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2018年06月07日 イイね!

ロードスターRF商品改良における、ATの問題の修正

ロードスターRF商品改良における、ATの問題の修正NDロードスター、NDロードスターRFが揃って、2018年の商品改良を6月7日に発表した。発売は7月26日からとなる。既に事前予約が多数入っており、今注文しても納車は秋口になるそうだ。前回の商品改良の発表は2017年12月14日だから、約6か月弱での大規模商品改良となる。昨年の12月に間に合わなかった商品改良をこの時期に持ってきたと考えた方がいいだろう。前回の商品改良は、メディアもほとんど報道せず、ひっそりと行われたが、今回は各メディアに展開し、試乗会も実施するなど広報にもお金もかけており、6/7の発表日に、各メディアから多数の記事がでてきている。


ディーラーでは、既に4月の中旬から現行型の受注は停止され、改良後モデル(通称ND3)の受注が始まっている。 ロードスターに対して、積極的に近代化、最新化の技術を投入していくことは、ロードスターというブランドが結果的に価値のあるクルマで居続けるためにも重要であり、私は積極的にこうした改良(を支持している。 世界中のロードスターファンは、フェアレディZみたいに、何年も長期間放置されることを望んでるわけはない。衝突安全性に対する強化、内装の選択肢の増加、エンジンの強化など、新たなロードスターRFの仲間が増えるきっかけにもなるわけだ。 RFはデビュー当時に欲しいと思った人に購入された後は、ロードスター原理主義に反する構造で作られていることで、ファンから「RFをロードスターと呼んでいいのか」と抵抗を持たれたり、幌に比べて付加価値の割に値付けが高すぎると思われていて、直近の販売台数は世界的に伸び悩んでいたからだ。 各国の市場調査でも、「安全性」と「スポーツ性能」といった商品力が欠けてることは明らかで、一度はとりやめた2.0エンジンの改良も、当初の計画以上に強化されることになった。



 ロードスターRF(新タン色内装)

 
私のRFは、3月生産の数少ないソウルレッドクリスタルのND2のRFでもあり、ネットでは、しばしば、最も悲惨な購入者とも揶揄される対象者でもあるわけだが、既に自分なりにシャシー等に手を加えて楽しんでいるので、今回は買い換えについて検討することはしなかった。

それは、次のロードスターの改定計画が既に始まっているからでもある。 ND4と呼ぶのかどうかわからないが、現在取り組んでいるのは、乗り心地と操安性の大幅な改良である。これは、サブフレーム/フレームの接続構造の見直しから始まり、バネとタイヤを柔らかく使い、衝撃の伝達速度をチューニングすることで操安性を向上さっせる新しいSKYACTIVEの考え方とも共通するが、ボディをしっかり固めて、脚を適切に動かし、ダンパーで伸び縮を押さえていくのは主にF1などレーシングカーで行われてきた手法である。 アクティブサスのような飛び道具を使うことはなく、相変わらずプリミティブな方法で物理的な理想値を詰めていくのはマツダらしい取組だと言えるだろう。私は、ロードスターRFが最も改良に注視すべき箇所は、エンジンや内装の色だとは思っておらず、シャシー構造だと思っているからだ。(しかし、市場で望まれているのは、高回転型のハイパワーエンジンの方だから、それを優先することに反対しているわけではない)



 新タン色の内装(私はもっとアイボリに近い色の方が似合うと思う)


さて、既にロードスターRFの主な改良点については、ブログに書いてしまったし、各メディアの試乗記も、エンジンの説明が中心だろうからその点については改めて述べない。 しかし、今回の改良に伴って話しておかねばならない課題があることを思い出して、このブログを書いている。(シビックセダン編が長すぎて、読んでもらえなさそうだから・・ではない(笑))

それは、RFの鬼門ともいえるATの改定についてである。


■ロードスターRFのATの問題

マツダは、「2.0のATには大きな欠点がある」ことを、RFを2016年の末に発売する時に既に認識していた。

RF開発のための時間がないことはもうずっと前からわかっていたが、マーケッティング部門では、「今度のRFはATを中心にメディアにアピールする」とまで言っている。 2.0の幌のATモデルに問題があることは、北米や他の地域からの報告で明らかになっていたけれど、2016年の年内に発表するためには、主力のATの発売を先送りすることもできない。 RFのATのために適切なギア比を調査してテストを行う時間も、変速タイミングの設定を調整する時間も、生産工程を変更する時間もなかったから、RFの2.0のATは、幌の輸出モデルと同じ仕様で生産するしかなかったのだ。

「ロードスターRFは、ATが向いている」と多くのメディアで発表された。 6/7に発表された多くの報道を見ても、ほぼマツダから提供されたテキストを編集して発表しているだけのメディアがほとんどであり、言ってみれば、「広報の言うなり」なのである。 メーカーの広報資料の裏付けを取ったり、試乗で何かを発見しようと取材努力を続ける”ジャーナリスト”(評論家ではない)はごく少数しかないない。 ロードスターを買う人の中にも、家族のMTに対する運転能力や、「一緒に出掛ける人と二人で運転できること」を期待することから、MTを買いたくても買えないという人はかなりいる。やや値段の高いRFを売るには、少し年齢層の高い人に訴えなければならない。そんな人にとって、RFのATは、一つの選択肢であったから、幌に比べるとRFのATの比率は高くなった。



 NDロードスター AT操作部分

ところが、マツダはFR用のATを持っておらず、ロードスターのATには、SKYACTIVE-Driveが使えない。 よって、アイシンから変速機の供給をうけるわけだが、2.0エンジンとの組み合わせには大きな問題があった。同形式のATは、BRZ/86にも供給されていて、こちらでは変速時に同様の問題は起きてないから、ATを供給しているアイシンの問題ではないと考えられる。


発進、停止そのものは問題はないが、まず、シフトアップ、シフトダウンのタイミングが悪すぎる。SKYACIVE-Driveのように、賢い変速には及びもつかない、タクシーのごとくシフトアップしていく愚かな変速をするが、これはアイシンAWの変速機の規定的な設定である。 アイシンAWからマツダに供給されているモデルは、ATの変速タイミングを変更する設定機能があり、ノーマル/スポーツのように複数のモードを設定することもできる。 ロードスターのATにも「SPORT」スイッチが設けられている。 しかし、デミオなどに搭載されている、SPORTモード付きのSKYACTIVE-Driveの制御と比べるまでもなく、これを押すことでようやく高回転が使えるようになるだけで、シフトダウンも、坂道でのエンブレの制御もまるでトヨタの実用車と同じレベルになってしまうのは、設定を煮詰めず、アイシンの基本設定値に多くを依存しているからだ。 

アイシンAWは、適切なATの変速タイミングの解決方法として、多段化を推奨している。アイシンの最新の変速機は、8速と10速であり、状況に応じて細かく変速して、状況に応じてエンジンの有効な部分を使う方式に変えることを推奨している。 つまり、6速では設定をどんなに頑張っても、多段で設定を練ったクルマには勝てないという意味である。



 SPORT スイッチ(見かけは同じでも、動作はSKYACIVE-Driveとは大違い)

「設定」の問題は、単に時間がなくて先送りした問題だともいえるが、もっと深刻な問題は、シフトアップ/ダウンの際に、回転数が合わないことだ。電子制御をしているのだから、回転数を合わせて、すぱっ、すぱっと変速すればいいものを、シフトアップする瞬間、トラクションが抜けてトルクコンバータに接続すると回転数が上がり、回転差を持ったまま次のギアにつながるという現象が起きていた。変速機からの変速に必要なスロットル調整の信号に対して、パワートレイン側が対応できず、ぬるい変速しかできていないわけだ。

1.5のATではこの問題は起きない。問題がファイナルギア比にあることもわかっていた。1.5のATは、4.100という低いファイナルを採用しているが、2.0は主要マーケットである北米における燃費値を重要視せざるをえなくなったため、3.454という高いファイルを組み合わせることになったのだ。 誰もが、これは失敗作だとわかっていたが、当時のNDロードスターに対するマツダ社内の日米の温度差も、この失敗の修正の優先順位を下げてしまった。

日産の広報はその狡猾さでしばしば批判されるが、マツダの広報もまた、2.0ATについては、変速に欠点を抱えたままのATモデルを「お勧め」として記事を書くようにメディアに資料を配布したのだから、この罪は重い。 結局どの自動車雑誌も評論家も、AT変速の不完全さについて指摘することなく(むしろお勧めだと言って)、今日まで来ている。 どうやらマツダは、ATの多段化に積極的ではない。SKYACIVE-Driveも今のケースのまま7速に拡大できるのだが、それをやろうとする気配はない。 私は、ロードカーの多段化に賛成で、特にディーゼルにおいては、多段化は意味があると思うだが、マツダはそう考えていないようだ。 アイシンAWには、前述のとおり、もっと完成度の高いFR用の8速AT、10速ATもあるが、それを採用する気配もなく(サイズ的な制限事項の影響が大きいとはいえ)、「変速機は6速で十分」と考えている節がある。


