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2018年07月28日

NDロードスターにとって「人馬一体」とは何か

NDロードスターにとって「人馬一体」とは何か 「人馬一体」

私はNAの時代からずっと、マツダがクルマとの一体感を示す際にこの言葉を使うことに違和感を覚えてきた。今や海外のメディアにも、「Jinba Ittaii」と言われるように、マツダの手を離れ、言葉が歩き始めてしまったために、人によって意味の捉え方が異なって「人馬一体」の意味を誤解させている。


もともと、「人馬一体」とは、平安時代の日本の儀式である流鏑馬(やぶさめ)を由来としたものである。 流鏑馬は、行進間射撃を行うため、乗り手が馬の上下振動を足で吸収し、上半身を安定させなければ、正確に的を射ることはできない。 人と馬が一体となって進行できなければ、矢を射る見越し角度を決めることすらできない。人馬一体とは、戦闘技術であるわけだ。



 流鏑馬(やぶさめ)。
陸上自衛隊の10式戦車のような射撃演算装置もないのに、行進間射撃を行う。
総括的には騎射と呼び、騎射を100騎以上集中運用する事で元寇での
蒙古軍を撤退させた竹崎らの活躍が有名である。
合戦中は、行進している騎馬同士での行進間射撃も行われた。


つまり、「人馬一体」とは、もともと別の意思で行動している二つの生物が、相互コミュニケーションを通して、操縦意思を持つ方に適切に従って動くことを目指した言葉である。 馬から信頼されない限り、戦場における意思や戦い方を共有し、適切な行動をとることはできない。 この相互コミュニケーションは、誰でも、どんな馬でもできるわけではなく、知識とスキルと訓練の結果でようやくできるようになるのだ。 だとすれば、無機物であるクルマと有機物であるドライバーの間に、「人馬一体」が生まれるのだろうか。


NAの時代の「人馬一体」は今よりずっと軽く考えていたと思われる。現代の先進国における乗馬は、ほぼ乗ることを楽しむ目的で行われることがほとんどであるので、オープンスポーツの例えとして丁度よかったのだと思われる。ロンドンでも、ちゃんと練習をしてライセンスを取れば、街中を馬で走ることができる。都市部を馬で走るのことは、なかなかに楽しい。 都市交通を理解している馬は、信号も自律的に守る。


 ロンドンのHydeParkで乗馬を楽しむ
  (市内中心部にあるHyde parkでも乗馬ができる)


現在のマツダが提唱する「人馬一体」は、クルマの利用目的である、「安全に」「正確に」「効率的に」目的地に着くことだと言っている。 この3つを成し遂げること(つまり、安心・安全)が、「クルマに乗る楽しみ」を生み出している要素だというわけだ。 楽しいと嬉しいには実は差があって、「嬉しい」といのは、自分に対する直接的なアクションに対して感じる感情であり、「楽しい」というのは、与えられた状況の結果に対して感じる感情だ。 マツダは、「楽しいと感じる環境」を与えるクルマを作ろうとしていて、その環境を作ることを人馬一体と呼び始めたようだ。 ふーむ。どうやら、この「楽しい」という表現が人馬一体に対する違和感なのかもしれない。はっきり言えば、「本当は違うことが言いたいのでしょ?」ということだ


こうして、要素を分解していくと、マツダは今、「無機物の馬との人馬一体」の肝は、人間にあると考え、人間の動作を研究している。人間は、他の脊椎動物の原則を外れた特別な動き方をしている。その分、脆くて不安定ではあるけれど、それを補うために必要なものを作り足す能力のために犠牲になっている。脊椎動物の基本形態は4本足であり、腰で上半身を支えるようには、元々はできていない。 クルマは動物ベースの馬車を基本に作られたから4輪であり、人間の形状とは異なる。


 4輪馬車
(左側通行では、御者は右に座る)


