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2018年06月07日

ロードスターRF商品改良における、ATの問題の修正

ロードスターRF商品改良における、ATの問題の修正 NDロードスター、NDロードスターRFが揃って、2018年の商品改良を6月7日に発表した。発売は7月26日からとなる。既に事前予約が多数入っており、今注文しても納車は秋口になるそうだ。前回の商品改良の発表は2017年12月14日だから、約6か月弱での大規模商品改良となる。昨年の12月に間に合わなかった商品改良をこの時期に持ってきたと考えた方がいいだろう。前回の商品改良は、メディアもほとんど報道せず、ひっそりと行われたが、今回は各メディアに展開し、試乗会も実施するなど広報にもお金もかけており、6/7の発表日に、各メディアから多数の記事がでてきている。


ディーラーでは、既に4月の中旬から現行型の受注は停止され、改良後モデル(通称ND3)の受注が始まっている。 ロードスターに対して、積極的に近代化、最新化の技術を投入していくことは、ロードスターというブランドが結果的に価値のあるクルマで居続けるためにも重要であり、私は積極的にこうした改良(を支持している。 世界中のロードスターファンは、フェアレディZみたいに、何年も長期間放置されることを望んでるわけはない。衝突安全性に対する強化、内装の選択肢の増加、エンジンの強化など、新たなロードスターRFの仲間が増えるきっかけにもなるわけだ。 RFはデビュー当時に欲しいと思った人に購入された後は、ロードスター原理主義に反する構造で作られていることで、ファンから「RFをロードスターと呼んでいいのか」と抵抗を持たれたり、幌に比べて付加価値の割に値付けが高すぎると思われていて、直近の販売台数は世界的に伸び悩んでいたからだ。 各国の市場調査でも、「安全性」と「スポーツ性能」といった商品力が欠けてることは明らかで、一度はとりやめた2.0エンジンの改良も、当初の計画以上に強化されることになった。



 ロードスターRF(新タン色内装)

 
私のRFは、3月生産の数少ないソウルレッドクリスタルのND2のRFでもあり、ネットでは、しばしば、最も悲惨な購入者とも揶揄される対象者でもあるわけだが、既に自分なりにシャシー等に手を加えて楽しんでいるので、今回は買い換えについて検討することはしなかった。

それは、次のロードスターの改定計画が既に始まっているからでもある。 ND4と呼ぶのかどうかわからないが、現在取り組んでいるのは、乗り心地と操安性の大幅な改良である。これは、サブフレーム/フレームの接続構造の見直しから始まり、バネとタイヤを柔らかく使い、衝撃の伝達速度をチューニングすることで操安性を向上さっせる新しいSKYACTIVEの考え方とも共通するが、ボディをしっかり固めて、脚を適切に動かし、ダンパーで伸び縮を押さえていくのは主にF1などレーシングカーで行われてきた手法である。 アクティブサスのような飛び道具を使うことはなく、相変わらずプリミティブな方法で物理的な理想値を詰めていくのはマツダらしい取組だと言えるだろう。私は、ロードスターRFが最も改良に注視すべき箇所は、エンジンや内装の色だとは思っておらず、シャシー構造だと思っているからだ。(しかし、市場で望まれているのは、高回転型のハイパワーエンジンの方だから、それを優先することに反対しているわけではない)



 新タン色の内装(私はもっとアイボリに近い色の方が似合うと思う)


さて、既にロードスターRFの主な改良点については、ブログに書いてしまったし、各メディアの試乗記も、エンジンの説明が中心だろうからその点については改めて述べない。 しかし、今回の改良に伴って話しておかねばならない課題があることを思い出して、このブログを書いている。(シビックセダン編が長すぎて、読んでもらえなさそうだから・・ではない(笑))

それは、RFの鬼門ともいえるATの改定についてである。


■ロードスターRFのATの問題

マツダは、「2.0のATには大きな欠点がある」ことを、RFを2016年の末に発売する時に既に認識していた。

RF開発のための時間がないことはもうずっと前からわかっていたが、マーケッティング部門では、「今度のRFはATを中心にメディアにアピールする」とまで言っている。 2.0の幌のATモデルに問題があることは、北米や他の地域からの報告で明らかになっていたけれど、2016年の年内に発表するためには、主力のATの発売を先送りすることもできない。 RFのATのために適切なギア比を調査してテストを行う時間も、変速タイミングの設定を調整する時間も、生産工程を変更する時間もなかったから、RFの2.0のATは、幌の輸出モデルと同じ仕様で生産するしかなかったのだ。

