
「プリウスベースの小型SUVを作ればきっと売れる」
トヨタもそんなことはわかっていたが、分かっているが故に失敗はできない。ここはひとつ、手堅くいかねばならない。こうした案件を担当したサラリーマンは、普通は腰が引けるものだが、幸か不幸か、「プリウスは、TNGAを生かしきれてない」という認識がトヨタの社内の中にあった。 そこを思い切ったデザインと、「欧州で戦うには、日本マーケット向けの作りではだめだ」と経営層やその他の抵抗勢力を抑えてTNGAを生かすチューニングを発売してしまったところが、トヨタという会社組織の強さを表している。 これではまるで会社の規模が1/10以下のマツダのクルマ作りである。(案外、羨ましかったのかもしれない)
トヨタが作った「マツダ車」は、驚くべきものになった。
ステアリングフィールが非常にすっきりとしており、他のトヨタ車とは全く違う、似通ったメーカのフィールを探しづらいが、マツダ+VWと言った感じか。中央部分の曖昧さがなく、ステアリングの操作とヨーの発生のラグが小さいのに、乗り心地も固くなく、ロールも過大にならないので、左右への旋回が気持ちが良い。 道路のアンジュレーションや段差の乗り越えも、サスペンションがしっかり動くので、ショックの伝わり方に角がない。トヨタの他のクルマと比べて頭一つ上に出ていると言える。トヨタの中で、ピロボールの採用には相当にもめたとのことだから、市場でこの車の乗り心地が高い評価を受けることを期待したい。
これは想像だが、できれば、フロントはダブルウイッシュボーンにしたかったんだろうなということが、ロール角度が大きくなるコーナーリングをすると感じる。追い込んで目いっぱいロールさせて高速旋回を繰り返すと、マクファーソンストラットの限界から、経路が安定しなくなっていくが、その地点までシャシーがしっかりダンパーを抑えているので、相当に高いレベルまでいかないと破たんしない。 つまり、そういう使い方(主に欧州での使用用途として)を想定してテストされているということだ。 だから、マクファーソンストラットの限界についてもこうした手を打ったのだろう。
内装は、非常にトヨタ的だが、その代わり、これでもかという仕上がりになっていて、メーターフード、ドア周り、シートのキルティングなど、多くの人が満足すると思う。もう少し内装の色に凝るといいと思うが、プリウスみたいになっても困るので、まずは無難な色からってのは理解できる。 外装はトヨタが品質のポイントに置いているチリのサイズを小さくしようとした努力があちこちに見られる。複雑なカットをしたボディがそれなりに小さな公差で組みあがってる様はまさにトヨタ車の伝統的な長所と言える。 このクラスだと、ヴェゼルとCX-3という強力なライバルがいるが、価格と商品力は両車に十分伍していけるクルマになっている。
Posted at 2016/12/17 16:13:43 | |
試乗記 | クルマレビュー