TJラングラーに強化アクスルとロングアームを組んでみた。
リフトから降ろして気付いたことは、先ずリアの車高が下がったこと。
これはリアのコイルが短いロアアームにより若干歪んで取り付けられていたものが(フレーム側はマウント部分を移動して補正してあったがアクスル側につてはリアのプロペラシャフトをダブルカルダンに変更している関係からデフのピニオンとペラシャフトを一直線上とする必要があるため相当な角度でデフを前上がりにしていた)ロングアーム化されたことで仰角にして半分以下になったため歪みが微小と為り正立に近づいた事、またバネの下部マウント部分が水平に近くなって取り付け位置自体がやや下がった事に起因しています。
このことにより、何が変わるかと言うと・・・これはもう激変しました。
先ず、アクセルオンでの突き上げが無くなりました。短いロアアームは約20度の角度がありました。リアのアッパーアームはAアームとしたうえで、デフの上に大きなトラス構造を乗せてその頂部にマウントがあるおかげでほぼ5度以下つまり水平に近い角度を持っていたのですが、これをもってしてもリアの駆動力の向かう仮想上の力学的作用交点はなんとトランスファーの出力軸付近、プロペラシャフトのダブルカルダン部分付近となっていました。現象的にはアクセルオンでトランスファー付近に突き上げ感が生じるというものです。同時にアクセルオン・オフで車体が上下するという現象も起きていました。(柔弱なサスペンションによるスクワット現象よりはマシなのですが・・・)乗り心地など以外にも当然ながら機械的な問題が起きる可能性もあれば、これはこれでトラクションのロスになっていることも明らかでした。だからロングアーム化が必要だったわけですが・・・。
結論からいえばロングアーム化によりこれらの不都合な現象は完全に消失しました。
ショートアームでは突き上げがあると記しましたが、ロングアーム化すると実はアクセルオンでのスクワット現象・・・つまり尻さがり現象が起きる傾向にあります(ノーマルのTJはアクセルオンでもスクワットはほとんど感知できませんリンクの配置設計でそのように設定されています)、これはこれで問題がありフロント軸の荷重抜けというオフロード四駆では無視しがたい現象をともなうものです。先に記したようにこのTJはアッパーAアーム角度が水平にあることでスクワットは極めて小さくなっています。リアに加わる駆動力の働く仮想上の力学交点はベルハウジング付近となり、限りなく車体重心に近づいたと思われます。アクセルオンでの駆動力が漏れなく車体重心付近に向かうことで車輌がフラットに動くようになっています。
外観上で観察できることとしては、アクスルホーシングがホイールベース方向の軸に対してズレがなくなりクロスホーシング状態での車軸の捩じれが少ないので、同じストローク量ではショートアームの時より、外見上あまりストロークしていないかのように見えます。(コレを見ると・・・さらに長い自由長のコイルに変更してモット長大なストロークを発生させたくなりますね)また逆説的ではありますが、ロングアームはアクスルホーシングを捩じる応力が小さい傾向にあるということもわかりますね。
走らせて見るとさらに違いは大きいことがわかります。
先ず、直進性が大幅にアップしています。これはDana30強化にともないXJチェロキー用のリバースローテーション・ハイピニオンタイプに変更したことで、フロントアクスルのキャンバーを寝かすことができたことに大きく影響されています。TJはフロントのプロペラシャフトに標準でダブルカルダンジョイントが採用されている関係でリフトアップするとどうしてもデフピニオンシャフトとプロペラシャフトの回転軸を一直線上に設定しなければならないので、どうしてもキャンバーが立ってしまうという事情があります。ハイピニオン化することでデフピニオンの入力軸位置を高くできたためプロペラシャフトの角度が緩やかで済むので大きくキャンバーを起こすことがなくて済ますことができたのです。
