• 車種別
  • パーツ
  • 整備手帳
  • ブログ
  • みんカラ+

zato787のブログ一覧

2018年06月26日 イイね!

新型クラウンはなぜ、次期ISへの期待を高めるのか

新型クラウンはなぜ、次期ISへの期待を高めるのか15代目の新型クラウンが6/26発売となった。既に5万台近い受注があり、納期もしばらくかかる見込みだ。全国のトヨタ店では試乗車の準備に力を入れているので、発売後は、各ディーラーやMEGAWEBに行けば、試乗車に乗ることができると思う。ロードスターのユーザから最も縁遠いように見えるクルマの一つがクラウンかもしれないが、ロードスターだけで全ての需要をこなすのは難しい。 例えば、ロードスターで誰かとゴルフに行ったりアウトドアに行くために、別のクルマが欲しいと思うこともあるだろう。 そういう需要の有無とは別に、「クルマの進化」を体験するために試乗する価値があるクルマだと思う。 新型クラウンの記事は様々な場所に出ていると思うが、なるべくそうした記事には載っていないことを中心に書いたつもりだ。


■クラウンのマーケット変更
ロードスターの購入ユーザの年齢も、NAの頃に比べれば高くなったが、クラウンは平均年齢が65歳とほぼ終端に近づいている。今までも若返りを図ると口では言っていたけど、シャシーはキャリーオーバで、結局「在来ユーザを大事にする」というコンセプトがキープされた結果、ユーザ層は何も変わらなかった。 今回のクラウンは、たとえ在来のオーナーから見捨てられても構わないからと、今でとは逆のアプローチで、最新のFRセダンとして作ってから、内外装をクラウンっぽくする手段で開発した。


  新型クラウン

その結果、見た目はクラウンっぽい(きっちりカッコ悪い)が、よく見るとクラウンではない。マークXが属する350万円台の中型FRセダンのマーケットに見切りをつけた結果、全幅1800ミリのFRセダンに集中して設計することができた。350万円の台のFRセダンに大きな需要がなく、FRセダンの需要がもう少し高い価格帯にあることは、レクサス、BWM、メルセデス、AUDIがずっと証明し続けて来たことだ。新型クラウンは、輸入車Dセグメントに近い価格帯で販売することにした。その代り、製品に言い訳はできない。


  新型クラウン


■新型クラウンの重大な変更点はシャシー

日本でのみ販売するクラウンは、1800mmという全幅と低速走行時の燃費を走行の主体とした以外は、モダンなセダンの設計方式をそのままトレースしている。新旧の数値上の大きな変化は、ロングホイールベース化だ。旧型のトレッド1545/1545mm、ホイールベース2850mmのホイールベース・トレッドの比率が1.84から、1550/1500mmのトレッド、ホイールベースは2920mmと長くなり、新型のホイールベース・トレッドの比率は1.91に大きく伸びている。これがどのくらい長いかというと、BMWの新5シリーズが1.86、メルセデスのEクラスセダンが1.83だから、クラウンのシャシーが細長いことがよくわかるだろう。しかも、フロントの方がトレッドが広く、直進性に注力していることが分かる。70mm伸びたホイールベースは、その全てを前軸の延長に回し、V6ハイブリッドを前軸の後ろに配置できるロングノーズ形式となった。(完全後方にはできなかったが)さらにルーフトップからボディエンドに向けてファストバック形式で屋根を下げていくことで、後席のヘッドスペースとトランクルームを確保している。リアシートの配置位置も、BMWの新5シリーズやメルセデスのEシリーズと同様の考え方で配置されている。


  新型クラウン
  ホイールベースとボディのバランスをよく見てほしい

 
クラウンには、NDロードスターのようなアジリティは望めない代わりに、前後のボディとシャシーの剛性を調整して、前後の旋回バランスを重視することを選んだ。CX-8とも近い思想だが、スポーツカーのような機敏さよりも、ステアリング操作に対して、前後のサスペンションがロールをはじめる時間と旋回が始まる時間を調節しはじめた。 こうした手法は、これまで欧州の高級車のやり方であったが、トヨタはこの走りを実現させるために、使用する金属材料から生産方法まで見直しを行っている。 新日鉄住友金属が開発した、超高張力鋼板である、ホットスタンプ材(簡単に言えば、高張力鋼板を熱をかけながら鍛造した熱間プレス材で、薄くて硬い)をシャシーに採用した上で、生産工程において、サブフレーム/メインフレームの接続の誤差と接続ずれを、レクサスのLSやメルセデスと同様のレベルにまで詰めてきた。


  新日鉄住金が開発した、新熱間プレス材 1470MPSのプレスでも歪まない
  (在来のハイテンでは1000MPS以上の圧力には耐えられない)


さらに、GA-Lは、現行プリウスから採用された、ボディの環状構造を作るためのLSW(レーザースクリューウェルディング)溶接の採用範囲を拡大した。 LSWとは、レーザーを照射させて、スポット溶接よりも溶接打点のピッチを短くして隙間なくボディを結合させる溶接方法で、ボディを一つの剛体とすることができる。 新しい前軸のタワーの構造を見れば、GA-Lが在来のホワイトボディと大きな違いを持つことが理解できると思う。 こうしたボディの生産過程の変化により、クラウンの走行感覚は欧州車的なテイストに変わった。 トヨタもそういう生産方法を取れば、いいクルマになることはずっと前からわかっていたけど、年間1000万台を生産する工場の生産工程と生産台数の関係から採用できなかったことが、製造方法の大幅な改善と最低価格を460万円とすることで、実現可能となったのである。 つまり、これはクラウンだけの話ではなく、コストと工数がかけられるならば、今後のGA-L使用車両全体に適用可能な製造方法である。 だから、マークXはGA-Lの採用対象外になったのである。



  LSWの例(スポット溶接に対して、接合点が多数に増えている)
  ボディの環状構造の例


パワーユニットのうち、ハイブリッドシステムの話については、別稿で述べたいことがあるので、ここでは取り上げない。今回、期待していたのは、今まで「ターボラグ、回らないトップエンド、不足している出力」と3拍子揃っていた、2.0ターボエンジンが改良された(ぼそっとしか述べられてないが)ことである。トップエンドが6000回転であることは変わらないが、アイシンの新型8速AT、スロットル制御、エンジンを統合して改良し、体感的なターボラグを削減し(内製の都合上、可変ジオメトリタービンは採用できない。)、各回転域で十分なトルクを発生するだけでなく、4500回転から6000回転へのパワーの伸び感も持たせることができた。多段変速機専用のエンジンなので、一つのギアで引っ張るよりも、美味しいところをうまく使う方法でチューニングされている。 今までの2.0Tとは違って、選んでも後悔しないレベルになったと言える。(現行のISやRCの2.0Tよりも良くなった)



