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SPEED GROOVE @ yoshiのブログ一覧

2016年05月25日 イイね!

GT-R Magazine vol128 * R35GT-R 2017model





今号の表紙、
単に32GTRのメーターパネルを映したものではなかった。
オドメーター55万キロ台を示していることに驚く。

振り返れば、
価値ある車であるからこそ、過走行になってしまっては価値が減る。
そう考えていた。
だから痛まないよう出来る限りの気を使い、
無駄に走行距離を伸ばさぬよう、乗る日を抑えて走りに行っていた。

ワンオーナーで23年、55万キロの偉業。
その事実をこうして見せられた今となっては衝撃としか言いようがない。
それは長いこと、車の価値に重きを置く業界意識に染まりきっていた自分であったのかもしれないし、
乗るのを抑えたくなるくらいに身の丈以上の車であったということだったのかもしれない。
いったい自分は何に捉われ、何を恐れていたのか・・・。
「距離が増えることに抵抗はなく、逆に増やしたい」と語る、
こんなにも度量の大きいオーナーがカッコ良すぎるくらいに眩しい。

ひとつの車をここまで乗り続け、付き合い続けてみたら、どんな感じがするのだろう。
それは、喩えれば、ひとりの女性を愛し続けるのと同じくらいの出来事がきっと起こってくるのだろう。
であれば、大事なことは、何があろうとも彼女にコミットし続けるという意志を持つことと、
自分の愛を信頼し、その愛を大きくしていく意欲を持ち続けていくことだろう。

しかし、そうは言っても”思い”だけでは疲れてしまうかもしれない。
そんなとき新鮮味を持って愛し直すには、今までとは違う観点から魅力を探り見いだしていきたい。
55万キロもの付き合いをしてこられたオーナーは、
きっと細やかに魅力を見いだす無意識の才能があるのだろう。
ここまで乗り続けてきた理由が「運転することが楽しい」という理由しか思い浮かばなかったとしても、
この「楽しい」という気持ちのうちには言葉にならないほどの数々の魅力が広がっていることと思う。












GTRマガジンに速報掲載されていたR35GTRの2017モデル
(日産グローバル本社にて)








Posted at 2016/05/26 00:15:21 | コメント(2) | トラックバック(0) | GT-R Magazine | 日記
2016年01月25日 イイね!

GT-R Magazine126 「レストアの意義」 Part2 ☆ R32GT-R Evolution





2016/Jan 交通タイムス社GT-R Magazine126号「レストアの意義」に載せていただきました。
職人を引退してもなお、このようにして誌面に登場できたことは担当編集者さんをはじめとした編集部のGT-Rへの熱意があってのことと思います。
そして、なによりも6年前に作業を依頼してくださり、この度の取材に快諾してくださったオーナーさんとの出会いがあってのことでもあります。
さらには、現役時代から応援してきてくださった皆さんの励ましがとてもありがたいことでした。
それは、かつて作業の依頼をしてくださった方のみならず、飲み会、珈琲会、東北旅、神戸旅といったオフ会等で出会った方々のクルマに対する思いの数々がぼくの想い出としてあるからであります。
今回のGマガ掲載は、このような経緯がベースになっているものです。
出会い、交友、ご協力に心から感謝いたします。



さて、このR32GTRは2009年にボディ補強をメインにしたレストアを行ったもので、R32GTRのボディを進化させたもの、Evolution Modelと位置づけて作ったものです。
その具体的なボディ補強内容は、以下のような感じです。
・サイドシル周りの補強一式
・リヤクオーター周り、インナーパネルのスポット増し、パネル追加
・R34GTR用フロントフレームアウトリガーの組込み
・ルーフ~ドア枠周り~ガラス周り全周のスポット増し
・R34GTR用ルーフレインフォースの組込み、インナーパネルへのスポット増し
・リヤバンパーレインフォースの軽量化



それに加えて、通常どおりのレストアメニュー(記憶のあるかぎり)
・下回りシーリング、チッピングコート仕上げ
・サスペンションブッシュ一式入替え 
・防錆剤の各部注入
その他いろいろ・・・



サイドシルは部分的に補強パネルを追加するのではなく、まず、フロントフレームの付け根にアウトリガーを組込み、そこからリヤクオーターまでのキャビン全体の下支えを補強する構造となっています。
特にフロント側は5枚のパネルを合わせてあり、エンジンとサスペンションを支えるフロントフレームとの一体感を向上させるよう考えて作ったものです。
それに加えて、ドア枠周りから前後左右のガラス周り、ルーフ周り、そしてリヤ周りとスポット増しはキャビン全体に及んでいます。
オーナーさんが誌面でインプレッションを伝えてくださっていますが、700馬力ものエンジンを活かすには、やはり、それ相応のボディが必要になってくるものでしょう。
この車両にはロールケージを入れていませんが、もし、サーキットでのレースをメインにするのであったとしても、このような内部パネルからの追加溶接、補強パネルの追加は有効になってくると思いますし、ボディ各部の見直し(錆修理など)を行った骨格があってこそロールケージもより一層効いてくるものと思います。



