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2018年09月30日

誰がために鐘は鳴る  抜き取り検査不正問題

誰がために鐘は鳴る  抜き取り検査不正問題
抜き取り検査問題は、そう簡単に解決はしないだろう。

それは、日本の自動車メーカーが愚かだからではなく、利用者たる私達が、問題の本質と改善すべき場所を正しく理解できないようにしている、報道問題が大きい。 マツダも、スバルも、よりよい方向へ進むために、社内組織を改定していく必要性はあるし、彼らはそれに取り組んでいくと思っている。 すぐに結果は出ないかもしれないが、長い間「それで済んできたこと」について、改善をしていく、という文化に切り替わっていくことは会社組織が腐らないためにも必要だと思っている。


 スバル生産ライン


 マツダ生産ライン


今日、書いておきたいことの中心は、自動車メーカー自身の改革のことよりも、その周りの捉え方や、社会に対するアクションの仕方が、問題解決に全く向かっておらず、単に他人を批判するだけで終わっていること自体が問題だということだ。


 メーカーが謝罪する姿を報道して終わり
 他人事で済ませて終わりではないのだ


スバルが抜き取り検査問題について、対象の台数及び問題の内容についての報告を国土交通省に対して行ったが、この問題について、正しく考えて報道していると感じたメディアが非常に少ないことが、まず残念だと思っている。スバルの国土交通省への報告から、多くのメディアが、「製造業の品質の危うさ」について報道を始めている。もともと、報道という行為に品質基準を持たないメディアは、これ以上品質が劣化しようもないから、不勉強でも、不正確でも構わず、読者が興味を持ちそうな内容で報道するだけで、本質的な問題がどこにあり、どうするべきなのかを知らせようともしない。
「不正」、「改ざん」、が意味する本当の意味と、センセーショナルに人々に与える印象の差にギャップがあることを知った上でやってるので、より悪質に文章を使っている印象が拭えない。


 スバル生産ライン

まず、「品質劣化の始まり」と抜き取り検査の問題の間には、相関関係がない。つい最近こういう問題が始まったわけではなく、ずっとこうだったからだ。 本件はクルマの品質が劣化したことが問題なのではなく、「監督官庁である、国交省様の求める要求通りに実施できてない」という点が問題なわけで、スバルやマツダの生産するクルマの品質が、昨今、急激に劣化している、という帰結にはならない。


次に、「信用」の問題である。本件は、自動車製造会社の社会的信用を失わせることを目的に報道されていると思うが、そもそも、「不正」という言葉の範囲が、ドイツ・フォルクスワーゲン社による「ディーゼル不正」と「抜き取り検査における、検査方式からの逸脱への対処方法の誤り」を同一のレベルに捉えさせるような比較の仕方も問題であろう。

フォルクスワーゲン社による「ディーゼル不正」は、自社の利益のために、他社が不可能なことを「可能だと」するために作り出した、「ズルをするための装置」をつけた、という事件だ。 結果として、自動車業界におけるディーゼル機関の未来に大きな停滞を作ってしまったという点で非常に罪深い。

一方で、今回の「抜き取り検査の方式違反」に関する不正は、監督官庁の意向に沿わない方法で検査を終わらせたケースがスバルでは1869件に膨らんだということだ。1か0かで言えば、「自社利益のためにやったのではない」とは言えない。(抜き取り検査で検査数値内に入らなかった、その単体は、新車として販売できないため。) ところが、自社の利益のために、「ズルをした」意図の大小にはものすごく大きな差があるし、その行為自体が、「ズルをするため」にやったかどうかにも、大きな差があるため、同一レベルで比較するような話ではない。


 スバル本社工場

ところが、これを同一のイメージで、「メーカーの不実な行為」と悪印象を与えることだけを目的にしたとしか思えない報道内容で終わるため、決して問題の本丸に近づけないのである。 今回の問題の根本には、JC08という排気ガスを検査する方式がある。 この試験には、室内温度、速度の上昇下降、一定速の走行など細かな厳しい定義がある。今回問題になった、室内温度の規定超過など、試験項目を満たさない試験は、無効であり、その試験に用いたクルマは、もう新車として販売できなくなる。これを自動化するには、相当なコストがかかり、各クルマごとに、モデルごとに、その数値を満たすための操作方法も操作量も異なる。 これを自動化することが、どれほどのハイテクノロジーなのか、全く理解されないまま、「検査不正」、「検査結果改ざん」だけを声高に叫ぶのでは、何の解決にもならないのだ。

