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zato787のブログ一覧

2018年09月22日 イイね!

トヨタ・ハイブリッドは、電気羊の夢を見るのか。

トヨタ・ハイブリッドは、電気羊の夢を見るのか。ようやく渋滞を抜けて、低速運転から加速するためにスロットルを踏む。
エンジンの回転数が上昇する音はするが、加速力はまだ小さいままだ。
トヨタのハイブリッドのクルマに乗ると、エンジン回転数の上昇と速度の上昇の関係に違和感がある。


トヨタのハイブリッドは、1997年の発売以来、もう20年以上世界中の道を走っている。 燃費向上、静粛性、安全性向上のための制御に大きく貢献することから、主要メーカーは電動化に向けて進みはじめた。 その中でも、既存のインフラがそのまま使えるという点で、ハイブリッド(PHEVも含む)方式は他の方式より実用的である。 


私も電動化の動きに対して、EVたるiMIEVも、ハイブリッドの代表のプリウスも自分の車として乗ってきた。iMIEVでは、電費にびびりながら、片道50km以上遠出することはなかったし、プリウスには、「クルマなんて動けばいいのよ」的な思想に染められるそうにはなったが、それぞれの実用上の利点も欠点も理解した。 私は、決して自動車の電動化に反対なわけではない。むしろ、安全制御の強化の面から賛成派ですらある。 しかし、人間が期待する反応とは異なり、躍度が可変するドライブフィールには抵抗を覚えてしまう。それは、私だけの違和感ではなく、世界中に一定の数存在する模様で、トヨタは、ハイブリッドカーのドライブフィールを改善せねばならないと思っている。 


 三菱EVのiMIEV



 トヨタプリウス(2代目)


トヨタのハイブリッドにはいくつかの世代があるが、ガソリンエンジンに発電用と駆動用のモータを遊星ギアを用いて構成される「電気CVT」で組み合わせてタイヤを駆動しているクルマであることは変わらない。トヨタ、レクサス共に同じパワートレーンを使用している。現在は、FF/FRだけでなく、4WDもラインナップされている。

THS-Ⅱの初期のモデルでは、駆動用のモーター動力は、ピニオンギアの1速だけである。ハイブリッドが、内燃機関が最も不得意とする、低速域・低負荷域での運転を改善しようという発想から始まったのだから、モーターには低速重視のギア設定を与えておけばよいわけだ。なので、低速はモーターでぐいぐい走りだせるが、速度をあげるにしたがってモーターのアシスト量は小さくなり、高速域はエンジンの力が主体になる。初期のプリウスは、低速域での燃費を重視した設定になっていたから、高速域では出力が不足していた。


 2代目プリウス用1.5HVエンジン
 初期型のハイブリッドは、
 低速スペシャル設定のため、60km/hを超えるとモーターのアシストは劣化し、
 システム全体での出力不足感は否めなかった。
 
トヨタは2003年に、レクサス用として3.5LV6の高出力エンジンに、モーターのギアを低速/高速の2段切り替えができる、2段変速リダクション機構付きのハイブリッドに進化させた。 その後15年かけて性能は改善され、現在の中核的なハイブリッドエンジンになった。 しかし、モーターだけを変速機で高速側に切り替えても、電気CVT内部でエンジン側の制御が優先するため、エンジンも使える領域が制限され、駆動用モーターが動作できる回転数にも限度があり、エンジン回転数に応じてモーターの出力を存分に引き出せない領域がまだ残ったままになっている。


 在来型主力ハイブリッド
 リダクション機構付THS-II


■動力分割機構「電気CVT」

トヨタの動力分割機構を現在でも「電気CVT」と呼ぶのは、ハイブリッドを開発した時に、監督官庁への車両届け出申請の際に困ったトヨタが、在来の「機械式CVT」に使用目的が近い物として、「電気CVT」と申請したことがきっかけだ。 現在でも電気CVTと呼ばれることが多いが、機械式CVTのような変速機構を持っているわけではなく、固定減速比の機構しかもっていない。 本来の役割は、ピニオンギアを介してモータ、エンジン、発電機の相対回転数を1から±無限大(正回転・逆回転)まで変化させることであり、電気CVTにおいては、モータもエンジンも変速しない直結状態である。 駆動軸に対するエンジンの回転数の変化は、駆動軸につながったリンクギアとエンジンのプラネタリキャリアの回転数の比率が変化することで発生させ、有効なトルクを得ているわけだ。 この機構なくして、トヨタ・ハイブリッドは生まれなかったから、自動車技術の中の重要な発明であることは疑いはない。


ところが、リンクギアとエンジンのプラネタリキャリアの回転数の比率を変化させて、エンジンから有効な出力を取り出す故に、加速時にエンジンの回転数と車速が一致しないという、何とも間延びしたドライブフィールが発生する。 このゴムバンドフィールは、ハイブリッド制御技術の向上で徐々に改善されているとはいえ、多段式ATやDCTといった最新の変速機が持つダイレクト感には全く及ばないままだ。 


  動力分割機構
  「電気CVT」と役人向けに苦肉の策でつけた名前が
  20年後も残るとは、トヨタも想像できなかった。


トヨタは、いい加減、「動力分割機構」と呼び変えたいようだが、世間では、「電気CVT」で通っているので、ここでも、「電気CVT」と書くことにする。



■THS-Ⅱマルチステージハイブリッド

トヨタは、この電気CVTが持つドライブフィールを改善するために、様々な試みが行われた結果、新しいハイブリッドシステムを作り出した。まだ、電気CVTの持つ根本的な問題は解決できないが、別の方法でダイレクト感を得ようとした。これが、「THS-Ⅱマルチステージハイブリッド」で、当初は新LSとLCに採用されたが、トヨタは、今後の採用範囲の拡大のために、マルチステージハイブリッドの量産に挑み、ついに一定の数の製造ができるようになった。
これを、トヨタは新クラウンの3.5HVに搭載してきた。 クラウンのラインナップでは最上級の700万円以上のモデルにしか搭載されないとは言うものの、これまでLSとLCにしか載せてなかったと思えば、半額の値段のクルマに載せてきたわけだ。「クラウン現象くるかも」で書いた通り、日本専売のクラウンに有り余る高出力を与えていて、ついつい、大きな出力の方に目が行ってしまうけど、このエンジンは現在のトヨタ・ハイブリッドエンジンの中では、最もナチュラルなフィールを持つエンジンである。その代り、ミッションケースを含めたパワートレーンが大きいので、FRのGA-Lプラットフォームにしか搭載できない。


