夏も終わりの8月30日に静岡県の東富士演習場にて恒例の富士総合火力演習が行われました。
今年度の富士走行火力演習は富士教導団をはじめとする参加部隊の規模は人員約2400名、火砲約50門、車両約80両、航空機25機、弾薬は約44トンとされます。
演習は装備の紹介を行う前段演習と戦闘を想定して各種装備が射撃を行う後段演習の2部構成により実施します。
それではただ今より前段演習を開始します。
前段演習は長距離火力、中距離火力、近距離火力、機動打撃力、航空機、さらに空挺降下を実施します。
状況開始!

会場左手上空をご覧ください、F-2戦闘機が進入してきました。
現在の地上戦は航空部隊との連携は不可欠です。
航空優勢は戦闘の勝敗を左右します。
味方部隊が敵地上部隊と遭遇する前に航空部隊が航空打撃により敵地上部隊に打撃を与え、味方部隊を支援します。

F-2戦闘機は九州の福岡県にある航空自衛隊築城基地の第8航空団第6飛行隊の所属です。
築城基地からこの富士演習場まで直接飛来し、模擬近接支援を行います。
富士演習場までは直線距離でも600キロの長大な距離がありますが、これを無給油で飛来し、模擬爆撃を行い再び築城基地に帰投することより、F-2戦闘機の優れた航続距離がわかります。
さらにこれだけの距離を完璧なタイミングで展示を行えることからも緻密な計算と航空管制がなされていることが推測されます。

F-2の投下した爆弾により激しく爆砕される目標。
といっても航空機の爆弾は非常に威力が大きく、安全上の観点からも実際に投下するわけではなく、F-2戦闘機の通過にあわせて地上の爆薬やガソリンが点火されます。
F-2戦闘機は空中戦だけでなく、対艦ミサイルを用いて敵水上目標を破壊したり、通常爆弾やロケット弾などを用いて味方地上部隊の周辺にいる敵部隊に打撃を与えたり、精密誘導弾等を用いて敵の集積施設や基地などに打撃を与える阻止攻撃など様々な任務をこなします。

次は長距離火力の紹介です。
長距離火力は遠距離にいる目標に対して打撃を与えるもの特科部隊がこれを行います。
それでは特科部隊による155ミリりゅう弾砲FH70と203ミリ自走りゅう弾砲による射撃を行います。
大変大きな音がします!
「撃ち方用意・・・・撃て!」

弾着、今!
砲弾が命中しました。
特科部隊とは所謂砲兵部隊のことで、りゅう弾砲(大砲)を用いて遠距離の目標に砲弾を曲射で撃ち込んで相手に損害を与え、味方部隊を支援しする部隊です。
203ミリ自走りゅう弾砲は陸上自衛隊で最大の火砲で、砲径203ミリ、1発の重量が90キログラムの砲弾を通常弾なら24km遠方まで打ち込むことが可能なようです。

続いて99式自走155ミリりゅう弾砲、203ミリ自走りゅう弾砲、FH70による一斉射撃を行います。
砲弾がほぼ同時に弾着する様子をご覧ください。
大変大きな音がします!!
「対TOT曳火発動!TOT20秒前!」

弾着、今!
見事に同時に複数の砲弾が弾着しました。
上の写真と比べるとわかりますが、砲弾の爆発が空中で起きています。
適度な高さの空中で砲弾を炸裂させることで爆風と破片により効果的に人員や目標に損害を与えることができます。
これを曳火射撃といいます。
炸裂した火球の下は爆風と破片で猛烈な砂煙がたっていることがわかります。
FH70はドイツ、イタリヤ、イギリスにより共同開発された優れた火砲で、砲径155ミリの砲弾を通常弾で24km遠方まで打ち込むことが出来ます。
手前の2両は99式自走155ミリりゅう弾砲で155ミリりゅう弾砲を89式装甲戦闘車をベースにした車体に搭載した自走砲で、1999年に制式化された国産の火砲です。
砲径155ミリの砲弾を実に30km先に打ち込むことが可能で、さらに非常に高度に自動化が進められているとされています。

続いて曳火射撃の同時弾着により、富士山の形を形成します。
「対TOT、富士発動!TOT20秒前!」
弾着、今!
見事に富士山の形に形成されました。
複数の、しかも異なった場所で発射され、異なった距離で異なった種類の火砲から発射された砲弾が完璧な形でわずかな遅れもなく同時に炸裂する必要があるため、非常に難易度の高い射撃で、高い技術が必要とされます。