  直列4気筒 2.0ターボエンジン
  (写真は、改定前のエンジン)


■ベストバイ
トヨタが買わせたいのは、2.5HVだと思う。RSもGも「2.5HVがお買い得」に見える値付けをしている。2.0は、2.5をお買い得に見せるために、高めの価格に設定されているので、多くのユーザはより2.5HVを選ぶのではないだろうか。(約20万円HVが高価だが、分母の絶対値が大きいので安く見える)燃費のことさえ気にしなければ、改良されて大分気持ちよく走れるようになった2.0がお勧めだ。どのモデルよりも鼻先が軽いのは、パワーユニットが軽いだけでなく、前軸の後方に配置されているからでもある。 長いホイールベースに合っているのは17インチを採用するG系モデルの方で、このディメンジョンでRSモデルのように、アジリティを求めて、コツコツ感が残る18インチと衰滅力の高いダンパー設定をするS+モードを選ぶようなシーンが思いつかない。

よって、2.0のG、541.6万円をベストバイとしておく。2.5HVのGも、562.1万円と大きな価格差はないが、トヨタのHVは間もなく大きな進化をすると予想しているので、私はTHS-Ⅱ搭載車は推さない。3.5のマルチステージハイブリッドは、需要は多少あるだろうから、ラインナップにあってもいいと思うけれど、ベストバイの対象ではない。



  新型クラウン 2.0G(内装)


■結論
クラウンを第一印象で「カッコワルイ」とただ切り捨てるのではなく(最初に私もそう書いたけど)、実車を360度じっくり見てから乗ってみれば、「日本車っぽい別の何か」であることが分かってくるはずだ。外装の共通化は、今まで旧型のロイヤルが欲しくても、外装がイマイチで選べず、泣く泣くアスリートを選んでいた層にも朗報だと思う。 ライバルの価格は、それぞれBMW523が625万円、E200が694万円、E220Dが717万円だ。(レクサスはGA-L対応セダンがLSしかないので比較できない) クラウンをBMWやメルセデスと比べることがナンセンスだと思うかもしれない。 しかし、価格差以上に、走りの実力差は接近している。 私はE220Dを高く評価していて、ゴルフエクスプレスとして買おうか、と思っていたくらいなのに比較に挙げているくらいだ。欧州車が好きで何台も乗ったことがある人ほど、新クラウンの進化(方向転換というべきか)を理解しやすいと思う。


  メルセデスベンツE220D[サイドビュー)

日本車と欧州車のセダンの間には差がある。日本の技術が劣っているからではなく、それなりの理由があるからだが、もし、それらの差が無くなったならば、サービス面、信頼面、動産としての価値の維持と言った点で、日本車の方に大きなアドバンテージがある。 例えば、トヨタ店のサービスは、ファミリー向けのルーミーな店舗な見かけと違い、プレミアムブランドのディーラーと比較しても遜色がないどころか、むしろ優れている。


  トヨタ店


クラウンはいいクルマになったと思う。でも、逆にそれが私に買わない決心を与えもした。 それはネガティブな意味ではなく、期待値からだ。 レクサスはGSを廃止してESに置き換える。つまり、次期ISのボディサイズが拡大することを意味しており、次期ISは高い確率でクラウンと同じGA-Lプラットフォーム・ナロー版を搭載すると思う。 走りがよくなることはクラウンで証明された。 その上、内装も外装もクラウンじゃないなら、もうどこにもネガがない。 クラウンは、次期ISに大きな期待を持たせることになった。 ボディのディメンジョンから見て、「インテリジェント・スポーツ」ではないと思うけれど。



  次期レクサスIS(イメージ)
Posted at 2018/06/26 21:50:07 | コメント(1) | トラックバック(0) | 自動車技術 | クルマ
2018年06月23日 イイね!

初夏の伊豆半島の金目鯛を食べに箱根経由で

初夏の伊豆半島の金目鯛を食べに箱根経由でこの日は、季節外れの台風が接近中につき、東京の天気は良くなかったが、静岡県方面は午後から晴れるらしい。日本に戻っている間くらいは休みをとって走りを楽しみたいと思っている。今日は、あまり重たい内容はないので、さらっと読んでいただければ良いと思う。


この時期の伊豆半島と言えば、金目鯛だろう。金目鯛と言えばやはり煮つけを食べねばなるまい。往路に、伊東のマリンタウンにも寄ることにする。早速、マツコネに伊東マリンタウンの目的地をセットする。 東名から小田原厚木道路、箱根新道を通り、十国峠を経由し、伊豆スカイライン経由で伊東マリンタウンへ向かうルートが示された。そういえば、昨日「推奨ルート」から「有料道路優先」にモードを切り替えていたせいだと思うけれど、こんなルートで東京から伊東に行く人はほとんどいないはずだ。 ワインディングを走りたい、というRFの意思だと思って、そのまま受け入れることにした。伊東まで133km程の道のりである。

  
  謎の大回り経路


東京は、厚い雨雲に覆われていて、いつ雨が降り出しても不思議ない状態だったから、屋根を閉じていたが、小田原厚木道路に入るころには、晴天となり、速度制限も70km/hに下がるので、途中のパーキングでOPENにして走ることにした。 ボディ強化の結果、CLOSEDの状態だと振動が抜ける場所がなく、微振動がロードノイズとなって車内に侵入してくるから、ノーマルのRFよりも高速道路で車内が少しうるさい。一般道の速度ならば静かで快適だが、80km/h以上の速度でコンクリート路面を走るとゴーっと言うロードノイズがリアタイヤの辺りから発生する。それでも幌よりはまだ静かではあるものの、ノーマルの86/BRZよりはうるさい。(多分、ノーマル同志でも86/BRZの方が静かだと思う) だから、できる限りOPENにすることが好ましい。OPENにすればロードノイズになっていた微振動が全部ウインドウスクリーンの上端から抜けていくので、快適である。70km以下ならば、OPENにしていても風切音も気にならないので、オーディオをかけながらOPENエアモータリングを楽しむことができる。iPhoneのプレイリストには、60曲がセットしてあり、4時間分ある。 速度を上げると風切音でオーディオが聞こえなくなるし、別に急ぐ理由もないので、左車線をのんびりと進む。空はほとんど青空で気持ちよい。 RFは解放感という意味では、幌に一歩及ばないところがあると言われるが、運転している時は、頭の真後ろに当たる風が少なく、むしろ快適であるし、リアウインドウが筒抜けだから、前後左右から耳に入ってくる音は、まさにOPENのそれだ。