Gマガ誌面にて、スポット溶接における溶接不良のことが紹介されていました。
このことに関して少し補足を入れておきましょう。
スポット溶接は瞬時に溶接ができる大変便利な溶接方法であり、現在の自動車作りのメインとなっている溶接方法です。
しかし、自動車メーカーのラインで行うスポット溶接と町の修理工場の設備で行うものとではその設備が異なり、意外とクセモノな一面ももっています。
つまりは、溶接できているようでいて溶接されていないという「溶接不良が起こり得ることがあり、そのクセモノであるという理由は溶接後の外観からは判別がつきにくいからであります。
それというのも、いわゆるスポット増し、パネル交換をしないで溶接点数を追加する作業においての不十分な溶着を何度となく見てきましたし、自らも経験してきたことがあるからです。
外観からは溶接焼けがあり、打痕もしっかりとある・・・・ しかし、パネル間にタガネを突っ込んでみれば、1~2ミリ程度しか溶着がされていないために割と簡単に溶接箇所が剥がれてしまう・・・・。
これでは仮止めの点付け溶接と変わらない・・・・たいして強化になっていない・・・・そのようなケースが散見されたものです。
その主たる原因はパネル間の電着塗料や錆が電気抵抗となっていることが第一番目。
そして、工場設備の電力不足が原因となるケースも意外とあるものです。
その対策として、Gマガ誌面に書いてありましたように、溶接時の通電時間や加圧力の調整は当然のこと、工場内で他の電気機器を使用していないときに溶接作業をおこなうというような配慮もしてきました。
塗装ブースや作業用リフト、コンプレッサーなどが稼動していると、そちらに工場内に引かれた電力が分散されてしまうからです。
ただ、一般的な作業レベルでは、ここまでこだわる必要はないと思います。
なぜならば、多少の電力低下があっても、スポット溶接機の設定によって基準を満たす溶接強度はいちおう確保されるからです。
ですが、このGT-RはEvolutionというスペシャルな位置づけでレストアしていったクルマですので、それにあわせて作業のすべてをスペシャルにしたいと考えていったものです。
スポット溶接の一発一発に気合を入れ、可能な限りの「工場内で出せるベストの電力」でもって作ってみたかったということであります。
絶対にというほどに溶接不良は起したくなかったですし、追加パネルを組み込んだことと、そして、溶接強度自体を通常の修理作業よりも向上させたかったからです。
そのために、塗装担当者が塗装ブースを使っていない時間帯に溶接作業を行ったり、居残りや休日作業をすることもあったものですが、ある意味、会社員として​求められる作業効率を度外視していたからこそ出来たものといえるのかもしれません。



*参考1*
もし、アフターでスポット増しの施工を考えている方に、ひとつアドバイス的なことを記しておくとすれば、それは、パネル間の電着塗料を「焼ききる」ということです。
また、パネル交換の際の防錆剤をあらかじめ薄く塗っておくのもポイントといえるでしょう。
特に、刷毛塗りタイプの防錆剤は塗りムラになりやすいので注意が必要です。
その場合、溶剤で希釈することも一法です。
いずれにしても、アフターのスポット増し作業とおなじように溶接時にパネル間の塗料を焼ききることがポイントです。
そうでないと、十分に強度ある溶着は得られません。



*参考2*​
​アウトリガーの取付けにしても、サイドシル強化にしても、ちょっと気の利いた職人であれば出来ることです。
ポイントとなるのは、その取付けの精度、強度、耐久性、そして美観のバランスとなるでしょう。
どれだけ、その取付け方法にこだわっているのか、高次でバランスできているのか、もちろん、価格や納期との条件や関係性もあることでしょう。
ですが、職人の意識の基本としては、よりよいモノを目指すということになると思います。





【R32GT-R Evolution】
目指したのは、R34GT-Rの軽量バージョン。
R32の外観を崩さずにボディ補強をしていくこと。
ロールケージのような「見える補強」は行わずに、しかし、体感のできる確実な剛性向上を目指す。
そのためには、見えない部分での溶接強度にこだわり、見えない部分での補強パネルにこだわり、結果としてトータルでボディのレベルアップをしていったものになっていると思います。
一番嬉しかったのは、今号掲載のオーナーさんの、このインプレッション。
『アクセルを入れたときにボディがそれに直結するように反応する・・・・ その効果はコーナーでも感じられ、大きく荷重がかかっても操作に対して修正舵を入れる必要がなく、常に運転に集中できます・・・・』
これほどまでに成果を伝えてくださるとは思っていませんでしたが、それは、オーナーさん自身の持つドライビングセンス、鋭くも豊かな感性の表れであると思いますし、それだけクルマの挙動と感覚について「違いがわかる」オーナーであったということだと思います。
「違いがわかる」には、それだけの実践経験を積まれてきたからともいえるものでしょう。
クルマ好きな方には色々なタイプいますが、日ごろから「走る」ということに注力されている人であるからこそ伝えられるインプレッションであり、その感性とあいまって、ご自分のクルマに対する愛着を長く育まれてきたということを示しているように思います。



~随想~
​このGT-Rを作業していた頃に​、ガス溶接をやめ、ハンダ盛りをやめ、そしてMIGとスポット溶接をメインに切り替えていった​と思います​。
それは、新型の設備​や​機器という作業技術の進歩​という見方​もで​きるでしょう。
しかし、その一方では、古くからのやり方をしてきた職人たちを暗に否定することにもな​っていたのかもしれず、​であれば、​ときに、彼らのキャリアあるプライドを傷つけることにもなって​いたのかもしれません。
どこの職場でもあることとは思いますが、職人と職人の水面下でのライバル意識というものは、仕事に対してのこだわりが強くなればなるほど、その意識の高まりは熾烈になってくるものなの​でしょう​。
それが、お互いの技量を伸ばす方向に昇華​していくのであれば理想​的な関係となるのでしょうが、そうはならないことも少なからずあ​ることであり、それもまた、なにかの縁というものなのでしょう。
高度成長期、今よりもずっとクルマが夢であり憧れであった時代に、ぶつけて壊れたクルマ、廃車になるようなクルマを救っていったのは当時の職人達の知恵と努力のおかげです。
彼らの意志​と技術​なくしては​自動車修理業の発展はなかったはずです。
ある意味、礎となり、その土台を担ってこられたのだと思います。
​しかし、時代というものは進化し続けていくことを​​求められ​、けして留まることはできないもの​なの​でしょう​。
​新しい方向へと進んでいくことが​、​より多く​の人にとって​幸せを感じるものにな​っていくのであれば、その進化の流れにのっていくことが自然であるように思うものです。



それは、ぼくにとっても同じことで、だから、持ち続けてきた職人のプライドのようなものは手放して​いきたい​​。
ぼくがやってきた​ような​ことはアタリマエの時代になり、遥かに超えていくことが​、ある意味、​進歩のひとつのカタチである​と、そう思っています。
それは、喩えれば、「食っていくためには仕方​が​な​い」​というような​ハングリーな時代からの成長でもあることでしょう。
そして、自己表現の楽しさや、分かち合い、広く幸せのためにという、人と人のつながりを創っていく・・・・そんな時代に移りつつあるように思う​も​のです。
もしかしたら、いまが、まさにその葛藤のさなかにいる状況なのかもしれません。
各地で頻発する、主義や信条の争い​ごともそうですが、ひとりひとりが出来るところからの対処、もっと小さなレベルからの、身近な​人間関係から見直してい​くことによって、そのような、つながりの意識は広がっていくのではないでしょうか。