「ロードスターRFは、ATが向いている」と多くのメディアで発表された。 6/7に発表された多くの報道を見ても、ほぼマツダから提供されたテキストを編集して発表しているだけのメディアがほとんどであり、言ってみれば、「広報の言うなり」なのである。 メーカーの広報資料の裏付けを取ったり、試乗で何かを発見しようと取材努力を続ける”ジャーナリスト”(評論家ではない)はごく少数しかないない。 ロードスターを買う人の中にも、家族のMTに対する運転能力や、「一緒に出掛ける人と二人で運転できること」を期待することから、MTを買いたくても買えないという人はかなりいる。やや値段の高いRFを売るには、少し年齢層の高い人に訴えなければならない。そんな人にとって、RFのATは、一つの選択肢であったから、幌に比べるとRFのATの比率は高くなった。



 NDロードスター AT操作部分

ところが、マツダはFR用のATを持っておらず、ロードスターのATには、SKYACTIVE-Driveが使えない。 よって、アイシンから変速機の供給をうけるわけだが、2.0エンジンとの組み合わせには大きな問題があった。同形式のATは、BRZ/86にも供給されていて、こちらでは変速時に同様の問題は起きてないから、ATを供給しているアイシンの問題ではないと考えられる。


発進、停止そのものは問題はないが、まず、シフトアップ、シフトダウンのタイミングが悪すぎる。SKYACIVE-Driveのように、賢い変速には及びもつかない、タクシーのごとくシフトアップしていく愚かな変速をするが、これはアイシンAWの変速機の規定的な設定である。 アイシンAWからマツダに供給されているモデルは、ATの変速タイミングを変更する設定機能があり、ノーマル/スポーツのように複数のモードを設定することもできる。 ロードスターのATにも「SPORT」スイッチが設けられている。 しかし、デミオなどに搭載されている、SPORTモード付きのSKYACTIVE-Driveの制御と比べるまでもなく、これを押すことでようやく高回転が使えるようになるだけで、シフトダウンも、坂道でのエンブレの制御もまるでトヨタの実用車と同じレベルになってしまうのは、設定を煮詰めず、アイシンの基本設定値に多くを依存しているからだ。 

アイシンAWは、適切なATの変速タイミングの解決方法として、多段化を推奨している。アイシンの最新の変速機は、8速と10速であり、状況に応じて細かく変速して、状況に応じてエンジンの有効な部分を使う方式に変えることを推奨している。 つまり、6速では設定をどんなに頑張っても、多段で設定を練ったクルマには勝てないという意味である。



 SPORT スイッチ(見かけは同じでも、動作はSKYACIVE-Driveとは大違い)

「設定」の問題は、単に時間がなくて先送りした問題だともいえるが、もっと深刻な問題は、シフトアップ/ダウンの際に、回転数が合わないことだ。電子制御をしているのだから、回転数を合わせて、すぱっ、すぱっと変速すればいいものを、シフトアップする瞬間、トラクションが抜けてトルクコンバータに接続すると回転数が上がり、回転差を持ったまま次のギアにつながるという現象が起きていた。変速機からの変速に必要なスロットル調整の信号に対して、パワートレイン側が対応できず、ぬるい変速しかできていないわけだ。

1.5のATではこの問題は起きない。問題がファイナルギア比にあることもわかっていた。1.5のATは、4.100という低いファイナルを採用しているが、2.0は主要マーケットである北米における燃費値を重要視せざるをえなくなったため、3.454という高いファイルを組み合わせることになったのだ。 誰もが、これは失敗作だとわかっていたが、当時のNDロードスターに対するマツダ社内の日米の温度差も、この失敗の修正の優先順位を下げてしまった。

日産の広報はその狡猾さでしばしば批判されるが、マツダの広報もまた、2.0ATについては、変速に欠点を抱えたままのATモデルを「お勧め」として記事を書くようにメディアに資料を配布したのだから、この罪は重い。 結局どの自動車雑誌も評論家も、AT変速の不完全さについて指摘することなく(むしろお勧めだと言って)、今日まで来ている。 どうやらマツダは、ATの多段化に積極的ではない。SKYACIVE-Driveも今のケースのまま7速に拡大できるのだが、それをやろうとする気配はない。 私は、ロードカーの多段化に賛成で、特にディーゼルにおいては、多段化は意味があると思うだが、マツダはそう考えていないようだ。 アイシンAWには、前述のとおり、もっと完成度の高いFR用の8速AT、10速ATもあるが、それを採用する気配もなく(サイズ的な制限事項の影響が大きいとはいえ)、「変速機は6速で十分」と考えている節がある。