じゃあ、人間の形状にしたら、よりシンクロ率があがって、快適なものになるか、というとそれも違う。モビリティとして、人型の物体は適切な形状ではない。 モビルスーツでも、ゾイドとガンダムのどちらが適しているか、と言えば論ずるまでもなく、2足で歩行するガンダム型より、4本足で移動するゾイド型の4本足モビルスーツの方がアンジュレーションにも強く、動力の伝達能力も上だ。 人間が4本足の動物より速く走れないのは当然で、人型は、細長いパーツが胴体から5方向に延びて脆い上に、トップヘビーな頭が一番上にある。 それ故に慣性モーメントが中央に集中するどころか、端に寄っており、移動体として不適切な形状だから、人間はより適切な形状の乗り物に乗って移動しているのだ。


 ゾイド型
 アンジュレーションのある路面では、戦闘能力はこっちの方が高い
 原作を見たことがないから、ストーリはー知らない。


 ガンダム型
 人型でないと、おもちゃが売れないから仕方ない。
 「戦場の絆」では、ジオン公国側だったので、
 連邦の白い奴がチートレベルに強かったことは知ってる。


陸上の移動において、多くの人間は、ヒトの構造とは異なるクルマに乗って移動している。構造をシンクロさせることが、「安全に、正確に、効率的に目的地に着く」ことに繋がらないならば、何をどうすれば良いのだろうか。 自分自身で歩行することに比べて、クルマを運転することには、不安が伴う。重量も速度も生身の体から発揮するものよりも大きく、操作系も自分の体を動かすこととは異なる。さらに、自分以外の不特定多数の要素が絡み、自分自身がクルマを正確に操作しているかどうかも不安だ。 だから、一番簡単な解決方法は、「運転手つきのクルマ」に乗ることになる。 毎日、運転手つきのクルマに乗っていると、多くの人はだんだんクルマを運転したくなくなる。 なんだか本末転倒のようだが、実はここに大きな分岐点がある。マツダの言う通り、「安全に、正確に、効率的に目的地に着く」ことが、「人馬一体」だと言うならば、その究極は完全自動運転ではないのか。


マツダは社会的に口にできないから、公には言わないけれど、彼らは、自動運転と人馬一体は違うと思ってる。 さらに、「自動運転」の時代が本格的に来る前に、やりたいと思っていたことをやろうと思ってる節がある。 内燃機関については、堂々と反論を述べているけれど、「人馬一体」も、その裏側には、「自動運転では得られないモビリティ」を実現したいという意図がある。

 人間がマニュアルでクルマを直接制御するとう前提で、わざとやらないこともある。 いい例が、「タイムラグなく操作に対してクルマが動くこと」である。「意のままに動く」という言葉で覆い隠しているけれど、クルマはタイムラグなしでは動かない。むしろ、何をやってもタイムラグが起きる。 過去には、本当に「早く反応させること」に注力したこともあって、散々な失敗をしていたが、人間は、「即時に反応するもの」より、「想定通りに反応するもの」の方が操作しやすい。 さらに面倒なことに、「想定通り反応すると」気持ちよく感じる。 だから、マツダは、「感覚的に認識している速度でムラなく動くこと」を求めればいいと考えた。 マツダは、これを「躍度」と呼び、加速度の上昇・降下率を一定にすることだとしている。 もう一度言うが、加速度を一定にするのではなく、加速の度合いを一定に操作できることである。(つまり、ドライバーのスキルに完全に依存すると言っている。躍度をうまく使えるドライバーの操作に応えるようにしたと言っているのだから。)



  躍度とは
  数学的に言えば、躍度を時間で積分すれば、加速度になるということ。


躍度をどう説明すればわかりやすいだろうか。 例をあげて言えば、ちょっと踏むとガバっとスロットルが開くクルマ(躍度急上昇)や、車重が100tくらいあるのか、スロットルをいくら踏んでも全く加速しないクルマ(躍度上がらず)は躍度が一定ではないクルマである。どうみても、どっちも「人馬一体」感の逆方向を向いていることはわかるだろう。 もう一つ例えると、ずっと同じ加速度が続くのではなく、徐々に背中を押される強さが上がっていく加速の方が気持ちいいでしょう? ということで、要するに、「すぐ反応すればいい」ってものでもなく、「反応が何もない」のもまた躍度が一定ではないわけだ。


