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SPEED GROOVE @ yoshiのブログ一覧

2016年01月08日 イイね!

GT-R Magazine126 「レストアの意義」 Part1



【謹賀新年】
みんカラでつながりのある皆さん あけましておめでとうございます
今年もよろしくおねがいします  yoshi

さて、今号のGTRマガジンのメインテーマは「レストアの意義」となっています。
憚りながら、ぼくも少し登場していまして、ありがたい記念となる号となっています。
その記念の勢いでもって、あらためて書こうと思っていることもありますので、これから2回にわけて掲載していこうと考えています。

【レストアの意義・カナザワボディーリペア編】
まずは、カナザワさんのページから見ていきましょう。
ここで感心した言葉は、「手を入れたところは手術をしたところと同じで弱くなっていたり体力(強度)が落ちていたりします・・・」とカナザワさんが言っているところでしょう。
このようなネガティブな部分をサラって言えてしまうのは、円熟した職人ならではの言葉だと思うものです。
このページ全体を通して感じられてくることですが、そこにはハッタリや脅しがなく、ありのままの事実と現実、そして限界を表していると思います。
おそらく、カナザワさんのファンの人たちは、カナザワさんのそんなスタンス、自信あるのに自信満々でないところが素敵過ぎるくらいにカッコイイのではないでしょうか。
とかく経歴の長い、いわゆるベテランの頑固職人さんにありがちなことですが、権威的なといいますか、ある意味、ものすごく腕に自信がありそうな言葉の数々を聞かれた方も、なかにはいることでしょう。
そのような職人さんは、たしかに経験豊富であり、その頑固さゆえに確立された作業スタイルは職人芸の域となっているものかもしれません。
伝統も仕事においての大事な要素でしょうし、信頼の裏づけにもなるものと思います。
ですが、だからこそ、機器や材料は時代と共に進化していくものでもありますから、それにともなって技術も対応させていくことが、その時代のベストを尽すということになるように思うものです。
カナザワさんは、こう言っていますね。
「あれから8年が経過して、当時とは異なる新しい手法や対策術もあります。過去に仕上げたクルマを見せてもらって、その結果を踏まえ、手を加えたり調整して、あの当時よりも長く乗るためによりよい方法が提供できると思います」
カナザワさんが人気であり続ける理由は、このような謙虚で堅実な考え方、マジメな仕事の姿勢にあるのでしょうね。



「もし、ぼくもRオーナーだったら、カナザワさんにお願いしたいと思うくらいだな・・・」と、以前、職人を引退してからカナザワさんご本人に会ったときに冗談半分に言ったことがあります。
そのとき、多くは話しをしませんでしたが、同じGTR修理業でやってきた者として、どこか爽やかな気持ちの通じるようなところが感じられたものです。
Rオーナーって、それだけ熱い思いを秘めている人が多いものなんですよね。
大切にしたい、いいコンディションでありたい、カッコよく綺麗でありたい・・・
しかし、周囲から目立って、そんな思いを主張するようなことはなく・・・・。
そんなクルマにたいしての世界観が、ぼくが関わってきたGTRオーナーにも共通するところかもしれません。
それでは、最後にカナザワさんのこの言葉でしめていただきましょうか。
「わたしがGT-R専門と謳っているのは長く大切に一生乗りたいというオーナーの気持ちが琴線に触れ、その気持ちに応えてあげたいと考えているからです」
見事なくらいに、GTRオーナーの心にズシッと響くものがありますね。
(それにしても、カナザワさんって男前ですよね~)


【R32の定番となる病巣部位】
P19に掲載されていますR32の錆やすいポイント一覧は、まさにその通りですね。
オーナーさんにとって、とても参考になるものと思います。
つまりは、どの32GTRにも多かれ少なかれあてはまるということでして、たまにはチェックしてみるといいでしょう。
ちなみに、リヤワイパーベースの錆は、酷くなるとナットの取り外しができなくなります。
レストア等でリヤガラスを外すのには、リヤワイパーモーターを先に取り外す必要があるのです。
そうなると、その錆びて腐食した部分を削ったりして(つまり破壊して)リヤワイパーモーターをガラスから外すことになります。
もし、ワイパーのナットが腐食して外せないような状況になっているオーナーさんがいましたら、代替のワイパーモーターを新品ないし中古品でもいいので確保しておくといいでしょう。





【フードヒンジの錆*R33GTRに多い事例】
ボンネットヒンジは、その表面よりも、内部が酷いケースがありますので注意してください。
特にR33は重点注意箇所です。
年数が経過すると、パネルの隙間から入った雨水等によって内部パネルが錆びてくるケースがよくあります。
表面パネルはエアブローで飛ばすことができても、内部パネルばかりは仕方ないですね。
レストア計画で、あわせてみておきたい部分になるでしょう。
参考までに、かつて僕が行った作業の画像をつけておきます。






こんな感じです。
作業手順としては、切開、内部パネルの錆除去、縫合(切開の逆)という感じです。
仕上がりは切開跡のわかりにくい仕上げ、特許申請未定の「イリュージョンテクニック」になります ・笑・ハッタリかましてるかな・・・(^^)