トヨタのマルチステージハイブリッドの肝は、「動力装置たる在来ハイブリッド」の後ろにトランスミッションを置くことだ。 駆動軸に対するエンジンの回転数の変化とモーターの回転数の変化はあってよい。電気CVTは、必要な駆動力を生み出すために、モータ、エンジン、発電機の相対回転数を1から±無限大に変化できると説明した。 そして、欠点たる、ゴムバンドフィールは、増速時の「加速」の時に生まれる。 ならば・・・たとえば、電気CVTでトルクが必要な時に、今までのようにエンジンの回転数の制御で駆動軸への出力を調整する代わりに、別の変速機で減速比をローギアード/ハイギアードに変速して駆動軸へ出力を伝えたらどうなるだろうかと考えた。



 マルチステージは、(エンジン+モーター)を変速する。
 在来型はモーターのみの変速であった。
 


変速機を加えるということは、((エンジン+モータ)×電気CVT)×変速機(4段)という構造を取り入れたということだ。変速の段は、電気CVT仮想3段×AT3段で9段、これにトップギアとして、電気CVT無段変速(仮想段制御解除)×ATトップギアの10速が加わり、合計10速となる。トップギアにはいる車速では、可能な限りエンジン回転数を下げる制御がなされ、駆動力が必用になると、即時9速以下にシフトダウンする。変速機構は従来ハイブリッドシステムと出力 軸の間に配置されている。



  従来ハイブリッドシステム(左)とマルチステージハイブリッド(右)
  

■高効率化運転の実現

マルチステージハイブリッドでは、エンジントルクを3.5 倍大きく出力軸に伝達できるた め,エンジンのダウンサイジング化を行っても、高い発進性能を確保することが可能となった。現在は、3.5LV6エンジンにしか組み合わせてないが、より小排気量のエンジンでも効果が高い仕組みである。変速は、後方の変速機が行うので、車速に対するエンジン回転数の選択範囲が大いに広がった。 変速機構をLo ギヤに設定し,その減速効果を利用することで、低車速からでもエンジンを最高回転数で運転でき,エンジン から最大パワーを得ることができるようになったわけだ。 在来方式では最高回転数6000回転までしか使用できなかったが、マルチステージハイブリッドでは、6600回転の最高出力発生回転まで使える。 もう、ハイブリッド用に出力回転数を下げなくても良いのだ。



 エンジン使用範囲が拡大し、Loギアードにおける
 高回転域の利用と、Hiギアードにおける、低回転域
 の使用が可能になり、苦手だった高速走行での燃費が改善した。


車両の運転状況に合わせて 変速機構のギヤ段を適切に選択することで,トランスミッションの伝達効率の向上が可能となった.従来ハイブリ ドシステムは理論伝達効率の曲線を1本だけで運用するしかないわけだが、マルチステージハイブリッドでは変速機構のギヤ段数分の曲線を持ち、クルマの運転状態に合わせて変速機構のギヤ段を適切に選択することで、各速度域にあった、高い理論伝達効率を維持し続けることができる。 特に、高速運転時の伝達効率を大きく改善することで、これまで苦手とされていた、高速領域での燃費を向上させている。 在来方式では120km/hが限界だったモーターのみでの運転可能速度も、210km/hまで可能になった。つまり、200km/hで巡航中にエンジンを止めてモータだけで走れるということだ。(市販車では、210km/hまでモーター駆動を許してはいないが)



 青い所が「美味しい領域」で、
 これまで使えなかった高効率領域で
 運転ができるようになった。


■ドライバビリティの向上

変速機の減速効果とオーバードライブ効果によって、エンジ ン回転数の動作可能域が拡大したということは、通常のATと同じように、クルマの走行状態にあった、エンジン回転数が選べるという事だ。 車速が低いのに、エンジンの回転数を上げて、ハイギアードにずるずる引っ張って車速が上がるのを待つ必要などない。減速比を下げて、高回転までエンジンを回してやればいいわけだ。 動作可能域上で実現できる 最Loギヤ比(下図の1速の部分)から車速に依存する10速分のクロスレシオなエンジン回転数を設計して、その線の上で作れば、10段クロスレシオミッションだってできてしまう。

残念ながら、まだ「仮想クロスミッション」は実現できていない。電気CVTが要求速度に追いつけなくて、回転数がふらふらする(物理的に駆動軸とは繋がってないからね)し、後述する、スナッチとパワートレーンねじれの問題のために、理想的なクロスレシオに乗せて動かすことができない。 モーターは、バッテリーの有無の状態によって出力発生可否が変わるから、高負荷をかけている途中で電気が切れて大パワーモーターの出力がスコンと抜けるとパワートレーン全体がねじれてしまう。

だが、狙いたいことはよくわかる。電気CVTにおいても、ダイレクトな運転感覚を得たいのだ。パワートレーンは、ドライバーの指示に応じて、運転状況に応じたエンジン回転数を選択し、選択したエ ンジン回転数で運転できるようにシステムのトルクとパワー を管理する有段変速制御を作り出せばいい。電気が無限にあれば、モーターはスーパーチャージャーのように扱えばよく、その制御はきっと可能だ。こ有段変速制御には、アイシンのドライバーの運転状況によって仮想ギアを維持するような制御も加えている。 



 仮想クロスミッション運転図
 トヨタの広報用の図は適当版なので、本当の値の方を示す。
 各ギアが波打ってるのは、電気CVT配下のエンジン
 回転数制御に限界があるため。