もう一つマツダが大事なことをあえて言ってないことがある。「コミュニケーションがより密接になると人間の無意識と向き合うようになります。意識せずに、タイヤが自分の体の一部のように思い通りに動いている。」と、まるでマツダのクルマを買いさえすれば、こう感じられるような書き方をしている。 しかし、この感覚を感じるには、ドライバーに適切なスキルがなければならない。スキルを身に着けて、訓練を繰り返していくと、ある日、クルマと繋がった気がして、数秒先の未来がわかるようになる。 でも、それは誰もがクルマから感じられるものではない。 非常に例えが難しいが、テレビゲームやスポーツをやりこんだことがある人なら似たような感覚は理解できるだろう。 頭で思うだけで、勝手に手足が動くというあれだ。 古い話でよければ、バーチャファイターで技を出す時に、レバーをどう動かすかなんて考えることもなく、思った時に思った技を出し、防御をしようと思えば防御をしているような感覚みたいなものだ。

  
 バーチャファイター
 コマンドを意識してレバーを動かしてるうちは、勝てない
 

クルマも同じで、コーナーが近付いて、ずばっとステアリングを切りこむことはしない。ステアリングを回す速度が、一定の加速度で増えていくように、切り込むだけで、ロードスターはもっと簡単に速く曲がる。躍度を意識したドライバーの操作に対して、正しく応えることが、人馬一体の第一ポイントである。 だから、大柄なCX-8も、ステアリングを適切な躍度で操作すると、想像した通りのゆっくりしたムラのない速度で旋回するから、「あ、やっぱりマツダのクルマだ」と理解するわけだ。 仮にCX-8がロードスターと同じ時間でレーンチェンジができたら、様々な部分で気持ち悪く感じてしまうだろう。 第二のポイントがインターフェイスだ。ステアリング、ギア、ペダルの位置と操作感覚がドライバーの躍度の操作に忠実に応えることにある。ロードスターとCX-8の操作感は同じである必要はない。しかし、CX-8の運転においても躍度に応じた操作にはきちんとクルマが応えてくれる。第三のポイントはシートだが、まだ改良されたアテンザにしか搭載されていないので、シートのことはアテンザの時に話そう。


 
 マツダCX-8 大柄なボディに見合った動きをするので違和感がない


マツダらしいのは、しばしば「人間中心」と言って人馬一体を説明するのだが、「ユニバーサルだ」とは言わないことである。「2%の人に理解してもらえればいい」」と言ってることの裏には、何らかの割り切りがあるのだろう。マツダが考えている人馬一体は、人間中心ではあるけれど、ユニバーサルとは違う。 トヨタは、「物理特性を磨き、電子化を進めて誰が操作しても良い感じ」に仕上げようと考えている。それは壮大で立派なことで、社会的にも大事なことだから、もしかしたらトヨタならできるかもしれない。だんだん自分が、まるで老害のように、新技術を否定する日が来そうな気がするのが怖いけれど、ドライバーのスキルに依存せず、誰が乗っても同じ結果がでるクルマは、私が知ってるクルマとは別の移動体だ。


こう書いていて愕然とした。私はずっと、老人が新しい物についていけなくなる理由がわからなかった。別段難しいことなんて何もないのに。私は、新しいCanCanのモデルで登場した時の中条ポーリン(あやみチャンの本名)だって、キズナアイだって、受け入れられるのに、何がきっかけでそんなことが起きえるのだろうか・・・と思っていたのだが、どうやらスキル的についていけないのではなく、精神的に「認められない」時に、人は技術に”ついていかなく”なり、そしてそうなったことを後悔しない。



 キズナアイ(自称スーパーAI。 実態は、ポンコツ)
 さっきから、ゲームやらアニメやら、自称AIやら、新人女優やら
 例えるものがずっとやばいっぽいのばかりなのは気のせいだ。



