
今回は昔からカスタムカーの定番モディファイとして語られる「アーシング」について。
T33エクストレイル(e-POWER/e-4ORCE)にアーシングを追加しても効果は無い。
■ アーシングとは何かバッテリー端子やエンジンブロック~ボディ間に補助のアース線を追加し、電気抵抗を下げて電装系の動作を安定させる、というのがアーシングの謳い文句。1990~2000年代のカスタムカー文化で流行した施工の一つ。
■ 純正設計の時点で十分自動車メーカーは電流容量・電圧降下を計算した上で、アース線の本数・太さ・取り付け位置を設計している。保安基準やEMC(電磁両立性)試験もクリアした状態が量産車の完成形であり、そこに素人が後付けで手を加える余地は本来想定されていない。
経年で端子が緩む、あるいは腐食するといった「劣化」による接触不良はあり得るが、それは「アーシング」ではなく「原状回復(清掃・増し締め)」の話であり、混同すべきではない。
■ 昔と今では前提が違うアーシングが流行した時代の車は電装系がまだアナログ的で、経年劣化や設計マージンの薄さによる電圧降下が体感差として出やすい土壌があったとも言われている。
対して現代の車、特にT33のようにECU制御が高度化した車種は、センサー類・制御ユニットの数が当時とは桁違いに増えており、それに合わせてアース点数・配線太さ・接点の防錆処理等も大幅に見直されている。「アーシングという発想が生まれた時代の車」と「今の車」では、前提となる電装設計のレベルがそもそも違う。昔の常識をそのまま令和の車に持ち込むこと自体がズレている。
■ T33(e-POWER/e-4ORCE)ならではの理由T33のe-POWER/e-4ORCEは、12V補機系と駆動用の高圧系統(バッテリー・モーター・インバーター)が完全に分離された別系統。市販のアーシングキットが接続するのは12V側のボディアースのみであり、駆動性能への影響経路がそもそも存在しない。
ECUやセンサー類は、指定されたアースポイントを基準に精密な電圧を読み取っている。素人判断で並列にアースを追加することは、効果がないどころか電位差やノイズの原因になり得るという見方もできる。
■ オーディオへの効果も無い「駆動系には効かなくても、オーディオのノイズには効くのでは」という見方もあるかもしれないが、これも同様に効果は無いと考えられる。
オーディオのノイズ(いわゆるグランドループノイズ)は、RCAケーブルのシールド線やヘッドユニット・アンプの筐体アースが、それぞれ異なる電位のアースポイントを参照してしまうことで発生する、信号ライン側のアース経路の問題である。
一方、市販のアーシングキットが手を加えるのは、バッテリー端子やエンジンブロック・ボディといった電源ライン側のアースポイントであり、対象としている経路がそもそも異なる。電源系のアースをいくら強化しても、信号系のアース経路には影響が及ばないため、オーディオのノイズ改善にはつながらない。
■ 体感の正体(推測)アーシング施工で効果を感じたという声の多くは、施工に伴う端子の清掃・増し締め自体による接触抵抗の改善が本質で、追加したケーブルそのものの効果ではない可能性が高い。
■ 施工には注意が必要T33のように制御が電子化・高度化した車種は、旧車以上にアースポイントの取り扱いに気を使う必要があるとも言える。指定外の場所にアースを追加・変更する行為は、ECUやセンサーの基準電位を乱す可能性があり、不具合の原因となる恐れも否定できない。
なお、「効果がある」と実測データで裏付けられた事例は見当たらない。
一方で、「効果が無い」と直接検証したデータも存在しない。
それでも、少なくともT33 e-POWER/e-4ORCEでは、アーシングによって駆動性能や燃費が向上する合理的な根拠は見当たらない。
メーカーは多数のアースポイントを設計・評価した上で量産しており、追加アースを前提とした設計にはなっていない。
Posted at 2026/07/29 18:37:47 | |
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