今号において何より印象に残った言葉。
それは、『RacingからRevolutionへ』という、68ページのタイトルである。
GT-Rは、グランドツーリングカーなのか、それともレーシングカーなのか?
モータージャーナリストの西川氏は、
歴代のGT-Rは、その両方の高みを目指すがゆえの「振り子の歴史」、もしくは「せめぎあい」であったのではないかと問いかけている。
そして、Rとは『Rへの扉』であり、『Rの正体といえば、実に観念的であった』と結んでいる。
そもそも観念とは、主観的な印象や考え方のことであり、思い込みとでもいえるだろう。
であれば、歴代のGT-Rというクルマはレーシングを想起させる記号とパフォーマンスを秘めたクルマであり、Racingというよりも、その本質はGTというものになるのだろう。
そもそも主に日本の道を走る想定で作られたクルマである以上は、少なくてもタテマエとしてそうでなければならず、
なにしろ法的な縛りがある中では、レーシングをそのままストリートに持ち込むというわけにはいかない。
しかし、ルールの裏には必ずといっていいほどホンネというものが潜んでいるのではないか。
そして、それこそが社会的な善悪判断を超えた偽りのない人間らしい心からの欲求といえるものではないだろうか。
心理的な面から考察すれば、人間のすべての行動や感情は欲求である。
スポーツカーが欲しいという気持ちの奥には、やはり、速く走らせてみたいという純粋な欲求があり、
さらにそれを読み解いていくと、根底には自己承認欲求があるのだと思う。
職人時代に付き合ってきたオーナーたちは、その多くがストリートを舞台にしていた。
彼らは、ツルシのRからは程遠い仕様のGT-Rに乗っている。
エンジンもボディも彼らなりの好みに仕上げ、そして、何よりもホンネでGT-Rを「R」として楽しんでいる。
オトナであるがゆえ、タテマエはあってしかるものだし、その使い分け、バランスでいいのだと思う。
タテマエも善悪判断も突き詰めていけば主観的な観念であるに過ぎないからだ。
いまさらタテマエだけでは生きられないなどと青臭いことを言うまでもなく、世間でいうところの非日常を日常の一部としている。
もちろん、日常であるからこそ自他共に守るための最大限の配慮が欠かせないことはいうまでもない。
精神的な世界観からすれば、この世の中はすべてが観念である、とされる。
いま一番興味があるのは、それを、はたして、どこまで実感できるものなのかどうかである。
ひとつ確信的に言えることは、誰しもが何にせよ究めていった先に、そういう世界観に辿りつくか、垣間見るのではないかということだ。
そして、きっとホンネ主義のオーナーであれば、GT-Rに乗るたび無意識に観念的な現実世界とでもいえる瞬間を感覚的にでも感じているのではないだろうか。
西川氏は、35GT-Rについて、このように記している。
『R35GTRの伝説は、レーシングの舞台ではなく、完全にストリートに存在する』
これは、R35に限定したものではなく、まさに歴代のGT-Rそのままを言い得ているものだろう。
サーキットでのレーシングのイメージもあるにはあるが、個人的な思いからすればストリートにこそRの世界観がある気がしてならない。
もういちど、タイトルコピーの『RacingからRevolutionへ』を振り返ってみる。
これは、いつの時代においても少なくともGT-Rにおいては、この観念的な「R」という世界観を究めていくクルマであって欲しいと思わせるものだ。
最新の35GT-Rだけではなく、かつてのRたち、それぞれにおいてである。
GT-Rとは伝説の統合なのだ。
羊の皮を脱ぎ、レーシングの面影を超え、革新し続ける、その孤高なる存在として・・・・。
もうひとつ印象に残ったものは、P134のBCNR33運行日誌について。
まあ、こちらもラフに書いてみたいが、カナザワさんは、いい仕事しているなあ、と思う。
作業予約が多いようなので、もう誌面で宣伝する必要などないのではないかとも思うが、
正統派の仕事として見本になるので続けていって欲しい。
マスキングによる養生の仕方もそうだが、何より、リヤスポを外す際の慎重さが伝わる写真となっている。
ひとつ補足で書くとすれば、純正シールの替わりにブチルゴムを使うという手法。
このワザは、他の箇所にもつかえるので覚えておくといいと思う。
たとえば、R34のテールレンズ取付け部分のパッキンや、サイドステップのグロメット部分。
R32では、NISMOサイドステップカバーや、リヤスポイラー取付けボルト周辺、ドアガラスのリテーナ取付けネジなど。
純正パッキンよりも耐久性をだしたいと思うときや、雨漏れ防止などの用途でつかえる。
3M製のブチルテープを推奨したい。(Amazon通販でも扱っている)
ちなみに、3Mウインド・リボンシーラーという太いものの方はR32のテールレンズ取付部周辺などにつかえる。(取るのが、めんどくさいところのやつね・・)
ブチルテープという細いものは、グロメットの周辺などにチョットつけるのに適している。
まあ、すでに知っていることとは思うが参考までに。
あと、もう一点注意したいのは、建築用途など粘着性の強いものはクルマの塗装をいためるので避けるのが無難。
マスキングテープも粘着性の強いものがある。
長時間貼ったままにしておくと、塗装部分だけでなく、プラスチック部品やゴム部品もいためるので作業が終わったらすぐに剥がすこと。
直射日光のもとでは特に注意が必要となるでしょう。 yoshi