つぎに大きな違いはブレーキングでのノーズダイブがやや大きくなった事です。四輪駆動時のトラクション増加とトレードオフの関係になるのですがブレーキングで発生したバックトルクがアクスルにつたわりアッパーアームを前進方向に強く引っ張りつつロアアーム側を突き上げるわけですが、ショートアームでは1G状態で、ほぼロアアームが20度アッパーアームが10度の前傾でしたがリンク長は、ほぼ等長でブレーキングでは平行に近づきつつ前方に突っ張る形でノーズダイブを押さえる方向に働いていたと思われますが、ロングアームではリンクが突っ張らずロアアームをさらに寝かすと共に作用位置も後方になったことでフロントサスを縮める方向で作用するようになったものと推察されます。
「走る」「止まる」とくれば「曲がる」です。
リフトアップしたTJはロールオーバーステアが顕著です。つまりカーブで切れ込み過ぎる・・・というアレです。理屈は簡単で異常に短いリンク配置のTJではリフトアップしてカーブを曲がるとロールしたアウト側のリンクが寝てホイールベースを伸ばす方向に働き、イン側ではリンクが立ってホイールベースを縮める方向に働きます・・・で、オーバーステアになるというわけで、ロングアームにするとほぼ弱アンダーな特性になって「切れ込み過ぎて怖い」というハンドリングとはおさらば出来るという訳です。
強化したDana30アクスルホーシングについてですが、オンロードでは全く変化は感じられません。ロングアーム化と同時なのでバネ下が相当に重くなったわけですが、とりたててどうという変化は体感できません。そういえば・・・テスト走行時はミゾレまじりの雨でしたが橋の継ぎ目などにある鉄板が思いのほかすべり・・・いままではこんなにホイルスピンを体感するほど滑ることはなかったなと気付きました。車をとにかく無駄なくスムーズに前に進めようとサスが働くようになったためかなと思います。
オフロードに持ち込んでモトクロスコースの波状路をメチャクチャに走らせて見たりしましたがロングアーム化による対地障害の乗り上げが非常にスムーズになったことでフロントアクスルの重量増加の影響など全く感じることはできません。イメージとしてはサスペンションの路面追従がスムーズでサスで走るイメージでトラクションがしっかりと架かるのでプッシュアンダーが強まったかなと思います。タイトなターンに限ってではありますがショートアームのほうがきれいに狙ったラインをトレースできますね。というかこれはショートアームの特性がいい方向に働く例外的なシチュエーションですね。
堤防に転がるコンクリートブロックやロックをフロントデフロックなども使って走らせてみましたが、やはりこういうロックやガレの大きな場所ではタイヤは少しでも大きく太いほうがイイとお思いますね。細身大径ではフローテーション性が足りない。岩と岩の間にタイヤが落ちてデフが引っかかりやすいのです。ジムニーサイズのフレームなら今このTJが履いている255-85-16あたりでイケルと思いますが・・・TJではやはり300mm以上の太さと35インチ外径でデフ下を少しでも稼ぎたいところです。さらにサイドまで使って乗り上げを行ってみるといった場合は残りの三輪にフローテーション性と踏ん張りが期待されますがナローではあえなく掘り返して終わりということも・・・それでもそこそこ楽しめるのはフロントデフがコンパクトなDana30のご利益・・・振り返ってみても今までロックでスタックしたのはリアデフ引っかかった時だけです。ちなみに今回のテストでもコンクリートブロックの乗り上げに成功して、戻ろうとしてリアのDana44のデフケースを引っ掛けてカメになったという次第です。
トライアルなどで使われるステアケースやコンクリートの堤防の上り下りなども試してみましたがフロントの引っ張りが強くショートアームの時より格段に走りやすくなっています。前後軸の接地感がおおきく変化しました。
前軸の重量化はことオフロード走行に関してはデメリットは少ないです。それも補強での重量化ですし、クリアランスは全く変わらずにですから・・・走らせていても安心感は段違いです。各ブッシュにロッドエンドなど全てをリフレッシュしていますからフィールが悪いはずも無く・・・「安心な走り」が得られるというのは何よりのものですね。
告知
天候が悪くなければ2月1日の日曜日に秩父の「ブロンコ」にテストドライブに出かける予定です。オイラとオイラのTJラングラーの走りをご覧になりたい方、一緒に走ってみようという方はご一緒いたしましょう。


Posted at 2015/01/22 21:01:10 | |
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ジープ | 日記