【R33GTRの鬼門封じ*シーリングの前に対策】
純正仕様ではゴム剤でしっかりとシールしてあるのですが、それも経年劣化で収縮したりヒビ割れしていくもののようです。
そこから水分がパネルとパネルの隙間へと入っていき、いずれは年数を経て錆びが広がっていくのでしょうね。
そこで、錆の酷い箇所の分析を行い、シール剤の劣化を見越して、また、水分の流れを考慮し、ブレージング(ろう付け・金色)を行ってあります。
それは、一番やっかいな錆かたをするパネルとパネルの隙間や段差を滑らかに埋め、水分を外側へと流す設計となっているものです。
もちろん、33Rの純正仕様で当該部分に取り付けられている小さな補強板と同等のパネル板もご覧のように製作して入れてありますから、外観は純正仕様と変わりありません。
「安心してください、はいってますよ!」って感じでしょうか・・・(^^)
さて、さらにAピラー(ドア側)部分には純正仕様っぽいMIG溶接をあえてわかりやすく入れてあるのも狙いといえば狙いです。
ですが、そのような細かなことはともかく、一番伝えておきたいことは、錆対策として純正仕様以上にシール剤を充填して耐久性を向上しようとするにしても、まず板金作業の段階で、こういった錆対策をしておくこともできるということです。
そのほうが、後で行うケミカル的な錆対策よりも、より根本的、構造的な錆対策となりますよね。
ま、当時そんなふうに考えてやってみた作業です。





修理作品サイトへのリンクは以下になりますので、もっと見てみたい方はこちらをどうぞ。
Auto Repair Gallery *R33GTR錆修理→ http://www.yoshihisa-style.com/arg/026-11r33.html


            ******************




【レストアは下地が命・ガレージヨシダ編】
ガレージヨシダさんの電着塗装が今号でも取り上げられていました。
(ヨシダさん!がんばっていますね~)
まず、ぼくが思うことは電着以前の剥離作業、さらにその前提として「程度のいいボディ」であったということになるでしょう。
つまりは、今回のケース車両が事故歴や修理歴、大きな凹みや酷い錆が無いボディで行ったということです。
おそらく今後は、受注している作業車両においての板金作業や錆修理との兼ね合いがテーマであり、Gマガ誌面でも見せ場となってくるのでしょうね。
もっと程度が劣化しているGTRのほうが、たぶん多く流通していると思いますので、それなりに凹みや修理歴のあるGTRをどの程度あらかじめ板金作業で復元しておくのか、というところがポイントになるのではないでしょうか。
そして、その後、まさに電着塗装の威力発揮となるものでしょう!
もしくは、先に電着塗装を行い、それから板金作業を行うという流れももちろん考えられますが、できるならば先に板金を済ませておくほうがいいように、ぼくは思います。
電着塗装を使ったレストアで一番有効なのは、融雪剤や塩害等でパネルの隙間から腐食しているようなケースになるのでしょう。
といいますのも、塩害車両の部分的なレストアほどたいへんなものはなく、錆の取り残し、錆止め剤の入りきれない場所が多いからです。
ウエットブラストでフレーム、下回りを吹き付け剥離し、それから本体ごと電着層に浸けることによって、手作業でのレストアではカバーしきれない部分が改善される可能性があるように思います。
それでも今号で報告されていますように、フレーム内部や袋状になった部分には剥離しきれない、電着塗装しきれない部分や錆が残るような部分もあることでしょう。
しかし、ここでだいじなことは、けしてモデルケースの車両のような完璧さとはならなくても改善はされるということであり、手作業でのレストアの限界を超えることは確かなことだと思います。
いまはまだ見えてきていない電着を使った作業の組み合わせや、あらたな発想もいろいろと考えられるでしょうから、これからもヨシダさんの作業が楽しみですね。
日本には塩害で朽ちていくクルマが、かなりありますから、こういった作業が行えるということが、もっとポピュラーになっていって欲しいと思います。
(ハチロクとかも復活させたいよね~)




【夢*そのために望むことは・・・】
・熱い思いと腕のある職人が増えること
・製造廃止部品の復活と部品価格の値下げ
・おまけにガソリン価格の下値安定も
・さらには税金の軽減でしょうかね
・あっ、そうだ!高速道路も、もうちっと安くはならんかな・・・
・オービスも、あんまり意味ないんじゃないかな~ 撤去撤廃の方向で
・ついでに、なんの恩恵も優遇もない非エコカーオーナーにバラマキ3万円を・・

 ことしは選挙、こういった鼻先のニンジンに惑わされないようにしないとね~



Part2では、あの32GTRを特集します。
それでは、また~ yoshi

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Posted at 2016/01/08 20:25:04 | コメント(2) | トラックバック(0) | GT-R Magazine | 日記
2015年11月26日 イイね!

「GT-Rに永遠の命を」



【GT-R Magazine owners file V】
何年ぶりになるのだろうか・・・?
ひさしぶりにGT-Rマガジンに掲載されました。
企画のタイトルは「GT-Rに永遠の命を」というものです。
そこで、この「みんカラ」のブログでは今回ちょっと趣向を変えてみて書いてみたいと思います。
それは、ぼくの修理作品集である Auto Repair Gallery の特別編といった意味合でして、作業時の写真を一杯使って掲載するスタイルになります。
それにしても、このような作業紹介のスタイルは、オールドファンの方には、なつかしい~スタイルですよね、きっと。(^_^)v
職人を引退した今となっては、すこし自慢モードで書いてもいいのかなあ~なんて思ってもいます・・・(笑)
ぜひ、Gマガオーナーズファイルの誌面とあわせて見てください。
作業完了してから10年経過、つまりは10年越しのビフォーアフターになっています。
では、まずはじめに、損傷の状況から紹介していきましょう。
