JC08方式は、クルマごと、モデルごとに、実施方法が異なり、深い知識と多数の経験を持つ人でないと正確に検査できない、そもそもが、正確に行うことが非常に難しい試験なのである。 それ故に、かなりの部分を、試験員の判断に依存することになる。例えば、速度制限(速度差2km/h以内で走行)などの条件にごくわずか、外れた場合でも、総合計で2秒までなら超過を認めるという規則があるのだが、試験員がその合計2.01秒を1.99秒と誤認すれば、これは、「不正な試験行為を、改ざんした」とみなされるのだ。本人に、それが2.01秒だという意識がなくても、「改ざん」となる。 こんなやり方を放置していることに、何の問題もないのだろうか。 



 JC08の速度調整の指示グラフ
 基本的に、このモードからずれたら、不正検査である。
 ごくわずかのブレは、合計2秒間まで許容されるが、
 2.01秒ならば不正検査となる。


それを簡単な例に例えるならば、「最高速度を、100km/h、最低速度を98km/hとする。 最低速度を下回っても、最高速度を超えても違法、雨でも夜でも、上りでも下りでも、わずかでも超えたら、速度違反の不正行為である。」と定めた高速道路を20分間運転するようなものだ。(実際は、もっと難しいことを要求しているのは、上のグラフを見ればわかると思う) 警察官に、「ほら、上りになって97km/hにおちましたね。速度違反なので罰します」と言われたら、あなたは、その違法行為に深く反省するだろうか。


「どんな、悪法でも法は法であるから、破るほうが悪い。」

そう言うのは簡単だし、法治国家においてそれは間違いではない。 法の遵守は基本であり、それを否定するつもりはない。 しかし、よりよいクルマ、より良い社会を作る上では、問題を解決するためには、根本原因が何であるか明確にして、その対策を考えない限り、問題は決して解決しない。

だから、マツダ、スバル、日産、ヤマハで発覚した抜き取り検査に関する問題は、トヨタやホンダなど他の会社では起きえないのか・・について、誰も「起きえない」と言い切れない。それは、本来監督官庁が実施すべき検査があまりに実現困難な内容故に、監督官庁自らが行うことができず、製造会社自身に依頼するしかないからである。


 国土交通省

つまり、検査基準、検査方法、検査の検証も全て製造会社まかせなのに、「失敗したら何もかも全部、製造会社のせいであり、国土交通省に謝罪し、世間にも謝罪せよ。」というのが、監督官庁の意向である。


■問題を解決するために

問題を解決するために、本来進むべき議論の方向は、こうした「メーカーへの無理難題」が、問題を引き起こす根本原因であり、国土交通省と各製造会社で、「第三者機関」を作り、そこで一括して、抜き取り検査を実施するべきなのである。 幸い、最も重要な、衝突安全試験は、「国土交通省、自動車事故対策機構(NASVA)、(通称JNCAP)」で試験され、公表されるから、利用者はこの情報を見て、公平に各社の製品の安全性を確認することができる。



 国土交通省 JNCAPで評価

 排ガス規制や、燃費の測定、エンジンやブレーキの性能測定も、同様に自動車の重要な要素であり、監督官庁へ届け出と生産に関しての一定の報告義務がある。ならば、同様に国土交通省が中心になって、JNCAPと同じように第三者機関を用いて評価すべきものなのである。

 自社の定める製品品質に対して、各社が製品検査を行うのはごく当たり前のことであるが、「国土交通省が実施する」と定義している試験を、監督官庁自身ができるだけの技術がないので、各社で実施して、報告だけを提出する、という方式を放置しているそのことに根本的な問題がある。 私達ユーザーは、自動車メーカー各社がどのように改革していくのかを、直接見つづけることは困難であるし、もし仮に、自動車メーカー自体が「報告を自粛」するようなことがあれば、もはやそれを捉えることすらできないのである。 だから、国土交通省を中心にして、自動車の品質評価を行う第三者機関を設立することが必須だと思うのだ。

 自動車は、現在でもまだ日本の基幹産業の一つであり、その基幹産業をどんどん疲弊させることが、国家や国民の願うところではない。 これまで日本車は、その品質の高さで世界中のユーザに評価され、ブランドを築いて来た。 だから、より高い品質を目指し、それを評価することは、日本全体の利益を考えたときに大いに意味があることだ。 品質がゼロの報道機関であっても、多少は、国民のために役立つ方向について考えて報道をやってもらいたいと思う。

そして、自動車が自分たちの生活に必要だとしている我々こそが、自動車製造業界を正しい方向に進ませるために、自動車メーカーが向き合っている問題を正しく理解して、その進むべき方向に声をあげて行くことが、最も重要だと考えている。


 ラインオフ中のロードスターRF
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Posted at 2018/09/30 17:15:49

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