 青い部分で、駆動力が大幅に向上
 要するに、加速がよくなり、高速では抵抗が減ったということ


■技術課題

トヨタが完璧主義だと言っても、限界はある。マルチステージハイブリッドには、大きな課題がある。主な課題を下記に示す。

1.変速機構の各ギヤ段特有の駆動系ねじれ振動特性
2.変速機構のギヤ段切り替え時のハイブリッドシステム の変速
3.変速機構のギヤ段切り替え時のハイブリッド電池のパワー管理

さきほど、ドライバビリティのところで、下記の課題2,3のことは簡単に触れたが、電気モータのパワーが急激に抜けないように制御せねばならない。さらに、エンジンとモーターは独立して動いているわけではないので、エンジンの回転数をMTのように上げていくと、同調している駆動用、発電用のモーターも過回転をしてしまうから、仮想クロスミッション上の変速は、フィードフォワード制御をシビアに行わざるを得ず、ガバナーによって上の段へと自動変速される。 試乗記等の中では、「手動モードなのに勝手にシフトアップする」ことを批判する評論も見られるが、きちんとマルチステージハイブリッドの構造を理解した上で、ガバナーを外す方法を提案できないのなら、それは、「ぼのくかんがえたさいきょうのくるま」レベルでしかない。


もっとも深刻なのは、「1.変速機構の各ギヤ段特有の駆動系ねじれ振動特性」である。特に始動時などのエンジンがかかる時の振動が課題であった。マルチステージハイブリッドでは、変速機構のギヤ段を切り替えることによりエンジンや駆動モータの動力をクルマに伝達するため、各ギヤ段毎に駆動系ねじれ振動特性が異なる。主たるねじれは、一次ねじれが、ドライブシャフトの伝達系ねじれ共振、二次ねじれが、エンジンに取り付けているトーショナルダンパーから発生する。さらに、これらの振動の周波数が、リアサスペンションメンバーなど、駆動系パーツの共振周波数と近いので、パワートレーン全体が振動することになる。 特に、エンジンが最初にかかる瞬間に発生する振動でこれらの問題がおきやすい。 


 トーショナルダンパー(T/D)を含む、
 マルチステージハイブリッドの駆動系
 エンジンの後ろにあるのがT/D


難しいことを全部端折って言えば、トーショナルダンパーで発生した振動(T/Dがねじれる→元に戻るで発生する)などの、駆動系のねじれ振動特性が大きく在来から変化したため,特にエンジン始動時には変化した特性に合わせた制振制御技術の開発が必要になった。



 各ギアで、発生する振動周波数が変わってしまう。
 変速状態に応じた、振動対策が必用になる。


■今後のトヨタへの期待


トヨタのハイブリッドのドライバビリティの問題は、電気CVTに変速機構がなく、回転数の調整だけで駆動力を制御せねばならないことが主因であった。 モータのギアを変えることで、低速、高速でモーター駆動を生かす領域を増やすことはできたが、回転数変動だけの制御では、ドライバビリティの改善はできない。

発想の転換部分は、電気CVTを回転数が変化するパワーユニットととらえ、変速機能を別に用意しようと考えたことだ。確かに現行のマルチステージはまだ完成品ではない。まだ変な動きをするところがたくさんある。それは、電気CVT自体が在来の技術を使っていて、マルチステージハイブリッド全体化としては最適になっているわけではないからだ。

内燃機関、モーターの出力を効率的に融合させること自体が難しいのだが、それを変速処理するということは、電気CVTと呼ばれている動力分割機構の制御と振動対策をやり直さないと理想的な形にはできない。 しかしながら、マルチステージハイブリッドは、モーター+エンジンを動力分割機構から駆動力制御をしなくてもいい、という方法を作り出した。 THS-Ⅱである以上、電気CVTと呼ばれるのは仕方あるまい。 しかし、パワーソースと捉えるのならば、動力分割機構に、「CVT」が持つような駆動力制御機能は必要がない。 私は、トヨタが駆動力制御機能を持たない動力分割機構を作っていると予想している。 それこそが、多分、THS-Ⅲと呼ばれるのだと思う。

パワーソースは、スロットルの制御によって、「回転数」を上下させる。パワソースが生み出す駆動力は、変速機によって適正なトルクを駆動軸に伝えるわけだ。 ギア自体は、N速クロスレシオで組めるし、それを用途に応じて可変させることだって可能だろう。(振動問題が最重要課題になるけれど)パワーソースを内燃機関オリエンテッドにすれば、ようやく、モーターをスーパーチャージャーのように使えるのではないかという希望すら持てる。

なるほど、これは、私たちの知ってるクルマ、そのものではないか。

トヨタの「楽しいクルマを作っていく」と言う言葉に期待している。
未来のトヨタのクルマは、きっと運転して楽しいクルマになると。



GR Supra Racing Concept
Posted at 2018/09/22 21:21:46 | コメント(1) | トラックバック(0) | 自動車技術 | クルマ
2018年09月14日 イイね!

ビリギャルだったCX-3が目指した道

ビリギャルだったCX-3が目指した道「デミオと差別できていないのに100万円高くするのはおかしい」と言われていたCX-3だが、マツダの元々の企画は、「小さなデザインコンシャスなSUVを造ろう」ということだった。ヴェゼルが、FITと同じグローバルスモールプラットフォームを使っているのに、60万円も高い値段で売られているのを見て、ふらふらっとCX-3にあの値段をつけたことで、国内販売では、月販平均で1250台程度と目標の4割も売れない悲惨な結果を生んだ。ライバルはハイブリッドでも250万円以下に価格を抑えているホンダヴェゼルと、市場をしっかり分析して、プリウスと同じハイブリッドを積んだ燃費も実用性も(デザイン・・も多分。私にはスターウオーズの帝国軍のヘルメットに見えるけど)、TNGAをしっかりチューニングして走りも磨いたC-HRが同等価格帯にあるわけで、この状態になったのは全く不思議ではない。 マツダの販売店からの評判も決してよくはなかったから、積極的に売っていくこともなかったのだろう。。