ま、一見して思うことは、相当な損傷であるということですよね。
ここでのポイントは、ドアが閉まらなくなっていることと、Aピラー周辺の損傷具合が酷いということです。
メインフレームが押されて曲がっているために、フロアとルーフが縮み、結果としてドアがドア枠に収まらなくなって飛び出しているということです。
タワーバーとAピラー曲がり、そしてサイドシルの歪みもわかりますね。







こちらは、ルーフの歪み。
細かな部分ですが、トランクとクオーターパネルの損傷はクラッシュ時の衝撃によるものです。






室内側の歪み状態も、かなりあることがわかります。
ちょっとわかりにくいかもしれませんが、左右のストラットの向きも非対称になっていますね。
それだけの衝撃が加わったということをあらわしています。












サイドシル内部の修正と、フロアの引き出し修正です。
もちろん、直接の損傷はありませんが、右フレームにも影響はでていますから、そちらの修正も必要です。
モノコック構造なので、損傷箇所だけを引き出したり修正することは、基本的には出来ないものです。
ボディの損傷箇所を引き出すということは、けして部分的なところでは収まらず、ボディ全体にも少なからず影響を及ぼすものです。
それは、どんな機器やジグを使おうとも、ボディの固定箇所にストレスを与えることになるからです。
つまりは、その引き出しのさじ加減によって、トータルでのボディ寸法のバランスを合わせていくことが仕事であり、そこにこそ経験や腕というものがあるように考えています。




いちばんの難所は、たぶん、このルーフの修正になるでしょう。
なぜならば、歪みが出やすい箇所であり、引っ張りすぎれば歪みが収まらなくなる部分です。
そういう意味においては、ハイリスクなことをやっています。

それと、こんなところを切っちゃって大丈夫なのか?
ボディのその重みによって、かえって歪むことになるのではないか?
というような疑問もありそうですよね。
答えは、その通りです。
ですから、ハイリスクなのです。
最悪のケースとして考えられることは、この状態でルーフが折れ曲がってしまうことでしょうか。
では、もし、万一そうなってしまったならば、どうするのか?
ぼくのサイトは、自動車修理業をしている現役のプロのひとたちも少なからず見ていると思うので書いておきますが、
プロであれば、そこも考えておきたい部分ですよね。
もちろん、そうならないための手をあらかじめ打っておくものですが、仮にそれが役に立たなかったならば、どうするか・・・
そういう緊急事態になったときにこそ経験が反映される見せ所ともいえることになるものでしょう。
がんばってください!としか言えません・・・(^^)




とは言っても、ひとつくらいはヒントらしいことを書いておきましょう。
もし、ぼくでしたら、それは、たぶんルーフを切るでしょうね。
つまりは、ルーフを犠牲にして、他を生かす方向にもっていくということです。
フロアに手を入れていくよりかは、ルーフに手を入れていくほうが費用的にも負担が少ないですし、作業の難易度もまだマシでしょう。
そして、そのときには、きっとこういう提案も同時にオーナーさんにすることでしょうね。
「この際、一気にルーフからガラス周り、ドア枠周りをスポット増しをしませんか?」
という、地獄のチューナー北見淳ならぬ地獄の職人による悪魔のささやき・・・
いえいえ、そうではなくて、オーナーさんの夢の可能性を広げていく方向の提案も同時にすることでしょう。
これは、なにが言いたいかというと、失敗を修正して終わらせるということだけではなく、
そこから、さらにクルマの価値を上げていく方向にも持っていける可能性があるということなのです。
ボディのプロ職人は、ここまでクルマをバラすことができるがゆえに提案できる技術や方法があるのだということを身に付けておくことによって、オーナーさんの満足度がより一層向上する職人になれるのではないでしょうか。
今回あらためて掲載した作業の流れ全体を通して、なにか参考になるところがあれば幸いです。
ぜひ、顧客となっているオーナーさんの日々の作業へと生かしていってください。




これは、左フレームとのバランス合わせのために、右フレームを調整しているところになります。
右側にも、いくぶん影響は出ているので、その修正も必要と書いたと思いますが、最終的には左側との微妙なバランスを取っていくことによってアッパーボディを組み立てていくものです。





















フレームの下回りにこだわってみたものです。
わかるでしょうか?
キッチリとスポット溶接の打痕がフレームのつなぎ部分に打ち込まれていることが。
これが、後々の買取査定、自動車買取店対策として当時おこなった手法です。
一般的な修理方法では、当該部分に打痕を表すフレーム交換作業は不可能なものでしょう。
強度優先にしたい箇所でもありますから、ヘンに見てくれに振る方向の作業にしては、かえって危険になりますから、単なる査定対策にこだわるのは注意してください。
チャレンジするにしても、必ず強度を考慮してやって欲しいと思います。
特に、フレーム周りにスポット片打ちで対応することは強度不足になりますので、勘違いをなさらぬように。

余談ですが、他の車両において、かつて某大手自動車買取店の査定をスルーしたことがあります。
今回の34Rよりも、もっと酷い大破車両であったのですが、このような対策を各所に施して仕上げていった結果、買取店の査定担当者に無事故車であると判断され、無事故車の価格相応で買い取ってもらえたという報告をオーナーさんからいただいたものです。
もちろん、それは買取店の担当者の見落としや誤解であったわけですが、よきに解釈すれば、思わず見落としてしまうくらいのレベルの仕上がりになっていたということなのかもしれません。
当時は、特にこういった買取店の査定対策にこだわった手法を考えていたものです。
それは、時間がかかるとか、面倒とかいうよりも、異端の知恵というものになるでしょう。
よく言えば異端の知恵、もっとよくいえば隠蔽工作の結集ですかね・・・。
そんなことも昔はよくやったものだなあと、この写真を見て懐かしく思い出されてきました。
おそらく10年経った現在においても、この隠蔽技術はまだマネされてはいないことでしょう・・・。






