最近、マツダはロードスター2.0の北米向け2019年モデルに新型エンジンを投入してくるという噂が米国のネットを発信地として流れているが、改定がなされるかどうかすら、まだはっきりしていないし、そもそも、マツダからまだ正式に何のアナウンスもない状態である。
噂の記事の例
https://www.roadandtrack.com/new-cars/future-cars/a19717774/theres-more-to-the-2019-miata-than-a-more-powerful-engine/
https://www.autoevolution.com/news/2019-mazda-mx-5-rated-at-181-horsepower-from-20-liter-skyactiv-g-engine-124042.html
とはいえ、仮に新型エンジンが投入されるとしたら、ロードスター2.0にどのような改定が施されるか、1.5版をベースに考えてみた。特にRFのユーザは2.0のエンジンが大幅改良されると聞くと気になるだろう。 きっと、「SKYACTIV-G 2.0の高圧縮燃焼による高効率及び,低排出エミッション性能はそのままに,スポーツカーにふさわしい,高回転域までどこまでも軽快に伸びていくエンジントルク特性を目指した」・・というようなことを述べるつつ、新エンジンの発表が行われるのだろう。
■1.5版の改良実績
まず1.5の改良実績を見てみる。
NDに積まれるエンジン(型式P5-VP)は水冷直列4気筒DOHC16バルブエンジン。ボアxストロークは74.5mm×85.8mmで、BS比は1.15と、実用域のトルクを出すのに有利なロングストロークエンジン。 一方、RFや海外仕様に搭載されている2.0のボア×ストロークは83.5mm×91.2mmで、BS比は1.09と、1.5に比べるとショートストロークで、高回転化には多少有利といえる。
上記のように、1.5では、エンジン回転限度の上昇、最大出力発生回転数の上昇が図られており、出力で17%、最大トルクで4%の向上している。同様のスペック向上を期待すれば、2.0エンジンも最大出力184馬力/7000回転、最大トルク208N.m/48000回転となり、2リッターのスポーツエンジンとして十分な出力を持つと言えるだろう。 マツダのエンジンは、スペック値に厳しいため、スバルBRZ/トヨタ86に搭載されているFA20エンジンと同等レベルの出力を持つとみてよいだろう。
■新2.0エンジンの改良点の予想
高回転まで気持ちよく回る「伸び感」の実現のため、エンジン回転限界をベースエンジン比で300回転ほど高い7500rpmとすると思われる。高回転化に伴い往復系の慣性荷重が増加するため、クランクシャフトの高剛性化、バランス率を1.5と同等以上のレベル(16%以上)に高める必要がある。クランクシャフトのウェブ形状の見直し並びに、フルカウンタウエイト構造を採用して、ウエイトの配置を最適化すると思われる。 限界回転数がよりロングストローク型の1.5と同等の7500回転と予想するのは、これ以上の高回転だとエンジンに手を入れる箇所が増えすぎるためだ。 例えば、バルブ・クランクシャフトの工程面で1.5と大きな差が出てしまい、生産工程の課題が大きくなることから、7500回転をリミットになると予想した。 フライホイールについては既に軽量フライホイールが採用されているため、今回は大きな変更はないと思う。
エキゾーストマニフォールドは、有名なチューニングパーツメーカーの実証実験からわかるように、4-2-1排気マニフォールド集合部,プリサイレンサ,メインサイレンサの口径の変更により高回転化に対応できることがわかっている。特に、SKYACTIV-Gにおいては、反転負圧波が吸気バルブと排気バルブのオーバラップ期間に同調する回転数をコントロールすることが重要で、排気側カムをハイカム化(249degまで拡大すると予想)するに伴い、排気マニフォールド集合部までの長さを変更する必要がある。 この同調点を変更し、ハイカムを搭載することがSKYACTIV-Gの高出力化の基本となる。
一方で、エキゾースト・マニフォールド同調点を高回転化すると、低中回転域の体積効率低下からくる、トルクの谷間ができる弊害がある。この谷間を減らす一つの方法が、「吸排気の抵抗を減らすこと、連結部の抵抗を減らすこと」である。既にFR化に伴いエキゾーストのストレート化は行われているので、さらに対応できるとすれば、スロットル部内径を拡大(ビッグボア化)するくらいしかない。21世紀のエンジンとはいえ、高回転域の出力を重視すると、どうしても低中速回転域でのトルク特性には谷間ができてしまう。ここから先はマツダの吸排気の技術次第になるが、1.5のトルク曲線に見られるように、新エンジンも高回転特性を高める代わりに、現行エンジンより低中速2000回転~4000回転でいくらか、トルクの落ち込みが発生することになるだろう。 (図中に赤線で示した部分) その代りに、4000回転~6000回転で現行型を超えるトルクを発生し、そのまま7000回転に達するようなエンジン特性になるだろうと推測する。 4000回転以上で出力が高まる高回転の出力特性を好む人は好ましいエンジン特性になろう。
仮に、上記のような特性のエンジンに切り替わったとして、RFの旧型エンジンのユーザは、指をくわえてみているだけなのか、と言うとそうでもない。完全に同等にはできないけれど、マツダが実施している改定は、エンジンの高回転、高出力化において定番の方法をとっているから、エキゾースト・マニフォールドの変更、ハイカムの搭載、エンジンECUの見直しで、近しい出力を発生することは可能だと思う。 しかし、マツダがやっても、チューニングしても、ハイカムとハイカムに合わせたエキゾーストマニフォールドを使用する以上、街中で使用する低回転~中回転域でのトルクが細くなることは避けられない。(当然、純正の方ができがいいと思うが)
NAにこだわらないならば、同等のチューニング費用でS/Cを搭載する方が全域での出力向上には貢献する。 240馬力/350N.mほどまで伸びるので、買い換えるくらいならば、S/C化の方が面白いかもしれない。 しかし、高回転化による184馬力の出力にミッションが耐えられるのかすら疑問なので、過給器の搭載は、ドライブトレーンの故障を引き起こしやすい上に、ロードスターのバランスを崩してしまうリスクがあることは、意識しておきたい。
ブログ一覧 | クルマ
Posted at
2018/04/20 16:51:55