  ロードスターRF


箱根ターンパイク経由だと、道路が良すぎるので、箱根新道のままで良い。 平日の昼間だから、それほど交通量は多くなく、トラックも、時折現れる登坂車線で追い越せる。 公道なのでペースは上げていない。クルマが軽くて小さいから、ワゴンやミニバンに比べると、と登坂車線ではかなり俊敏に動くことができる。 コーナリング性能は、登り/下りとも思った通りの軌跡で旋回できる。ボディ強化の効果で、ヨーが発生するまでの時間が短いので、ブレーキを抜きつつ、ステアリンを入れると即座にロールと旋回が始まるので走りやすい。旋回を始めるとステアリングの切り増し量に合わせて正確に旋回量が増える。 アンダー/オーバーが出るような速度で走ることはないので、常にニュートラルステアである。 エンジンは6800回転までストレスなく回り、マフラーからもFujitsuboらしく低音系ながら、それなりな感じの音が出るので、調子に乗って回して楽しんでいた。 ND2のRFのエンジンやパワートレーンの反応は、そんなに鈍くなく、十分にワインディングを楽しむだけのレスポンス、パワーがある。 近くにフェラーリ488やボクスターも走っていたが、フェラーリもまた高回転を楽しんでいるようだった。 そうこうするうちに十国峠である。


  十国峠レストハウス


  熱海方面は良く見える
  富士山は全く見えない。

十国峠には、平日の箱根を走りに来ていると思われるクルマが何台か止まっている。 残念ながら富士山方向は雲があって、富士山は良く見えないが、熱海方向はきれいに見える。 建物の中では様々なご当地お土産が売られている。ところどころ、無理して作っただけじゃないのか、と思わせるご当地物お土産もある。 ここで売ってるわさびせんべいが地味に美味しいので、お土産に買って帰ることにする。



  わさびせんべい
  意外においしくて、お土産のリピート需要がある


  
  カップヌードルの富士宮焼きそば
  もちもちの麺は即席めんでも再現されているのか?



  味が想像できない、KITCATの温泉まんじゅう味
  買っておけばよかったかも。次回は買おう。
 


十国峠から伊豆スカイラインに向けては、下りのワインディングである。フライホイール軽量化の影響で、車速が50km/h未満の時は、少々エンブレの効きが良くないが、速度が大したことはないからさして問題にはならない。ブレーキは良く効き、制御もしやすいが、踏み応えにもう少しカッチっとした感じが欲しいと思った。 平日の箱根をカッコウや他の野鳥(名前を知らない)のさえずりを聞きながら、青い空と緑の草地を見ながら走るのはいいものだ。 何台かのロードスターとすれ違い、お互いにあいさつを交わす。 時々、全開のロータスにも出会うが、必ずしも目を三角にして走っている人ばかりではない。 みんな、それぞれの好みの速度と言うものがあるのだろう。


  青い空と緑の草が美しい箱根


伊豆スカイラインの終点まで、ワインディングを楽しみ、伊東マリンランドで、早めの昼食に地魚の鮨を食べてひとっ風呂浴びることにした。ここの鮨は、鰤、鯵、メダイなど10個の地魚でできていて、なかなかおいしい。白身の魚が中心なので、味わいの差を感じるには注意して食べる必要がある。 平日はてんぷらなど、いろいろなメニューを安く追加注文できるのでお得だ。 途中、有料道路で財布を出して、シートの上に投げたままだったことを支払いの時に気づいた。謝って、財布を取りに戻ったが、何も嫌な顔はされなかった。私が一方的に悪いので申し訳なかったと思う。この地域の温泉は、炭酸系のナトリウム温泉だ。海の近くだから大体そんなものなのだが、金属イオンはあまり含まれていないから、お湯に特別感は少ない。人がいないので、露天風呂の湯船でのんびりできるのは良い。



  地魚の鮨盛り合わせ
  上段左から、鰤、鯵、メダイ、イサキ、鰆、アコウ鯛、ホウボウ、鮃、生シラス、生桜海老



  伊東マリンランド  マリーナもある




このまま、下田方面に向かい、予約しておいたキンメの煮つけを頂く。大ぶりで身によく脂がのっており、大変おいしい。全く写真を撮ることを忘れていたので、写真は前回訪問の時のもの。(だから、Foodieのマークがない)下田からは、伊豆の海を眺めながら、東京へと帰ることにする。 真鶴道路あたりで、天候が悪くなってきたせいか、マツコネの案内が突然狂いだし、有料道路の真ん中で右折しろとか好きなことを言い出すが、いつも通りだと無視して真鶴道路を進む。 小田原厚木道路に戻るころには、雲も厚くなり、一雨来そうなので、適当なPAで屋根を閉じることにする。 設計速度の50km/hまで屋根を閉じられるように制限を緩和してくれれば、走りながらでも屋根の開閉ができるのだが。アフターパーツでこの時速10km/h以下という制限を解除できることは知っているが、そこまで欲しいわけでもないのでつけていない。



  金目鯛の煮つけ


  刺身も煮つけも相変わらず美味しい。



オーディオの音楽を使い切ったので、FM東京に切り替え、ラジオ番組を聴きながら東京へと戻る。 ショートアンテナも持っているのだが、走行中のラジオのゲインが下がりそうなので、元のアンテナに戻している。途中で、シェルのハイオクを入れたところ、燃費は14.8km/Lとなかなかの良い値であった。 高速道路を走る時は、制限速度以下ののんびりした速度で走ることが多いので、ここで燃費を稼いでいるものと思う。一般道だと、感覚的に言えば、11km/Lくらいじゃないだろうか。 やはり、ドライブに行くなら平日が良い。帰りの首都高速3号は銀座方面に向けて渋滞があったが、それでも大した長さではない。日が暮れる前には品川に戻ってきた。通勤客がいっぱいいる品川駅前を通り家に帰る。ロードスターは走ってこそ楽しいクルマなので、次回の休みにもまたどこかに出かけようと思う。

お出かけ系の話は、私のブログの中では人気がないけど、書くのはかなり楽だったりする。


  ロードスターRF


Posted at 2018/06/23 17:24:58 | コメント(2) | トラックバック(0) | 旅と料理 | クルマ
2018年06月20日 イイね!