                   2005年 作業完了


    *************************





ことし、2015年10月に行ったGTRマガジンの取材の様子を少し書いてみたいと思います。
それは、10年ぶりの再会という感じでもあり、とても感慨深いものがありました。
ご長女さんとは10年前にお会いして以来でしたから、なんともなつかしい記憶が蘇ってきますね。
当事は、たしか、まだ小さな女の子っていう感じだったような・・・(^^)
10年というのは長いともいえるし、あっという間ともいえますよね。
これだけ素敵で可愛く成長されてきたのですから。





あの日、GTRにチャイルドシートをつけてご家族で帰っていった日のことが想い出されてきます。
それは、傷ついたパパのGTRが治ったということと、パパの感無量な思いの喜びに子供ながらにも共感していたからのように思います。
娘さんのその姿は、まるで急いでクルマに飛び込むかのようであり、それは、それだけパパのことが好きで慕っていたからでありましょう。
そんなやさしい気持ちがいっぱい詰まっていたからこそ、きっと誰よりもいち早くパパの愛車に乗り込みたかったということなのでしょうね。
振り返ってみて、ぼくには、そんなふうに思い出されてくるものです。

オーナーさんがスカイラインと出会い、憧れ、念願かなって34GTRを購入し、そしてやがてお子さんが産まれ育っていく・・・。
その間の月日には、いろいろな想いを感じる出来事がたくさんあったことでしょう。
今回のGTRマガジンの取材と掲載がカーライフとしての記念を超えて、家族ぐるみでの想い出のひとつとしてなったならば、ぼくは最高にうれしい。
そして、ぼく自身にとっても職人時代の仕事のスタイルの記念碑になるものでありますが、それは、オーナーさんとの偶然的な出会いから始まり、今回GTRマガジンの編集者さんのお声かけがあったことによって、このようにして掲載されるということが実現したものであります。
ほんとうに、ご縁に感謝ですね。
ありがたいほどの喜びを、いま、深く感じています。
yoshi






                2015年11月 交通タイムス社
                 GT-R Magazine. Owners File Ⅴ



                  **********

Posted at 2015/11/26 17:41:28 | コメント(3) | トラックバック(0) | GT-R Magazine | 日記
2015年11月09日 イイね!

GT-R Magazine Vol.125 「ボディリメイクの新機軸」



【ボディリメイクの新機軸】
クルマにとってボディがいかに大事であるのか。
ぼくはずっとそれをブログのテーマのひとつとしてやってきましたが、今日はあらためて、より気持ちをこめて、それについて書いていこうとおもっています。
さて、今号のGTRマガジンでの特集記事は、ガレージヨシダさんが今回紹介していますウエットブラストと電着塗装になりますね。
それについてのコメントから書いていこうと思っていますが、まずは一般的な剥離の方法から説明していきましょう。
①サンダー等の研磨機器を使って塗膜を削っていくという方法。
②剥離剤という液剤を使って塗膜を溶かしていくという方法。
③ガスの火を使ったバーナーなどで塗膜を焼いていく方法
おもに、これら3つの手法が、自動車修理の現場では多く行われているものです。
そして、各々の考えられるリスクを書いておきましょう。
①の研磨するうえでのリスクは、研磨が塗膜だけで留まらず下地のパネル(いわゆる鉄板と呼ばれている部分)まで削ってしまうこともある。
また、サンダーの摩擦熱によるパネルの歪みが出ることもある。
②の剥離剤のリスクは、剥離後の処理不足があったときには剥離剤が残留することがある。
③の火で焼いていく方法のリスクは、熱によるパネルの歪みが出ることがあったり、養生不足の場合には余計なところをも焼いてしまったりすることもある。
というようなところでしょうか。
ここで、注意していただきたいことは、どの方法であっても、すべて作業者の技量によるところ、
つまりは「腕次第」というものになるところが多いものですから、一概に研磨がいけないとか、バーナーがいけない等というつもりはありません。
 つづいて、ウエットブラストの特徴を考えてみましょう。
①塗装を剥離するにあたって、パネルへの研磨ダメージ、熱による歪みダメージを少なくできる。
②フロアやフレーム周りなどの袋状になっている部分も、噴射があたる部分については剥離ができる可能性がある。
ということになるでしょう。
ぼくはウエットブラストは使ったことがないのですが、誌面の記載によれば、この熱による歪みの発生リスクやパネルを削りすぎてしまうリスクを軽減させるためには有効な手法になるものだと思います。
このようなメリットがあるものなのでたいへん魅力的な手法であると思います。
そしてその特徴を生かすためには、Gマガに掲載されているようにボディをドンガラにするレベルの作業に向いているのでしょう。
と、いいますのも、研磨剤であるメディアを吹き付けた際の飛び散りがあるために、ボディ本体を剥離するには養生をしっかりするか、今号の写真のように内装やエンジン周りなどの機関を外す必要があると思います。
したがいまして、フロントフェンダーやドア、フード、バンパーなどの取り外し可能パーツの単体剥離であれば、そこまでは必要ないと思いますから、部分的な作業との組み合わせも有効になるのでしょうね。