 アイシンAWのAT(最新の10速AT レクサス車の一部に採用)


ATの多段化に興味がなさそうなことは別にして、今回、ようやくATの制御指示に対して、適切にパワートレインが反応するようにファイナルギアを置き換えることができた。今回の商品改良の説明の中でも、シフトアップする際に回転数だけが上がってしまう現象を抑制するため、ECUを改善し、エンジンとトルクコンバータの回転が同期しやすいように、ファイナルギアレシオを、在来型の3.454から3.583と、3.7%ほどローギアード化している。この「バグ修正」は、世界中の全てのNDロードスター2.0のエンジン変更に合わせて行われる。あまり大きな変化になっていないのは、新エンジンが、低中速を含めて一定した出力を発揮できるようになったことも大きい。 新エンジンとの組み合わせでも、やはりこの問題は解決せず、今回はちゃんとファイナルを修正してきた。


 ロードスターRF(新タン内装の運転席)


また、「適当すぎる」と言われていた、「SPORT」モードと、ノーマルモードの変速パターンの制御にも、今回改定が行われた。 コーナリング時や坂道での変速タイミングや、トルクコンバータの制御による駆動力の伝達制御によって、変速タイミングが少し改善された。(もうこのAT自体が古いわけで、アイシンAWの別の製品を選ぶべきだと思う)この「バグ」以外に、6速ATだと、エンジンの良さをが楽しみづらいほど、ハイギアードという問題はまだ残ると考えている。MTの場合、1.5と2.0にギア比の差はないのに、ATは北米の燃費基準のせいで、最適なギア比が与えられていないままなのだ。1.5と2.0を6速のギア比で比較してみる。(RFの2.0も輸出用の幌2.0もギア比、ファイナル共に同じ)

◆1.5の場合
MT:1.000×2.866=2.866

AT:0.582×4.100≒2.386
の違いがあるので、MTとATと比べると20%ほどATがハイギアード


◆2.0の場合
MT:1.000×2.866=2.866

AT:0.582×3.583≒2.085
の違いがあるので、MTとATと比べると37%ほどATがハイギアード

よって、2.0のATはまだハイギアードすぎるというのが私の認識だ。
(マツダは、エンジンの発生トルクの差異が1.5と2.0の間で33%~35%あるので適切なギア比だと言っているが、それはつまり、2.0の高トルクを楽しめないという意味でもある)


この改良をもって、RFはATをお勧めするなどとは言わない。 しかし、商品改良前のATモデルとくらべて、新モデルの変速が、すぱっと回転を合わせて変速できるようになったことは大きなメリットだ。特にパドルシフトを使って、手動で変速した時にその違いをよく感じるだろう。 今回の改良では、エンジンの大幅な改良と、安全装備の充実、内装の選択肢の増加に目を奪われがちだが、こうした「バグ修正」も数多く行われている。



 ロードスターRF(外観とシャシーには変更なし)


■商品改良によるユーザーの価値

「そんなに、頻繁にモデルチェンジされたら、いつ買っていいかわからない」という意見もあろう。しかし、自動車という工業製品はそう簡単に完全に設計生産できないのは、世界中の独立した自動車メーカーの数を考えれば、簡単に理解できる。世界中どの自動車メーカーでも、3万点以上の部品で構成されるクルマを、完璧に生産できているなどというメーカーはない。発売前に発見された課題に対しても、妥協や、先送りや、暫定対処がたくさんある。 しかし、多くのメーカーは、主力車種でないと、そうした課題リストにリコールレベルの物がないとわかると、それを丸めてゴミ箱に捨ててしまい無視してしまうのだ。 マツダは、細かく商品改良を繰り返す。それは、「前のモデルにこんな問題があったのに直してなかった!」と否定的な捉え方をされることをわかったうえで、よりよくしていこうとしている。 それは、ユーザのためでもあるが、マツダで働く人々の心の負担を軽くすることでもある。



 ロードスターRF 商品改良モデル


だから、商品改良をやってくれるメーカーを応援することは、そのクルマを育てて行く上で大事なことだ。マツダのような160万台規模の会社が、大して売れもしないロードスターを30年も途切れることなく作り続けていられるのは、こうした改良がユーザーに受け入れられるからと信じているからである。 NAがデビューした後、雨後の筍のように発生したロードスターのフォロワー達のうち、30年後の今、一体どのくらいのモデルが今も継続できているのか。 その事実が全てを物語っている。

Posted at 2018/06/07 18:50:10 | コメント(0) | トラックバック(0) | 自動車技術 | クルマ
2018年06月06日 イイね!

ハロー、ダウンサイジングターボ

ハロー、ダウンサイジングターボ北米出張に行くことになった。これから、しばらくの間、定期的に通わねばならない。 本来の行き先は、ノースカロライナ州のある街なのだが、今回はイリノイ州のシカゴが目的地である。

前半がクルマと関係ないグルメ系の話ばかりで混乱するかもしれないが、本題はシビックセダンである。

他の会社なら、自分の好きな航空会社の便が選べるのだろうけれど、そんなわけはなく、会社から渡された航空券は、ANAの羽田からシカゴまでの直行便である。飛行時間は11時間と長距離便ではあるが、ファーストクラスの航空券が支給されるはずもなく、いつも通りの出張者向けの座席である。このシップは、スターウオーズ塗装機なので、ななめ前の席にはマスターヨーダがひょっこり乗っていたりする。


 マスターヨーダ

 移動中には仕事をしない主義だが、さすがに11時間の所要時間の間、何も仕事をしないというわけにもいかず、備え付けのエンターテイメントシステムの映画やビデオもあまり見ないので、仕事用のドキュメントを見る以外は、食事をするか寝るかである。旅客機だから、操縦は他の人に任せて、上げ膳、据え膳で食事をして、寝るというのは良いものだ。

しかし、機内食はグルメの話からは、程遠いだろうと思われるのもしかたない。機内食はまずいから食べないと言う人もいるけれど、結婚式の披露宴レベルくらいのものは出るし、11時間食事抜きもつらい。作る側も、制限の多い中で精一杯美味しいものを作ろうとしているので、食わず嫌いせず、機会があれば食べてみることをお勧めする。 ANAの北米線の場合、和食と洋食3つのメニューから選ぶことができて、アミューズ→前菜→メイン→デザートの順で提供される。 写真は前菜とスープが出されたところ。


 機内食(前菜とスープ)


 長距離便の場合、食事は2回出るが、2回目の食事の時間は自分で決めてよいし、何を食べるかも好きな物が選べる。(最初の食事も頼めばずらしてくれる)ANAでは、機内で出される一風堂のラーメンに定評がある。正規の朝食セットはキャンセルして、ラーメンにフルーツと、レストランよねむら監修の筍のステーキを合わせて朝食とした。 ANAの大型機(シップは、ANAの大型機の主力機である、Boing777-300ERであった)は、ファーストクラスでなくても、寝台特急のように座席がベッドになる仕様になっているので、椅子を全部倒すと180度フラットになるし、その上に専用のマットを敷いて、毛布をかけて寝ることができるようになっている。(777-300ER以外に787型機の一部にも同様の座席を装備したビジネスクラスがある)


 ラーメンとフルーツ(飲み物はペリエ) 
 (各写真内の「Foodie」の刻印は、料理用写真ソフトの名前)


 時差があるので、午前中に羽田を出発しても、出発時間より前の同じ日の朝にシカゴに到着する。シカゴは、緯度が函館と同じくらいなので、5月でも気温が12度程度とかなり寒い。 街は碁盤目上の道路できれいに区画されていて走りやすく、ハイウエイで街と街をつないでいる。 今回は、ホンダに関連する仕事なので、お迎えのクルマも当然ホンダのクルマであった。 米国ホンダと言えばアコードかと思いきや、北米で大量に売れている現行シビックのEX-Tである。



 シビックEX-T(北米モデル)

