今話題になっている海上保安庁。
世界最大規模を誇る沿岸警備隊として知られていますが、実は人員もお金も非常に厳しいのが現状です。
このだだっぴろい日本の海域を守るのに人員は何人だと思います?
10万人ぐらいいてもおかしくないような気がしますが、実際はわずかに12000人程度(12504人(平成20年度末定員で12504人)です。
仮に1日に2交替で換算すれば6000人、もちろん管理部署や総務部所、教育や学校など、間接部署の人もいるわけですから・・・・
どれだけ一人一人の海上保安官の負担が大きいかわかります。
多種多様な船舶や航空機をもつ海上保安庁、予算は?といえば・・・・
1兆円ぐらい?
いえいえ、わずか1800億円ぐらい(平成21年度予算総額で1824億円)しかないんです。
そのうち
船舶建造費はなんと244億円。
・・・・
すごいでしょ?
大型の巡視船から消防船までぜんぶひっくるめて244億円です。
なので巡視船が老朽化しても解役(海上保安庁では用途廃止を解役というようです)して新しい巡視船にいれかえるなんてできません。
とっくに規定年数を超えてるものを保守整備してなんとか維持しているのが現状のようです。
ちなみに昨年打ち出した鳩山イニシアチブでは黄砂対策で3年間に中国に1兆7500億円をポンと出すことを決めました。
一方で日本の安全を守る海上保安庁は平成22年度予算では21年度に対して3億4千700万円の減額になっています。
(23年度要求では特別枠含めて88億円の増額:しきしま型巡視船1隻+ヘリコプタ2機で71億円)を求めていますが、それも通るかどうか・・・・
世界有数の技術と練度、士気をもつ海上保安庁。
それは保安官ひとりひとりの能力に支えられているといって間違いないと思います。
それはさておき
海上保安庁の巡視船や巡視艇などをちょっとだけ紹介します。
(過去の私のブログで見たことあるような写真もありますが、2枚を除いてすべて別の写真を使いました・・・って、何枚同じような写真撮ってるんだか^^;)

”らいざん”型(180トン型)巡視船(写真はPS-14”あかぎ”)
総トン数197トン
1番船が平成6年に竣工した巡視船で、”しんざん”型の航続時間を延ばしたタイプの巡視船です。
武装としては20ミリ多銃身機関銃を装備しています。
8番船からはウオータージェット推進タイプとなっています。

こちらはPS-12"こうや"

”いそかぜ”型(15メートル型)巡視艇(写真はPS-01”いそかぜ”)
総トン数18トン
”やまゆり”型巡視艇をベースに改良された巡視艇で操舵室を大型化したものです。

”しんざん”型(180トン型)巡視船(PS-02”さろま”)
総トン数182トン
昭和60年の不審船事件を契機に整備された巡視船で、あの九州南西海域工作船事件で活躍したのは同型の”いなさ”、”きりしま”です。
武装は当初12.7ミリ機銃でしたが、現在はFCSをとして使用できる暗視装置つきの20ミリ多銃身機銃に換装しています。

”あそ”型(1000トン型)巡視船(写真はPL-42”でわ”)
総トン数770トン
北朝鮮の不審船事件を教訓に整備された巡視船で領海警備を重視したタイプです。
武装はもともと30ミリ機銃を予定していましたが、北朝鮮の工作船が重武装だったことをうけて40ミリ機銃とされています。

”しれとこ”型(1000トン型)巡視船(PL-118”しもきた”)
総トン数965.3トン(旧)
28隻が量産された大型巡視船で、前型の”だいおう”型に対して居住性や凌波性、省力化を織り込んだものです。
3年間で28隻が建造されたため、現在その後継船が問題(既に十数隻が解役)になっているようです。
武装は20ミリ多銃身機銃。

こちらは既に解役したPL-109”しきね”(旧)

”はてるま”型(1000トン型)巡視船(写真はPL-62”はかた”)
総トン数1300トン
尖閣諸島の中国人不法上陸事件をうけて整備された拠点機能強化型の巡視船です。
尖閣諸島は重要な警備地区ではありますがその周辺には拠点がないため、離れた石垣や沖縄本島からではヘリコプターや巡視艇は行動に大きな制限があります。
そこで乗員の休養や巡視艇に対する補給が可能な母船機能をもたせたのがこの”はてるま”型です。
武装はもともと40ミリ機関銃を予定していましたが、予算の関係上30ミリ機関銃になったようです。

”あきづき”型(特23メートル型)巡視艇(写真はPC-78"いそづき")
総トン数124トン(旧)
浦賀水道などの狭い水道の監視用の巡視艇で、基本的には法定速度での12ノットを維持しますが時には高速での航行が必要なのでディーズルの3機3軸を採用しています。