もし、それが旧来の常識を否定することによって​成り立っていくものだとすれば、一時的にでも葛藤のプロセスを経験していくことが然るべきことなの​かもしれません。
自動車修理でいえば、イ リュージョンテクニックも溶接にこめた一発一発の熱意も、アタリマエのこととなっていく。
そして、もっと容易で、もっと綺麗で、より完璧な作業がそこらじゅうの町工場でアタリマエになっていく・・・・。
そうであってこそ、日本の自動車修理業界全体のレベルがあがっていくことになる​と思いますし、クルマ好きな人達が安心してクルマ趣味を愉しみ続けていくことができるのではないかと思います。
だから、これからの自動車修理職人は、ぼくがやってきたようなことを踏み台にし、むしろ、蹴っ飛ばすくらいであって欲しい。
「ああいう仕事は、どこでもアタリマエにやっていることだよー」、そんな日が来てくれることを願っています。
外観の見てくれよりも強度​やオリジナリティ​を重視し、万一のときにも可能な限り踏ん張ってくれるような、そんなボディ作りや事故車修理がアタリマエの時代となることを。
​そして、さらには、もっともっと個性的な仕事、一台一台が輝く作品のように仕上がっていく仕事、そんな時代になって欲しいと思っています。​



先日、オーナーさんに言われた​ことがあります。
『あの頃のヨシヒサさんは鬼気迫るものが感じられていましたよ・・・・。』
自覚は​ありませんでしたけど、言われてみればそうだったかもしれ​ません。
​そのように感じられたのは、それは、ぼくがクルマを直すという仕事そのもの以外にも​抱えていることが​他にも​​あった​からなのかもしれません。
でも、だからこそ、クルマに真剣に向き合おうという気持ちが高まっていたのだとも思います。
こういってはなんですが、いま振り返ってみて、​あの環境​下​でのベストは尽したと思います。
​完璧には至らなかったとしても、少なくとも持てる​限界まではやってみたつもり​です​。
​だからこそ、​ここまでやらせてくれたオーナーさん​を​​はじめ​、協力してくれた工場の仲間、社長には心から感謝しています。
​修理技術のパフォーマンスと、完成度をどこまで高めていけるのか・・・・、その挑戦、チャレンジであったと思います。
ときには、無理をかけたりしたこともあったと思います。
良くも悪くも、チャレンジするということの裏には、そういった側面も少なからずあるものなのかもしれません。
ですが、いずれにしても、人それぞれに、さまざまな思いをのせて、一台一台が仕上がっていくものだと思います。
このたび、約6年越しに、その結果が実り、幸運にもGTRマガジンという有名な専門誌に掲載していただけたのだと、そう思っています。
それは、読者の方々にしてみれば、たった一台のGTRのレストア記事であるかもしれません。
でも、このようなレベルのGTRを完成させるのに、裏で、どれほどの思いを積み重ね、またぶつけあってきたのか・・・・。
それは、GTRというクルマに惚れ込み、悩んだ末に作業を依頼し、海のものとも山のものともわからない職人と向き合ってこられた人でないと、その真意と価値のすべては伝わらないものなのかもしれません。
また、それは、作業を行ったバックヤードの職人達に対しても同じことだと思います。
オーナーがどれほどの思いをもってオーダーしてくるのか・・・・、その真意を理解するよう努力しなければなりませんし、そして、なによりも、その技術に価値を見出してくれているということを、もっと受け取っていく必要もあるのだと、そう思います。
つまりは、完成したクルマの背景にある、そういった見えない部分での「思い」の結実。
結果とは、そういうものであるように思います。



あとは、質実の充実したオリジナリティを追究している職人にバトンを渡していきたい​。
​いまは、技術の片鱗をネットで自由に見ることができるようになってきています。
そんな意志ある​職人達にとって、ぼくのサイトが、なにかしらの参考になればと思うものです。
そして、これからも、GT-Rをはじめ、クルマを愉しまれている方々に、せめて気持ちだけでも寄り添っていけたならばと思っています。
yoshi



Tuned by T.R
Power:718PS Trq:80kgm (Dyna Pack)
N1ブロック
純正クランク
ニスモF112メタル
Brian crowerコンロッド(I-beam)
HKS step2 鍛造ピストン(87Φ)
ARP コンロッドボルト
Tomei ガスケットキット
Tomei オイルラインオリフィス
Tomei オイルパンバッフルプレート
燃焼室加工(Hi-boost対応)
バルブガイド入れ替え
バルブシートカット
Tomei Procam 270°IN/EX
Tomei バルブリフター
バルブクリアランス
スペシャルバルブタイミング
点火時期
ポート研磨
Reimax オイルポンプ(対策品)
N1ウオーターポンプ
GCG GTX3582R タービンキット
800ccインジェクター(海外品)
燃料ポンプ(海外品)
BNR32純正イグニッションコイル
BNR32純正パワトラ
HKS F-con Vpro
HKS スーパーパワーフロー
ワンオフインテークパイピング
Trustインタークーラー spec-R (L=710mm)
ワンオフフロントパイプ
amuse R1チタンマフラー(90Φ)

【駆動系】
BNR34 純正ゲトラグミッション
Tomei 3.692ファイナル
ATS トリプルカーボンクラッチ
Nismo 純正LSD OHキット
Hicasレス

【ボディ関係 】restored by Mr.yoshihisa
ボディ3次元計測
レストア/補強/全塗装
サイドシル交換・1.2mm補強板追加
リアフェンダー左右交換
ルーフ交換
各部スポット溶接追加
フロントフレーム補強板(34用アウトリガー)追加
ルーフ補強板(34用)追加
前期ドア
NISMO 補強バー(トランク内リア)
リア周りフロア補修、軽量化

【足回り関係】
NISMO アーム/ブッシュ、フル交換
NISMO サーキットリンク
NISMO スタビライザー
NagisaAuto フロントアッパーアーム
クスコ ピロテンションロッド
クスコ リヤアッパーアーム
クスコ リヤトラクションロッド
MF-R 強化タイロッドエンド
OHLINS DFV(F:10k R:8k)

【ブレーキ】
Brembo Fr:F50(343mmRDDローター)
Rr:34後期(322mm)
Pad: ENDLESS MX72

【ホイル/タイヤ】
RAYS TE37 SL 2012limited 18inch 10.5j+22
ADVAN sports v105 (255/35/18)

【セキュリティ】worx auto alarm

上記スペック一覧:オーナーさんのサイトより引用させていただきました




                     【Special Thanks】

                     GT-R Magazine

                     hiro@R

                     
                                                    
Posted at 2016/01/25 17:35:55 | コメント(1) | トラックバック(1) | GT-R Magazine | 日記
2016年01月08日 イイね!