 シビックEX-Tは、日本と同じシビックセダンの1.5Lターボモデルの方で、遮音性がよく、目立った突き上げも嫌な振動もなく、リアシートは思いの他快適であった。 シビックセダンは、5ドアハッチバックのようにルーフがトランクに向けてなだらかに傾斜しているファストバック形状なので、後席の頭上方向はこぶし一つ入るかどうかの余裕しかないが、1800mmの全幅を生かして、横幅も座席間の前後のスペースも広く、頭上空間を除けば、大柄なアメリカ人でも快適に過ごせるだろう。

北米のシビックセダンは、この1.5Lターボと2.0LのNAが併売されている。ターボには日本にはないプレミアムガス仕様のMTもある。(SIと呼ばれる。日本のハッチバックと同じ構成と考えてよい) ガソリンのオクタン価の関係で、北米でもレギュラー指定の1.5Lターボの出力は174馬力、22.4kgmと日本仕様とほぼ同じである。2.0LNA版は、158馬力、19.0kgmのトルクと、全般的に1.5Tの方が高出力であり、燃費もEX-Tが32 city/42 highway/36 combined MPG ratingと、NAの31 city/40 highway/34 combined MPG ratingとNAに勝ることになっている。(日本の単位に直すと、都市・高速の組み合わせでターボが15.3km/L、NAが14.5km/L)


 シビックEX-T(北米モデル)


 この仕事は、時差ボケとは切り離せない仕事なので、人それぞれ、時差ボケを解消するためのやり方があるのだが、初日は、翌日から始まるスケジュールに向けて、実質的に時差ボケを解消するための様々な活動が中心である。 いかに寝台特急仕様の座席であっても、熟睡できるわけではないので、体内時計を調整する時間がいるわけだ。 手続きを終えると、ホテルのキーとクルマのキーが渡された。仕事では、シカゴの郊外に行くので、ホンダがクルマを用意してくれたわけだ。 クルマはお迎えに来た時のクルマと同じ、シビックのEX-Tであった。



 シカゴ市内(360タワーより)

 シカゴは米国の3番目の都市で、中心街は、NYの少し古い町並みの雰囲気と、SFOの新しい都市設計が合わさったような街で、非常に走りやすくかつ分かりやすい街である。五大湖のうちの一つ、ミシガン湖に面していて、淡水魚や蟹の養殖の他、近隣から肉、野菜、魚介類が届くので、グルメの街でもある。 アメリカに観光旅行に行くという人は少ないかもしれないが、アメリカも意外とリラックスできる街がたくさんある。 シカゴはアメリカ有数の都会であるが、その割に有名なのが、シカゴピザという庶民的な食べ物で、ナポリピザに比べると皮も具も厚いわけだが、素朴な味で美味しい。(値段も安い)アメリカのチーズは味が濃いめなので、チーズを含まないクラッシックの方が美味しいと思う。 



 シカゴビザ(写真はお勧めじゃない方のチーズ入り)


 夕食は、地元のスタッフのお勧めのお店のステーキハウスである、「RPMステーキ」を予約してもらった。このステーキハウスは、シカゴ市民に人気があり、月曜日の夜だというのに、予約でいっぱいであり、19時には、お店の中も空席は一つもなかった。



 RPMステーキハウス(この後、すぐに満席になった)

 注文は、もちろんシグネチャーメニューの低温熟成肉の、ニューヨークストリップ16オンスである。 米国のステーキはやはり美味しい。このお店は、アメリカのビーフだけでなく、輸入した和牛や、米国産和牛の肉もある。和牛も美味しいと思うが、脂肪分が多い分たくさん食べると牛脂の味に飽きてしまう。また、牛脂の味も、和牛は餌が穀物中心なので、牧草の餌を多く食べている米国のプライムビーフとは、脂肪の味も異なる。どっちが美味しいと片方に決められるものではないが、米国のステーキの調理方法にあっているのは、やはりプライムビーフで、表面がパリッと焼けて、内部にじっくりと熱が浸透した(火が通ったのではない)レアを堪能したければ、アメリカの熟成プライムビーフをお勧めする。



 ニューヨークストリップステーキ(低温熟成肉) レア

ステーキのサイズをダウンサイジングする傾向はないようだが、シビックは、北米では、「ダウンサイジング」なアコードもしくは、「お買い得になったシビック」として捉えられている。この地でのホンダの主力はアコードであったけれど、長年のライバルのカムリ・ハイブリッドに燃費で及ばないアコードは、北米での苦戦を強いられることになった。一方で、ハイブリッドを中心に据えたカムリは、2017年の販売台数は2016年に比べてやや減ったものの、34.7万台を販売していて、街中でもしょっちゅう見かけるし、シカゴのタクシーの主力もカムリハイブリッドである。 カムリに対して、アコードは30万台とカムリより販売台数は少ない。


  カムリ(北米仕様)

5月23日に発売されたアコード・ハイブリッドがどこまでカムリ・ハイブリッドを追い上げるかが注目されている。ホンダは、幸いにもシビックの販売台数が増えたことで、アコードが持っていたホンダの市場を手放さずに済んだ。 価格帯が28,000ドルから始まるアコードに対して、21,400ドルから始まるシビックだがから、利益は減ってしまうが、市場を手放すよりはずっとましだ。しかし、本来なら利益率の高いはずのアコードは、2017年の販売台数を確保するため、2017年は多額の値引きをすることになった。 この販売方法を続けると、アコードの市場での価値を毀損してしまうため、2018年は、アコードに対する販売促進費の積み増しは行われていない。 2018年5月にハイブリッドモデルを投入して巻き返しを図る。



  アコード(北米仕様)

シビックは、Cセグメントのクルマだから、同じクラスのヒュンダイ・エラントラやキアのフォルテと勝負をすることになる。 結局CIVICの優位は、クルマ自体よりも、Honda Sensingを搭載した状態で、韓国製のライバルに価格で5000ドルほど勝り、思いっ切ってワイドにした車幅から得られる室内の広さも魅力的に映っていると思う。 シビックは、走りの面でも、少なくとも上記2車種の韓国車にも、MAZDA3にも勝っていると思うものの、このクラスのユーザは、「乗り出し価格」を重要視する傾向があると言える。


 シビックEX-T

北米においても、Cセグメントにおける販売台数の大小を決めるのは、「値引きの多寡」だ。日本では、韓国車の評判は知られていないが、「日本車ぽいクルマ」だと認識されていて、品質も、性能も、広さも、燃費も悪くもなく、デザインは優れている、というのが、ヒュンダイの捉え方だ。 何より、値引きが抜群で、20,000ドルの本体に安全装備や必要なオプションを付けて、28,000ドルになっても、そこから平気で4,000ドルくらいは引くのだ。 シビックが21,000ドルで、安全オプションなど必要なオプションをつけて、25,000ドルであっても、韓国車よりも高くなってしまう。



 ヒュンダイ エラントラ(コの字型のヘッドライトと5角形のラジエターグリルが・・・どこのスバル?)

ヒュンダイの値引きがどのくらいすごいか、を例えてと言うと、「220万円のインプレッサにオプションをつけて、乗り出し300万円、そこから平均で45万円は値引きます。」というレベルだ。、そんな値引きを繰り返したら、日本ですら、街中がインプレッサだらけになってしまうだろう。 シビックは利益率がアコードほど高くはないので、アコードより値引き額は小さいが、安全装備のオプションの思い切った安さ(1000ドル)に助けられて、総支払額での価格で対抗できていると言える。 スバルが初期のアイサイトを10万円と低額で売り、市場を捉えたのと同じように、HONDA Sensingを拡販しようという方針でもある。


肝心のシビックを一言で言うならば、いいクルマだと思う。 何より、シャシーが素晴らしい。TYPE-Rは、エンジンからシャシーまで最高の一台だったが、少なくともシャシー(ボディ+サスペンション)の乗り味は、「昔のシトロエン混ぜのTYPE-R」と例えても良いくらい、よくできている。つまり、路面とのあたりが柔らく、最初の衝撃の吸収は、日本車らしくふわっとしているが、その後にふわふわは継続せず、ふわ・ぴた とショックが抑えこんでしまう。次に優秀なのは、ロールと旋回制御で、長大なホイールベースにも関わらず、前後のロールが遅れて発生するような、バスのような動きにならない。これは、前後左右の剛性の制御がうまくできている証拠で、前後左右の剛性バランスが適切かつ、高いレベルでまとまっているので、左右の旋回の際に、前後のロールや旋回の仕方に違和感がないのだ。

ステアリングは、電動パワステのピニオンギアを、ステア用と補助動力用にわけた2ピニオンギアという凝った仕組みを持っていて、取り付け剛性も含めてよくできていることも、好印象を与える。


