
いよいよ、NDロードスターのマイナーチェンジの内容が明らかになってきた。
幌車は、ピストンの変更、シリンダー内部抵抗の低減により、1馬力出力が増えて132馬力になる他、安全装備アドバンストSCBSが搭載されて、対車両:約4~80km/h走行時、対歩行者:約10~80km/h走行時)、ブレーキを自動制御して衝突回避をサポートする自動ブレーキの装備が大きな変更点になる。(AT誤発進抑制制御、スマート・シティ・ブレーキ・サポート[後退時]、AT誤発進抑制制御[後退時]も装備)
より大きな変更は、RFに対して行われる。
RS、VS、Sのグレード構成は変わらないものの、全車両共通で、以下の装備が追加されることになった。
1.幌車と同じ自動ブレーキ(非レーダー方式、カメラ式)
2.エンジンの大幅な改良
3.クルーズコントロールの追加(定速維持機能MRCCではない。)
4.VSの内装色が3色(ベージュ、黒、オーバーン)から選択可能
5.VSに、ブレンボブレーキ、BBSホイールがオプションで選択可能
6.RSのホイールの色が黒色に変更
が大きな変更点となる。
価格は、RSが49,800円の値上げ、VSが70,000円の値上げとなるが、内容に較べて極めて小さい値上げだと言えるだろう。
■自動ブレーキの搭載
アテンザなどで採用されている、レーダーによる衝突防止機構ではなく、デミオなどに搭載されている、アドバンストSCBSを中心にした自動ブレーキ制御が搭載される。これにより、対車両では、約4~80km/hで自動ブレーキが有効となり、対歩行者では約10~80km/h走行時で有効になる。アイサイトとは異なり、極低速では自動ブレーキは有効にならない。

SCBS動作図
■エンジンの大幅改良
今回のマイナーチェンジの肝になる改良である。 ピストンスカート短縮化・軽量化、ピストンリングの摩擦抵抗の低減、クランクシャフトのフルカウンター化、コンロッドの軽量化により、最高機関回転数が7500回転に向上する。 最高出力は184馬力(135KW)/7000回転、最大トルクは20.9Kgm(20.5Nm)/4000回転へと向上し、低回転から高回転まで持続的に高トルクを発生し、高回転まで伸びのある出力特性をもつことになる。 今回注目すべき点は、最大トルクの発生回転数が4600回転→4000回転へと低回転域に移動している点である。 高出力はハイリフトカムによって成し遂げられているが、ハイカム搭載による低回転域~中回転域のトルクの減少に対して、以下の対策をとっている。
・ハイリフトカムシャフトの搭載
・吸気ポートの流量23%向上
・排気ポートの流量30%向上
・エキゾーストマニホールドの短縮化
・エキゾーストマニホールド内部・接続部の平滑化
・吸気ボアの拡大と内面抵抗の低減
・フライホイールイナーシャ低減
・燃料ポンプの交換
・燃料噴射PORTの改良
・ECU変更
・排気管変更
・サイレンサー形状変更
・フライホイールのエンジン/ミッションン用に分けた二重マス化
上記の対策により、ハイカムで高回転域の出力を確保し、エキマニを短縮化して低回転域でのトルクの増大を対策し、ハイカム搭載によるトルクの落ち込みを、給排気の抵抗を低減することで排除している。 これにより、在来エンジンに対して、低回転~高回転においてトルク特性で劣らず、伸びやかでリニアな出力特性を実現している。
■クルーズコントロールの追加
RF全車種に固定速度型、クルーズコントロール機能が追加される。 MRCCと異なり、前車についていく機能はない。 北米仕様に在来から用意されていた、クルコンと同じ仕様である。 速度設定は180km/hまで。
■VSの内装色が3色から選択可能
RFで最も人気のあるVSに手をいれている。これまで、北米や欧州に提供していた、タン(ベージュ)内装、黒色内装を新たに選択可能とした。在来のオーバーン色も選択可能で、ラインナップされる外装色に変更がない代わりに、VSでは内装色、外装色を選択する楽しみが増えた。RSとSは在来通り黒色内装だけとなる。 RFはAT車の比率が高いが、悪名高いATのファイナルは、3%ほど低速化されて、3.454から3.583と変更されて、幌車とのギア比は縮まるが、依然として約15%もハイギアードのままのため、2.0の高回転トルクをもってしても、1.5よりも高回転の伸びが抑えられてしまいそうだ。 MT車は在来と同じ変速比、ファイナルなので、1.5と同様に高回転の伸びを楽しむことができる。

ベージュ内装
■VSに、ブレンボブレーキ、BBSホイールがオプションで選択可能
そのままだが、これまでRSにのみ用意されていた、ブレンボブレーキ+BBSホイールのオプションが選択可能になった。 BBSのホイールの色、デザイン、サイズに変更はない。BBSのホイールは在来どおり、RF全車種で選択可能である。

ブレンボブレーキ+BBSオプション
■RSのホイールの色が黒色に変更
S,VSの純正ホイールの色は、在来と同じガンメタだが、RSの純正ホイールのデザインはそのままに、ホイールの色が黒色に変更となる。
今回、技術的な肝は、エンジンの特性にある。高回転エンジンにするためにハイカムを使い、最高出力の発生回転数を7000回転にしたにもかかわらず、最大トルクの発生回転数が600回転下がって4000回転になっている。 このエンジンに一体どのような改良が行われたのか、以下に示す。
ハイカム+吸気抵抗の削減は定番の構成だが、エキマニを短縮して、低回転重視の掃気構成にすることは予想外であった。エキマニを低中速重視にしつつ、高回転でのバルブの開度を広げて高回転でも十分な空気の流入をはかり、最高出力を発生する7000回転までトルクの谷を作らず吹ける特性に仕上げられているというのが、マツダの販売店に対する説明である。 その他の対策はハイカム搭載車に対するセオリーで固められていると思うが、7月に実際に乗ってみることが楽しみになるエンジン特性である。
このように、RFはエンジンの強化を中心に、VSの内装バリエーションの強化により、より多くのユーザを増やそうとしている。 6月に発表となり、7月には試乗車が各ディーラーに配備される予定となっている。 今までRFの購入を迷っていた層について、自動ブレーキの装備、内装のバリエーション強化、エンジンの強化は、購入に向けて大きく背中を押してくれる存在になると思う。
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自動車技術 | クルマ
Posted at
2018/05/08 00:41:27