GT-R Magazine126 「レストアの意義」 Part1



【謹賀新年】
みんカラでつながりのある皆さん あけましておめでとうございます
今年もよろしくおねがいします  yoshi

さて、今号のGTRマガジンのメインテーマは「レストアの意義」となっています。
憚りながら、ぼくも少し登場していまして、ありがたい記念となる号となっています。
その記念の勢いでもって、あらためて書こうと思っていることもありますので、これから2回にわけて掲載していこうと考えています。

【レストアの意義・カナザワボディーリペア編】
まずは、カナザワさんのページから見ていきましょう。
ここで感心した言葉は、「手を入れたところは手術をしたところと同じで弱くなっていたり体力(強度)が落ちていたりします・・・」とカナザワさんが言っているところでしょう。
このようなネガティブな部分をサラって言えてしまうのは、円熟した職人ならではの言葉だと思うものです。
このページ全体を通して感じられてくることですが、そこにはハッタリや脅しがなく、ありのままの事実と現実、そして限界を表していると思います。
おそらく、カナザワさんのファンの人たちは、カナザワさんのそんなスタンス、自信あるのに自信満々でないところが素敵過ぎるくらいにカッコイイのではないでしょうか。
とかく経歴の長い、いわゆるベテランの頑固職人さんにありがちなことですが、権威的なといいますか、ある意味、ものすごく腕に自信がありそうな言葉の数々を聞かれた方も、なかにはいることでしょう。
そのような職人さんは、たしかに経験豊富であり、その頑固さゆえに確立された作業スタイルは職人芸の域となっているものかもしれません。
伝統も仕事においての大事な要素でしょうし、信頼の裏づけにもなるものと思います。
ですが、だからこそ、機器や材料は時代と共に進化していくものでもありますから、それにともなって技術も対応させていくことが、その時代のベストを尽すということになるように思うものです。
カナザワさんは、こう言っていますね。
「あれから8年が経過して、当時とは異なる新しい手法や対策術もあります。過去に仕上げたクルマを見せてもらって、その結果を踏まえ、手を加えたり調整して、あの当時よりも長く乗るためによりよい方法が提供できると思います」
カナザワさんが人気であり続ける理由は、このような謙虚で堅実な考え方、マジメな仕事の姿勢にあるのでしょうね。



「もし、ぼくもRオーナーだったら、カナザワさんにお願いしたいと思うくらいだな・・・」と、以前、職人を引退してからカナザワさんご本人に会ったときに冗談半分に言ったことがあります。
そのとき、多くは話しをしませんでしたが、同じGTR修理業でやってきた者として、どこか爽やかな気持ちの通じるようなところが感じられたものです。
Rオーナーって、それだけ熱い思いを秘めている人が多いものなんですよね。
大切にしたい、いいコンディションでありたい、カッコよく綺麗でありたい・・・
しかし、周囲から目立って、そんな思いを主張するようなことはなく・・・・。
そんなクルマにたいしての世界観が、ぼくが関わってきたGTRオーナーにも共通するところかもしれません。
それでは、最後にカナザワさんのこの言葉でしめていただきましょうか。
「わたしがGT-R専門と謳っているのは長く大切に一生乗りたいというオーナーの気持ちが琴線に触れ、その気持ちに応えてあげたいと考えているからです」
見事なくらいに、GTRオーナーの心にズシッと響くものがありますね。
(それにしても、カナザワさんって男前ですよね~)


【R32の定番となる病巣部位】
P19に掲載されていますR32の錆やすいポイント一覧は、まさにその通りですね。
オーナーさんにとって、とても参考になるものと思います。
つまりは、どの32GTRにも多かれ少なかれあてはまるということでして、たまにはチェックしてみるといいでしょう。
ちなみに、リヤワイパーベースの錆は、酷くなるとナットの取り外しができなくなります。
レストア等でリヤガラスを外すのには、リヤワイパーモーターを先に取り外す必要があるのです。
そうなると、その錆びて腐食した部分を削ったりして(つまり破壊して)リヤワイパーモーターをガラスから外すことになります。
もし、ワイパーのナットが腐食して外せないような状況になっているオーナーさんがいましたら、代替のワイパーモーターを新品ないし中古品でもいいので確保しておくといいでしょう。





【フードヒンジの錆*R33GTRに多い事例】
ボンネットヒンジは、その表面よりも、内部が酷いケースがありますので注意してください。
特にR33は重点注意箇所です。
年数が経過すると、パネルの隙間から入った雨水等によって内部パネルが錆びてくるケースがよくあります。
表面パネルはエアブローで飛ばすことができても、内部パネルばかりは仕方ないですね。
レストア計画で、あわせてみておきたい部分になるでしょう。
参考までに、かつて僕が行った作業の画像をつけておきます。






こんな感じです。
作業手順としては、切開、内部パネルの錆除去、縫合(切開の逆)という感じです。
仕上がりは切開跡のわかりにくい仕上げ、特許申請未定の「イリュージョンテクニック」になります ・笑・ハッタリかましてるかな・・・(^^)





【R33GTRの鬼門封じ*シーリングの前に対策】
純正仕様ではゴム剤でしっかりとシールしてあるのですが、それも経年劣化で収縮したりヒビ割れしていくもののようです。
そこから水分がパネルとパネルの隙間へと入っていき、いずれは年数を経て錆びが広がっていくのでしょうね。
そこで、錆の酷い箇所の分析を行い、シール剤の劣化を見越して、また、水分の流れを考慮し、ブレージング(ろう付け・金色)を行ってあります。
それは、一番やっかいな錆かたをするパネルとパネルの隙間や段差を滑らかに埋め、水分を外側へと流す設計となっているものです。
もちろん、33Rの純正仕様で当該部分に取り付けられている小さな補強板と同等のパネル板もご覧のように製作して入れてありますから、外観は純正仕様と変わりありません。
「安心してください、はいってますよ!」って感じでしょうか・・・(^^)
さて、さらにAピラー(ドア側)部分には純正仕様っぽいMIG溶接をあえてわかりやすく入れてあるのも狙いといえば狙いです。
ですが、そのような細かなことはともかく、一番伝えておきたいことは、錆対策として純正仕様以上にシール剤を充填して耐久性を向上しようとするにしても、まず板金作業の段階で、こういった錆対策をしておくこともできるということです。
そのほうが、後で行うケミカル的な錆対策よりも、より根本的、構造的な錆対策となりますよね。
ま、当時そんなふうに考えてやってみた作業です。