 シビックステアリング

そして、最大の売り物が、HONDA Sensingだ。 衝突防止安全装置と、レーダー・単眼カメラを使用した追尾式のオートクルーズはアメリカの道路でも便利である。レーン保持機能も、道路の狭い日本では安心した走りに役立つだろうし、米国でも、ハイウエイで道路の線形にあわせてステアリングしてくれるのは、見知らぬ高速道路のドライブを快適にしてくれる。


 HONDA Sensing


内装は、TYPE-Rと同様にギミックが多いところは好みではないが、すぐになれるし、こういうのが好きな人もいるだろう、としか言いようがない。表示される数値がおかしいとか、見えないとかいう問題はないから、シビックのインパネは、こういう文化だと思ってあきらめるしかない。仕事で使うホンダ製品のインパネは、そこまで独自のデザインになっていないし、他社製品に置き換えることもできるから、シビックのような心配はなさそうだ。



 シビックインパネ

変速機は、CVTにトルコンが組み合わされていて、ATっぽい感じもあり、コンパクトカーのCVTほど極端に、回転数だけ上昇してクルマは前に進まないというような生理的に嫌な動きは押さえられてはいるものの、それは「CVTの割には気にならない方」と言うだけのことで、やはり車速が一定でも、必要トルクに合わせて回転数だけ変化するから、変速機として魅力的なわけではない。 むろん、CVTに伝達効率の不足も変速ショックもないから、何か大きなネガがあるというわけでもないのだが、「FFなのに、動力の伝達感がかちっとしてなくて、隙間になにか入っている」感覚はぬぐえない。 TYPE-Rはブリッパー付きのMTだから、この問題はない。


 変速機(CVT)


エンジンは、賛否両論あるだろう。シビックの最大パフォーマンスは、ライバルを上回っていると思うから、一瞬の加速などでスロットルを深く踏んだ時にパフォーマンスを楽しみたい人には向いている。 1300kgのシビックにとって、1500ccというのは、ダウンサイジングエンジンというほど、小さすぎるわけではなく、低排気量ダウンサイジングターボに付きまとう低回転でのトルク不足の痛痒感はない。しかし、実際に乗ってみると、最初はドライブフィールに違和感を感じた。



 1.5ターボエンジン(日本仕様)


自動車技術としては、直噴のターボをレギュラーガソリンで実現し、カタログ上、1700回転~5500回転まで最大トルクを発生するなど、VTECの効果も含め、スペック上は、さすがエンジンのホンダと言ってやりたいところだ。 しかし、最良のターボエンジンの一つである、TYPE-Rの2.0ターボエンジンと比べるまでもなく、このエンジンには、やはり無理がある。 カタログ数値を引き出すように、ブーストメータの過給圧のバーの動きに注意しながら、スロットル開度を調整していけば、確かに2000回転あたりから、5500回転まで十分なトルクを発生し続けるけれど、公道でそんなことを意識し続けて乗ることはできない。


直噴ターボなのに、低オクタン価ガソリン仕様だから、アクセルのツキが良くないのは仕方ないし、低回転でしばらく運転をしたあとに、加速するためにぐっと踏み込むと3000回転くらいに達するまでの間に、明確なターボラグを感じる。 3000回転以降は、スロットルを踏んでいけば、十分な過給がかかり、パワーも出てくるが、瞬間燃費計の数値はかなり悲惨な値を示すことになる。 しかし、このエンジンを生かすために必要な、重要なモードがあることをこの時点では意識していなかった。このことは、結論で述べる。


 シビックEX-T


シカゴの街中から、片道40kmほど離れた職場まで、ハイウエイと市街地を半々、交通ルールを守って走行した場合の燃費は、日本の表記に直すと、13.4km/lで、同行した同僚が乗っていた、2.0のNAシビックは、13.8km/Lだったから、ダウンサイジングターボの方が燃費が良いということはないと思う。上記の計測は5日間走行した時の満タン方で計測したものだが、車載の燃費計でも、5日間、ターボがNAに勝つことはなかった。 



 シカゴストリート


■結論
北米でシビックセダンを走らせてみて、売れる理由がよくわかった。セダンの人気がない日本でもかなり売れるのではないかと思う。(実際にかなり売れているようだ)

このクルマは、ロボットチックな外装デザインを含め、アメリカ市場のマーケットリサーチとライバル車の分析から生まれたが、同時にTYPE-Rという稀有な優秀な妹の存在のおかげで、Cセグメントのクルマのベンチマークであるゴルフを超えるハンドリングとステアリングフィールまで得た。ギミックの入ったインパネとが受け入れられたように、直噴ターボエンジンの特性もまた、アメリカ人に受け入れられたのだ。(なお、インパネに対するユーザの印象は意外に悪くないようだ) 内装に高級感はなくとも、縦横に十分に広い。

エンジンについても、大きな不満は聞こえてこない。むしろ、このターボエンジンは、シビックにあっているのかもしれない。数日間乗ると、このエンジンは、できるだけ過給をせずに、燃費効率の良い低負荷領域で動かそうと努力していることがわかる。そのプログラムを意識せず乗ると、スロットルレスポンスが悪いと感じ、レスポンスの不足を補おうとしてスロットルを踏むと、今度はターボラグが出てしまい、結果的に燃費が極悪になるという悪循環に陥ることになる。 最大トルクを低回転から高回転まで出し続けようなんて走らせ方も、多分間違ってる。 


  ECONボタン

最も適切な処置は、ECONボタンを押すことである。 ECONボタンは、他のクルマのエコボタンとは異なり、最大出力を絞ってしまうものではない。スロットルの開度変化に対する、出力変化を緩やかかつ滑らかにする、つまり、ダウンサイジングターボが得意とする、低負荷領域をうまく使わせようとする設定であるので、まずECONモードに設定して、このエンジンの特性に慣れる必要があるだろう。 市街地から巡航まで、できるだけ低負荷運転を行い、必要な時に踏み込んだ時は、過給をかけてターボパワーを使うというのが、正しい使い方のようだ。 シカゴは、最高気温が12度と寒かったので、冷房は必要なかったが、ECONモードの場合は、エアコンのコンプレッサーの使用を抑える制御はするので、夏にエアコンが効かないなーと言う時は、ECONをオフにする必要がある。 NA版にもECONボタンはあり、ターボモデルと同様に押して運転する方が燃費が良くなる。


Cセグメントのセダンは、日本には市場がないとみなされて、アクセラとインプレッサを除けば、ほとんどまともなクルマがない状態だ。(まもなく、新型カローラが乗り込んでくる)しかし、実はセダンのマーケットは少し違う所に存在していたのだ。 シビックセダンは、世界の市場において、大型化しすぎたDセグメントのクルマに対して、適当なサイズのDセグメントのサイズのクルマだと捉えられたように思う。シビックのボディサイズは、Dセグメントの代表格である、現行のBMW3シリーズや、Cクラスとほぼ同じなのである。 だから、北米ではCクラスの大きさに見えるMAZDA3は売れなくても、シビックは売れたのだろう。  そう考えると、日本市場でも伸びを見せることが期待できる。現在、300万円以下で、DセグメントとCセグメントの間の適当なサイズで、安全性が高く、ホイールベースが長くてスタイリッシュで、実用性もあるセダンボディのクルマと言うと、シビックセダンしかないのだ。


 シカゴストリート


私は、「さらば、ダウンサイジングターボ」に書いたように、燃費を重視するならば、自然吸気の適切なサイズのエンジンの方が、使い方にストレスはないし、平均燃費も優れているという認識は変わらないけれど、ECONという電子制御スロットル付きのダウンサイジングターボならば、ユーザはそこまでエンジンの使い方に気をつかわなくてもよくなる。 ECONとセットで考えた場合、燃費を意識したターボエンジンの存在を全否定する必要はないだろうとも思った。 ドライビングプレジャーは、NAの方が上だと私は思うものの、ターボかライトサイジングかの決着は最終的に市場が決めることになるのだ。 今のホンダは、「カタログ燃費が良いVTECターボの方が、ただの直4より価値がありますよ」とユーザに訴えて商品価値を高めたいのだろう。アメリカでは、2.0のNAと1.5ターボが併売されるが、1.5ターボの方が人気がある。


ここにある、「ただの直4」と「VTECターボ」どちらが、あなたのシビックですか? と女神様に尋ねられたら、

「VTECターボの方です」と答えるアメリカ人に同意するしかあるまい。 だって、値段まで同じなのだ。



 シビックSI(ハイオク仕様1.5ターボ)
Posted at 2018/06/06 01:16:28 | コメント(0) | トラックバック(0) | 自動車技術 | クルマ
2018年05月28日 イイね!