次に火砲の移動の展示です。
射撃を終えたFH70がすばやく陣地移動を行います。
砲兵部隊は砲弾を発射すると敵に位置が発見されてしまうため、すばやい陣地移動が欠かせません。
203ミリ自走りゅう弾砲や99式自走155ミリりゅう弾砲は自走によりすばやく移動できますが、牽引砲のFH70もAPU(補助動力装置)を持っているため、このように短い距離ならば最大速度16km/h程度で自走が可能とされているようです。
続いて中距離火力です。
中距離火力は迫撃砲、誘導弾があります。
まずは迫撃砲の射撃です。

迫撃砲は普通科(歩兵)部隊が装備する火砲で、普通科連隊の普通科隊員(歩兵)を支援する歩兵砲で、直接支援をする火砲です。
構造が簡単ながら射程が長く、威力も大きいのが特徴です。
砲弾を大きな角度の弾道で発射するため、障害物があって直接照準できない後方の目標に対して射撃を行うことが出来ます。
それでは120ミリ迫撃砲の射撃を行います。
「T0T40秒前!・・・・弾着、今!」
写真右上には砲弾が見えます。
120ミリ重迫撃砲は砲径120ミリの迫撃砲で、タイヤが設置されているためトラックで牽引することができ、迅速に展開・陣地変換ができます。
次は近距離火力です。
普通科部隊の装備する各種火器の射撃を行います。
まずはヘリコプターによる普通科隊員の展開と離脱を披露します。
ヘリコプターが着陸できないような場所に普通科隊員が降下し、施設を破壊し、離脱する様子を展示します。

左手をご覧ください。
CH-47大型ヘリコプターが進入してきました。

ロープを使って普通科隊員が降下します。

降下後、ヘリコプターはすぐに現場を離れます。
ヘリコプターは山岳や荒地など障害物があるような場所でも迅速に部隊を輸送できますが、脆弱なため、できるだけ敵に姿を晒さないよう移動を行います。

普通科隊員が活動を終え、再び大型ヘリコプターが戻ってきました。
CH-47J大型輸送ヘリコプターはV-107バートルヘリコプターの後継として昭和61年度から取得を開始されました。
ヘリコプター団などに装備され、人員や装備の輸送を行います。
現在は写真のような燃料増加型の改良型CH-47JAを取得しています。

これより普通科隊員を回収し、離脱を行います。
着陸が出来ないような場所の場合、迅速に離脱するためにエクストラクションロープを使い、隊員を吊り下げたままの状態で離脱を行います。

続いて軽装甲機動車です。
会場に進入してきた車両は軽装甲機動車と呼ばれ、機動性に優れた小型の装甲車です。
これより軽装甲機動車が01式軽対戦車誘導弾を射撃します。
「01式軽対戦車誘導弾、黒の台400、低進弾道、撃て!」

命中、撃ち方やめ!
01式軽対戦車誘導弾は、84ミリ無反動砲の後継として普通科部隊に導入されている国産の小型の対戦車ミサイルです。
誘導方式は赤外線画像誘導で、赤外線画像センサーが照準システムに組み込まれています。
そのため従来の対戦車ミサイルのように命中まで射撃側が誘導し続ける必要がなく、発射後直ちに射手が移動することができるとされています。

続いて会場に進入してきた車両は96式装輪装甲車です。
96式装輪装甲車は1996年に制式化された国産の装輪式の装甲車で、10名の人員を搭乗させることができます。
武装は12.7ミリ重機関銃又は40ミリ擲弾を装備できます。
それでは96式装輪装甲車が12.7ミリ機関銃を射撃します。
「重機関銃、赤の台500指令、撃て!」
写真には後ろの車両から発射された12.7ミリ重機関銃の光跡が見えます。

次は110ミリ個人携帯対戦車弾です。
これは携帯の対戦車ロケット弾で、パンツァーファースト3とも呼ばれています。
使い捨ての対戦車火器で、700mm程度の装甲貫通能力があるとされています。

次は84ミリ無反動砲です。
この火砲はスゥエーデン製の無反動砲で、カールグスタフと呼ばれ、主に戦車を射撃しますが、照明弾や発煙弾を発射することも可能です。
「84ミリ無反動砲、黒の台、発煙弾、300、指令!撃て!!」
発煙弾を射撃しました。
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