北アメリカ大陸の軽巡洋艦「フォレスター」

北アメリカ大陸の軽巡洋艦「フォレスター」
6月20日、スバルは主力SUVの新型『フォレスター』を7月19日に発売すると発表し価格を公開した。基本的なスペックは、本日スバル広報から公開されている記事を載せているWEBページが多数出ているから、それを見ればわかるので、ここでは記載しない。

国内では月販2500台で、先行予約で4119台の注文を得た。半数以上がe-Boxer搭載のハイブリッドモデルだ。スバルの日本市場でもフォレスターは販売量の20%を占める主力車種である。 価格帯が低いマツダのCX-3の月販目標が3000台だから、かなり力を入れて売りたいモデルではある。しかし、フォレスターは最量販時で世界で27万台、そのうち17万台は北米で売っている。新型は北米で月販15000台以上を狙っている。スバルはマツダよりも販売台数が少なく、年間販売台数は100万台程度で、そのうち27万台をフォレスターが占めているわけだから、最重要の主力艦である。 価格は280万円~309万円と価格レンジが狭い。 CX-3やCH-Rのトップモデルと等しく、CX-5の2.5AWDと等しい価格帯だ。恐らく、CX-5のユーザとフォレスターのユーザは被るまい。 オシャレに雪国の街中を走るのか、本格AWDを欲しいかの差があるからだ。 新潟のような本当の雪国においては、C-HRごときでは、市街地を一歩でたらもう雪に歯が立たない。 オシャレ系のSUVが出る幕ではないのである。



  新フォレスター

旧型のフォレスターはまだ日本市場に迷いがあった。レガシーから続く伝統のように「高速AWDと言えばスバル」という思い入れがあったからかもしれない。少し前のスバルは、「フルラインナップターボ」のごとく、極悪燃費のターボAWD車をあちこちのモデルに突っ込んでいた。しかし、フォレスターを買ってくれたのは、「WR ブルーマイカ」が大好きな日本のユーザではなく、北米のユーザであった。彼らは、フォレスターが持つ、走破性や信頼性を買ったのである。 一部のユーザにはWRX STIは憧れのクルマかもしれないが、カナダやミシガン湖の周りや、テキサスなど、北米の田舎では、x-Modeを持つフォレスターこそが、夏でも冬でも信頼に足る、使えるクルマであった。



  X-MODE機能図


フォレスターは、完全に北米に向いた。かの地で月販15000台売るために最良の構成を始めたのである。フォレスターに必要なものは、街中ではトヨタのRAV4やVOLVOのXC40のようにSUVのように軽快に使えるけれど、北米やカナダの泥濘地や雪と泥が混じった森林、テキサスの傾斜のある荒れ地などで、ランクルに近いレベルで走りきれる走破性だ。そのために、低速で出力が出せない280馬力の2.0ターボを搭載するなど、全く逆効果でしかない。 高速道路を真っ直ぐ高速で走るSUVが欲しければ、ポルシェ・マカンでも買った方がずっと幸せになれる。



  新フォレスター

新フォレスターの肝は、泥濘地対応の新X-MODEを生かすSGPの設定と、ごく低回転から安定した出力を発生する信頼性の高いパワーユニットだ。マツダが述べるように、ダウンサイジングターボはこうした目的に合わない。ライトサイジングなNAこそが最適であり、CX-5と同様に2.5L程の排気量が適切である。 フォレスターのX-MODEは、そのまま軍用に使えるのではないかと思えるほど、悪路の走破性と傾斜路でバランスが取れている。 X-MODEは、空転したタイヤにブレーキをかけて、残りのタイヤにより高い駆動力をかけることで、ぬかるみや傾斜路を走るという仕組みだ。 ブレーキを使った制御が素早い反応を実現している。今回のX-MODEは、スバルっぽくなく「使いやすい」方向に進化している、大抵、「ドライバーコントロールXX」みたいな名前で、複雑な組み合わせで、どうやって使うか慣れるまでに相当な時間を要するのが、スバルのAWDだったが、新X-MODEは、左右に「スノー・ダートモード」「ディープスノー・マッドモード」になってる。 まだわかりにくい? いや、片方にディープって入ってるだけ、区分けしやすくなってるんだから、スバルとしては大進歩である。


   
  フォレスターX-MODE操作部


SUVにターボという組み合わせにこれ以上商品価値がないことを悟ったスバルが、日本市場をはじめとする、次世代電動システムにチャレンジしたのが「e-BOXER」である。 この名前は広告代理店が作ったのだろうが、まだ名前倒れな状態ではある。「e-BOXER」は2.0エンジンと最高出力10kW(13.6PS)のモーターを直結させて動力性能を高めるのだが、そこに求めたのは、燃費ではなく、「アクセル操作に対する出力のレスポンス」である。AWDが走破性を求めた時に必要なトルクを排気量ではなく、モータトルクで与えようというのが、e-BOXERの考え方の肝である。だから、低速でモーターは積極的に動く。燃費向上を狙ったものではない。WLTCモードで14.0km/Lとトヨタのプリウス(WLTCで24km/Lくらいになると言われている)より驚くほど低いのは、e-BOXERが燃費狙いの仕組みではないからだ。バッテリーは容量4.8Ahのリチウムイオン電池で、悪路走行を想定したバランスの面から車両後方に配置する。NAの2.5のWLTCは13.2km/Lだから、気筒停止機能を持つCX-5(2.5FF)の14.4km/Lと比べてもそんなに悪くない。(NAは地味に燃費をよくしようと改良している) スバルが今更ハイブリッドで燃費を追いかけても、誰も「スバルのハイブリッドは燃費がいいから買おう」などとは思わない。 シリパラ方式のハイブリッドで、生半可にトヨタと燃費を競っても無駄である。 日産は、シリーズ式でePowerなる別世界を作ってるし、ホンダは莫大な開発費用とリコールを繰り返しても、結局トヨタにハイブリッドの燃費では追い付けないままである。 モーターは、燃費向上以外にも使い道はあるはずだ。 


e-BOXTERのパワーユニット

商品コンセプトの説明では、“世代を超えて元気で若々しく活動的な気持ちを駆り立てるクルマ”(棒)とつけたくなるような陳腐なお題目で、いつもながら、本当にプレゼンする気が皆無だ。理系ばかりでプレゼン資料をつくるせいか、プレゼンで何が言いたいのかさっぱり伝わってこない。報道によっては、丁寧にスバルのプレゼンを記事にして紹介しているところがあるが、こんなのを読んでも、本人達に伝える気がないのだから、何が売りなのか絶対わからない。 しかし、世界トップレベルにプレゼンが下手くそでも、勝手にちゃんとスバルの新しい挑戦をくみ取った日本のユーザが多数(3000人くらい)いるのは素晴らしい。 価格は2.5の最高モデルが302万4000円、ハイブリッドが309万9600円でお値段はさほど変わらない。 多分、2.5が予想価格より高く、e-BOXERが予想価格より安かったと思う。