新アクセラのリアサスペンションの秘密

新アクセラのリアサスペンションの秘密「新型アクセラのリアサスペンションは、トーションビーム(TBA)になる」

MAZDA SKYACTIV Gen2の最初の一台であるアクセラのサスペンション形式がわかると、自動車業界では一つのネガティブな話題になった。多くの自動車ファンは、「コスト優先のTBAかよ」とか「マツダは終わった」と予想通りの反応を口にするようになったし、ジャーナリストや専門家ですらマツダの技術者の意図を正しく捉えられた人は少ない。

SKYACTIVE-Xエンジンとボディデザインの方は、わかりやすい話題になったので、多くの人が認識しているが、SKYACTIV ビークル・アーキテクチャーを理解しようとする人はほとんどいないし、SKYACTIV Gen2を理解しようとする人はもっと少ない。

今日は、Gen2の新TBAサスペンションに隠された秘密を探っていくことにする。



SKYACTIV Gen2試作車

■現在のマツダの状況

技術論に入る前に、マツダの経営戦略とGen2は大きな関連があることを先に理解しておきたい。
今日は、マツダの経営分析の話をするつもりはないが、マツダの経営は安泰というわけではなく、北米では自信のあるCXシリーズでさえ、多額の販売奨励金を投じないと数が売れないことが大きな衝撃になった。つまり、他社よりも魅力のあるクルマをよりアフォーダブルに提供する必用があり、さらにトランプ政権の政策を見れば、日本で作って輸出するというビジネスモデルには、大きなリスクが存在することが明白だ。マツダの次期戦略におけるSmallモデルの中心的な車種であるMazda3は、ライバルより魅力的でお買い得なだけでなく、日本、北米、メキシコ、タイの工場で生産・販売できる設計のクルマでなければならない。
※注:2018年1Qの北米の売上状況は、新型CX-5、CX-9が前年比20%以上増加して、前年度21.8%増 販売管理費の使途状況は不明



北米仕様 現行MAZDA3


■なぜTBA形式をを選んだのか

サスペンションの目的は、路面や状況の変化に関わらず、タイヤの接地面変化を起こさず安定して路面に密着させ、路面からのショックの入力を吸収していなすことだ。 もしTBAに構造が単純で解析しやすいという利点があるなら、ネガを発生する状況を把握するのはより容易になる。

サスペンションの解析でもコンピュータシミュレーションが決定的な役割を果たした。MBD(Model Based Development)の活用である。得意とするジャンルを限ってやればやるほど、コンピュータの能力を生かすことができる。スーパーコンピュータに過度な期待をしてもだめで、コンピュータの計算は、人間が想定できている世界(モデル)の中で繰り返し高速計算をして最適解を出すのだから、MBDで解析するならば、要素は少ないほど早く最適解に達する。というのは当然のことだ。


サスペンションのタイヤ取り付け部分の剛性を格段に上げてやり、タイヤの左右間を結ぶ鋼材を「適切な厚さ」で仕上げて、力のかかる向きと速度を理想通りにコントロールするには、どういう形状が必要なのかをMBDで求めたのだ。 「商品力が下がる」という指摘は理解している。しかし、マツダの次の戦略である、Small Vehicleグループを成立させるには、軽量で構造が単純ながら、次世代の走りを実現できるサスペンション構造が必用なのである。 カタログに「前後ダブルウイッシュボーン」と書くよりも、ネットの口コミに、「新アクセラの乗り心地はすごく良い」と書かれる方が実は効果的なのだ。



SKYACTIVE ビークル・アーキテクチャーによる、サスペンションの役割


■サスペンションに期待すること

Gen2では、従来のバネ上へ伝わる力の大きさ(最大値)を衰滅させて低減する考え方から、バネ上へ伝える時間をコントロールして遅れなく滑らかにする考え方に変わった。 たとえば前輪が突起物を踏んだ場合、従来よりも早くタイヤを動かして力全体を滑らか吸収するようにしたいということだ。 巨大な重量を持つジェット機が着陸する時に、着地速度を調節して滑らかに滑走路に接地する方法と同じ考え方である。



シャシーの進化(新Mazda3シャシー)


この目的達成するには、3つの課題を解決せねばならない。

①路面から受けた力によるサスペンションの支持剛性部分のブレをなくす。
②タイヤの上下バネ運動を低減した上で衝撃を吸収する。
③②と同時に上下の入力をより早く適切な時間で滑らかに増加させるるために
 サスペンションの取り付けアーム角を拡大し、接地面を適切に制御する。

「本当にTBAでは、タイヤの位置決めと振動遮断の両立はできないのか」

という疑問から、Gen2のサスペンション形式の議論は始まった。


■TBAの長所と短所

サスペンション形式に、マルチリンクなどの複雑なリンクを持つ構造を用いるのは、様々な車両の状態に対してタイヤを接地させるバリエーションが多く取れるからである。 一方で、リンクが増えるとそれらを接続するブッシュのゴムの遅延が発生するので、情報の伝達速度も遅延するという欠点がある。また、リンクの設計を誤ったり、時系列を経ることでこれらのリンクの組み合わせにずれが発生すると想定外の動作をしてしまう。 これを封じるためにレースカーなどでは、乗り心地や路面の荒れへの追従性を無視して金属ピロボールを使って遅延とずれを防ぐわけである。 マツダだけでなく、他社も複雑なマルチリンクの構造に発生する様々な応力変化をスーパーコンピュータでモデルをでシュミレーションして、適正化を図って設計しているけれど、要素が多いがゆえに千差万別な組み合わせを解析し、最適解を求めることは容易ではない。

一方で、トーションビーム方式は、左右のタイヤが組み付けられているトレーリングアームを、センタービームという「棒」で結ぶという単純な構造なので、部品点数が少なく軽量で、力のかかる方向が集約しやすい。その代り、TBAは前側のブッシュにリヤタイヤの正確な位置決めと振動遮断という相反する機能が求められるから、大抵はどちらも中途半端なサスペンションになる。



トレーリングアームへのセンタービーム取り付け位置の最適化の図


マツダは、現行SKYACTIVEで地味に、トーションビームを改良している。現行デミオで、トレーリングアームのボディとの付け部分の角度を改良している。左右のトレーリングアームが接続する箇所だから、振動を制御するキーポイントである。ここには接続のゴムブッシュがはめてあって、ボディとつながっているわけだが、後輪が路面のギャップを踏んだ際に後方に動くように取り付け位置を変更している。この結果、ボディに伝わるショックを25%低減した。ならば、突き上げの吸収のために犠牲になっていた、ダンパーの縮み側の衰滅力を元に戻してやることができる。 ギャップを踏んだショックは、一度後方に逃げて、リアボディとセンタービームがゆがむことで吸収するので、上下の振動は素早く止めても、突き上げには影響しない。


取り付け角度(すぐり角だけ)の変更状態

 日本車の多くは、ユーザ様からの「突き上げがー」の声が怖くて、縮み方向の衰滅力を落として、びよーんとリアをゆっくり戻す設定にしている。(自動車メーカー側も愚かな設定だとわかっているけれど、お客様の声だから仕方ない)現行デミオはこの悪癖から解放され、前後ダンパーの縮み側の衰滅力を高めることができて、サスペンションの上下振動を素早く止めることができるようになった。

SKYACTIVE Gen2がTBAを装備しても、伸び方向、縮み方向のいずれにも自由な設定ができるわけで、SKYACTIV ビークル・アーキテクチャーを実現する上で、TBAではできないという理由が一つ減ったのである。



■TBAを改良する

TABの取り付け角度を最良にすることで、ダンパーの伸び、縮側の設定を理想的な方向へと変更できることがわかった。次は、トレーリングアームの中心的な部品であるセンタービームの改定だ。

センタービームの主たる機能には、

①タイヤを支持する機能
②車両のロール姿勢を制御する機能

の二つがある。理想的な形とは、両端のトレーリングアームとの接続部は、曲げ剛性を高く(変形しづらくがっちり固めるということ)設定することが有効なので、結合部断面を大きくしたい。 一方で、ロール姿勢を制御するには、ねじり剛性をクルマの特性にあった適切な値に合わせて、端から中央部の断面の大きさを決める必要がある。


ここまでわかったら、クルマの妖精に何をお願いしたらいいのだろう。

「タイヤの位置決めを正確にするために、タイヤついているトレーリングアームをがっちり固定した上で、同時に、センタービームの端から端まで使ってうまいこと振動をボディに伝わる速度を調整してください。できれば、その過程で振動も吸収してくれちゃってもOKです。」