 ホンダヴェゼル



 トヨタC-HR


それでも、マツダがCX-3を更新しようと思ったのは、欧州・北米・アジア市場では一定の支持を得ていて、欧州市場で累計で5万7000台も売れているからだ。マーケット分析をするまでもなく、「デミオの車高アップ版」から離脱せねば、CX-3に未来はない。幸い、全長4.3m程度のSUVにマーケットがあることは、C-HRやQ2などのライバル車が証明している。ディーゼルとガソリンを併売している欧州では、ディーゼルエンジン自体は一般的であるにも関わらず、CX-3の販売量の60%がガソリンになったのは、高速性能の不足からだ。わずか105馬力の1.5Lディーゼルターボでは、欧州の高速道路ではコンパクトカーと差別化ができなかったからだ。 しかし、ようやく自らのマーケッティングの誤りを認め、2017年からデミオとの差別化に踏み切り始めた。 だからと言ってCX-3の差別化がすぐにできるわけはなく、2017年のマイナーチェンジで2.0を投入してから1年もたたず、4度目の大幅改良を行ったわけだ。


 CX-3

質感を向上させ、CX-5に近づけるのが、現在のCX-3が目指す位置だ。だから、マツダは理詰めでネガを潰していった。シートの材質、布や革の張り方、縫製の細やかさなど、部品メーカーの努力の結果が大きいけれど、こうした一つ一つの積み立てが、他車との差別化を生んでいく。アテンザのように商品改良レベルでダッシュボードを全面的に作り変える方が普通ではないわけで、基本的な造形は変えられないものの、センターコンソールは、EPB(電動パーキングブレーキ)を装備したことで、コンソールボックス周辺全面的に作り変え、その後ろにはアームレストも備えたことで、CX-5のレベルに近い所に持ってきた。EPBは、走りの高級車化に効果的で、MRCCの全車速対応と合わせて、乗ってみて、使ってみてわかりやすい差別化ができたと言えるだろう。 高品質な内装の車内に座り、ドアを閉めてエンジンをかけても今までよりずっと静かで、滑らかに加速し、減速する。 乗り心地は柔らかくはないが、固いわけでもなく、多くの場合でいやな振動も突き上げもない。 室内は外から見るより広く使いやすく、4人でも、2人でも快適に走ることができる。 少なくとも、試乗した人を楽しませることはあっても、がっかりさせる要素はもうない。エンジニアリングをしっかりやったことは、CX-3に乗ってみればよくわかる。それは決して悪い印象を人に与えることはない。



 EPB(電動パーキングブレーキ)

CX-3は、全長4.3mくらいのコンパクトなオシャレなクルマで、SUVながらも、女性に好まれるデザインである。デミオとは大いに差別化ができた。 今度はディーラーで比較されても、見栄えにも、乗り心地にも明確な差があり、価格の差に納得できるところは大きいだろう。 CX-5と試乗して比較しても、がっかり感が小さくなって購入後の満足感が高くなった。 乗ってみれば、思ったよりも室内も広く、それなりの荷物も積めるから街中でのお買い物などに、ちょっと小さくていいクルマに乗りたい人に、ガソリンモデルはぴったり合っている。 2名で長距離にも出かけれるけれど、CX-5ほどの積載性は不要だという人には、1.8ディーゼルが向いている。 コンパクトだけどいいクルマが欲しいという需要はずっとある。最近の軽自動車が装備を充実させて乗り出し価格が200万円を超えるケースがよくあるのも、その表れの一つだ。

コンパクトカーと差別化するために、まず「内外装のデザイン」が重要であることは十分にわかっている。 しかし、恰好だけで中身がコンパクトカーのままだと、市場でどういう扱いを受けるのかは、これまでのCX-3が証明してしまった。 ネガを潰す作業を地道に続けたCX-3の販売台数は、世界的にこれまでよりは好転するだろう。しかし、本当にCX-3が評価されるのは次のモデルだ。今回のCX-3へのアプローチのように、ちゃんと目標に向けて詰めていくエンジニアリングを続けられれば、外装、内装、走りの上質さをマツダらしくまとめたクルマができるだろうと期待している。



 CX-3
Posted at 2018/09/14 21:33:51 | コメント(3) | 試乗記 | クルマレビュー
2018年09月07日 イイね!

やはり、カワイイは正義なのか 新アテンザ

やはり、カワイイは正義なのか 新アテンザ「カワイイは正義」だが、「よくできたクルマ」が正義とは限らない。

最初に、アテンザは、この6年の間に、様々なネガを潰して進化したことは間違いない。 クルマとしての完成度も2018年に販売されている400万円クラスのDセグメントの中では、十分に近代的だ。走行性能のところで述べたように走りだって、マツダのクルマらしく悪くない。25LとXDLの購入に多少迷うかもしれないが、短距離走行が中心ならば25L、家族と長距離にも乗るならばXDLという選択になるのはこれまでと変わらない。しかし、XDLの加速性能が過去モデルよりもマイルドに滑らかになり、25Lの低速トルクが豊になったため、ディーゼルに動力性能でのアドバンテージが小さくなった。 同時に、静粛性にも大きな差がないほどディーゼルは静かになり振動も小さくなった。


アテンザの静粛性に関しては、もっと褒められるべきだ。
新型クラウンに乗った時に、どのモデルも相当に静かだったし、クルマとしての出来もかなり良くなったから、このブログで3回も取り上げた。アテンザに乗った今でも評価は高い。 アテンザに乗った時も、最初は静かだけどクラウンには及ばないよなと思ったのだが、念のため、再度クラウンンにも乗りなおしてみた。同じ路面を走っているわけではないから、dB系の値を比較するのは意味がないけれど、他のクルマに比べてクラウンが静かであることに間違いはないが、アテンザがこれに匹敵するほど静かになったのは事実だと言っておくべきだと思っている。