新フォレスターもSGPを採用し、ホイールべースは30mm伸びた。しかも、30mm全部を後席のスペースを伸ばすという、最新の設計技術とは真逆に進む方向で。インプレッサの欠点はわかっていても、構造上SGPとしてもどうしようもないのだろう。フロントに駆動力を伝えるために、エンジン本体は前軸より前に出さざるをえず、車軸とエンジンの間に変速機を置くために、相対的に前軸~フロントエンドのヨーが大きい。よって、上下動のある道路では、フロント側が細かく上下動する悪癖が残る。 スバルが今の形のAWDを続ける以上、フロントのヨー慣性を減らすことはできない。インプレッサとBRZのハンドリングの決定的な違いはパワートレーンの搭載位置の差から来ている。エンジンを車軸の後部下方に落とし込めず、折角のフラット4の魅力を生かし切れていない。だが、何か画期的な設計方法があるわけではなく、それが設計ミスだとは言えない。しかし、スバルの未来にとって、新しいAWDの形、特に前後に重たいものを配置しない形を実現することが必須である。 


  スバルSGP(図はe-Boxer仕様)
  AWDの動力伝達のため、フロント軸線が前に出し切れない。


SGPの採用で、開口部を大きくしても剛性を確保できるため、リアドアを1166mmから1300mm拡大し、商品力の維持上、パワーゲートも装備してリアの慣性モーメントを増して軽快性を落とす代わりに、アウトドアにおける使い勝手を向上させている。悪路走破性において重要なサスペンションを的確に動かすための剛性は確保できている。スポーツカー的な剛性確保を求められているわけではないから、必要な応力の伝達速度も異なり、フォレスターのSGPは、ボディ全体の振動の低減の方に(フロント側も!)剛性チューニングを振ってある。


  開口部が1300mmとなったパワーリアゲート
  上下方向にも広く、荷物の積み下ろしはしやすい

面白いギミックでは、iPhoneXなどにも搭載されている顔認証システムを搭載し、最大5名のドライバーのシート位置やミラーの位置、空調、モニターの設定を覚えてくれるものだ。(ステアリング部は覚えてくれない)地味に便利な機能で、認証は一瞬で行われ、椅子に座るとすぐに調整が始まるのは便利だ。iPhoneXと同様に、サングラスやマスクを装着していると認識できない。イモビライザーより顔認証で動作すればいいのにと思うが、不特定多数が運転できるというのも、クルマの機能だから仕方ないのかもしれない。本来は、ドライバーの表情をチェックして安全運転に生かそうとして始めた技術である。


  顔認証システム


アメリカの北部、中部、南部、カナダを旅すれば、その広大さと、路面の複雑さを知ることになるだろう、冬季は言うまでもなく、春が来ても雪が解けて泥と混ざり、深い泥の海が道路を覆い隠したままなのだ。 そんなところを子供を載せて学校に送る母親にとって、重く地の底まで沈みそうな重巡洋艦(ランドクルーザ)では使いものにならない。春夏秋冬、クルマが示す方向に向けて走れば、悪路を難なく走破し、ハイウエイに入れば、軽々と走り、学校へも、スーパーへも、教会へもどこにでも壊れることおなく連れて行ってくれる。そんな、戦地で八面六臂の活躍をしたアトランタ級軽巡洋艦のような使い勝手が、フォレスターの立ち位置だ。 スバルとフォレスターは、引き続き彼らの信頼を得ることができると思う。



  アトランタ級防空軽巡洋艦 ネームシップ アトランタ
Posted at 2018/06/20 21:51:42 | コメント(0) | トラックバック(0) | 自動車技術 | クルマ
2018年06月15日 イイね!

商品改良版のRFにデュアルマス・フライホイールを採用した理由

商品改良版のRFにデュアルマス・フライホイールを採用した理由
 どうやら世間では、NDロードスターの分類を、製造番号の最初の桁数から、初期型:ND1、2017年12月商品改良型:ND2、2018年6月商品改良型:ND3と呼び始めているようだ。ここのブログでも、以降はこの分類名称を使っていくことにする。今日はND3の2.0エンジン搭載車のフライホイールの話である。 今日の話題とも関連するが、ND1、ND2のフライホイールを軽量フライホイールに替えた際のフィールについては、パーツレビューでAUTOEXE版の軽量フライホイールの装着レビューを載せているので、そちらを見てほしい。 クルマのエンジンは、レシプロエンジンでも、ロータリーエンジンでも、燃焼エネルギーをを回転運動に変換する際に出力のムラが発生し、クランクシャフト/エキセントリックシャフトをクラッチ経由でそのままドライブトレーンにつなぐと、燃焼状況や回転数の変動による出力変化でガクガクしてまともに走れない。そこで、重量のある円盤をクランクシャフトの後ろにつけて回転させてクラッチ以降のドライブトレーンと接続し、その慣性モーメントによって、トルク変動を吸収して安定化させている。この回転している部品をフライホイールという。

 フライホイールというのは、重量が8kg~10kgくらいある重たい金属製のはずみ車だから、低回転でエンジンがトルクを十分に発生できない時でも、保持されている慣性エネルギーによって、一定のトルクをギアに伝えることができる。 逆にフライホイールは、クランクシャフトに接続されて、クランクシャフトと同じ回転数で回るわけだから、クランクシャフトからみたら「重し」でしかない。 回転数が上がれば上がるほど、エンジンが発生できるトルクは小さくなっていくから、よりクランクシャフトと一緒に回すことがつらい錘になるわけだ。トルクコンバータ式のATの場合は、トルクコンバータが変速機とクランクの間に入ってこの変動を吸収するので、フライホイールを必要としない。しかし、それ故にダイレクト感は薄い。



 フライホイールの構造

 エンジンの高回転での伸びが欲しいと思う人が、なぜ、このフライホイールを高いお金をかけてまで取り替えるのかというと、「フライホイールが、錘になって、回転上昇の妨げになる」からである。フライホイールは鉄の円盤であり、手で持ってみればその重さがよくわかる。市販車とチューニングカーの違いとして、何を捨てて、何を取るか、という取捨選択の内容の差異があるわけだが、軽量フライホイールもその取捨選択の一つだ。 ロードスターRF用(ND2まで)は、アテンザやアクセラと比べると、街乗りのしやすさよりも、回転レスポンスを重視した軽量版のフライホイールが標準で使われていた。


 RF用(ND1,ND2)標準フライホイール(ロードスターRF用は軽量版が搭載されている)


マツダがND1に2.0にエンジンを搭載する際に、高回転域でのレスポンスを高めるために、アテンザやアクセラよりも回転慣性モーメントを減らしたフライホイールを使うことを考えた。ND3になってさらに高回転の伸びがよくなるエンジンを搭載するなら、もっと軽いフライホイールを使いたい。 しかし、その軽量化には限度がある。 フライホイールの軽量化を進めると、一般的にはメリットよりもデメリットを生む。 例えば、ND1,ND2のRFのフライホイール(7.6kg)を37%軽量化したAUTOEXE製のクロモリ製フライホイール(4.8kg)に変更すると、以下のようなデメリットがあった。