”ひめぎく”型(20メートル型)巡視艇(写真はPL-136”やまぶき”、PL-135"いそぎく"、CL-34”ゆめかぜ”)
総トン数23トン
大量配備されている小型巡視艇で、計画年度によっては防弾性を向上させたり警備強化型となったり、細かなタイプがあります。

こちらも”ひめぎく”型巡視艇CL-14"ふじかぜ"
平成23年3月までに170隻近くが竣工される予定です。

消防船”ひりゅう”(FL-01)
総トン数322トン
双胴船体式の特徴ある船体で放水銃は上側方向に伸縮することができます。

巡視船”いず”(3500トン型巡視船)PL-31
総トン数3768トン
阪神大震災では阪神地区を担当する第5管区海上保安本部も被害にあいました。
その教訓から海上での指揮能力をもつ巡視船として整備されたのが”いず”です。
罹災者を収容するための医療・居住設備も拡充されています。
武装は20ミリ多銃身機関銃を装備。

”まつなみ”型(35メートル型)巡視艇(PC-01”まつなみ”)
総トン数204トン
なんとなく他の巡視艇とは違う雰囲気がありますが、これは東京湾を視察に来る来賓や職員の迎賓にもつかわれるためです。
普段は航路哨戒や警備など他の巡視艇と同じような任務についています。

”みずほ”型(ヘリコプター2機搭載型)巡視船(PLH-22”やしま”)
総トン数5259トン
広域哨戒体制の整備の一環として整備されたのがこの巡視船で、ヘリコプターを2機搭載し、さらに最大可能乗員数を900名にするなどして従来のヘリコプター搭載巡視船よりも大型化しています。
武装は35ミリ機銃と20ミリ機銃を装備していますが、20ミリ多銃身機銃は遠隔操作式になっています。

”昭洋”型(3000トン型)測量船(写真はHL-01”昭洋”)
総トン数3128トン
海上保安庁最大の測量船で、自身の出すノイズ対策にディーズル電気推進を採用しています。
海図の作成に必要な地形の測量や船舶の航行に必要な海流情報の提供などをおこなう船舶です。

航行標識測定船”つしま”(LL-01)
総トン数1718トン(旧)
船舶航行用の標識の有効範囲や精度などを確認する専用の測定船です。
当初は電波航法システムがオメガやロランだったためなんと12000浬もの航続距離をもっています。

オイルフェンス展張艇 OX01 M101型
総トン数?
油の流出事故があった際にオイルフェンスを展開する船で、非自走式です。

”たかつき”型(特130トン型)巡視船(PS-108”たかつき”)
総トン数114トン
”あかぎ”型巡視船に対してさらに高速化をめざすために軽量化と出力アップをおこなった巡視船です。
ウオータージェット推進を採用しています。
武装は12.7ミリ機銃。

”つがる”型(ヘリコプター1機搭載型)巡視船(PLH-04”はやと”)
昭和52年に領海12浬、200浬漁業専管水域などを設定したことから、それまでに比べて海上保安庁の担当海域はなんと50倍になりました。
そこで”そうや(”宗谷”の後継)”とともに建造されたヘリコプター搭載巡視船が”つがる”型です。
ベル212ヘリコプターを1機搭載することができます。
武装は40ミリ機銃。

”しきしま”型(ヘリコプター2機搭載型)巡視船(PLH-31”しきしま”)
総トン数7175トン
フランスからの再処理済みプルトニウム輸送護衛作戦のために建造された巡視船で、無補給で日本と欧州間を往復できるほどの長大な航続距離(推定20000浬以上)をもたせたため大型の護衛艦並みの規模になりました。
世界最大の巡視船です。
対空レーダに加え、多銃身20ミリ機銃2門、35ミリ機銃2門、AS332L1中型ヘリコプター2機と非常に重装備なのが特徴です。
現在2番船の建造が計画されています。

巡視船”宗谷”(旧)PL-107
総トン数4100トン
もともとはソ連から発注された貨物船でしたが、世界情勢の関係で引き渡されず、商船となり、戦時中には帝国海軍の特務艦になり、戦後は引揚船を経て海上保安庁の灯台補給船になりました。
もともとソ連向けだったこともあって砕氷能力があったため、南極観測隊支援のための砕氷船として昭和32年から37年までの間に6回南極観測活動をおこなっています。
その後は解役される昭和53年まで巡視船として活躍するというものすごい経歴をもっています。
現在は海の科学館に係留・展示されています。
もちろん船舶はこれだけではなく、まだまだ多種多様なタイプがそれぞれの任務についています。
ちなみに警察が110番、消防・救急が119番ですが海上保安庁は118番です。
まだ認知度が低いのか、運用が開始された平成12年5月から平成21年4月までのあいだにかかってきた電話647万4626件のうち、間違いやいたずら、無言電話が99.3%だったとか・・・・
この広い日本の海をわずか12000人で守る海上保安庁、巡視船に描かれた海上保安庁のマークを見ると頼もしさを感じます。