 静粛なアテンザの室内


私が、新アテンザを買う方向に動かないのは、新アテンザは、ペリエ(炭酸水)みたいなクルマだからだと感じたからかもしれない。 ペリエは、太ることもなく、甘くもなく、アルコールも入っておらず、安く、料理にもあうし、清涼感もある。 でも、「本当は美味しいシャンパンが飲みたいのだけど、クルマに乗るからペリエにしている」という感じに似ている。 価格と性能のレベルが高い妥協点と言ってもいいかもしれない。 ミニバンを選ぶように、利便性中心でのクルマ選びとは異なり、Dセグメントのクルマは趣味的な要素も多く入ってくるから、無色透明なペリエは選びづらい。 このクラスのクルマは、「このクルマが欲しい」という、そのクルマにしかない何かを持たせることが大事で、どういう気持ちになってアテンザを選べばいいのか、という所のアピールが難しいのだ。


  ペリエ


これが何を意味するかといえば、クラウンやEクラスの購入を検討する人は、アテンザなど、最初から眼中にないから、試乗することすらしないということになる。クアドロフォリオや、ジャガーはその比較対象になったとしても、「アテンザじゃねえ。。。」と最初からディーラーに行こうともしない。似たような境遇にレガシーB4もあるが、あちらはモデル末期だから売れているわけでもないし、新型になってから判断すべきだろう。クラウンもEクラスも、ゴルフエクスプレスがメインの用途ではないし、Dセグのセダンが、全部同じ方向性を向いている必要もないが、だからといって、アテンザにしかない魅力はなんだろうか。 2012年には、魂動デザインが初期ユーザを引き付けたが、今回はその新鮮味はない(現時点でもデザインは優秀だと思う)。 いいクルマなら売れるとはいえない・・のが、このクラスのマーケットの難しいところだ。


 新アテンザ

「乗り出し価格400万円のセダンとワゴン」のマーケットは日本にはない。これはマツダもよくわかっているし、今回のモデルチェンジの目的が、中国、アジア、北米であることは前にも述べた。 恐らく、新アテンザは日本ではさほど売れることはあるまい。クルマのできは良くとも、中途半端に安く、高く売るだけのブランド力はまだないからだ。

マイナーチェンジでは考えられない程の変更をしたことは高く評価したいけれど、購入するユーザの視点からすると、FRになったわけでもないし、SkyActive-Xでもないし、期待の直6を搭載しているわけでもないから、購入時の比較の遡上に上がってこないのだ。 丁度Dセグメントのマーケットに目を向けているクラウンの購買層は、残念ながら、クラウンより150万円も安いアテンザを比較対象としてくれないことは残念だ。



 新アテンザ


マツダのディーラー自身が、アテンザがそれほど売れないだろうということをよく理解している。それは、試乗車の検索をしてみるとよくわかる。主力のディーラーであっても、アテンザを試乗車に持っていないところがたくさんある。逆にCX-5の試乗車を持たないディーラーはないし、主力ディーラーならCX-8の試乗車を持たないところもない。


こうして分析をしてみると、新アテンザ/マツダ6において、最も心配なことは、期待しているアジア、中国マーケットでどのように受け入れられるのかである。 今のところ、北米市場では、それほど大きな動きにはなっていない。やはり、セダンにおいては、カムリ、アコード、シビックが強い。だから、今回投資して大幅に良くなった結果、期待された以上にマツダ6の販売が伸びないのではないかと考えている。 世界中の多くのマツダ6のユーザは、やはり次世代のマツダ6に期待をしていると思う。「KAWAII」はもはや日本語ではなく、世界に通じる言葉の一つだ。日本語の「可愛い」とはことなる意味合いで、尖ったCOOLさ、とでもいえばいいだろうか。 次世代のアテンザは、クラウンクラスの価格と性能と、マツダらしいデザインと走行性能をもって、世界中のDセグメント車を相手に勝負をかけることを期待している。 それこそが、マツダの「KAWAII」なのだから。



 新アテンザ
 良いデザインは、時間と共に劣化することはない。
 もっと褒めてあげたいけれど、マーケットは冷酷なのだ。
Posted at 2018/09/07 23:12:06 | コメント(1) | 試乗記 | クルマレビュー
2018年08月31日 イイね!

上質なGTに向けて舵をきったRF3型

上質なGTに向けて舵をきったRF3型上質さを向上させて、よりGT的な快適性の向上に舵を切った3型のRFに乗ると、頭の中にNTN社の多部ちゃんのCMフェーズが浮かぶ。(なんて滑らか~♪というやつ)1,2型は3型に比べるとがさつな回り方だが、熱心に走って、幌と同じように自分もスポーツカーなのだとある種の無理をしてるところが、けなげでかわいかったのだが、3型はエンジンから振動と雑音を取り除き、高回転でパワーを発揮し、室内に振動が入ってこないようにDMFをつけて静かな車内空間を作ろうとした。 足回りはブッシュも、リアのバネも柔らかくなり、もう誰もリアの突き上げがーとは言わなくなった。 最新のアテンザやCX-5に乗ると、マツダが目指したい上質さが何かは理解できるし、これまでのRFはその方向から大分ずれていたことも理解できる。中山雅氏は、RFをもっとGT的に、長時間乗って遠くに行くことがより快適な空間を作りたかったのだろう。 それに賛同する人には、良い改良だったと言える。

1,2型と3型の間には、大きな差がある。工業製品としての精度も違うし、エンジンは全くの別物だと言ってよい。マツダのディーラーによれば、1型を3型に買い替えるには、約200万円の追い金がいるという。(2型は年式は新しくとも、追い金の額は1型と大して変わらない模様)少なくとも、マツダは旧型を買った人に対して何の救済措置も取るつもりはないし、今後の年次改良でもそういう措置はない。86/BRZには改定用のキットが用意されたこともあるが、これはむしろレアなケースだろう。(長く販売店とつきあっているユーザーには特別値引きとして、初めて買う人よりは少し値引きされるくらいだが、これは販売店側の配慮であってマツダの配慮ではない)こうしたマツダの販売に対する態度が、今までマツダのスポーツカーを買ってきた顧客にネガティブに捉えられている点は理解できるが、それを怖がっていたら、思い切った年次改良はできないだろう。


 ロードスターRF(3型)

