅籠を営むが、人生なんてものは、そもそもどうあってもよいものである。私は、誰構うことなく、この宿に泊めて欲しいと願い出るものがあれば拒まず受け入れている。無銭のものもいるが、番頭にだけは耳打ちするがそれ以外のものには何も言わないで、そのままにしてやる。
人それぞれに背負ったものがある。この一日、この宿でそれを下ろして楽になれば、それこそは施しとなって、来世に得られるものがあるだろう。
そう思うのだ。
そういうわけで旅籠を営むと、旅をしなくてもいろんなことが知れて楽しいというものである。
そうしたことを徒然に皆にも読み聞かせてやろうと思うだ。
こうしたことは文字にしてでも残さないと、怠け者の人間どもはすっかり忘れてしまうというものだから。たまに近くの田から田お越しをしていると木片が見つかって古代のことが記されていると、高名な国学者が喜んでその文字を写していくのだが、
やはりそうしたもので、我が身でも後世のものが楽しめるようなものが何か残せるのではないかと思って筆を執る次第である。
Posted at 2023/06/03 19:16:31 | |
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書き物 | 日記
2023年06月03日
井原西鶴かってね。
旧街道をたくさん歩いたら、たくさん歴史を学びました。
それをもとに、短編歴史捏造小説を書いてみたくなりました。
ホフマンが女性に相手されなくて詩の世界に移住したように
日本の誰かが、生きる糧を小説に求めたように(だれだったか忘れた)(
[ 思い出した。漱石だった]
このカテゴリのものは、フィクションであることを念頭にして下さいね。
歴史を捏造したとは言わないでくださいね。
Posted at 2023/06/03 11:47:18 | |
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書き物 | 日記