【ハイクオリティなレストアとするために】
先日、ガレージヨシダの吉田さんと話していたことですが、細かな部分での詰め、バージョンアップはこれからもあることでしょう。
たとえば、電着後の処理方法、また、塗装完了後の再補修を必要とした場合にどうするか?
そういったこともハイクオリティなレストアの作業をしていくには大事なことになっていきます。
逆にいえば、それだけ手持ちのカード(作業テクニック)を増やしておくことと、
過去の事例から予想できるトラブルを想定しておくということは、これから業界を引っ張っていくくらいのインパクトのあるプロとしては必要なことになってくるのでしょうね。
吉田さん自身も、そのあたりは日々研究しているところですから、今後もたのしみですね。
電着という自動車メーカーでしかできなかったことが、アフター修理の業界でも出来るようになったということは、たいへん素晴らしい進歩につながることとおもいます。
今後は、この流れを生かしていって欲しいとおもいますし、普及とまではいかなくても広めていくことが多くの旧車オーナーの願いでもあることでしょう。
それゆえに、あえていえば、いまのところは特別な施工であるということが、逆に考えてみた場合には懸念にもなりうるところなのかもしれません。
といいますのも、数をこなしていって初めて見えてくるものもあるかと思うからです。
たとえば、パネルの合わせ面や溶接部分が錆ていたケースなど、言い出したらキリがないのですが、より完成度の高いものを目指していくとなれば、そういったことが今後のテーマとしてあがってくるようになるのかもしれません。
つまりは、キリがないものなのですが、「完璧は無い、永久に得られない」というなんとも空しい結論となってしまうのが、どうやらこの世界の唯一の真実なのかもしれません。
であれば、日々の研究と向上に夢をつないでいくというような考え方に基づき、現時点でのベストなものを選択し続け、委ねていくのがいいのでしょう。
そして、バージョンアップを適宜行っていくというスタイルが、結局のところ一番心理的なストレスの少ない考え方になるのかと思います。
「完璧を求めていくと苦しくなっていく」と心理学でも言われていますから、ある程度柔軟な考え方をもって対応し続けていくことに喜びを見出していったほうが、気持ちとしてラクでいられるのだと思います。
ちなみに、そういった考え方のことを心理学では「プロセスを楽しむこと」と言っています。
 話しを電着塗装に戻しますと、電着の入らない部分をどう処理していくのか。
いずれは、そこに注目が戻っていくことでしょう。
こんかいのケースでは、さほど錆の修理を要する部分がなかったようですので剥離後にスムースに電着へと進めたのだとおもいます。
オーナーさんの中には、大なり小なり過去に事故をしたり、錆が出ているケースもあるでしょうから、そういった部分の対処方法や板金修理との組み合わせをどのように組み合わせて行っていくのか、
電着という素晴らしいものを取り入れられるようになったがゆえに、よりレベルの高い板金作業が求められてくる時代に移っていくのかもしれませんね。



【総剥離は慎重に】
もうひとつ書いておきたいことは、必ずしも全剥離がベストなレストアではないということでもあります。
そこは、よくよく知っておいて欲しいと思うところであります。
今号のGTRマガジンでは、ラッシュさんでもドンガラ剥離のケースを紹介していますよね。
ここまで磨き込むのは、たいへんな作業であったと思います。
職人さんのがんばりが写真からも伝わってくるようです。
このようにして剥離するかどうかは、ひとえにボディの状況次第によるものと思います。
それほど錆で劣化していない場合には、塗装を完全剥離する必要のないケースも多々ありますので、そこに関してはご注意くださるといいかと思います。
むしろ、下地の鉄板を空気に晒すことのほうが、かえって錆の発生リスクを高めることも考えられますから、ぼくの考え方としては慎重に行って欲しいとおもっています。
特に湿気の多い時期などの天候要因、工場の環境によっても錆の発生時間が変わることでしょう。
ぼくのかつての経験上でのことですが、剥離してほんの数時間、鉄板をむき出しにしておいただけでも、微細な錆が発生していたことがあります。
もし、そういったことに気付かずに塗装をしていった場合、後々その微細な錆が成長していくこともあるでしょうから、必ずしも剥離にこだわる必要はなく、可能であれば、オリジナルの塗膜を生かしたレストアや全塗装を行っていくのが予算的にもクルマのためにも負担が少なく行えるものになると思います。
具体的に少し補足しておきますと、クリア層の傷みや褪色というレベルであれば、程度にはよりますが無理に剥離はしないほうが無難なケースもあることでしょう。
下塗り、中塗り部分の再塗装から行えば十分綺麗に仕上がるケースもあるということです。
もし、パネル(いわゆる鉄板と呼ばれる部分)から傷んでいるのであれば、塗膜を削るより仕方ありませんので、そのようなケースと判断されるならばGマガに掲載されているケースのように完全な剥離をしてゼロからやり直していくのがいいのでしょうね。
あくまでも各職人さんの見方、考え方、腕次第ということにはなるのですが、GTRを大切にされている方にとって、今回のぼくのブログがなにかしらの参考になれば幸いです。
yoshi