とお願いすればいいのだ。


名前は、Smart Expand Beam(SEB)としよう。 と名前と理想の形は決まった。


つまり、こういう感じにSEBを整形できればいいんじゃないかと。



Gen2のサスペンションのポリシーは、「振動を適切な速度で伝達する」だったから、タイヤから入力された振動を伝える棒の直径を適切に変えてボディに伝わる振動の速度を調整できるように最適な形を計算すればいいわけだ。どう考えても、まっすぐな棒の形状のはずはなく、直径が滑らかに変わっていく形状になるだろうということは想像に難くない。

そこで、棒の太さの加減を、MBDで集中計算させて、その図面の通りの棒を作ることにする。

では、在来型のセンタービームと形状を比較してみよう。


在来式: クラッシュドパイプ式センタービーム
DJデミオに採用

鋼管から形状を変更することで各断面を成形した中空断面のパイプの真ん中を潰して接続する方法で、使用するパイプ径は、ロール姿勢の大きさに合わせたねじり剛性にあったパイプ径を使うことになる。ロール剛性を得る代わりに、トレーリングアームとの結合部分の曲げ剛性の大きさは、パイプの直径で決まってしまうので、どうしても端っこがヨワヨワになり、タイヤのついたトレーニングアームは好き放題な方向に動いてしまう。



新型:可変直径センタービーム と在来式の比較
上段の図の構成が現行DJデミオ、下段の図の構成が次期アクセラに採用されたSEB


新しいセンタービームは、ロール剛性に合わせた中央部のねじり剛性を確保した上で、センタービームとトレーリングアームとの結合部分の断面前後幅を拡大した。つまり、人間の骨と同じように、両端を太く丸く、中央を幅広くする形状の筒にしたわけだ。



可変直径センタービーム (SEB)
タイヤの両端を結ぶ棒がアーチ状に変化しているのが分かる


では、両者にどのような差が出るのか、比較してみよう。

直管とSEBの二つのセンタービームの各部位のZ軸まわりの、「部材の変形のしにくさ」(材料工学では、断面二次モーメントと言う)の比較を示す。



SEBと直管の断面二次モーメントの差異
(2本の管は、同じねじり剛性と質量である)


SEBは、直管に比べて、中央部からトレーリングアームとの結合部分に向けて剛性を増加させることができており、結合部近傍での部材の変形しにくさを同等重量で1.5倍にしている。(これは、比較図であって、実際に採用されるSEBは、材料と構造の見直しにより、より断面二次モーメント値が高い物が使われる)


同時にこのグラフは、各部の剛性をどのように設定すれば、理想的に振動を吸収できるかをも示している。振動の吸収を理想的にするには、直線的に直径を変化させるのではなく、偏微分方程式で示される線形で変化させていくわけである。この妙な形状が、Gen2のキーである。 現在でも、この形状の理想を求めて日々改定が繰り返されており、発売までにより理想に近いセンタービームを作ろうと改定が続いている。



SKYACTIVE Gen2サスペンションの実車構造(試作車)


こうして出来上がったりサスペンションは、剛性あふれるかっちりしたものではなく、人間の筋肉のように、「やわらかで力強い」構造に仕上がっている。 両端はしっかりと固定し、中央部は上下、左右に計算道理にたわみながら振動を吸収していく。新TBAを人間の構造に例えるなら、新しいセンタービーム(SEB)が骨であり、タイヤ、ダンパー、バネが筋肉の役割を果たすのだ。そのため、GEN2用のタイヤは、サイドウオールやトレッド面が柔らかい専用設計のタイヤを必要とする。 人間の体は、鋭敏性よりも正確性を重視して設計されている。GEN2もまた、この原則通りに作られている。 現在のSEBが最終回答というわけではないが、人間の生命に時間の限りがある以上、現時点で計算可能なモデルで最適解を求める方が、想定数値で複雑な機構を使うより早く正解に近い所にたどり着けるというわけだ。 よりコンピュータの解析能力が進化した時代の未来のモデルでは、さらに進んだサスペンションが設計されるだろう。



新Mazda3


■どうやって量産するのか

可変直径・形状パイプを使えば、理想的に剛性をあげられることはわかったが、どの会社もこんなことをしていないことには、理由がある。試作品ならば、鍛造の太い鉄の棒に穴をあけて、ガリガリ削って作ればいいわけだが、こんなものをどうやって量産すればいいのかということが、量産車における課題である。

パイプを作るには、鍛造した丸棒に穴をあけるか、板を丸めて溶接するかである。しかし、どちらの方法であっても、同一パイプ内の直径を変化をさせる加工は容易ではない。 また、硬い鍛造品に穴をあける加工は、簡単なことではなく、生産コスト的にも厳しい。 世界中の工場で生産するMazda3なのだから、特殊な生産設備も使えない。

要するに、
 「板曲げ溶接成形の生産性を維持し、在来のプレス機を使ってSEBを製造せよ」

と、言うのは簡単だが、実行することがさらに難しい課題が現れたわけだ。
生産工程に関する話は、金属加工の話になって興味がないと思うので省略するが、以下のブレイクスルーで安定した品質の中空の棒を作り出す生産方法を実現している。学術的用語を排して書くと下記のような説明になる。

1.可変形状の棒を作る際に隙間を完全密着した後に発生する弾性回復による隙間発生を最小化する数値を見出した。
2.隙間部分を埋めて、が溶接品質を確保するための「溶接のりしろ」を加えた断面形状とのりしろ幅を見出した



製造方法:3回に分けて折り曲げ、のりしろをきれいにつなげて溶接する。


このように、Small Vehicleに搭載するSKYACTIVE Gen2サスペンションは、新しいポリシーに基づいた構成と、世界中の工場で量産できる汎用性を達成したのである。 


新Mazda3

新TBAの製造においては、工場の生産設備を大きく変えることなく、組み付け方法も在来のTBAと同様なので、車両組み立ての生産性もこれまでとは大きくは変わらない。(無論、マルチリンクよりも生産性は高い)新Mazda3は、デザインとエンジンの話題が先行しているが、Small モデル用のサスペンションの完成度にも注目したい。
Posted at 2018/05/28 23:44:26 | コメント(3) | トラックバック(0) | 自動車技術 | クルマ
2018年05月24日 イイね!

アテンザの2019年モデルの目的とは何か

アテンザの2019年モデルの目的とは何か

5月24日にマツダから、アテンザの年次改良についての発表があった。
これまでリークされてきた内装、外装を含めサプライズはないが、改めてアテンザの改良について考えてみた。

GJアテンザは2012年に発表され、CX-5に続いてSKYACTIVE-Dを搭載する2番目の車種としてデビューした。SUV型のクルマに抵抗があるユーザにとって、流麗なセダンボディの新型アテンザは魅力的であった。 アテンザの中身は実質CX-5だったのだが、ユーザは魂動デザインをモデルカーそのもののようにまとったアテンザのデザインをまず気に入ったのだろうと思う。 私もその一人であったから、クリーンディーゼルよりもボディデザインで選んだと言ってよかった。 2014年、2016年と大きな改良を経てきたGJアテンザであるが、今回の商品改良は、外装、内装、サスペンション構造、パワートレインと全面的に手が入っている。 

日本はセダンが不人気で軽自動車とSUVが主役になっており、今更なぜFFの大型セダンであるアテンザに大きな改良をするのか、という疑問を持つ人はいるかもしれない。 実は、アテンザはマツダの販売台数の上でも重要な車種なのである。 アテンザは、海外ではMAZDA6と呼ばれ、2017年は、世界120か国で総台数の約10%近い15万台を販売する、重要なモデルなのである。 マツダのフラッグシップは、CX5でもCX8でもなく、変わらずにMAZDA6だというわけだ。 日本の路上ではアテンザを多くみかけないかもしれないが、中国、タイ、マレーシア、ベトナムと言った東南アジア圏ではDセグメントのスタイリッシュなセダンとして人気があるのだ。




旧アテンザ(2016年モデル)

2012年にデビューしたGJアテンザはデザインだけでなく、フロントヘビーなフロントを持ちながらも、中高速コーナーを得意としたハンドリングを持ち、クリーンディーゼルターボは、低速から出力を発揮する特性で、街中の走行が楽しく、高速道路では、卓越した直進性を持っていた。 2012年当時としては先進的な対衝突安全装備を持ち、MRCC(レーダークルーズ)による追尾型オートクルーズは、設定速度の最高が110km/hまででと制限はあったが、高速道路の移動を楽にしていた。


