
「デミオと差別できていないのに100万円高くするのはおかしい」と言われていたCX-3だが、マツダの元々の企画は、「小さなデザインコンシャスなSUVを造ろう」ということだった。ヴェゼルが、FITと同じグローバルスモールプラットフォームを使っているのに、60万円も高い値段で売られているのを見て、ふらふらっとCX-3にあの値段をつけたことで、国内販売では、月販平均で1250台程度と目標の4割も売れない悲惨な結果を生んだ。ライバルはハイブリッドでも250万円以下に価格を抑えているホンダヴェゼルと、市場をしっかり分析して、プリウスと同じハイブリッドを積んだ燃費も実用性も(デザイン・・も多分。私にはスターウオーズの帝国軍のヘルメットに見えるけど)、TNGAをしっかりチューニングして走りも磨いたC-HRが同等価格帯にあるわけで、この状態になったのは全く不思議ではない。 マツダの販売店からの評判も決してよくはなかったから、積極的に売っていくこともなかったのだろう。。

ホンダヴェゼル

トヨタC-HR
それでも、マツダがCX-3を更新しようと思ったのは、欧州・北米・アジア市場では一定の支持を得ていて、欧州市場で累計で5万7000台も売れているからだ。マーケット分析をするまでもなく、「デミオの車高アップ版」から離脱せねば、CX-3に未来はない。幸い、全長4.3m程度のSUVにマーケットがあることは、C-HRやQ2などのライバル車が証明している。ディーゼルとガソリンを併売している欧州では、ディーゼルエンジン自体は一般的であるにも関わらず、CX-3の販売量の60%がガソリンになったのは、高速性能の不足からだ。わずか105馬力の1.5Lディーゼルターボでは、欧州の高速道路ではコンパクトカーと差別化ができなかったからだ。 しかし、ようやく自らのマーケッティングの誤りを認め、2017年からデミオとの差別化に踏み切り始めた。 だからと言ってCX-3の差別化がすぐにできるわけはなく、2017年のマイナーチェンジで2.0を投入してから1年もたたず、4度目の大幅改良を行ったわけだ。

CX-3
質感を向上させ、CX-5に近づけるのが、現在のCX-3が目指す位置だ。だから、マツダは理詰めでネガを潰していった。シートの材質、布や革の張り方、縫製の細やかさなど、部品メーカーの努力の結果が大きいけれど、こうした一つ一つの積み立てが、他車との差別化を生んでいく。アテンザのように商品改良レベルでダッシュボードを全面的に作り変える方が普通ではないわけで、基本的な造形は変えられないものの、センターコンソールは、EPB(電動パーキングブレーキ)を装備したことで、コンソールボックス周辺全面的に作り変え、その後ろにはアームレストも備えたことで、CX-5のレベルに近い所に持ってきた。EPBは、走りの高級車化に効果的で、MRCCの全車速対応と合わせて、乗ってみて、使ってみてわかりやすい差別化ができたと言えるだろう。 高品質な内装の車内に座り、ドアを閉めてエンジンをかけても今までよりずっと静かで、滑らかに加速し、減速する。 乗り心地は柔らかくはないが、固いわけでもなく、多くの場合でいやな振動も突き上げもない。 室内は外から見るより広く使いやすく、4人でも、2人でも快適に走ることができる。 少なくとも、試乗した人を楽しませることはあっても、がっかりさせる要素はもうない。エンジニアリングをしっかりやったことは、CX-3に乗ってみればよくわかる。それは決して悪い印象を人に与えることはない。

EPB(電動パーキングブレーキ)
CX-3は、全長4.3mくらいのコンパクトなオシャレなクルマで、SUVながらも、女性に好まれるデザインである。デミオとは大いに差別化ができた。 今度はディーラーで比較されても、見栄えにも、乗り心地にも明確な差があり、価格の差に納得できるところは大きいだろう。 CX-5と試乗して比較しても、がっかり感が小さくなって購入後の満足感が高くなった。 乗ってみれば、思ったよりも室内も広く、それなりの荷物も積めるから街中でのお買い物などに、ちょっと小さくていいクルマに乗りたい人に、ガソリンモデルはぴったり合っている。 2名で長距離にも出かけれるけれど、CX-5ほどの積載性は不要だという人には、1.8ディーゼルが向いている。 コンパクトだけどいいクルマが欲しいという需要はずっとある。最近の軽自動車が装備を充実させて乗り出し価格が200万円を超えるケースがよくあるのも、その表れの一つだ。
コンパクトカーと差別化するために、まず「内外装のデザイン」が重要であることは十分にわかっている。 しかし、恰好だけで中身がコンパクトカーのままだと、市場でどういう扱いを受けるのかは、これまでのCX-3が証明してしまった。 ネガを潰す作業を地道に続けたCX-3の販売台数は、世界的にこれまでよりは好転するだろう。しかし、本当にCX-3が評価されるのは次のモデルだ。今回のCX-3へのアプローチのように、ちゃんと目標に向けて詰めていくエンジニアリングを続けられれば、外装、内装、走りの上質さをマツダらしくまとめたクルマができるだろうと期待している。

CX-3
Posted at 2018/09/14 21:33:51 | |
試乗記 | クルマレビュー