【あとがき】
ぼくのサイトに以前登場してもらったことのあるオーナーさん、その世界では有名な走り屋さんなのですが、その方が事故で亡くなられるということがありました。
訃報を聞いても現実味がなく、葬儀に行ってようやく、なんとなく実感が湧いてきたという感じでした。
心理的なショックで悲しみすら感じられにくくなっていたのかもしれませんし、彼はその世界でのキャリアが長く、リーダー的な存在でありましたから、まさか彼に限って、という思いがあたりまえのようにあったからなのかもしれません。
以前撮影したとき、彼のクルマに同乗したこともあるのですが、その余裕ある運転テクニックゆえに、まさか彼が亡くなるなんてという驚きがしばらく抜けませんでした。
後日に事故状況を拝見しましたが、その凄まじさにクラッシュ時の衝撃がいかほどだったことか。
ただただ想像を絶するとしか言いようがないものでした。
意識を想像してつなげてみれば、彼の思いとして、それぞれの心中に浮かんでくるものが、きっとあることでしょう。
ぼくにとっては、やはり「安全」ということになるのかとおもっています。
クルマというのは、便利ですし、楽しいものでもありますよね。
GTRなどのスポーツ系であればなおのこと、速さもその楽しみのひとつであります。
いっぽうで、危険ということも、またそこにはあるのが現実でもあります。
オーナーさんそれぞれと言ってしまえばそれまでなのですが、誰にだってその楽しさと危なさというのは常にあるものなのでしょう。
禁止したりすれば、同時に楽しいという感情も禁止されていくことになるでしょうから、ただ禁止すれば済むという考え方は、ぼくはそのようには捉えていきたくはありません。
ぼくの立場から、せめて言えることは、なによりも安全を一番に考えた自動車修理の方法をご縁のあるオーナーさんたちにお薦めし、広めていくことなのかと、彼の事故からあらためて思っているところであります。
もちろん、ひとそれぞれの価値観がありますし、安全と何か別の要素との兼ね合い、バランスも大事なことでしょう。
また、過剰な安全を求めていけば、何か別の要素を犠牲にしなければ成り立たないことも、きっとあることでしょう。
ぼくの見たことのあるケースなのですが、あるタクシー会社の自社工場では事故で破損した車両の骨格パネル交換修理に溶接を行わずリベット留めで対応しています。
そのような修理をされたタクシーを複数台見かけたことがありますから、どうやら、リベット留めがそのタクシー会社ではスタンダードになっている様子にぼくには思えたものです。
メーカー修理書(修理マニュアル)では、スポットないしMIG溶接を推奨していると思うのですが、リベット留めにこだわるその理由は、社長さんのお人柄から察しますと、おそらく溶接機の導入コストの面にあるのではないかと思われてもきます。
もしそうであるならば、乗客を頻繁に乗せるという仕事であるわけですから、万一の事故の際の衝突安全性という面でみた場合には、そのような修理方法を採っていることはどうなのでしょう。
もしかしたら、リベット留めという手法であっても、作業のやりようによってはスポット溶接やMIG溶接と同等の強度が出せるのかもしれませんし、事故率という統計で見た場合にはプロドライバーであるため一般のドライバーよりも事故を起すことはそもそも少ないのかもしれません。
また、メンテナンスや修理方法などは、日ごろ利用する乗客には見えない部分でもあるかと思います。
しかし、今までにそれで何の問題も起こったことがないにしても、乗客を目的地へと運ぶことと同じかそれ以上に安全を売っているという意識を高めていくことが、もっとあっていいのではないでしょうか。
さまざまな観点からみることができますから正義や正解などというものはなく、ぼくの思いだけでもってけして偏った見方や理解をしては欲しくないのですが、良い悪いは別にして会社という組織は、そのトップである社長の意識が変わらない限り、その仕事のスタイルもまた変わらないものなのかもしれませんね。
 話を戻しまして、彼のことから思うことは、自分の意識の上だけでも安全かどうか、その思いを持ち続けているかどうかというだけでも十分に安全への意識は高まっていくのではないか、そんなふうに思うものです。
自動車を利用するすべての人たち、自動車修理業に携わっている方々、特に板金職人の方々においては、引き続きこれからも「安全」ということを優先して考慮した修理をすすめていって欲しいと願っています。
yoshi



Posted at 2015/11/09 15:26:29 | コメント(2) | トラックバック(0) | GT-R Magazine | 日記
2015年09月10日 イイね!

GT-R Magazine Vol.124 「ファインチューンの法則」



『チューニングはお金持ちのお遊びです』
今号89ページにあるラルテフィッチェさんの、この言葉が印象的だった。
僕は、こういった言葉の背景や真意を読み解いていくということがおもしろい。

先日、Gマガ編集部の山崎さんと話をする機会があり、各地で取材された時の印象などを尋ねてみたりした。
山崎さんの話の要点として、ラルテさんのその言葉はGT-Rオーナーとしての気構えを表しているのだろう、ということであった。
それは、GTRが元々持つ性能を理解して乗って欲しいというプロとしての思いと、GTRを同好する人への思いやりの気持ちからであるように僕には感じられた。
その気持ちは、よくわかるような気がする。
ラルテさんのこの言葉の背景には、もしかするとチューナーとして完調ではないエンジンや劣化している足回りのままで乗られているGTRを見るたびに残念に思ってしまうような経験をされてきたからなのかもしれない。
そんなふうに思ったものだ。
日本を代表する価値あるスポーツカー、GTR。
だからこそ、GTRオーナーには基礎のコンディション作りからしっかりとして欲しい。
たぶん、そのように思うのがGTRのプロとしてのありようなのではないか。
そのあたりのことを、今回は考えていきたいと思う。



