
当ブログでは長いことスマホでUSBオーディオに取り組んでいますが、DAP(デジタルオーディオプレーヤー)でもUSB出力できる機種が増えてきたので、「そろそろ試してみようか?」と。
さて、信頼と実績のAndroid端末の代わりになるかどうか。
USBオーディオに対応したDAPは
こちらにまとめてあります。よかったらご覧ください。
用途を考えると、現在最右翼に来るのはこれでしょうか。

Astell & Kern
KANN
でかい!デュアルSDスロット(しかも片方は標準サイズSD)!前面物理キー!USBオーディオ出力と本体の充電を両立できる!実に車載向き、いや
むしろ車載用だろこれ!
って位の製品です。
USB出力しながら本体を充電できると、クルマでは特に便利です。他機種でもケーブルを細工したりクレードルを利用すれば可能なものがある様ですが、こいつの場合は充電用と出力用のUSB端子が別なので何も考える必要がない。Xperia(マグネット充電対応のZ3/A4以前)並に楽ちんです。
とはいえ、自分としては
スマホより非力なCPUで動作するDAPで、USB出力はちゃんと使えるんですか?
と、ちょっと不安視していて。
また、愛用しているスマホアプリのUAPP (USB Audio Player PRO) がバージョンアップを繰り返しながら完成度を高めてきた(新たに発生する不具合もあるのですが・・・)のを知っているだけに、ファームウェアの更新なんてそう多くはないDAPで、しかも主機能ではないUSB出力がきちんと作りこまれているんだろうか?とも。
そんなわけで?今回は比較的安価なモデルから選んでみました。
みんなWMとかAKなので、天邪鬼が顔を出したこともありますw

Shanling
M2s
いわゆる中華DAP。シャンリンはOEMのオーディオ機器メーカーとしてはわりと老舗で、最近DAPで知名度上昇中のブランドです。
国内代理店もつきました。
2万円台前半という低価格、100gの小型軽量ボディながら、スペック充実。
・AK4490EQ/MUSES8920/TPA6120
・32bit/384kHzおよびDSD256まで対応(本体再生時)
もちろんUSBオーディオ出力対応で、少なくとも仕様上はAT-HRD5と組み合わせるに不足ありません。
なお内蔵ストレージはファームウェア専用でmicroSDカードは必須です。(256GBまで対応)

M2sよりコンパクトな
M1というモデルもあります。DSDのUSB出力に制限(公式にはDSD64まで対応)がありますが、LPCM専用のUSBトランスポートにするならこちらでも十分使えそうです。これで1万円台とは、シャンリン恐るべし。

(2017/11追記)
M2sの上位機種として
M3sが出ました。バランス出力・デュアルDACなどDAPとしての性能が向上、USBトランスポートとしての機能はM2sと同等です。大型化した分バッテリー駆動時間が延長されたこちらも良さそうです。M1、M2s、M3sと、縦に伸びるわけね(笑)

(2018/5追記)
M1よりさらに小型の
M0が登場。後述のHiByLinkに非対応という1点においてM1の完全な後継機とは呼びづらいのですが(同様のアプリを別に計画中との事)、それ以外スペックに不足はなく、サイズやタッチパネル搭載という要素からはかつてのiPod nano(6G)の再来か?といった印象も受けます。こんなに小さくてもUSB出力可能です。
さてM2sです。
安価とはいっても音質的にはそれなりに勝算がありまして。
USBトランスポートとして使う分には、DACチップの優劣は関係ありませんし、高精度なクロックも高性能なアンプも意味がありません。(USBバスは普通DACチップを通らず、クロックもD/Aのクロックとは別なので)
超マニアックなレベルで言えば、内部回路や電源・筐体に物量を投入したモデル(百式ウォークマンとか)ならUSBの信号も低ノイズにできるはずで、その線からは音質に貢献できそうですが、それでもクロックの影響をモロに受けるS/PDIFに比べれば影響は少ないはずです。
(「なんでUSBのノイズが音に関係するんだよ!」という話は以前のブログをご覧ください)
そもそも俺は送り出し側に依存しないようにシステム組んでるんだろーが!
と、変なこだわりもあり(後述)。チープなプレーヤーでイイ音出せたら、楽しいじゃないですか。
問題は音質よりも、冒頭で挙げたようにUSBが(音飛びとかノイズなく)安定動作してくれるかどうかだと思いますが、これについては高級機にすれば良いとは限らず、大手メーカーなら確実かといえばそうでもないようです。相手の機器にもよるのでネットの評価を(自分のを含め)そのまま信用するのは危険。つまり実際に試してみるしかない。
とにかくやってみよ。例によって開封の儀とか省略で。

左からXperia Z3 Compact、iPod classic、NW-A867、そしてM2s。
サイズ感はウォークマンAシリーズに近く、ちょっと厚みはありますが大変コンパクトです。
持った感じ。

OSはAndroidではなく、起動や曲のスキャンは比較的高速です。
画面はタッチパネルではありません。操作は横のダイアル(回して選択、押し込んで決定)とその下の「戻る」スイッチ、反対側の曲送りスイッチを使います。
表示は円をモチーフにしたもの。物理デバイスと動きを合わせてあるあたり、カッコいいかどうかは別としてなかなか優れたインターフェースです。
右手で持つなら親指、左手はちょっと苦しいけど人差し指か中指でクルクル、と操作します。
どこかで見た画面だなぁ、と思い出したのは、USBオーディオ対応のAndroid用音楽再生アプリ、
海貝音楽(HibyMusic)。FiiOにも似ている?
それもそのはず、ファームウェアの開発元はHibyMusicと同じ会社で、中華DAPの多くにハイビィ(最初ハイバイと記しましたが、メーカー動画を見たらこの発音のようです)製のファームが採用されているそうです。
余談ですが、この分業体制といい、クラウドファンディング的な資金調達手法を使っていたり、ビジネス的にも見るべきものがあります。
システム設定画面(一部)