 ①低速トルクの低下
  上り坂での低速運転に影響する。例えば、首都高速道路の大橋JCTで渋滞した際に、これまで2速15km/hまでは、ここの上り坂でも使えていたが、交換後は、20km/h以下では1速を使う必要がある。(発進トルクは、クルマが排気量に対して軽量であること、ギアを1速に入れると1000回転まで回転が上昇するので、実用上問題になるほどの差はない)

 ②1000回転~2000回転の低回転域での加速能力の劣化
  低ギアで顕著であり、1000回転~2000回転のスルーギア加速時間が20%ほど劣化

 ③低回転域でのエンジンブレーキ力の劣化
  50km/h以下での速度域で、2速、3速でエンジンブレーキが体感的に30%程度減った。フットブレーキを多用するほどではないが、エンジンブレーキが効かなくなったなとは感じる。

 ④高回転での変速時の回転数の下落速度の上昇
  高回転域で変速(加速、減速共に)する時に、スパッ、スパッと回転が落ちるので、その回転数に応じた変速操作を必要とする。


37%程度の軽量化であれば、アイドリングのムラ、発進時の低速トルク不足、装着時の異音、ギアからの異音と言った典型的な問題は起きていない。しかし、材質をクロモリから軽金属に変更したり、円周部に穴をあけて慣性を減らす造形にするなどすると、さらにデメリットが強化されてしまう。 その代り、高回転域では、ノーマルとは比べ物にならないほどのレスポンス、回転上昇、時間あたりの軸出力の増大を得ることができる。

 私は得られるメリットと比較して、①~④のデメリットを受け入れたが、37%の軽量化ですら、大部分のRFのユーザがメリットと引き換えにこれだけのデメリットを受け入れる必要があり、それが妥当かと問われると、そうは思えない。マツダも同様に考えるだろう。 だからND3にも、少なくともND1、ND2と同等のフライホイールが採用し、高回転をより楽しむ設定にするのは当然だろうと考えていたし、あるいは、トルクが増えた分だけ、10%くらい軽量化してくるかも・・とすら考えた。




 ND1,ND2RF用AUTOEXE軽量フライホイール(37%軽量)


■ND3になぜ、デュアルマスフ・フライホイールが必要なのか

 ところが、ND3のRFのフライホイールは、イナーシャ(慣性)を低くしたとは言うが、デュアルマス・フライホイール(以下DMFと略す)が採用された。このフライホイールが、軽量フライホイールならば、高回転を楽しむ方向に向いているわけだが、一般的にDMFは軽くないどころか、むしろかなり重たい。スポーツエンジンのフライホイールを重くしてしまうと、最大トルクを20.5Nmに引き上げ、全域で初期型よりトルクが増大した効果が出せない可能性もある。 というのも、DMFとは、ドライブトレインの振動を抑制することにより、快適な運転感覚を生み出し、燃料消費を改善するために採用するものだからだ。振動に悩む水平対向エンジンを採用するポルシェやスバルは振動を抑えるためにDMFを採用した事例がある。 ND3の2.0エンジンのクランクシャフトは、フルカウンターバランスを取っているので、高回転でも振動がでない・・・はずだ。 最近は、高回転型エンジンが減ったこともあって、DMFは、ディーゼルエンジンの振動低減のために採用される事例が多く、マツダでもSKYACTIVE-DのMT用に採用している。 もう一つのメリットは、燃費性能だ。 確かにND3のエンジンは全域でトルクが向上したにも関わらず、燃費性能も向上しているが、「スポーツ性能の向上」という方向ではないことは、何となくわかったと思う。



 一般的なDMFの構造図


 マツダのメディア向けの広報資料には、こう書いてある。 「リニアに澄んだ力強いサウンドを提供するために、フライホイールに低イナーシャDMFを採用した。従来は1つのフライホイールだったが、プライマリーとセカンダリーの2つに分け、その間にバネを設け、2つの回転差、そして捩じりを使って回転数の変動を抑えることで、ギヤが発するラトルノイズを低減することで、車内で感じる音を低減した。」ラトルノイズとは、「製品に対して振動が加わった際に部材同士が衝突し、カタカタというような異音」のことである。 

ここが気になる。 ND1やND2は、単なる鉄の円盤たるフライホイールでクランクシャフトとドライブトレーンをつないでいる。しかし、ドライブトレーンからカタカタ言うようなノイズは発生していない。クロムモリブデン鋼の軽量版に替えても、レブリミットまでの間に変なノイズは発生しない。 一般的に、ラトルノイズというのは、「製品不良の際に」出る音で、「設計数値を満たす」正常な部品の場合は発生しないのである。 同様に7500回転まで回る高回転エンジンを搭載する1.5は、ND3において2.0と同じトランスミッションを組み合わせていても、一枚の金属円盤であるフライホイールを使用している。 RFもトランスミッションは変更していないから、高回転で高出力を与えた時に、現行のミッションには、ラトルノイズが発生するということが起きたわけだ。 後半の説明はまさに、DMFの構造の説明であり、ここに疑問点はない。

NDのマニュアルトランスミッションが、ぎりぎりの軽量化をされていることは、「スピリットオブロードスター」にも記載されているとおりだ。軽量で素晴らしいミッションだが、高出力に耐える特性がないため、最高出力170馬力を発生する124スパイダーには、NC用のギアボックスが採用されている。つまり、現行のトランスミッションは、ND3の2.0の「高出力」に長期間耐えられないのではないかという疑問が出てきたわけだ。NDロードスターに2.0エンジンを設計想定外に無理やり積む経緯があったことは、よく知られている。NDのリリース後、世界での商業的な面から2.0の高出力化が求められてきたことも厳しい条件だったに違いない。 チューニングカーならば、耐用年数のことを考えなくても良いが、メーカーの製品はチューニングカーと求められる次元が異なる。 それ故に、万が一を考えてDMFの採用を決めたのではないだろうか。


■どこを「低イナーシャ」にしたのか

 先に述べた通りDMFとは、フライホイールをエンジン側とミッション・クラッチ側にわけた2枚のディスクに分割し、フライホイール自体である程度の回転差を吸収できるようにして、騒音低減や燃費向上を図るものだ。しかし、1枚の鉄の板→複数の部品に分割して構成する以上、総重量の増加、ダイレクト感の希薄化、レスポンス低下、本体内部に円形のバネ・ダンパが介在することによる伝達トルクの低下というデメリットがあるとされる。スバルやポルシェのDMFは15kgくらいの重さがあり、軽量どころか、重量フライホイールだ。