修理作品サイトへのリンクは以下になりますので、もっと見てみたい方はこちらをどうぞ。
Auto Repair Gallery *R33GTR錆修理→ http://www.yoshihisa-style.com/arg/026-11r33.html


            ******************




【レストアは下地が命・ガレージヨシダ編】
ガレージヨシダさんの電着塗装が今号でも取り上げられていました。
(ヨシダさん!がんばっていますね~)
まず、ぼくが思うことは電着以前の剥離作業、さらにその前提として「程度のいいボディ」であったということになるでしょう。
つまりは、今回のケース車両が事故歴や修理歴、大きな凹みや酷い錆が無いボディで行ったということです。
おそらく今後は、受注している作業車両においての板金作業や錆修理との兼ね合いがテーマであり、Gマガ誌面でも見せ場となってくるのでしょうね。
もっと程度が劣化しているGTRのほうが、たぶん多く流通していると思いますので、それなりに凹みや修理歴のあるGTRをどの程度あらかじめ板金作業で復元しておくのか、というところがポイントになるのではないでしょうか。
そして、その後、まさに電着塗装の威力発揮となるものでしょう!
もしくは、先に電着塗装を行い、それから板金作業を行うという流れももちろん考えられますが、できるならば先に板金を済ませておくほうがいいように、ぼくは思います。
電着塗装を使ったレストアで一番有効なのは、融雪剤や塩害等でパネルの隙間から腐食しているようなケースになるのでしょう。
といいますのも、塩害車両の部分的なレストアほどたいへんなものはなく、錆の取り残し、錆止め剤の入りきれない場所が多いからです。
ウエットブラストでフレーム、下回りを吹き付け剥離し、それから本体ごと電着層に浸けることによって、手作業でのレストアではカバーしきれない部分が改善される可能性があるように思います。
それでも今号で報告されていますように、フレーム内部や袋状になった部分には剥離しきれない、電着塗装しきれない部分や錆が残るような部分もあることでしょう。
しかし、ここでだいじなことは、けしてモデルケースの車両のような完璧さとはならなくても改善はされるということであり、手作業でのレストアの限界を超えることは確かなことだと思います。
いまはまだ見えてきていない電着を使った作業の組み合わせや、あらたな発想もいろいろと考えられるでしょうから、これからもヨシダさんの作業が楽しみですね。
日本には塩害で朽ちていくクルマが、かなりありますから、こういった作業が行えるということが、もっとポピュラーになっていって欲しいと思います。
(ハチロクとかも復活させたいよね~)




【夢*そのために望むことは・・・】
・熱い思いと腕のある職人が増えること
・製造廃止部品の復活と部品価格の値下げ
・おまけにガソリン価格の下値安定も
・さらには税金の軽減でしょうかね
・あっ、そうだ!高速道路も、もうちっと安くはならんかな・・・
・オービスも、あんまり意味ないんじゃないかな~ 撤去撤廃の方向で
・ついでに、なんの恩恵も優遇もない非エコカーオーナーにバラマキ3万円を・・

 ことしは選挙、こういった鼻先のニンジンに惑わされないようにしないとね~



Part2では、あの32GTRを特集します。
それでは、また~ yoshi

*******************************
Posted at 2016/01/08 20:25:04 | コメント(2) | トラックバック(0) | GT-R Magazine | 日記
2015年11月26日 イイね!

「GT-Rに永遠の命を」



【GT-R Magazine owners file V】
何年ぶりになるのだろうか・・・?
ひさしぶりにGT-Rマガジンに掲載されました。
企画のタイトルは「GT-Rに永遠の命を」というものです。
そこで、この「みんカラ」のブログでは今回ちょっと趣向を変えてみて書いてみたいと思います。
それは、ぼくの修理作品集である Auto Repair Gallery の特別編といった意味合でして、作業時の写真を一杯使って掲載するスタイルになります。
それにしても、このような作業紹介のスタイルは、オールドファンの方には、なつかしい~スタイルですよね、きっと。(^_^)v
職人を引退した今となっては、すこし自慢モードで書いてもいいのかなあ~なんて思ってもいます・・・(笑)
ぜひ、Gマガオーナーズファイルの誌面とあわせて見てください。
作業完了してから10年経過、つまりは10年越しのビフォーアフターになっています。
では、まずはじめに、損傷の状況から紹介していきましょう。
















ま、一見して思うことは、相当な損傷であるということですよね。
ここでのポイントは、ドアが閉まらなくなっていることと、Aピラー周辺の損傷具合が酷いということです。
メインフレームが押されて曲がっているために、フロアとルーフが縮み、結果としてドアがドア枠に収まらなくなって飛び出しているということです。
タワーバーとAピラー曲がり、そしてサイドシルの歪みもわかりますね。







こちらは、ルーフの歪み。
細かな部分ですが、トランクとクオーターパネルの損傷はクラッシュ時の衝撃によるものです。






室内側の歪み状態も、かなりあることがわかります。
ちょっとわかりにくいかもしれませんが、左右のストラットの向きも非対称になっていますね。
それだけの衝撃が加わったということをあらわしています。












サイドシル内部の修正と、フロアの引き出し修正です。
もちろん、直接の損傷はありませんが、右フレームにも影響はでていますから、そちらの修正も必要です。
モノコック構造なので、損傷箇所だけを引き出したり修正することは、基本的には出来ないものです。
ボディの損傷箇所を引き出すということは、けして部分的なところでは収まらず、ボディ全体にも少なからず影響を及ぼすものです。
それは、どんな機器やジグを使おうとも、ボディの固定箇所にストレスを与えることになるからです。
つまりは、その引き出しのさじ加減によって、トータルでのボディ寸法のバランスを合わせていくことが仕事であり、そこにこそ経験や腕というものがあるように考えています。




