昔、ボーイズレーサー：ナンパなXG

ノートが属するカテゴリーって、最近でこそ「コンパクトハッチ」とか「スモールコンパクト」って言われているけど、昭和の走り屋が20代の若僧だったころは「2BOX」っていうのが普通だった。

キャラバンやハイエースみたいなのが「1BOX」で、トランク付きのセダンボディは「３BOX」だった。で、オシリにあたるトランクがないから「2BOX」っていうわけだ。

当時はこの2BOXが若僧どもに人気があった。
そのキッカケになったのは、たぶん徳大寺先生の名著で絶賛されたゴルフだと思う。

でも、まがりなりにもゴルフは外車だし、おいそれと若僧に手が出るシロモノではなかった。そんな時に現われたのが1980年に登場した5代目ファミリア。スタイリッシュなボディとそこそこスポーティーな走り。ボディーカラーも青や赤などの原色系が多く、瞬く間に大ヒットとなった。

特にXGというグレードが人気で赤や青の「ファミリアXG」といえばギャルもGETできるという錯覚さえ生まれた。

この5代目ファミリアXGは1500ccの何の変哲もないSOHCエンジンを搭載していたが、そこそこのパワーと優れたサスペンションで走り系ユーザーにも支持されていた。

当時、エポックメイキングだったのはフロントシートで、思いっきりリクライニングさせるとリアシートとフルフラット状態になった。口の悪い輩からは「カーS○X仕様だ」などと揶揄されたが、そのせいかナンパ系ユーザーにも絶大なる支持を受けた。

1980年といえば、サーフィンブームの真っ只中。渋谷や原宿でも石を投げればサーファーに当たるといわれたほど、やってもやってなくてもサーファーのカッコをしてるヤツが多かった。

ファミリアはそんなサーファーにも人気で、ボルトオンされたサーフボードがあったとかいう都市伝説まであったほどだから、R35 GT-Rもまっ青なマルチパフォーマンスぶりだったわけだ。

このころから、クルマの中にヤシの木が生えだして、リアハッチには「KIKI」や、できたばかりの「Tokyo Disneyland」、行ったこともないけど「Ｉ LOVE NEWYORK」なんてステッカーをやたら貼っているヤツがいた。

まぁ、このクルマの大ヒットで、当時つぶれそうだった広島の自動車会社は復活したといわれている。これ以降、「2匹目のドジョー」狙って各メーカーから2BOXが登場してくるわけだ。

ちなみに、この頃の昭和の走り屋は、バリバリの硬派だったので3BOXセダンで走り回っていた。2BOXに乗るのははるか後年のLANCIA DELTAが初２BOX。

で、昭和の走り屋にとって今のノートは「オヤジレーサー」ってカテゴリーになるのだ（現役の若い人ごめんなさい）。