フロントヘビーな物理特性から、登りのタイトなコーナーを苦手にすることや、大柄なボディサイズなど、いくつかの欠点はあれども、日本の道路事情にも適したクルマであっただけでなく、よくしつけられた電気式のパワーステアリング、何度もデータを更新して熟成していった、SKYACTIVE-Driveの賢い動作がこのクルマの魅力であったと言える。日本でのセダン不人気のため、トヨタのクラウンまで売れなくなるような状態の中で、台数は多くでることはなかったが、大型のFFセダン(後に4WDモデルも追加)が十分に健闘したのは、ボディデザインとハンドリング、クリーンディーゼルの組み合わせによるものだと言えるだろう。 そして、セダンを評価する国ではさらに人気を博することとなったわけだ。 5年の間でマツダが得たMAZDA6(アテンザではなく)の改良点の中心は、強みであるデザインをより上品に差別化すること、乗る人の気持ちをリラックスさせる内装に進化させること、より静かに真っ直ぐ走ることであった。



旧アテンザ(2016年モデル)


さて、新型のアテンザは、その目的を達しただろうか。 日本市場は2012年の時以上にセダンの人気がない。現在のアテンザの本命は、優れた電子式常時4WDシステムを搭載する、アテンザの4WDモデルだと言えるだろう。 しかし、4WDシステムは優秀であっても、スバルの4WDセダンたるレガシーB4は、よりフロントが軽く低重心であり、価格も100万円近く安い。 そのため、残念ながらCX-5に比べて、アテンザでは、積極的に4WDを選ぶユーザは多くない。 しかし、アジアマーケットでは、まだFFが中心ではあるものの、北米や欧州では4WDの評価が上がってきている。 アジアや北米に向けたペトロエンジンと、今や世界で唯一といって良い本当のクリーンディーゼルを提供するマツダにとって、クリーンディーゼルの進化の両立をやめるわけにはいかないわけだ。



新アテンザ


新アテンザには、CX-5に搭載された技術がほぼ同様に搭載される。CX-5に対するセダン&ワゴンモデルという位置づけでもあるように、生産技術面でも売れ筋のCX-5に近くすることで、価格の上昇を抑えている。 デザインは、「マツダ化」した新カムリに比べて、いまだに魅力的であり、深い彫を持つボディ形状は、面の色の変化を生かすクリスタルレッドが似合う。魂動デザインにとっての大きな進化は、プレミアムレッドからクリスタルレッドへの移行であろう。 多くの人は気が付いていないが、ボディデザインに大きな変化がないのに、プレミアムレッドのアテンザは、あきらかに「旧式」に見えるのである。 マツダの強みである、魂動デザインの改良点は塗装以外にも大きく二つある。 一つは、「車高を下げてみせること」 もう一つは、シルバーの加飾を美しく、下品にしないように使うことで、ボディカラーとボディの筐体の美しさを引き出すことにある。 

ラジエターグリル、正面、背面、側面、伸びと深さを求めた新型ホイールを連続で見ていくと、MAZDA6としての「高級感」を引き出すために、強く輝くシルバーの加飾を連続させて、さらにその基準線を下方に下げるようにしてあることがわかるだろう。 正面のアイラインの上下をひっくり返し、フォグランプを廃止してまで下方に銀の加飾を追加し、と背面のシルバーのラインの位置を下げたことで、ボディ全体の重心位置を下げてみせる効果を狙っているわけだ。 ボディラインのデザインテーマを一切変えることなく、新鮮度とデザインの洗練度を上げることに成功していると思う。



アテンザ比較


室内は、構造的には大きな変更はないが、素材面、遮音面での更新が図られて、より一層静かで快適な移動を実現している。 ダッシュボード正面に貼られた東レ製の「ウルトラスエード・ヌー」と本木材で作られたダッシュボードが、高品質さを増している。 ウルトラスエード・ヌーは、2015年8月に東レが開発した、銀面調の光沢とスエードタッチを備えたハイブリッド人工皮革であり、マツダは早速東レに自動車用に使えるように共同開発を持ちかけて装備を行っている。 この素材だけで一本ブログが書けるほどのハイテク素材だが、マツダの他にレカロも採用を決めている。



Ultrasuede(R)nu 素材構成図



アテンザの内装への使用例 インパネ上部は本木材の装飾が行われている



アテンザのメーターパネル 液晶化され、ガラス投影型HUDを採用している。


もう一つの内装の大幅改良ポイントがシートである。今回は革シートにベンチレーションを加えただけでなく、フレームから構造を変更している。 新シートは、人間の脊髄の位置を正しく配置する理論に基づいて作られている。今回は細かくかかないが、マツダは今、「人馬一体ではまだ不十分」理論でクルマを設計している。その研究の一環から生まれたのが今回の新シートの構造帯なのである。 腰と脊髄と頭蓋骨を適切な形に整え、腕と足を理想的な形に配置してやることが、クルマが人間と同じ動きをすることの第一歩だという考え方である。(本理論はマツダがら学術論文として発表されている。)



シートに座る時の脊椎と骨盤の理想形状(マツダ)


シートの出来が悪いと腰が痛くなったり、脚がしびれたりするのは、体の中心の幹である脊髄に不要な力が加わっているからだとしている。背骨と骨盤の性能が遺憾なく発揮できる姿勢を崩さないことこそシートに求められる要件であり、新シートがアテンザに採用された。


新アテンザシート


ダンパーの取り付け位置は、2014年に行った思い切った設計改定で、設計上の誤りを修正して不要な突き上げを削減し、ショーワのダンパーを適切に動かすように、ボディ補強を行ったことで、前後共に快適な走りを実現できるようになった。 しかし、今回の改良では、直進時にハーシュネスを減らして走行性能をより上質にするためにサスペンションの取り付け位置を変更した。 マツダの設計は飛び道具を使わず、当たり前の方法で物理学上の理想を追求する形をとる。今回の改良で、直進走行時のハーシュネスが大きく改善される。


ホイールデザインだけでなく、サスペンション構造も変更した。

新エンジンに置き換わっても、物理的なバランスは変わらないから、相変わらず、Rの小さいコーナーは苦手だけれど、大人4人と荷物を載せて、1000km以上の距離を快適に移動できることが、新型アテンザの狙いである。 SKYACTIVE-Dは熟成してより静かに滑らかになり、パワーの出方も適切になった。 ペトロモデルの2.5はピストンなどの基本部品の見直しで抵抗が減り、出力が伸びたことよりも、シュンと上まで抵抗なく回ることを目標とした。 CX-5で採用した気筒停止機能により、実燃費が大幅に向上している。(実燃費で、一般道走行時に14km/Lレベルを期待できそうだ) 



新アテンザ


今回の改良は、「MAZDA6をより継続して売るためにはどうすべきか」と考えたものだ。オリジナルのロードマップでは、FRの新型シャーシに、SKYACTIVE-Xの直列6気筒エンジンを組み合わせて出す予定であったが、新SKYACTIVEのFRシャーシも、SKYACTIVE-Xも開発にもう少し時間を要する。 そのため、今回のMAZDA6の改造は、あと3年、市場で競争力を持たせるためのものだ。

日本市場のアテンザは人気がないクルマであるが、マツダは持てる最新の技術を注いだMAZDA6をアテンザとして登場させた。 仮にCX-5で失敗していたら、改善版をアテンザで出すつもりなのであろう。こうして、マツダのクルマは、それぞれが更新→市場テスト→更新と順を追って進めていくことで、車両全体のレベルアップを図ろうとしている。 今回のアテンザのチャレンジは、魂動デザインのシルバー加飾によるアップデートと、内装素材、新シートである。 これが市場で受け入れられれば、この素材はアクセラとデミオへと引き継がれていく。 


日本国内でも、北米でも、欧州でも、東南アジアでも、しばしば比較されるマツダとスバルは企業の大きさが同等くらいで、ともにハイブリッドもEVに関するアナウンスもしないといった共通点があるが、両社のクルマの開発に対するポリシーは異なる。 次は、スバルがどのような手を打ってくるのか楽しみにしたい。

Posted at 2018/05/24 21:42:45 | コメント(0) | トラックバック(0) | 自動車技術 | クルマ
2018年05月16日 イイね!