 中条ポーリンあやみ(CanCan時代)
 こんなに売れっ子女優になるとは思ってなかった。
 ポカリの新人女優CMはすごい。


今のロードスターは、ドライバーにそれを引き出すドライビングスキルがなければ、マツダの設定した「人馬一体」を体感できない。 NDロードスターとアルファードを乗り比べても大した違いが分からない人は、別に残念だとは思わってないだろうけれど、そういう人はマツダのクルマを買おうとは思わない。 多分、ポルシェも欲しいと思わないだろう。



 NDロードスター
 ドライビングスキルにきっちり応える



 ポルシェ911
 いろんな意味で人馬一体なラグジュアリーカー
 このクルマも価格なりの価値がある



今のマツダは、私達と同じ「旧世代」の人が最後にやりたいことをやっているのだと思う。「マツダの人馬一体は、クルマに乗るすべての人に安全・安心をもたらすことを目指しています。」と言う言葉は嘘だとは言わないけど、それを全て引き出すには、ドライバーにも一定の努力が必要だ。 彼らは、理想を追求したら(努力する)人間にたどり着いたという。 マツダは口にしないけれど、人間は一意ではない。努力したくない人や、モビリティに興味がない人だっているわけだ。そういう人を切り捨ててないけど、多分、そういう人に支持されなくても仕方ないと思ってるように見える。


人間は、鍛えるとコンピュータや各種センサーより優秀な反応速度を得る。それが人間の達成感につながる。最初はうまくいかなかったショットが、自分なりにコツを掴んで、思う通り飛ばせるようになると、ゴルフが楽しくなるわけで、ドライビングも最初は思う通りにいかない。 それを、学び、試して、自分で身に着けると、もっと思った通りに動かせるようになる。


「常に適切な運転ができるクルマ」が「誰にでも」利用できることはまさに理想だ。そこに否定はない。トヨタならば、訓練せずとも、誰でもうまく走れるクルマを近いうちに作るだろう。どんなコーナーだってスーパーAIの力で最高の速度で最高に安全に走れるのだ。ドライバーは座って方向を示してアクセルを踏むだけでいい。 それは、ドラクエをLV99で始めるようなものだ。誰でもAボタンさえ押しておけば、どんなモンスターにも勝つことができて、レベルアップの面倒さもない、だからドラクエのストーリを心から楽しめる。 でも、そんなのはドラクエじゃないと違和感を覚える人は、その存在の必要性を認めても、自らにそれを強要されることは望むまい。どのくらいの人が受け入れないのかはわからないが、それらは旧世代の人であるのと同時に、旧世代で結構だとも思っている。



 トヨタの未来のモビリティ


NDロードスターで、人馬一体を感じられるように走らせたいなら、ドライビングの知識と技術と練習が必要だ。レベルは全然違うけど、流鏑馬と同じだ。 ロードスターには、「Aボタン」もないし、「AI」も付いていない。ドライビングを積み重ねていく過程で、自分にあわせて道具を調整することだってできる。NDロードスターは、それに応えるように、アライメントの調整の幅を他のクルマよりうんと広く持たせている。だから、私達は毎回のドライブで走ることそのものに目的がある。 目的地に到着することが終局的な目的じゃない時ばかりだ。 だから私達は、マツダがメディアに書いているような、「安全で、正確に、効率的に」目的地に到着することを、人馬一体だなんてこれぽっちも思っていないのだ。


もう一度、最初に書いたことを思い出してほしい。 私たちはNDロードスターに乗ると、「嬉しい」と感じているのではないだろうか。コーナーの一つ、一つに自分のスキルを反映させ、それに応えたロードスターが自らの想定通りの動きで走りで抜けられた時、「嬉しい」と感じてないだろうか。無機物であるはずのクルマから、何かを与えられているように感じ、その経験の集合体を「楽しい」と感じているのだと思っている。 私もモビリティのユニバーサル化は必要だと思う。でも、「人馬一体」を謳うクルマが、ユニバーサルである必要はない。そんなクルマを作ってくれるメーカーが、もうしばらくの間、一つや二つ残っていてもいいと思う。だって、22世紀のマツダには、もうNDロードスターのようなクルマは作れないかもしれないのだ。



 NDロードスターRF



 人馬一体スローガン

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Posted at 2018/07/28 18:12:47

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