 アイシンAWのAT(最新の10速AT レクサス車の一部に採用)


ATの多段化に興味がなさそうなことは別にして、今回、ようやくATの制御指示に対して、適切にパワートレインが反応するようにファイナルギアを置き換えることができた。今回の商品改良の説明の中でも、シフトアップする際に回転数だけが上がってしまう現象を抑制するため、ECUを改善し、エンジンとトルクコンバータの回転が同期しやすいように、ファイナルギアレシオを、在来型の3.454から3.583と、3.7%ほどローギアード化している。この「バグ修正」は、世界中の全てのNDロードスター2.0のエンジン変更に合わせて行われる。あまり大きな変化になっていないのは、新エンジンが、低中速を含めて一定した出力を発揮できるようになったことも大きい。 新エンジンとの組み合わせでも、やはりこの問題は解決せず、今回はちゃんとファイナルを修正してきた。


 ロードスターRF(新タン内装の運転席)


また、「適当すぎる」と言われていた、「SPORT」モードと、ノーマルモードの変速パターンの制御にも、今回改定が行われた。 コーナリング時や坂道での変速タイミングや、トルクコンバータの制御による駆動力の伝達制御によって、変速タイミングが少し改善された。(もうこのAT自体が古いわけで、アイシンAWの別の製品を選ぶべきだと思う)この「バグ」以外に、6速ATだと、エンジンの良さをが楽しみづらいほど、ハイギアードという問題はまだ残ると考えている。MTの場合、1.5と2.0にギア比の差はないのに、ATは北米の燃費基準のせいで、最適なギア比が与えられていないままなのだ。1.5と2.0を6速のギア比で比較してみる。(RFの2.0も輸出用の幌2.0もギア比、ファイナル共に同じ)

◆1.5の場合
MT:1.000×2.866=2.866

AT:0.582×4.100≒2.386
の違いがあるので、MTとATと比べると20%ほどATがハイギアード


◆2.0の場合
MT:1.000×2.866=2.866

AT:0.582×3.583≒2.085
の違いがあるので、MTとATと比べると37%ほどATがハイギアード

よって、2.0のATはまだハイギアードすぎるというのが私の認識だ。
(マツダは、エンジンの発生トルクの差異が1.5と2.0の間で33%~35%あるので適切なギア比だと言っているが、それはつまり、2.0の高トルクを楽しめないという意味でもある)


この改良をもって、RFはATをお勧めするなどとは言わない。 しかし、商品改良前のATモデルとくらべて、新モデルの変速が、すぱっと回転を合わせて変速できるようになったことは大きなメリットだ。特にパドルシフトを使って、手動で変速した時にその違いをよく感じるだろう。 今回の改良では、エンジンの大幅な改良と、安全装備の充実、内装の選択肢の増加に目を奪われがちだが、こうした「バグ修正」も数多く行われている。



 ロードスターRF(外観とシャシーには変更なし)


■商品改良によるユーザーの価値

「そんなに、頻繁にモデルチェンジされたら、いつ買っていいかわからない」という意見もあろう。しかし、自動車という工業製品はそう簡単に完全に設計生産できないのは、世界中の独立した自動車メーカーの数を考えれば、簡単に理解できる。世界中どの自動車メーカーでも、3万点以上の部品で構成されるクルマを、完璧に生産できているなどというメーカーはない。発売前に発見された課題に対しても、妥協や、先送りや、暫定対処がたくさんある。 しかし、多くのメーカーは、主力車種でないと、そうした課題リストにリコールレベルの物がないとわかると、それを丸めてゴミ箱に捨ててしまい無視してしまうのだ。 マツダは、細かく商品改良を繰り返す。それは、「前のモデルにこんな問題があったのに直してなかった!」と否定的な捉え方をされることをわかったうえで、よりよくしていこうとしている。 それは、ユーザのためでもあるが、マツダで働く人々の心の負担を軽くすることでもある。



 ロードスターRF 商品改良モデル


だから、商品改良をやってくれるメーカーを応援することは、そのクルマを育てて行く上で大事なことだ。マツダのような160万台規模の会社が、大して売れもしないロードスターを30年も途切れることなく作り続けていられるのは、こうした改良がユーザーに受け入れられるからと信じているからである。 NAがデビューした後、雨後の筍のように発生したロードスターのフォロワー達のうち、30年後の今、一体どのくらいのモデルが今も継続できているのか。 その事実が全てを物語っている。

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Posted at 2018/06/07 18:50:10

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