いちばんの難所は、たぶん、このルーフの修正になるでしょう。
なぜならば、歪みが出やすい箇所であり、引っ張りすぎれば歪みが収まらなくなる部分です。
そういう意味においては、ハイリスクなことをやっています。

それと、こんなところを切っちゃって大丈夫なのか?
ボディのその重みによって、かえって歪むことになるのではないか?
というような疑問もありそうですよね。
答えは、その通りです。
ですから、ハイリスクなのです。
最悪のケースとして考えられることは、この状態でルーフが折れ曲がってしまうことでしょうか。
では、もし、万一そうなってしまったならば、どうするのか?
ぼくのサイトは、自動車修理業をしている現役のプロのひとたちも少なからず見ていると思うので書いておきますが、
プロであれば、そこも考えておきたい部分ですよね。
もちろん、そうならないための手をあらかじめ打っておくものですが、仮にそれが役に立たなかったならば、どうするか・・・
そういう緊急事態になったときにこそ経験が反映される見せ所ともいえることになるものでしょう。
がんばってください!としか言えません・・・(^^)




とは言っても、ひとつくらいはヒントらしいことを書いておきましょう。
もし、ぼくでしたら、それは、たぶんルーフを切るでしょうね。
つまりは、ルーフを犠牲にして、他を生かす方向にもっていくということです。
フロアに手を入れていくよりかは、ルーフに手を入れていくほうが費用的にも負担が少ないですし、作業の難易度もまだマシでしょう。
そして、そのときには、きっとこういう提案も同時にオーナーさんにすることでしょうね。
「この際、一気にルーフからガラス周り、ドア枠周りをスポット増しをしませんか?」
という、地獄のチューナー北見淳ならぬ地獄の職人による悪魔のささやき・・・
いえいえ、そうではなくて、オーナーさんの夢の可能性を広げていく方向の提案も同時にすることでしょう。
これは、なにが言いたいかというと、失敗を修正して終わらせるということだけではなく、
そこから、さらにクルマの価値を上げていく方向にも持っていける可能性があるということなのです。
ボディのプロ職人は、ここまでクルマをバラすことができるがゆえに提案できる技術や方法があるのだということを身に付けておくことによって、オーナーさんの満足度がより一層向上する職人になれるのではないでしょうか。
今回あらためて掲載した作業の流れ全体を通して、なにか参考になるところがあれば幸いです。
ぜひ、顧客となっているオーナーさんの日々の作業へと生かしていってください。




これは、左フレームとのバランス合わせのために、右フレームを調整しているところになります。
右側にも、いくぶん影響は出ているので、その修正も必要と書いたと思いますが、最終的には左側との微妙なバランスを取っていくことによってアッパーボディを組み立てていくものです。





















フレームの下回りにこだわってみたものです。
わかるでしょうか?
キッチリとスポット溶接の打痕がフレームのつなぎ部分に打ち込まれていることが。
これが、後々の買取査定、自動車買取店対策として当時おこなった手法です。
一般的な修理方法では、当該部分に打痕を表すフレーム交換作業は不可能なものでしょう。
強度優先にしたい箇所でもありますから、ヘンに見てくれに振る方向の作業にしては、かえって危険になりますから、単なる査定対策にこだわるのは注意してください。
チャレンジするにしても、必ず強度を考慮してやって欲しいと思います。
特に、フレーム周りにスポット片打ちで対応することは強度不足になりますので、勘違いをなさらぬように。

余談ですが、他の車両において、かつて某大手自動車買取店の査定をスルーしたことがあります。
今回の34Rよりも、もっと酷い大破車両であったのですが、このような対策を各所に施して仕上げていった結果、買取店の査定担当者に無事故車であると判断され、無事故車の価格相応で買い取ってもらえたという報告をオーナーさんからいただいたものです。
もちろん、それは買取店の担当者の見落としや誤解であったわけですが、よきに解釈すれば、思わず見落としてしまうくらいのレベルの仕上がりになっていたということなのかもしれません。
当時は、特にこういった買取店の査定対策にこだわった手法を考えていたものです。
それは、時間がかかるとか、面倒とかいうよりも、異端の知恵というものになるでしょう。
よく言えば異端の知恵、もっとよくいえば隠蔽工作の結集ですかね・・・。
そんなことも昔はよくやったものだなあと、この写真を見て懐かしく思い出されてきました。
おそらく10年経った現在においても、この隠蔽技術はまだマネされてはいないことでしょう・・・。






                   2005年 作業完了


    *************************





ことし、2015年10月に行ったGTRマガジンの取材の様子を少し書いてみたいと思います。
それは、10年ぶりの再会という感じでもあり、とても感慨深いものがありました。
ご長女さんとは10年前にお会いして以来でしたから、なんともなつかしい記憶が蘇ってきますね。
当事は、たしか、まだ小さな女の子っていう感じだったような・・・(^^)
10年というのは長いともいえるし、あっという間ともいえますよね。
これだけ素敵で可愛く成長されてきたのですから。





あの日、GTRにチャイルドシートをつけてご家族で帰っていった日のことが想い出されてきます。
それは、傷ついたパパのGTRが治ったということと、パパの感無量な思いの喜びに子供ながらにも共感していたからのように思います。
娘さんのその姿は、まるで急いでクルマに飛び込むかのようであり、それは、それだけパパのことが好きで慕っていたからでありましょう。
そんなやさしい気持ちがいっぱい詰まっていたからこそ、きっと誰よりもいち早くパパの愛車に乗り込みたかったということなのでしょうね。
振り返ってみて、ぼくには、そんなふうに思い出されてくるものです。

オーナーさんがスカイラインと出会い、憧れ、念願かなって34GTRを購入し、そしてやがてお子さんが産まれ育っていく・・・。
その間の月日には、いろいろな想いを感じる出来事がたくさんあったことでしょう。
今回のGTRマガジンの取材と掲載がカーライフとしての記念を超えて、家族ぐるみでの想い出のひとつとしてなったならば、ぼくは最高にうれしい。
そして、ぼく自身にとっても職人時代の仕事のスタイルの記念碑になるものでありますが、それは、オーナーさんとの偶然的な出会いから始まり、今回GTRマガジンの編集者さんのお声かけがあったことによって、このようにして掲載されるということが実現したものであります。
ほんとうに、ご縁に感謝ですね。
ありがたいほどの喜びを、いま、深く感じています。
yoshi






                2015年11月 交通タイムス社
                 GT-R Magazine. Owners File Ⅴ



                  **********

Posted at 2015/11/26 17:41:28 | コメント(3) | トラックバック(0) | GT-R Magazine | 日記
2015年11月09日 イイね!