千葉の新鮮な地魚と横須賀の地産地消のイタリアン

千葉の新鮮な地魚と横須賀の地産地消のイタリアン
「新鮮な魚が食べたいですね。」

魚と言われても、鯵から鮪まで様々なものがいるわけだが、この人が右脳でしか考えてない状態で、何が食べたいと言っても、答えは出てこないだろうと思った。それに、新鮮な魚というところまで指定したのだから、後は考えてほしいと思っているだろう。
そこで、館山に新鮮な地魚を食べに行く提案をしたところ、「関アジ」を思い出したのか、即答でOKであった。

日程の関係から、今回は遠くにはいけないため、千葉の館山にある、地魚で有名な寿司屋「富鮨」と、横須賀のイタリアンレストラン、「アクアマーレ」に行くことにした。 どちらのお店も予約は必須である。



当日は、写真の通りいい天気であるが、週末だから、朝からアクアラインに向かう道路は渋滞していて、海ほたるまでは、のろのろ運転が続く。 1.5に比べて2.0は同じギア比で、排気量が大きい分、低速トルクが厚いので渋滞時の走行が幌車より楽である。海ほたるあたりから、道路が空いて快適なドライブとなる。 



 館山フラワーパーク


房総半島を横断して、鴨川へ抜ける道を選ぶ。走りやすいワインディングロードと、苺が目当てである。多くのクルマは、マザー牧場や鴨川シーワールドに向かうため、館山自動車道を南下するルートを選ぶだろうから、逆行するルートを選んだわけだ。 今日は快晴でまさにオープン日よりであるが、同行者が「太陽を浴びると灰になって死ぬ体質」らしいので、太陽が出ている間はオープンにできないという、何のためにロードスターに乗っているのかわからない状態で走ることになる。 その点、RFは屋根を閉じていれば室内の狭いクーペになるだけなので、まだましなのかもしれない。

この時期は、苺狩りが盛んで、あちこちのでイチゴ狩りができるが、これもまた予約しておかないと、週末などは「今日は無理です」と断られることになるので、注意した方が良い。 「きみつのいちご」ということで、メジャーどころの「渡邉いちご園」に伺う。30分ほど食べることができて、お土産を買って帰ることもできる。「紅ほっぺ、やよい姫、おいCベリー、かおり野」と種類があるが、何を食べたのかメモをするのを忘れていた。



 渡邉いちご園のいちご


世間一般の女性の認識として、オープンカーと背の低いスポーツカーは好まれない。それがフェラーリであっても、ロードスターRFであっても同じである。(ちなみに、フェラーリF355より、RFの方が大分ましだとのこと。 F355は古いクルマだから仕方ないか)乗り降りはしづらいは、荷物は置けないわ。 さらに、美容に多額の費用をかけてる身からすれば、「わざわざ太陽の光を浴びるなんて自殺行為でしかない」というわけだ。 世間でロードスターを買うために、説得せねばならない相手がうんと言わない理由は、金銭的なことだけでなく、「自分の好みの反対」のクルマをなぜ買おうとするのかわからないということも多いのだと思う。


 
 かつて、F355は絶不評だった。。


気を取り直して、県道92号線を進む。 何かと不評のBOSEオーディオも、音楽ソースがスマホならば、大きなことは言えない。 流石にBlueToothでつないだ音は聞くに堪えないが、USBケーブルでデジタルソースをBOSEのアンプに流せば、それなりに聞けるレベルだと思う。 スマホ接続のいいところは、クルマのオーディオの音楽ソースを誰もが持ち込めることにあると思う。 過去の「カーオーディオ」の時代は、ドライバーの独りよがりな選曲で選ばれた音楽をずっと聞いてなければならなかった。 それは、聞かされる方も苦痛だっただろうが、準備する側もそれなりに苦痛だったのだから、それからの解放はありがたい。 また、相手の音楽の趣味が分かって、それはそれでいいものだと思う。たとえその中身がアニソンとボカロつながりの米津玄師ばかりだったとしても。



 iPhoneとマツコネはUSB接続でつなぐべき


道の駅などにもよりつつ、鴨川を経由して館山へと向かう。千葉県も関東地方の農産物の生産を支えていることがよくわかる。 この辺は、空からは見慣れた場所で、空中からはゴルフ場ばかりが目立つけれど、地上では様々な農産物が作られている。 道の駅で地場の野菜や落花生を買うのは楽しい。
 「富鮨」は住宅地から離れた海の近くにたっており、思ったより奥まったところにある。駐車場も前後で止めれば6台くらいは駐車可能だが、周りの道路は狭いので行き違いには注意した方が良い。 この店の主人は非常に話好きなので、旅程に時間がない人はつかまらないように注意した方がいい。鮨は大振りの地魚の身が乗っていて、安いとは言えないけれど、美味しいと思う。脂ののった白身がうまい。



 地魚の鮨(3240円)


千葉の郷土料理のさんが焼きと、伊勢海老のみそ汁を頂く。伊勢海老のみそ汁は小ぶりの伊勢海老が丸ごと入っていて、汁にたっぷりエビの味が出ているだけでなく、具も楽しめるので、是非注文した方が良い



 郷土料理のさんが焼き
この料理は初めて食べたが、なかなかにおいしい。


もう一人は、新鮮な鯵のなめろうを注文


 鯵のなめろう


伊勢海老の味噌汁を注文すると、お寿司のみそ汁が無くなる模様


 伊勢海老のみそ汁


お店は、岸壁に立っているので、部屋から眺めの良い太平洋が見える。鮨屋として評価することはできないけれど、珍しい千葉の新鮮な地魚を食べるという経験をする上では、適切なお店だと思う。


 太平洋


おなか一杯になったところで、海岸通りを回って、フェリー乗り場である金谷に向かう。わずか40分のフェリーだが、クルマもトラックもたっぷり運べる大きさなので、ある程度余裕をもって到着すれば積み残されることはない。 ロードスターは4M以下なので、航送料金も割安である。 約40分の船旅で久里浜に到着する。


途中を省きつつ、横須賀美術館の隣にある、アクアマーレに向かう頃には、太陽も傾き地表に沈みつつあるので、オープンで走行することにする。ヒータオン、シートヒータオンの状態ならば、寒がりの女性でも大丈夫ではあるが、そうまでしてオープンで走りたいという心境はきっとわかってもらえないと思う。多分。

アクアマーレは、それなりに有名なイタリアレストランで、週末は予約しないとまず入れない。今回は、メニューにないお料理も出してもらえるとのことで、まずは、マンボウの腸のソテー(ソテーはフランス語だけど、イタリア語がわからない)を頂くことになった。マンボウの腸を初めて食べたが、癖はなく、こりこりとした触感の味わいで、シンプルな味付けとよくあっていた。



 マンボウの腸のソテー

天使の海老のパスタは、フレッシュな海老の触感と味わいが日本的ながらも、細めのパスタとトマトソースと組み合わされていて繊細ながらもバランスが良い。




 天使の海老のパスタ


メインの恵水ポークロース肉は、ボリューム満点で食べごたえがあるし、味付けは岩塩ベースだから豚肉を味わう料理だと言える。火の通し加減が丁度よく、このポークが持つ味わいがよく引き出されていた。



 メインの肉料理 「恵水ポークロース肉」


チョコレートのドルチェとシーズンの苺のドルチェを注文した。今日新鮮な苺をたくさん食べたせいか、少し物足らない感じであった。なぜか、写真はいまいちだと書いた生苺のドルチェの方。



 生苺のドルチェ


それぞれ、好きなものをアラカルトで注文していて、コースを頼んだわけではないのだけれど、一定のコースの形にしてくれた。 このお店は、地場の素材を生かした、地産地消のイタリアンで、私達の好きなタイプのお店だ。マンボウの腸のソテー以外は、わかりやすい素材で作られたメニューが並んでいるが、選ぶ時にわくわくするので、是非アラカルトで注文することをお勧めする。

デザートだけは今一歩かなと思ったけれど、その他の料理はおいしい。スタッフのサービスはちゃんとしているので、満足が行く食事ができると思う。 お値段はかなりリーズナブルで、ワインが飲めないという状況ではあったけれど、ディナーでも一人1万円以下で済む。お客様の多くは地元の方であったように思えたが、東京からも遠くないので、横須賀に行ったときには、食べに行ってみることをお勧めする。


なお、食べ物の写真の中に時々出てくる「Foodie」の文字は、同名のiPhoneのアプリで取った時に記録されるものである。このアプリで取ると食べ物が美味しそうに見えるので使っている。



ロードスターRF(改装前)

ロードスターで回る小旅行としては、丁度よいコースであったと思う。あまりオープンにすることはなかったが、小型のクーペとして使っても、2名乗車でもそれほど狭くて困るということはなかった。 RSは乗り心地が固くて困るというシーンもないし、レカロのロゴが付いているシートも、腰が痛くなることもなく快適に過ごせた。屋根を閉じていると遮音性も高いので、もっと遠くまで旅行しても疲れないと思う。

Posted at 2018/05/16 20:35:23 | コメント(0) | トラックバック(0) | 旅と料理 | 旅行/地域

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