地上波テレビ放送が完全デジタル化する来年7月24日まであと1年余り。テレビコマーシャルなどは盛んに「2011年7月完全移行」をPRしているが、実はアナログによる通常の放送は、総務省の計画では6月末に終わることになっている。7月24日までの約3週間は「移行期間」とされるが、民放トップが異論をはさむなど、迷走ぎみだ。周知不足も重なり、視聴者が大混乱する恐れもある。
話がややこしくなっている背景には、アナログ放送の通常番組を来年6月30日に打ち切ったあとも、しばらくはアナログ電波は流し、7月24日正午をもって電波を止めるという「二段構え」になっていることがある。
総務省は「7月24日に突然アナログ放送を終了すると視聴者が混乱する」と説明。約3週間の移行期間を設け、軟着陸を図ろうというわけだ。
この方針は昨年4月、放送局も入った総務省の協議会で決めた。では、この約3週間に何を流すのか。協議会では三つの選択肢を示した。
(1)通常番組の上にアナログ放送の終了を伝えるメッセージを重ねて放送する(2)通常番組をやめてアナログ終了を知らせる別の番組を流す(3)青い背景画面にお知らせメッセージだけを表示する――という方法だ。各放送局は自らの判断で、いずれかのパターンを選ぶ。
(1)だと、画面いっぱいのメッセージの背景に通常番組が流れ、内容がかろうじて分かる程度。(2)や(3)では、まったく通常番組を見ることができない。7月24日にはこうした放送もやめ、画面は小さな多数の光が明滅する「砂嵐」になる。
ところが、ここにきて各局の足並みが乱れてきた。民放各局が加盟する日本民間放送連盟の広瀬道貞会長(テレビ朝日顧問)は15日の記者会見で、「50年間、アナログ放送を見ていただいた方には、最後の最後まで見ていただきたい」と述べ、7月24日ぎりぎりまでアナログの通常放送を続ける考えを表明。昨年決めた三つの選択肢には、強制力はないものの、総務省幹部は「ちゃぶ台をひっくり返された」と困惑を隠さない。
他の民放やNHKは「どの方式にするか、いつまでに決めるかは固まっていない」。
視聴者に通常番組の終了時期をあいまいな表現で伝えてきたことも、混乱を招く一因になりそうだ。7月1日以降の具体案が決まっていないため、家電メーカーのカタログなどには「7月24日までにアナログ放送は終了」と書かれているものが多い。「までに」という表現で、終了時期をぼやかしてきたわけだ。
「こうした言い方では、普通の人はアナログの通常番組を7月24日の当日まで視聴できると思ってしまう。通常番組は6月30日に終わると、正確に知らせるべきだ」。6月の総務省の検討会では、消費者団体などから告知方法の見直しを求める意見が相次いだ。家電メーカーの委員からは「カタログの文章を変えなければならない。早く決めてくれ」と悲鳴が漏れた。
総務省は最新のパンフレットに、7月1日以降は通常の放送ではなく、三つの選択肢のいずれかになることを初めて画像入りで載せた。放送局にもPRしてもらうよう要請する方針。だが、対応は後手に回り、放送局側の調整不足も含め、視聴者不在の混乱が続きそうだ。
Posted at 2010/07/16 12:52:16 | |
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