GT-R Magazine Vol.125 「ボディリメイクの新機軸」



【ボディリメイクの新機軸】
クルマにとってボディがいかに大事であるのか。
ぼくはずっとそれをブログのテーマのひとつとしてやってきましたが、今日はあらためて、より気持ちをこめて、それについて書いていこうとおもっています。
さて、今号のGTRマガジンでの特集記事は、ガレージヨシダさんが今回紹介していますウエットブラストと電着塗装になりますね。
それについてのコメントから書いていこうと思っていますが、まずは一般的な剥離の方法から説明していきましょう。
①サンダー等の研磨機器を使って塗膜を削っていくという方法。
②剥離剤という液剤を使って塗膜を溶かしていくという方法。
③ガスの火を使ったバーナーなどで塗膜を焼いていく方法
おもに、これら3つの手法が、自動車修理の現場では多く行われているものです。
そして、各々の考えられるリスクを書いておきましょう。
①の研磨するうえでのリスクは、研磨が塗膜だけで留まらず下地のパネル(いわゆる鉄板と呼ばれている部分)まで削ってしまうこともある。
また、サンダーの摩擦熱によるパネルの歪みが出ることもある。
②の剥離剤のリスクは、剥離後の処理不足があったときには剥離剤が残留することがある。
③の火で焼いていく方法のリスクは、熱によるパネルの歪みが出ることがあったり、養生不足の場合には余計なところをも焼いてしまったりすることもある。
というようなところでしょうか。
ここで、注意していただきたいことは、どの方法であっても、すべて作業者の技量によるところ、
つまりは「腕次第」というものになるところが多いものですから、一概に研磨がいけないとか、バーナーがいけない等というつもりはありません。
 つづいて、ウエットブラストの特徴を考えてみましょう。
①塗装を剥離するにあたって、パネルへの研磨ダメージ、熱による歪みダメージを少なくできる。
②フロアやフレーム周りなどの袋状になっている部分も、噴射があたる部分については剥離ができる可能性がある。
ということになるでしょう。
ぼくはウエットブラストは使ったことがないのですが、誌面の記載によれば、この熱による歪みの発生リスクやパネルを削りすぎてしまうリスクを軽減させるためには有効な手法になるものだと思います。
このようなメリットがあるものなのでたいへん魅力的な手法であると思います。
そしてその特徴を生かすためには、Gマガに掲載されているようにボディをドンガラにするレベルの作業に向いているのでしょう。
と、いいますのも、研磨剤であるメディアを吹き付けた際の飛び散りがあるために、ボディ本体を剥離するには養生をしっかりするか、今号の写真のように内装やエンジン周りなどの機関を外す必要があると思います。
したがいまして、フロントフェンダーやドア、フード、バンパーなどの取り外し可能パーツの単体剥離であれば、そこまでは必要ないと思いますから、部分的な作業との組み合わせも有効になるのでしょうね。



【ハイクオリティなレストアとするために】
先日、ガレージヨシダの吉田さんと話していたことですが、細かな部分での詰め、バージョンアップはこれからもあることでしょう。
たとえば、電着後の処理方法、また、塗装完了後の再補修を必要とした場合にどうするか?
そういったこともハイクオリティなレストアの作業をしていくには大事なことになっていきます。
逆にいえば、それだけ手持ちのカード(作業テクニック)を増やしておくことと、
過去の事例から予想できるトラブルを想定しておくということは、これから業界を引っ張っていくくらいのインパクトのあるプロとしては必要なことになってくるのでしょうね。
吉田さん自身も、そのあたりは日々研究しているところですから、今後もたのしみですね。
電着という自動車メーカーでしかできなかったことが、アフター修理の業界でも出来るようになったということは、たいへん素晴らしい進歩につながることとおもいます。
今後は、この流れを生かしていって欲しいとおもいますし、普及とまではいかなくても広めていくことが多くの旧車オーナーの願いでもあることでしょう。
それゆえに、あえていえば、いまのところは特別な施工であるということが、逆に考えてみた場合には懸念にもなりうるところなのかもしれません。
といいますのも、数をこなしていって初めて見えてくるものもあるかと思うからです。
たとえば、パネルの合わせ面や溶接部分が錆ていたケースなど、言い出したらキリがないのですが、より完成度の高いものを目指していくとなれば、そういったことが今後のテーマとしてあがってくるようになるのかもしれません。
つまりは、キリがないものなのですが、「完璧は無い、永久に得られない」というなんとも空しい結論となってしまうのが、どうやらこの世界の唯一の真実なのかもしれません。
であれば、日々の研究と向上に夢をつないでいくというような考え方に基づき、現時点でのベストなものを選択し続け、委ねていくのがいいのでしょう。
そして、バージョンアップを適宜行っていくというスタイルが、結局のところ一番心理的なストレスの少ない考え方になるのかと思います。
「完璧を求めていくと苦しくなっていく」と心理学でも言われていますから、ある程度柔軟な考え方をもって対応し続けていくことに喜びを見出していったほうが、気持ちとしてラクでいられるのだと思います。
ちなみに、そういった考え方のことを心理学では「プロセスを楽しむこと」と言っています。
 話しを電着塗装に戻しますと、電着の入らない部分をどう処理していくのか。
いずれは、そこに注目が戻っていくことでしょう。
こんかいのケースでは、さほど錆の修理を要する部分がなかったようですので剥離後にスムースに電着へと進めたのだとおもいます。
オーナーさんの中には、大なり小なり過去に事故をしたり、錆が出ているケースもあるでしょうから、そういった部分の対処方法や板金修理との組み合わせをどのように組み合わせて行っていくのか、
電着という素晴らしいものを取り入れられるようになったがゆえに、よりレベルの高い板金作業が求められてくる時代に移っていくのかもしれませんね。