基礎のコンディションとは何か?
それをあらわす象徴的な事例が、P89にある「シート合わせ」なのだと思う。
「いまさらシート合わせ?」などと思った人も少なからずいたのではないだろうか。
じつは、何を隠そう僕自身が最初に読んだとき、そう思った。
しかし、職人時代を思い返してみれば、着座位置のズレたシートで乗っていたり、クッション材のヘタったシートで乗っているオーナーが何人かいたことをすぐに思い出す。
目の覚めるような感覚といったらいいだろうか、かつての記憶をそのときに取り戻したのだった。
シート合わせとういうのは、GTRに限らずクルマを運転するときには必要なこと。
ましてやスポーツカーであるGTR、その重要性に細かくこだわっていくのはあたりまえのことである。
しかし、そのようなあたりまえの基礎的な準備が疎かになっていたり、見落とされたままでチューニングを依頼されるようなケースが後を経たないのもチューニング業界の現実であるのだろう。
常日頃から、そのような状況を憂慮していたがゆえに、GTRオーナーにあらためて基礎の重要性をわかってもらいたかったのだと思う。
編集部の山崎さんは、「ゼロに戻すこと」、という言葉でもって表現していたが、
それは、不調があるマイナスレベルの状態からプラスマイナスゼロの状態に戻すこと。
つまりは初期常態にリセットして初めて本来のGTRになるということである。
言い換えれば、そうなってはじめてチューニングが出来るスタートラインに立てるということを伝えたかったのだと理解できてくる。
チューニングの前に見落とされているような不調や不具合を直しておくこと。
少なくとも、そういった作業の重要性を理解しておくことが、ネオヒストリックなGTRを乗り続けていくために必要なことになるのだと思う。

これらのことをわかりやすく語り口調で書いてみれば、このような感じになるだろうか・・・・。
 まずはメンテナンスレベルから始めようよ。
 それからチューニングをしようよ。
 そうでないとGTR本来の楽しみ方はできないよ。
 それは、とてもモッタイない状態で乗り続けていることになるんだよ。
 ついては、それだけの段階を経て仕上げていくのだから、どうしてもお金はかかるものだよね。
 でも、GTR本来の性能を発揮して乗るには、それは当然のことなんだよね。
 さらにチューニングをするとなれば、なおのことお金がかかるものなんだよね。
 遊び心という余裕があってはじめて楽しめるものなんだよね。
このような思いを伝えたくて、ラルテさんはわかりやすい喩えとして「お金持ちのお遊び」と言っているのだと思う。




ぼくの経験であったことをひとつ記してみよう。
Aさんという、あるスポーツカーのオーナーがいた。 (*写真とは関係ありません)
憧れのスポーツカーを中古で買い、エアロキットを取り付けたいという要望で来店された。
しかし、クルマを見れば外見こそ綺麗なものの、ボディ下回りやフェンダー内側などの中身は錆だらけであった。
おそらく融雪剤によるものだろう。
パネルの一部が腐食でボロボロに劣化している。
このようなときに、どうするか?である。
そのようなコンディションのボディに高価なエアロキットを取り付けていいものかどうか。
ビジネス的な観点でみれば、要望どおりに取り付けて工賃を請求すればいいだけの話である。
しかし、そこで葛藤がおこってくる。
なぜならば、エアロ取付けの前にまず錆の修理が先ではないか、そう思うからだ。
それがプロの視点というものであるだろう。
その理由は費用対効果でもあるし、クルマのライフ(生命)そのものを慮ってのことである。
「エアロはお金持ちのお遊びです」とまでは言わずとも、カッコいいエアロを付けて走りたい、その気持ちは同じクルマ好きとしてよくわかる。
しかし、腐食を抱えたボディであれば、そのままほうっておけば寿命は短くなっていく。
近いうちに錆の修理が必要となってくることが容易に予想できる。
ついては、できるかぎり、そのときに備えて予算を確保しておいて欲しいと思う。
ローンでエアロを組む予算を錆の修理に振り替えるほうがクルマのライフを伸ばし、維持していくのに良いのではないか。
このような考えでもって、まずクルマのことを思うのがプロの視点というものであるだろう。
そして、それがオーナーの経済事情の為にも将来的に望ましい選択になるのではないか。
少なくとも、いったんは検討されることを提案したいと思うものだろう。
しかし、いっぽうで、所有権を有するオーナーの意思あっての、そのスポーツカーのライフ(寿命)である。
オーナーがどうしても先にエアロを付けたいと作業を依頼をすれば、それはきっと請けることになるだろう。
もちろん錆修理が必要な状況であることを承諾してもらってからになるだろうが、それは責任の線引きとして明確にしておきたい部分だからである。
これは、お客さんにリスクを承諾してもらってから作業を行うというスタイルであり、おそらく、このようやりとりが一般的には行われていることと思う。