 マツダ ロードスター RF 改良型「SKYACTIV-G 2.0」用 低イナーシャDMF

 マツダは、DMFに対して、「低イナーシャ」と言う言葉を付けてきた。マツダのDMFは、他のDMFと構造が違うように見えるところがある。写真を見る限りでは、全体的に薄く作られていそうだということと、ミッション側のフライホイールの直径が大きく、厚みが薄いことが見て取れる。この「ミッション側とエンジン側のフライホイールの直径が異なる理由」に、低イナーシャの秘密があるのだろうか。

 二つにわけられたフライホイールは、個々で見れば、シングルのフライホイールよりも軽い。 エンジンの回転数が高い時は、ギア側に取り付けたフライホイールの重量影響をうけないように圧着度を下げれば、相対的にクランクシャフトの負担は、軽量フライホイールを付けたのと同様の効果があることになる。 二つのフライホイールはスプリング(減衰装置)によって繋がれていて、中央部に挟み込まれたクラッチディスクが二番目のフライホイールと変速機の間で接続及び分離機能を果たすわけだが、回転数が低い時は遠心力でバネが外側に伸びないことを利用して、2枚のフライホイールが組み合わせる率を高めて相対的な重量を大きくするようにすれば、低回転域で慣性マスを大きくして、ドライバビリティを維持することができる。 そのために、二つのフライホイールの直径を変えたのかもしれないとみている。 しかし、前述のとおり、DMFを採用したそもそもの理由は、スポーツ性能の向上のためではないと思う。この通りの原理で動くなら、回転上昇はスムースでも、ドライブトレーンに伝わる軸出力が減らされてしまうということになるからだ。


■ND3の懸念

 DMFの装備で、軸出力が大きく下がることはないだろうが、単一プレートに対して、DMFは構造上一定の出力がロスすることは避けられまい。 好意的に受け取れば、184馬力の出力をかけた時にだけ異音が出るミッションを守るため、DMFを採用し、出力もレスポンスも維持した上でスムースで静かな走りを実現したと考えられる。 悲観的に受け取れば、ミッションが長時間の184馬力の連続負荷に耐えられないリスクを考慮して、レスポンス、ダイレクト感、軸出力の低下を覚悟の上でDMFを採用したとも考えられる。

 いつもの通り、どこにも自動車ジャーナリストは不在らしく、どの記事にも、試乗した誰もが広報資料以外のことを述べていない。(こんなことなら、マツダが全メディアの原稿を自分で書けばいいのだ) メーカー広報の発表の後、一定の期間は、ネガティブなことを書いてはいけないというメディアの下らないルールのせいだとも思うけれど、それは自動車会社の広報部門の一員になっているだけで、ジャーナリストだとは名乗らないでほしい。「自動車評論家」という名前が似合っている。

 NDの華奢なトランスミッションが、トルクの大きなターボの170馬力には耐えられないけれど、NAの184馬力には耐えられるということに納得がいく人は、DMFがここに書いた想定のような懸念がなく、ND3が数値通りの素晴らしいパフォーマンスを発揮できることを期待していいと思う。そして、軸出力の制限だけでなく、間にバネを挟んで伝達制御を行うDMFによって、MTならではのダイレクト感が失われてないことも。

Posted at 2018/06/15 20:25:53 | コメント(0) | トラックバック(0) | 自動車技術 | クルマ
2018年06月11日 イイね!

アライメント調整のススメ

アライメント調整のススメロードスターの足回りのチューニングは何から始めるべきだろうか。 それとも、メーカーが出してきたノーマルこそが、いかなる場合も最高なので、何も変更しないのが正解なのだろうか。

RFの場合は特にタイヤとボディの隙間が気になるから、車高を下げるところから始めるべきだろうか。まず、○○社のダウンスプリングを入れる? それとも、ブランド物XX社の車高調を入れたらいいんだろうか?・・と日々パーツのレポートを見て悶々としているかもしれない。もちろん、それも大事な楽しみ方だと思う。


走りを楽しみたくて、ロードスターを買ったのだから、まずは車高調と考えている人も多いと思う。 「ノーマルこそ最高」だなんて、ロードスターの理想と現実の設計を比較して見たら、そんなことが言えるわけがないことくらいはみんなわかっている。

一つ意識しておきたいのは、「車高調を入れる」というのは、何かの目的を達成するための「方法」の一つであって入れることが目的そのものではない。

「走りを楽しむ」というのは、これがまた、漠然とした内容であり、まず、楽しいというのは何かかというところである。これが、女性の場合は、「何言ってるんですか。”楽しい”に理由なんてないですよ。ほっぺたつねったら痛いことに理由がないのと同じでしょ」と悩まなくて済むらしいけれど。(いや、ほっぺたつねったら痛いのには理由があるだろう・・・)


 現実のロードスターの走りが十分に素晴らしいなら、より高いレベルを目指すべきだが、大抵の人は、何かしらロードスターにも「理想からの乖離」を感じて、楽しくないなあと感じているケースもあるようなので、今日は、「理想に近づけて楽しくする」ための第一歩を考えてみることにする。


もちろん、「理想のスタイルからかけ離れたタイヤとボディの隙間を埋める」というのも、十分納得のいく話だから、「まず車高を下げる」ことに進むことを考えようとする気持ちもわかる。しかし、私の場合は、車高を下げることよりもっと優先度の高いことがあったし、車高を先に下げてしまうと、優先度の高いことを実現することがより難しくなってしまいそうなので、まだ手をつけてないだけなのだ。


RFに車高調を入れた例(ビルシュタインB14)

私は、「意図した操作に応じて曲がってほしい・まっすぐ走ってほしい」ことを優先したかった。先に車高を下げてしまうと、この問題を解決するための基準となる拠り所が何もなくなってしまう。 私もいずれ適切な車高にしたいと思っているけれど、まだどのくらいの値にすべきか、結論が出ていない状態だというだけで、純正の車高が自分にとって最良だと思ってるわけではない。


クルマが曲がることに関する要素は非常に多く、ブログで書ききれるものではないので今日は細かいことは書かない。 しかし、感覚的に、ステアリングを切った時に以下の事象がタイヤ→ボデイ→サスペンションの順で発生することをイメージしてほしい。

①タイヤの向きが直進から、曲がる方向に変わる
②タイヤが進行方向に対して斜めになり、ゴムが回転しながら潰れて、斜め方向に摩擦が起きる
③斜めの摩擦の抵抗力によってボディの向きが変わり始める
④サスペンションがロールを始める
⑤片方のバネが縮み、反対側のバネが伸びる
⑥バネがびよよーんと動かないようにダンパーが支える