【総剥離は慎重に】
もうひとつ書いておきたいことは、必ずしも全剥離がベストなレストアではないということでもあります。
そこは、よくよく知っておいて欲しいと思うところであります。
今号のGTRマガジンでは、ラッシュさんでもドンガラ剥離のケースを紹介していますよね。
ここまで磨き込むのは、たいへんな作業であったと思います。
職人さんのがんばりが写真からも伝わってくるようです。
このようにして剥離するかどうかは、ひとえにボディの状況次第によるものと思います。
それほど錆で劣化していない場合には、塗装を完全剥離する必要のないケースも多々ありますので、そこに関してはご注意くださるといいかと思います。
むしろ、下地の鉄板を空気に晒すことのほうが、かえって錆の発生リスクを高めることも考えられますから、ぼくの考え方としては慎重に行って欲しいとおもっています。
特に湿気の多い時期などの天候要因、工場の環境によっても錆の発生時間が変わることでしょう。
ぼくのかつての経験上でのことですが、剥離してほんの数時間、鉄板をむき出しにしておいただけでも、微細な錆が発生していたことがあります。
もし、そういったことに気付かずに塗装をしていった場合、後々その微細な錆が成長していくこともあるでしょうから、必ずしも剥離にこだわる必要はなく、可能であれば、オリジナルの塗膜を生かしたレストアや全塗装を行っていくのが予算的にもクルマのためにも負担が少なく行えるものになると思います。
具体的に少し補足しておきますと、クリア層の傷みや褪色というレベルであれば、程度にはよりますが無理に剥離はしないほうが無難なケースもあることでしょう。
下塗り、中塗り部分の再塗装から行えば十分綺麗に仕上がるケースもあるということです。
もし、パネル(いわゆる鉄板と呼ばれる部分)から傷んでいるのであれば、塗膜を削るより仕方ありませんので、そのようなケースと判断されるならばGマガに掲載されているケースのように完全な剥離をしてゼロからやり直していくのがいいのでしょうね。
あくまでも各職人さんの見方、考え方、腕次第ということにはなるのですが、GTRを大切にされている方にとって、今回のぼくのブログがなにかしらの参考になれば幸いです。
yoshi




【あとがき】
ぼくのサイトに以前登場してもらったことのあるオーナーさん、その世界では有名な走り屋さんなのですが、その方が事故で亡くなられるということがありました。
訃報を聞いても現実味がなく、葬儀に行ってようやく、なんとなく実感が湧いてきたという感じでした。
心理的なショックで悲しみすら感じられにくくなっていたのかもしれませんし、彼はその世界でのキャリアが長く、リーダー的な存在でありましたから、まさか彼に限って、という思いがあたりまえのようにあったからなのかもしれません。
以前撮影したとき、彼のクルマに同乗したこともあるのですが、その余裕ある運転テクニックゆえに、まさか彼が亡くなるなんてという驚きがしばらく抜けませんでした。
後日に事故状況を拝見しましたが、その凄まじさにクラッシュ時の衝撃がいかほどだったことか。
ただただ想像を絶するとしか言いようがないものでした。
意識を想像してつなげてみれば、彼の思いとして、それぞれの心中に浮かんでくるものが、きっとあることでしょう。
ぼくにとっては、やはり「安全」ということになるのかとおもっています。
クルマというのは、便利ですし、楽しいものでもありますよね。
GTRなどのスポーツ系であればなおのこと、速さもその楽しみのひとつであります。
いっぽうで、危険ということも、またそこにはあるのが現実でもあります。
オーナーさんそれぞれと言ってしまえばそれまでなのですが、誰にだってその楽しさと危なさというのは常にあるものなのでしょう。
禁止したりすれば、同時に楽しいという感情も禁止されていくことになるでしょうから、ただ禁止すれば済むという考え方は、ぼくはそのようには捉えていきたくはありません。
ぼくの立場から、せめて言えることは、なによりも安全を一番に考えた自動車修理の方法をご縁のあるオーナーさんたちにお薦めし、広めていくことなのかと、彼の事故からあらためて思っているところであります。
もちろん、ひとそれぞれの価値観がありますし、安全と何か別の要素との兼ね合い、バランスも大事なことでしょう。
また、過剰な安全を求めていけば、何か別の要素を犠牲にしなければ成り立たないことも、きっとあることでしょう。
ぼくの見たことのあるケースなのですが、あるタクシー会社の自社工場では事故で破損した車両の骨格パネル交換修理に溶接を行わずリベット留めで対応しています。
そのような修理をされたタクシーを複数台見かけたことがありますから、どうやら、リベット留めがそのタクシー会社ではスタンダードになっている様子にぼくには思えたものです。
メーカー修理書(修理マニュアル)では、スポットないしMIG溶接を推奨していると思うのですが、リベット留めにこだわるその理由は、社長さんのお人柄から察しますと、おそらく溶接機の導入コストの面にあるのではないかと思われてもきます。
もしそうであるならば、乗客を頻繁に乗せるという仕事であるわけですから、万一の事故の際の衝突安全性という面でみた場合には、そのような修理方法を採っていることはどうなのでしょう。
もしかしたら、リベット留めという手法であっても、作業のやりようによってはスポット溶接やMIG溶接と同等の強度が出せるのかもしれませんし、事故率という統計で見た場合にはプロドライバーであるため一般のドライバーよりも事故を起すことはそもそも少ないのかもしれません。
また、メンテナンスや修理方法などは、日ごろ利用する乗客には見えない部分でもあるかと思います。
しかし、今までにそれで何の問題も起こったことがないにしても、乗客を目的地へと運ぶことと同じかそれ以上に安全を売っているという意識を高めていくことが、もっとあっていいのではないでしょうか。
さまざまな観点からみることができますから正義や正解などというものはなく、ぼくの思いだけでもってけして偏った見方や理解をしては欲しくないのですが、良い悪いは別にして会社という組織は、そのトップである社長の意識が変わらない限り、その仕事のスタイルもまた変わらないものなのかもしれませんね。
 話を戻しまして、彼のことから思うことは、自分の意識の上だけでも安全かどうか、その思いを持ち続けているかどうかというだけでも十分に安全への意識は高まっていくのではないか、そんなふうに思うものです。
自動車を利用するすべての人たち、自動車修理業に携わっている方々、特に板金職人の方々においては、引き続きこれからも「安全」ということを優先して考慮した修理をすすめていって欲しいと願っています。
yoshi



Posted at 2015/11/09 15:26:29 | コメント(2) | トラックバック(0) | GT-R Magazine | 日記

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