
「A Sports Car Like No Other」
RX-8のキャッチコピーは、伝わるべき人には伝わった。「他にはない4人乗りのスポーツカー」というのが、RX-8の素晴らしいところだった。
CX-8は、ミニバンを必要とする家族構成の人が、ミニバン以外の選択肢を取ることを許すための大事なクルマになった。CX-5を見慣れた目には、大きく見えはするのだが、いざ運転席に座ると、ちょっと背が高いなと思うだけで、マツダの他のクルマのインターフェイスと同形であり、動かすことに何のためらいもない。それは、簡単なようで簡単なことではなく、大型の車両を動かすことに抵抗がある人はたくさんいるし、スポーツカーから大型SUVに乗り換えても運転感覚の方向が揃っているというのは、よくできていると言うしかない。

現行版CX-8(年次改良前)
CX-8は、ボルボのX90、プジョー5007といた輸入車だけでなく、オデッセイクラスのミニバンともしばしば比較されるのである。 内装色もブラウン、アイボリーとオシャレな色使いで、内装パーツも十分に価格に見合うパーツが使われているし、革シートの材質も柔らかくて、良い手触りであるから、クルマに乗せた人は、いいクルマだなと感じられる。輸入車のライバルも似たような課題をもつが、2列目のキャプテンシートの作りや乗員を酔わせるようなサスペンション設定は、早急に改善が必要だと思う。
CX-8とミニバンの運転感覚の違いはどこからくるのか。
ミニバンの欠点は、居住性・利便性にステータスを全振りした結果、クルマの剛性は、法的に定めた衝突安全性を維持するところまでが限界で、サスペンションを含めたボディ全体のジオメトリが動的に刻々と変化することまでは防げない。だから、絶えずステアリングの微小な操作を必要としてしまう。ミニバンでいつも感じていた、「クルマが大きいなあ」という感覚は、本当に大きいから感じるのではなくて、進路やクルマ全体の動きが不規則に可変して、動きが予想できず、常にフィードバック制御をドライバーがかけ続けないといけないことから来ている。 高級ミニバンならば、レーンキープアシストやレーダクルーズを使うことで、この運転時の疲労を軽減できるが、それは本質的な解決方法ではあるまい。
CX-8が運転しやすいのは、ちゃんと理由があるのだ。だから、CX-8の試乗の時に、ミニバンとジオメトリの変化量の比較を体験できれば、私が言っていることがストンと腹に落ちるだろうけれど、試乗してみて、「運転が楽で楽しい」というのは、決してプラシーボ効果ではない。
私達が望んでいるのは、ミニバンの代わりではない。ミニバンにはミニバンのいいところがある。 ミニバンで実現できていた、「自由な車内空間」はCX-8には求めない。その代り、快適で静かな4人分のシートと高い荷物積載能力、ないしは、あと数人分の搭載能力を持ち、自力で真っ直ぐ走り、道路に沿って滑らかに旋回できるクルマであることが、CX-8が目指すべき立ち位置だ。本格的な泥濘地を走破できるレベルの4WDシステムもこのクルマにはいらない。 ましてや、思いつきとマーケッティング結果を元に無理やり3列目をつけたようなクルマとも一線を引く。 それこそが、我々がずっと期待している、マツダの大型SUVのあるべき姿だと思うのだ。
CX-8よ、「A Car Like No Other」であれ。

Posted at 2018/10/05 21:33:03 | |
試乗記 | クルマレビュー