⑦クルマが旋回を始める

という順序で動く。ここで、ステアリングを切ってから、①~⑥までの事象の間、クルマは全く旋回を初めていないことに注意してほしい。


タイヤの摩擦抵抗とコーナリングフォース

■「楽しい」コーナーリングとは何か

コーナーに沿ってクルマを曲げるには、決まったお約束がある。 コーナーの角度に応じた速度に減速して荷重移動した後、ステアリングをぐいっと一回で切り込んでいる人を時々みかけることがある。 人間と違って、クルマは人より、せん断、曲げ応力の強度が高い物質でできている。言うなれば、カニに代表される外骨格動物みたいなものだ。 クルマに限らず、飛行機でも同様で、剛性のある硬質な物質でできている乗り物を曲げるには必ず先行動作(予備動作)を必要とする。この先行動作と、その後の旋回操作にぴたりと応じた動きをクルマがしてくれることを「楽しい」と感じるわけだ。 よく言われる「意のままに動く」というあれである。(感覚的に思った通りに走る、とは意味が違う)

航空機のライセンスを取る時には、一番最初に「運転(Drive)」と「操縦(Control)」の違いについて学ぶ。だから操縦士は操縦(Control)の面白さを知っている。自動車は一般には「運転(Drive)する」ものだが、楽しいのは、操縦(Control)できた時である。


コーナリング中のRF RS

クルマの場合、直進からコーナリングに入る際の切り替え点を作ってやらねばならない。ステアリングを少し切ると、タイヤの向きが変わり、スリップ角度がついてクルマは慣性の法則に従って斜めに滑りはじめようとする。しかし、タイヤとボディの間にはサスペンションがあり、この滑りをロールに変えてタイヤのスリップを旋回の動きに変化させていくわけだ。 つまり、タイヤを切ってスリップ角度がつき、サスペンションが縮むまで、一定のタイムラグがある。 ドライバはこの分だけ先読みして、ステアリング操作を開始しなければならない。 一旦、旋回を開始したクルマは、その後の旋回量を増やすことには、大きな操作量を必要としない。 必要な分だけ、ステアリングを切り増ししてやればよいのである。


■スムースに運転している人のステアリング操作

コーナーをスムースに曲がる人の運転を見ていると、ステアリングをたくさん切っていないことに気がつくだろう。 そして、数段階にわけてステアリングを切り込み、コーナーの出口に向けてスムースにステアリングを戻しているはずだ。 こうした運転のリズムは癖になっているので、交差点のような極低速で回る時ですら、無意識に先にサスペンションに行足をつける操作になっているはずだ。

ステアリングを持ち替える癖がある人が、「10時10分の位置に持ったままステアリングを回すように注意した方が良い」と言われるのは、コーナでの曲率を意識して持ち替えて、一気に切りこんでしまう人が多いからである。 ちゃんとわかってやってる分には問題ない。


■アンダーステアとは何か

ここまで理解できたら、アンダーステアの意味もわかると思う。クルマが旋回を始めた状態から切り増しをした時に得られる最小回転半径の旋回を行っている時に車速をタイヤのグリップの限界以内の範囲で上げた場合に、外側に膨らむ特性のことである。(オーバーステアはこの反対の特性)

決して、コーナーの手前でブレーキングして、荷重をかけて、エイッと切り込んだら、コーナーリングフォースが発生する時間がなくて、外側に膨らむ特性のことを言うのではない。 


■まず、アライメントを取るところから

こうした、クルマを動かすための普遍的な意図に対して、ロードスターがどこまで忠実に動くのかを知るためには、アライメントを設計値通りに設定しなくては、いかなる判断もできない。工場で生産されるクルマは、ロードスターを含めて設計値の通りになっていることはない。 工場の出荷時にスリップテストは行うので、前後でプラスマイナス0になるように設定はされるが、前後左右の値はばらばらになるのは当然だ。以下に、工場出荷状態の私のRFのアライメント状況を示す。




工場出荷状態のアライメント値

ロードスターは、他のクルマに比べるとアライメントの差異が小さい方で、もっと差異が大きいクルマもたくさんある。 さらに、ロードスターは純正の状態で、前後キャンバー、前後のトゥ、キャスターの5箇所をすべて調整できるように作られているのだ。 こんな市販車はほとんどない。 ロードスターを買ったら、まずやるべきことは、アライメントを正しい値に設定することだ。



設計で想定している基準値



ここから、どういうチューニングをするかは、その人の走り方や、どのような特性をクルマに与えるかでも変わっていく。 私は、下記のアライメント値を設定して、前後左右の剛性値を調整するために補強をしつつ、自分が目指す車両特性を作ろうとしている。何の参考にもならないと思うが、私のRFのアライメント値を掲載しておく。



現在のアライメント値(車高はRSの標準値から変更なし)



クルマのコーナーリングに興味がある人は、クルマが旋回する物理的原理を知るよりも、アライメントを取る場所(キャスター角度、キャンバー角度、トゥ角度)のプラス、マイナスの値がそれぞれ、クルマにどんな特性を与えるのか知るところから始めると、より足回りのチューニングが楽しくなると思う。




アラインメント調整中のRF
Posted at 2018/06/11 02:04:59 | コメント(0) | トラックバック(0) | 試乗記 | クルマ

プロフィール

「RFの後任のND2のNRA-Aが来ました。

マツダ製チューニングカーとでもいうのか、色々なところが改善されて、走らせていて楽しいです。特にステアリングの反力がしっかり計算されてアシストされていて、ステアリングフィールがとても良くなってます。」
何シテル?   04/27 21:12
zato787です。よろしくお願いします。 買い替えずに増車をした結果、スポーツカー3台持ちになってしまいました。保有車両が増えて来たので、車庫を思い切って群...
みんカラ新規会員登録

ユーザー内検索

<< 2025/9 >>

 123456
78910111213
14151617181920
21222324252627
282930    

愛車一覧

トヨタ スープラ GRスープラ RZ (トヨタ スープラ)
直6のMTに乗ってみたかったこと、A91になって、脚周りの動きがよくなったので、購入に踏 ...
トヨタ GRヤリス GRヤリス RC (トヨタ GRヤリス)
ハイパワー4WDスポーツに乗ってみたくて購入しました。 コロナ禍で試乗車に乗ることも難し ...
マツダ ロードスター ND2 NR-A (マツダ ロードスター)
ND1のRFからND2のNR-Aに乗り換えました。 *保有パーツ(未搭載) ■Engi ...
マツダ ロードスターRF マツダ ロードスターRF
長らくフリートにいた、RF-RSの登録を一時抹消し、各種のパーツを外して純正状態に戻した ...

過去のブログ

2023年
01月02月03月04月05月06月
07月08月09月10月11月12月
2022年
01月02月03月04月05月06月
07月08月09月10月11月12月
2019年
01月02月03月04月05月06月
07月08月09月10月11月12月
2018年
01月02月03月04月05月06月
07月08月09月10月11月12月
2016年
01月02月03月04月05月06月
07月08月09月10月11月12月
ヘルプ利用規約サイトマップ
© LY Corporation