NDロードスターは、この先もまだ5年くらいは作り続けるので、今後も進化を続けていく。モデルライフが長いならば、最新のロードスターが最良のロードスターであってほしい。 ユーザは、欲しいと思った時に買うべきであり、将来の改良を待って買わずにいたら、ロードスターに限らず、マツダのクルマを買うことはできなくなるだろう。 ロードスターは、買わずに批判するのではなく、購入して乗って楽しんで価値を示すクルマである。特にこのクルマは実用車ではなく、乗って楽しいから乗ってるスポーツカーなのだからだ。最良のロードスターが、常に未来にあるのならば、一生買わないか、欲しいと思った時に買うかのどちらかだ。モデルライフが長い故に、初期型を購入して何年も楽しんだあと、熟成された後期型の乗り換えるという楽しみ方もある。

もう一つの付き合い方は、自分のクルマをどんどんアップデートしていくことだ。新エンジンが欲しいのなら、自分のRFにそれを搭載することを考えるのも、またロードスターの楽しみ方の一つである。ロードスターのショップには、高い技術と熱い思いを持ったショップがたくさんあり、メーカーが量産してくれた様々なパーツを思いもよらない方法で組み合わせて、ユーザーに提供してくれる。私の2型には既に3型のテレスコ機能が搭載され、早速新パーツの恩恵を受けている。


こうした大きな改定を他のメーカーができないのは、多くのメーカーは、「既存のお客様の気持ち」を慮っているからだ。マツダが顧客の気持ちを慮ってないなんてことはなく、より良いクルマに改良を続けることこそが、お客様の笑顔に通じると考えている。

初期型のロードスターRFに何か変化があったわけではない。旅行の荷物を積み、2名乗車で東北へと自動車旅行にでかけ、山間の歴史のある古民家の宿に泊まり、素晴らしい食事を頂く。その旅の友となる、ロードスターRFは、やはり楽しいクルマであった。それは1型、2型、3型の区別などなく、同様に楽しい時間を提供してくれるスポーツカーだ。 自分の好みにモディファイしたクルマで、大切な人と共に旅ができる、それはロードスターに共通に変わらず与えられた楽しみであり、それをより素晴らしくするために、ロードスターRFが大きく成長していくことを支持したい。



 旅に出たロードスターRF

Posted at 2018/08/31 19:49:34 | コメント(1) | 試乗記 | クルマレビュー
2018年08月11日 イイね!

未知への好奇心を支えた相棒、赤いファミリアXG

未知への好奇心を支えた相棒、赤いファミリアXG名車の基準が何かと明確に決まってるわけではない。

大抵の場合は、誰も乗れないくらいに生産台数が少ないか、既に乗れる個体がほとんどないかのどちらかだ。意外に、自分が過去に乗っていたクルマが名車だと言われたりすると、困惑することが多く、例えば、1980年代のFDやAE86やR32以降のGT-Rが名車にあたると聞くとかなり違和感がある。(一緒に過ごした思い出があるので、楽しいクルマだという意識はある) 一方で、自分が当時リアルタイムに乗れなかったクルマ、例えば1971年式コスモスポーツや1974年式ポルシェカレラ2.7RSなどには、特別な感想を持つから、人によって名車に対するとらえ方は違うのだろうと思う。

今日は、そういった華やかな懐かしのスポーツカーではなく、もっと現実的なクルマを取り上げようと思う。1980年にデビューしたBDファミリア。「赤いファミリア」だ。もちろん、誰かの専用車でもなく、3倍速いわけでもないが、この時代に世界で一番早く100万台売り上げを達成したクルマだ。私も、サーフィンに行ったわけではないが、何度も乗ったことがある。



 ファミリアXG(5代目ファミリア、形式番号はBDだが、「赤いファミリアXG」と呼ばれる)
 1980年のカーオブザイヤーを受賞
 海外名はマツダ323で、現在のアクセラと同じクラス。


会社の歴史を語る上で、経緯的に重要な役割を果たしたクルマは、「名車」と呼ばれることはあまりないのだが、それを知っておくことはその企業を知るのに役に立つ。 東洋工業・マツダはこれまでに何度も倒産の憂き目にあってきた。その理由は明確で、毎回、お客様の方を向いてクルマ作りをしなかった時にそうなっている。 1970年代までは、第一次、第二次オイルショックなどの社会的な事象に全く耐えられない財務状況だったから、企業の存続が不安定なことこの上なかった。(バブル崩壊後の倒産直前の原因は自惚れと自滅だ)そんな会社は東洋工業だけではないけれど、海外に製品を輸出する企業でありながら、「地方の中小企業」的な経営状態から抜け出すことが長い間できなかった。

1979年(昭和54年)12月に、第二次オイルショックが起きた。イラン革命によって石油生産が停止し、イランからの石油の輸入に依存しまくっていた日本社会は困惑した。 日本は世界の中でも、経済政策的な失策によって国民が被害を受けるケースが多く、国際経済の教科書に最も多く事例が登場する国の一つである。 それはともかく、ようやく死ぬ思いで排ガス規制をクリアしたと思ったら、今度は「石油が無くなる」というパニックで、日本の自動車産業は右往左往することになる。 高度経済成長に従って、クルマはどんどん大きくなり、大衆車と呼ばれるクルマにも2000ccエンジンを搭載するものが増えて、実燃費が10km/Lにも届かないクルマが多数あった。



 オイルショックによるガソリン価格の上昇


特に上級モデルにロータリーエンジンの搭載を打ち出していた東洋工業は、オイルショックの前から販売不振が続き、急速に経営が傾き始めていた。経営責任を取らされる形で創業家社長が経営から降板し,メインバンクの住友銀行から経営再建のための人と計画を受け入れることになっていたが、住友銀行は人材の派遣と緊急融資を行った後に、財務を再調査した結果、米国市場の販売店並びに国内の有力な販売店による融通手形(注)の乱発が発覚した。技術面ではREの技術を基に、トヨタ、日産、三菱との交渉を行ったものの、怪しい財務とガスイーターのRE技術に対して、いずれも色よい返事はしなかった。最終的に、トラックの輸出で関係があったフォードに提携を持ちかけ、各種の交渉の上でフォードが25%の持ち株分を出資することになった。
※注 融通手形:現実の商取引がなく振り出す約束手形のこと。資金繰りのために融通する手形。
   簡単に言えば、返済のあてもなく好き勝手に金を借りまくってたってこと。

