2009年04月30日
水俣病の原因企業・チッソ(東京)の分社化をめぐり、熊本県水俣市が揺れている。チッソの分社化は、与党が水俣病未認定患者の補償費などを工面するため、今国会に提出した救済法案の「柱」だ。しかし、一世紀もの間、水俣市に根を下ろす大手企業の分社化は「将来の生活を左右する問題」として、水俣病被害者だけでなく、広く市民の関心を集めつつある。 (水俣支局・中山憲康)
■勉強会が活発化
水俣市の交流施設「もやい館」で22日夜、「チッソの分社化を考える勉強会」が催された。水俣病被害者の支援組織主催の会には、市民約20人が集まった。
主催者は「チッソが分社化されたら水俣製造所は水俣病と関係がなくなる。そうなれば、水俣から出て行く可能性がある」と指摘。参加者からは「大変な問題。国会議員は市民にも説明すべきだ」との声が上がった。こうした勉強会が今、市内のあちこちで開かれている。
「水俣病が解決するなら、最初は(分社化を)いいと思った。けれど、今は…」。60代の自営業の女性が不安そうな顔で話した。
■税収の6分の1
煙突から白煙が上がり、鉄パイプが敷地内を縦横無尽に走るチッソ水俣製造所。社名の由来となった「日本窒素肥料」が水俣で創業して今年で101年。ここでは現在、世界市場の半分近いシェアを握る液晶や電子部品などが製造されている。
チッソが2007年度に水俣市に納めた税金は約5億円、市の税収の6分の1を占める。製造所の従業員だけで約570人。市内には関連会社や取引企業も多く、人口約2万8000人のうち「5人に1人がチッソの関係者」といわれる。水俣はチッソが支える典型的な企業城下町なのだ。
■市民に広がらず
「地元社員が多く、主力の液晶事業も展開中。撤退は考えにくい」。チッソの大衡(おおひら)一郎執行役員は16日、分社化反対を訴えた水俣病被害者団体のメンバーにこう話し、水俣で広がる「チッソ撤退論」を否定した。
だが、水俣病問題に詳しい熊本学園大水俣学研究センター事務局長の花田昌宣教授は「紛争に巻き込まれやすい地域を避けるのは、企業経営の常道。分社化されれば、チッソが水俣を出る可能性は否定できない」と予測。
世界的な不況で家電や半導体などの工場閉鎖が全国で相次ぐ今、水俣市民の間には「チッソも例外でないかも」という漠然とした不安がくすぶり続ける。ただ、分社化反対の動きが市民運動として広がる気配はない。
地元のある経営者がこう漏らす。
「不安はあるが、この街でチッソにたてつくことはできんよ」
Posted at 2009/04/30 13:29:25 | |
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