さて、もうひとつ別のアドバンスな見方を考えてみたい。
このようなケースの場合、望ましいとおもうことは、オーナーとのカウンセリング的な打ち合わせである。
それというのは、オーナーの価値観や考え方、さまざまな気持ちを引き出し、共感し、理解していくことから始めていく。
場合によっては、オーナー自身のプライベートな話に発展するケースも多々あることだろう。
クルマの話題など通り越してしまう。
しかし、そのような関係性を築いていこうとするのは簡単ではないが、大切なポイントとなる。
なぜならば、つながりを構築し、信頼づくりのきっかけになっていくものになると考えられるからだ。
いわゆるカリスマ的に人気のある店員さんというのは、少なからず、このような能力を身に付けている人たちであるだろう。
チューナーや職人においても、それはまったく同じことになると思う。
たとえば、先のAさんのケースでいえば、なぜエアロを付けたいのか?
なぜ、錆は後回しでいいと思うのか?
マネープランについては、どう考えているのか?
クルマを維持していくことに対して、どのようなプランをもっているのか?
クルマに対しての価値観のみならず、その人の人生観や価値観にも耳を傾けていく場合もあるかもしれない。
そんなことをしていれば、もちろん時間はかかるし、そもそそもが、そうそう打ち解けられるものでもないだろう。
が、しかし、そこまでしようとしてはじめて得られるものがあると思う。
それは、お客さんに良いコンディションのGTRに乗って楽しんでもらいたいという願いに基づくものだけではなく、オーナーその人を、ひとりの人間として理解していきたいと思うからである。
GTRという共通の趣向をもった仲間意識を超えた、もっと深い意識からの思いというものなのかもしれない。
ビジネス追究のスタイルからすれば非効率的に思えるかもしれないが、しかし、そうして得られる価値はさまざまに広がっていくのだろう。
たとえば、「GTRに携わってきて良かったなあ」と、こころから思えるようなときも、そうだろう。
それは共感する喜びや、つながり感がベースにあり、そのような気持ちは必ずといっていいほどオーナーたちとの間において循環し続けていくものになることだろう。



チューナーや職人に要望を言うだけの関係は、依存するマインドがベースになっている。
ショップ側においても依頼を請けるだけでは、それもまた責任をお客さんに依存していることになる。
それでは、おたがいにとって意義のある、長く付き合っていける関係とはならない。
なぜならば、そこにはGTRを通しての つながり感が希薄になってしまうからだ。
大切なことは、ショップもお客さんも共に成長していくための協力関係を育んでいくことだろう。
それは、GTRをきっかけとしたコミュニケーションをしつつ、
「ほんとうに求めているものは何か?」を見いだしていくコミュニケーションがキーとなる。
たとえば、ほんとうに600馬力が欲しいのか?
なぜ600馬力なのか?
その欲求はどこからきているのか?
夢なのか、それとも必要性があってのことなのか?
もしかしたら、高出力高性能というスペックに裏づけされた強さに対しての憧れをシンボル化して600馬力という数値を求めていたのだと気づくのかもしれない。
もし、そうであればコミットする仕様は変わってくる。
予算についても600馬力仕様ほどには必要ではなくなってくるだろうし、もっと気楽なスタンスで維持し、GTRと付き合っていけることだろう。
このようにして、ひとつひとつの欲求を読み解いていくことによって、欲求の奥にあるほんとうの気持ち、オーナーひとりひとりの個性や価値観が明らかになってくる。
きっと、自分の本心に気づいたオーナーは、たとえノーマル280馬力のGTRであっても幸せを感じ、日々を楽しむ人になっていることだろう。
目指すところは、「GTRが好き」 そのシンプルな気持ちがお互いにあることをショップもオーナーも共に認め合っていくこと。
さらにいえば、その気持ちさえ持ち続けていれば経済事情等によって今はまだなにも施してやれなかったとしても、ビジョンを元に前向きに歩み続けていくことは可能であるだろう。
もちろん、ショップ側においても、そのメリットはある。
もし、人気店になる秘訣があるとすれば、そのひとつはGTRが好きという意識を高めていくことだろう。
技術うんぬんというよりも、まずは、「思い」が基本になるように思う。


【あとがき】
クルマは消耗する工業製品のひとつに過ぎない。
自分自身を投影したり、子供や恋人に擬人化するに相応しいものでは本来ないと思う。
ただ、こだわりが熱くなってくると忘れがちなことでもある。
それについては、今号において、フェニックスパワーの横山代表がこのように言って諌めている。
「機械である以上、いつかどこかが壊れるのあたりまえです。」
誰もが一度は聞いたことがあるだろう。
クルマ業界においての基本中の基本となる言葉である。
ただ、そうはいってもGTRというクルマは単なるクルマではないのではないか。
なにか存在感のような温かさを感じるクルマではないか。
そんなふうに、ぼくはずっと思ってきた。
それは、GTRにかかわっていると、人と人とのつながりを強く意識せざるを得ない感じがしてくるからなのかもしれない。
僕自身の心理を分析してみれば、きっとそれだけ僕自身が思い焦がれてきたクルマであったからなのだろう。
だから、ついついGTRに思いをのせてしまう・・・のだと。
まあ、とにもかくにも、いまもGマガの誌面を拝読するたび、そのような自分を自分でもおもしろく思っている。
 yoshi



photo by yoshi
Posted at 2015/09/10 21:09:45 | コメント(2) | トラックバック(0) | GT-R Magazine | 日記
2015年08月29日 イイね!

珈琲会



久しぶりの珈琲会。
何年ぶりかなあ?
もしかすると、2年か3年くらいは経つのかもね。
きょうはGT-Rの話がたくさんできて楽しかったなあ。
神奈川のYさん、どうもありがとね(^^)
  yoshi


海の見える珈琲店→ 神奈川県逗子市「なぎさ橋珈琲」 
Posted at 2015/08/29 18:03:36 | コメント(1) | トラックバック(0) | Photo Diary | 日記

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