この苦難の時代に、東洋工業を救ったのが、1980年に発売されたBDファミリアである。イメージ的な面で言えば、1978年に「ポルシェの半額でスポーツカーを売る」ことをコンセプトに作られた初代RX-7も貢献したのだが、財務的な面で東洋工業を支えたのは、BDファミリアである。 BDファミリアの拡販により、「マツダ」の知名度が広がったことを受け、1984年5月1日に企業名をマツダ株式会社に変更している。



 (写真左)1950年代半ばの東洋工業正門
 (写真右)社名変更後1986年1月に新設したマツダ本社2号館


BDファミリアは偶然生まれたのではない。 もちろん、倒産しかけていた東洋工業のままでは生まれることはなかった。トヨタからも、日産からも、見向きもされなかった東洋工業が、どうしてBDファミリアのようなクルマを作り出せたのかを彼らが知るのは、カローラ、サニーがファミリアに月間販売台数で抜かれた後であった。

現代的な言い方をすれば、選択と集中である。 経営から創業者の家系を全て排除し、不透明な財務処理を住友銀行が全てクリアにし、集団指導体制の確立と大幅な権限移譲を行った。 自動車の開発の現場にとっては、「創業者ご一族様のご意見」を聞く必要がなくなり、マーケット、企画、設計、開発、生産部門が一つになってクルマ作りをする体制へと変更したことが大きい。(注) 東洋工業は、1974年~1977年にかけて、組織の大幅刷新を行い、研究開発体制も改編し車種別責任体制を導入した。 スポーツカーとFFの2ボックスに力を入れたのは、世界的に小型車のフォーマットは、FFの2BOXへと移り、これからの大衆車マーケットを支配すると考えられていたからである。 主力CセグメントのFF化は国産メーカーの中で東洋工業が最後だったから、先行で発売されているトヨタや日産に劣るクルマを作っても意味がない。こうした論理的な決定ができることは当たり前のように思うかもしれないが、1974年以前の東洋工業には、こうした論理的な戦略を製品ラインナップに載せることができない会社の構造だったのだ。


 注:マツダに限らず、裏付けのない非論理的な意見であっても、トップから意見があれば、
   正当な理由なく変更せざるを得ないケースがトヨタでも横行していた。
   その結果で失敗した場合の責任は現場が取り、トップは責任を問われない。



 27か月で100万台を達成したファミリアには、トヨタの販売力でもかなわなかった。
 トヨタ博物館にも、BDファミリアは展示されている。

マツダは、1969年に発売した、ルーチェ・ロータリークーペでFF車の市販経験があるが、ガソリン横置きエンジンのFF車は、初めての試みであり、最優秀の人材がBDファミリアの開発に集中投入され、1978年に開発を終えたRX-7のエンジニアも参加するまでに全力を注いだ。 優秀な人材を集中させたファミリアの設計は、デザイン、サスペンション、ミッション、パワートレインの各部において、これまでの東洋工業のクルマとは一変させるクルマを作り始めた。

ゴルフの代名詞とも言える2BOXに、ゴルフが持たない広いグラスエリアを与え、当時の世界的な自動車デザインのトレンドである、角形のウエッジシェイプを取り、デザイン上のしっかり感を持たせている。エンジンは、前期型は直列4気筒SOHCの1300ccで74psと、1500ccで85psの2種類のラインナップを持ち、4輪のサスペンションはストラットの独立式を採用した。リアは、2本のロアアームと長いトレーリングアームの組み合わせにより、トーコントロールを行う独創の「SSサスペンション」を開発したあたりが、マツダらしく、当時の「FFのリアに金をかける意味はない」という論調に対して、RX-7を開発した経験から、駆動方式に関係なく、リアサスペンションの構造は重要であると決めた。 このSSサスペンションが、ファミリアの操縦性の持ち味を決めたと言っていい。 まだFFの経験が十分ではなかった時代のトヨタですら、「FFのリアサスペンションなんて、付いていれば良いのよ」と思っていたくらいで、当時の数多くのメーカーのFF車のリアサスペンションは、固定式のTBA(注)ばかりであった。

※注 次期アクセラの新TBAの構造とは全然違う、当時の鉄パイプを溶接して作ったTBAである。
   1980年代の設計だから、現代のクルマと比べれば、動力性能も、コーナリング性能も
   高くないし、ボディ剛性だってリア側は緩いけれど、このクルマは前後バランスが良かった。



  BDファミリア構造

今と違って、当時の若者は、自分と友達と女の子2名の4人で乗るケースが多く、4人分の荷物を載せて、さらにサーフボードまで上に載っける人もいるくらいで、パワーに対してクルマがかなり重たいのだけれど、この重量を支えるという点で、BDファミリアの無駄に豪華だと言われたサスペンションが大きな働きをした。4名乗車だと重心は比較的車両の中心に寄り、4輪の接地荷重が均等化されて、リアサスペンションが唐突な動きを抑える効果が良く発揮できていた。 この時代のTBAのリアサスのクルマは、路面からの突き上げがひどく、4名乗車時の高速コーナリングでのリアのトゥ角度の急激な変化による不安定な動きから逃れられなかった。 例えば、高速道路でレーンチェンジをした時の安定性などに大きな差があったのだ。この時代に、BMWやポルシェと国産車を乗り比べると、特にシャシー性能に天と地の差があると感じたものだが、そんな中で、BDファミリアの足回りは、正確性が高く、乗り心地も悪くなかった。ダンパーは安物だったので、ダンパーだけ欧州仕様に変えると、見違えるようにシャキッと走ったのである。私がこのクルマに乗った時代は、既に生産を終える頃であったけれど、当時のCR-Xやシビックのような、エンジンだけが走ってるクルマで自動車旅行に行くのは辛くて、長距離旅行に行くならと、よく後期型のファミリア・ターボを近所のレンタカーで借りたものだった。


