第3話から足廻りのセッティングについてのお話をしていきます。
一言で足廻りと言っても色々とありますので、何話かに分けてお話しします。初めに申し上げておきますが、セッティングの変更には走行上の危険を伴います。
基本的な知識に乏しい人は、プロにお任せして自分では触らないようにお願いします。
また私のセッティングは、車高調を用いて常に車のフレームを前後水平にした状態で
計測をしながら変更しています。
また、慎重に変更していても、何回も作業を繰り返すうちに全体が狂ってきますので、
芯出しをするためのアライメント測定をプロにお願いして定期的に行っています。
様々な変更を施すたびに、車高や角度に変化が起きていきますので、必ずデータを記録し、
一箇所変更したら他の箇所が狂っていないかを確認しながら行って下さい。
スタートは、まず車が本当に水平になっているかどうかを、フレームの部分で
きちんと計測するところからになります。
1.キャンバー角の調整
ノーマル車のフロントキャンバーはほぼ0度。
つまりタイヤが真っすぐ立っている状態になっています。
(個体差があるので、あくまで私の車の場合です。)
キャンバー角の変更を行う方法は、ナックルとナックルアームの間に挟まっている
シム(金属のプレートのようなもの)を抜いたり増やしたりして行うのですが、
ネガティブキャンバーにしたい場合は、このシムを抜いていくことになります。
私の車は、キャンバー0度の状態でシムが左2.5枚、右2枚、センサーブラケットが1枚、ナックルとナックルアームの間に挟まってました。ここで0.5枚って何なん?と思われた方がいらっしゃると思いますが、
シムには厚みが2種類ありまして、厚い方が1枚と薄い方が1枚という意味です。
つまり正確には左右2枚ずつのシムとブラケットが1枚入っていたわけですね。
上の写真の錆びたナックルと上側のナックルアームとの間にに写っている
板状のものがシムなんですが、このシムを全部(と言っても2枚なんですが)
抜いたとしても、得られるキャンバー角はたったの0.3~0.5度(ネガティブ)です。
サーキット走行をする場合、こんなキャンバー角ではお話になりませんから、
もっとネガティブに倒したい人はナックルアームに削って加工するか、
角度を稼げるように開発された専用の特殊ナックルアームを装着しなければ
なりません。
私は上の写真手前側に写っている純正ナックルアームを削って加工したものに交換し、
同時に社外品の車高調を装着して少し車高を下げることによってキャンバー角を
稼ぎましたが、部品強度の問題もありますので安全マージンを残して加工すると、
せいぜい 2.2~2.5度止まりといったところです。
更にキャンバー角が必要になる人は、危険を冒して更に削るか、
専用の特殊ナックルアームに交換するか、極端に車高を下げるかしないと
これ以上の角度は付けられません。
車高はできるだけ低い方が安定しますが、アーム類が万歳するまで下げると、
重心とロールセンターの関係で、また新たな対策が必要になりますので、
この辺がライトチューンの限界ではないかと思っています。
ちなみに岡山国際サーキットを1'50"~1'55"くらいで走るのであれば、
このレベルのキャンバー角でタイヤが綺麗に摩耗していきます。
もちろん目標とするタイムやサスペンション等で、必要な角度は変化して
いきますから、タイヤの摩耗具合を観察しながら、ご自分の走りに合った角度に
調整していって下さい。
リア側のキャンバー角についてですが、こちらもフロントと同様にシムの抜き差しで
調整するようになっています。
私の車には左右3枚ずつのシムが挟んでありましたので、これを全部抜くと同時に
社外品のサスペンションで2cm車高を下げて、3.3度のネガティブキャンバーに
してあります。
この角度で、フロント同様に内外綺麗にタイヤが摩耗している状況です。
あくまでもサーキット走行8割・街乗り2割の車の場合のセッティングですので、
街乗り中心の車に対してこのセッティングを施すと、おそらくタイヤ内側の
偏摩耗が激しくなると思われます。
2.トーの調整
主にフロント側のトーで舵角や直進安定性、リア側でステアリング特性の変更ができます。
(トーだけで100%変更できるわけではありませんので、勘違いしないようにお願いします。)
ノーマル車のフロント側は、トータルで1mm~3mmインになっています。
一般論ですが、直進安定性を良くしたければトータルでインにします。
ただ極端なインにしてしまうと、タイヤの偏摩耗の原因になりますので、
僅かにインにしておけば大丈夫です。
サーキット走行などで小さいヘアピンを曲がる時に、少ない舵角で頭を入れて
いきたい時にはトータルでアウトにセッティングします。
私の車は岡山国際サーキットの後半セクション対策で、トータル4mmアウトに
セットしてあります。
エリーゼはフロントが軽いからか、少々トーを開いてもあまり直進安定性に影響が
あるようには感じられません。
続いてリア側のトーです。
リア側のトーは1mm単位でステリング特性が大きく変化します。
オーバーステリングかアンダーステアリングの大部分を決める調整にもなります。
その辺の得意や好みもありますので、セットは人によって様々です。
一般的に、リアトーをトータルでインに閉じていくとアンダーが強くなり、
開いていくとオーバーステアになっていきます。
ただ、リアのトーをトータルでアウトにしている人は見たことがないので、
開いたとしてもトータルで1mmインまでだと思います。
(一部の特殊車両にはトータルでアウトにセットしてある車両もありますが。)
安全重視ならトータルで6mm以上インにしておいた方が無難です。(6mm~8mm)
多少アンダーステアが強いかも知れませんが、内巻きする確率が下がりますので、
スポーツ走行に慣れていない人はクラッシュする可能性を低減できます。
でもあまりイン過ぎると偏摩耗するのでは?とご心配でしょうが、リアタイヤには
元々ノーマル車でもかなりのキャンバーとトータルインが付いていますので、
全く偏摩耗しないようにすることは無理です。
私の車は、トータル6mmインからスタートして、サーキット走行をしながら
1mmずつ減らしていきました。
乗り方や荷重の掛け方にもよりますが、トータル2mmインにした辺りで
ややオーバーが強くなり始めましたので、現在はトータル4mmインの
弱アンダーにセットしたところで落ち着いています。
トーは、前後の車高差(車の傾き)が変化すると、それに連動して開いたり閉じたりします。
車高はキャンバーを変更しただけでも変化しますので、足廻りを触った時には
必ず計測して狂っていないかを確認しましょう。
ここに紹介したセッティングは、あくまで私の乗り方や好みに基づいた数値です。
「沼にハマってもいいからやってみたい。」と思う人だけ参考にしてください。
またいくら精密にアライメント調整をしても、ハードな走行中には車自体が捻じれたり、
トーが開く力が働いたり、ブレーキングで前後車高が水平じゃなくなったりして、
常にアライメントは一定ではありません。
同じセッティングにしていても、車は乗り方次第で異なる動き方をします。
セッティングだけで「絶対に曲がる」とか「絶対に内巻きしない」とかいう事は
あり得ませんので、そのことをしっかりと理解しておいて下さい。
次回は、サスペンションの話やらスタビライザーの話をしたいと思っています。