さらに室内も先進的で快適であった。 もともと、サーファーやキャンプのことを考えて設計したわけではないだろうが、車中泊などの様々な使い方ができるようにと、フルフラットまで前方に倒すことができる前席の背もたれや、リクライニング機構を付けた上で、左右二分割で前方へ折りたためる後席背もたれは、現代のクルマでこそ当たり前の装備だが、BDファミリアがきっかけで爆発的に広がったのである。 若者から見ると、3ドアのリアシートの側面を円形に構築することで、ソファーのように仕上げたラウンジシートもカッコ良い装備だったようだ。 見た目の問題ではあるが、このラウンジシートの形状は、1985年に発売されるカリーナEDにまで影響を与えた。 安全性の面から褒めらた使い方ではないけれど、前席をフルリクライニングさせて、後席から足を投げ出して乗れるようなこともできた。 1980年代に人気のある装備であった、サンルーフを装備したことも抜け目がない。 サンルーフは前席にはそれほどの解放感はないのだが、喫煙者が多かった当時のクルマでは必須の装備であり、ドアのないリアシートにとって、明るさと風を感じさせる装備として人気になった。

  
  ラウンジシート BDファミリアの内装の特徴であった


もう一つの立役者はメディアであろう。 今のようにインターネットがなかった時代、当時の「トレンド」を作るのは、ポパイやプレイボーと言った雑誌であった。 当時のトレンディ雑誌は、湘南をイメージしたスポーティでカッコいい男の子を目指すと女の子にもてるよと、書いていた。 単純な男の子は、世の中に鏡というものがあることに意識がなく、自分もサーファーのような感じで、湘南あたりへのドライブを誘えば、カワイイ女の子が誘えるに違いないと確信してしまった。 出版社自体は男性用と女性用に分かれてるわけではないから、女性用の雑誌には、「誘われカノのコーデはこれでキメ」みたいな、特集を同時進行でやるわけである。 当時は、女性ファッション誌を男性が読むケースはあまりなく、ネタバレしにくかったこともある。


白いファミリアよりも赤いファミリアが人気になった理由をあまり知らない人が多いようだが、当時の女子ファッションのトレンドカラーが白系とパステルの薄い色だったので、青い空と、白系の服に合うということで、ファッション雑誌が、赤いファミリアを使ったのが始まりである。 同時期に同じ会社の男性用雑誌が、サーフボードを上に載せた特集を組むと、一気にトレンドが爆発したわけだ。 その結果、「俺も、ファミリが欲しい」となって発売後27か月で100万台も売れちゃうことになるわけだ。(なお、当時の100万台販売の世界新記録をマーク)これを読んで、「当時の若者ってなんて単純で愚かだったのか」と思ってるだろうが、今の若者だって、あと20年くらいしたら、「ネットとか言う物に踊らされてた愚かなやつら」と言われるのだからきっと大差はない。


  雑誌に登場するファミリア


トレンドに踊らされるのが大好きな世代であったが、同時にクルマが好きな若者が、クルマをイニシャルDのような夜中に山道を走り回るような使い方(夜な夜な、ああいうこともやってました。自分達だけだと思ってたけど、日本各地でやってたとは)だけでなく、もっと友達と楽しく過ごすための道具として使う物だよと気づかされた、エポックメイキングなクルマだと言える。 「痛快なドライブ」を経験した人はきっと自動車での旅行が好きになる。 私は、高校生の時に先輩と友人の4人でルーチェ・ロータリーワゴンで出かけた2泊3日の自動車旅行が原点になっている。


 ルーチェ・ロータリーワゴン
 (欠点の多いクルマだったが、楽しい思い出を作ってくれたクルマだった)

ファミリアとは、クルマは、人より速く走ることを競う道具ではなく、グランドツーリングとは何か、ということを考えさせた大事な意味があるクルマであった。真っ直ぐな天井にはサーフボードではなく、荷物とキャンプや釣りの道具を仕込み、助手席はマップルの地図とコンパスで道路をナビゲーションし(時々パシリとして、その辺りの人に、「ここはどこですか」と聞くのも仕事)、ラジカセで各自が持ち寄ったカセットで音楽を聴いて、まだ行ったことがない所に一緒に行く。 インターネットでお勧めスポットを調べることも、グーグルマップで場所を知ることもできないし、カーナビすらないけど、道路をたどって自分達でそこに来たという満足感とその記憶はいつまでも薄れない。 そして、いつも、「昔の人はここまで歩いてきたのだな」と思うのだ。 かられは、私達よりもっとリスクの高い道中を経た故に、特別な満足感を味わったことだと思う。

子供だった若者にとって、クルマとは、ずっと家族でドライブに行くために乗るものだった。ファミリアがその用途から脱却した使い方をされたのは、ファミリアが荷物と人を積んで最大限に遠くまでいくことを目標に作られたクルマだったからだ。 トヨタもホンダも日産も、クルマの性能を高め、燃費を良くして、コストを下げることには注力した。でも、「何のためにクルマを使うのか」ということを考えてはいなかった。だから、それらから新しい物を生み出すことはなかったし、トレンド雑誌も取り上げることはなかった。トレンド雑誌とファッション誌が、こぞってオシャレとは正反対のイメージの赤いマツダ・ファミリアXGを選んだ理由はそこにある。

「赤いファミリアXG」とは、多くの人に、

「クルマとは、新しい知識と経験と思い出を作るために旅にでるための道具なのだ」

と教えてくれた名車だと思う。



  BDファミリア

Posted at 2018/08/11 22:33:11 | コメント(0) | トラックバック(0) | 自動車技術 | クルマ

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「ボディキットは129万6000円・・欲しい人が一定の数いるから市販したと言うのか・・S600は素敵だけど、これはかなり合ってないと思った。 フロントも、リアもどこを褒めたらいいのか悩むレベル。https://bestcarweb.jp/news/41633
何シテル?   09/25 20:14
zato787です。よろしくお願いします。 NDロードスター RF(製造番号200000番号モデル)に乗ってます。 ミラーは同色でSっぽいですが、RSです。...
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