よく見れば微妙に中華フォントでした。まぁ気になるほどではなし。
日本語もちょっとだけ違和感ありますが、以前はこんなもんじゃなかったwので全然オッケー。
USBは出力(USB)としても入力(DAC)としても使え、DSD出力はDoPとPCM変換から選択可能。ヘッドホン出力(PO)はレベル固定のラインアウトに変更できます。これだけの多機能は高級機でもちょっと珍しいんじゃないでしょうか。

USB端子は最新のType-C。トランスポートとして使う(M2sがホスト)場合、USBケーブルは通常と異なるものが必要です。microBのUSBでOTGケーブルが必要だったのと同じですね。
というか、Type-Cの場合はむしろホストとなるのが通常のケーブルです。(後述)
ダッシュボードにマグネットマウントで固定。小ぶりなサイズは主張しなくて良いですね。
Bluetoothメディアボタン(Satechi)
USBケーブル USB2.0 C-Bタイプ 1.5m U2C-CB15NBK(エレコム)
タッチパネルも前面キーもないとなると車載にはつらそうですが、市販のBluetoothリモコンが使えます!前方から視線を外さずに曲送りができるだけでも、ずいぶん安全になります。
Bluetoothはリモコンの他、音声は送信・受信(!)とも可能、Apt-Xにも対応というこれまた全部盛り仕様です。さらに、今のところベータ版ですがHiBylinkという「Bluetooth版AK connect」みたいな機能もあり、スマホをリモコンにすることもできます。これはいずれ試してみたいと思います。
製品に付属するUSBケーブルはType-CとAのPC接続用で、ホスト用ではないため別途購入が必要です。
今回はMacBookとプリンターなどを接続する場合に使う普通のUSBケーブルを用意しました。いちおうオーディオ用の製品とも比較しましたが大丈夫そうなので、あえてこっちを使います。この辺はもう意地ですねw
オーディオ用のケーブルを使いたければ、Type-Cのものはまだ少なく
USB-C - USBアダプタ(apple)
こんなアダプタを使って普通のAコネクタに変換するとよいです。
Type-Cは従来と異なり大小(標準/mini/micro)やA/Bの違いのない統一コネクタとなっています。ABがないのはUSB(=ホスト・デバイスの概念)に慣れた人にとってはかえってわかりにくく、特にType-CとmicroBのケーブルなどは「これどっちがホスト?」となります。
メリットとしては、ケーブルがPCと共通なので簡単に入手することができます。
コンソールBOXの中。DAPからのUSBケーブルをUSBオーディオ機器につなぐだけで普通に音が出るのですが、ここからは
オカルトワールドUSBの音質改善アイテムが続きます。
USB外部電源供給アダプター RAL-EXTPW01(ラトックシステム)
iPurifier DC (iFi Audio)
SUPRA USB 2.0/3.0m (SAEC)
アイソレータ駆動のため、USBの電源ラインを外部供給としています。DAPの消費電流低減にもなります。
電源はシガーチャージャーの5Vをクリーン化して利用。
でも、アダプターの単三電池で駆動した方がまだ音が良い気がするんだよなぁ・・・ここはまだ検討の余地が残っています。
トランクルーム天井
High Speed USB Isolator Nr.7054-X (Intona)
電源線/信号線分離型USBケーブル USB-1.0PLS (Acoustic Revive)
USB-DAC AT-HRD5 (audio-technica)
引き回したUSB信号をアイソレータで作り直し、最短距離でDACへ。
これにより、DAP側のUSBケーブルの影響を抑えています。また、アイソレータをDACの近くに設置することで顕著な音質改善効果がありました。
この段階のケーブルはUSBといえど音質への影響大です。
この先のアナログ・電源ラインは前回のブログに書いたので省略。
・・・要するに、今までのAndroidスマホを置き換えただけのシステムで、スマホで確認済みの音質向上手法はDAPでもそのまま使えるだろうとの判断です。
再生テスト行きましょう。

LPCM再生テスト。24bit/192kHzのflac、32bit/384kHzのWAVまで問題なし。

DSD再生テスト。DSD128(5.6MHz)のdffまで問題なし。HRD5のフルスペックで使用可能です。
全曲シャッフルしてみたところ、LPCMとDSDの切り替え時にプチッとノイズが出ることがありますが、大きなものではなく何とか合格。動作は安定しています。
音質的にも、パッと聴きではUAPPと遜色ないレベルのようです。ただしボリュームやイコライザーは効くので、最大ボリュームにしてもビットパーフェクトではないかもしれません。
USBとヘッドホンを共用する場合はレベルに注意です。(設定で起動時の初期レベルを指定可能)
USBオーディオと本体充電の両立は・・・Type-CのUSBケーブルで対応するものが見つかっていないため、未確認です。充電なしで3時間ほど使って5つある電池マークが1つ消えたので、連続再生9時間というスペックはUSB出力時も(バスパワーに吸われないようにすれば)近い数字が確保できそうです。
お手頃価格なので、2台買って交互に充電・・・という手があるかも。
以上。
結論として、DAPでもちゃんとUSBオーディオできました。
多少のトラブルはあるだろう、とお試しのつもりでしたが、実用的に使えて拍子抜けしたくらい。
操作性ではやはりスマホに一日の長があり、信号待ちの間にアルバム一覧を超高速スクロールして選択、なんて操作は無理なものの、スマホ+UAPPのバックアップとして十分使えそうです。
(普段は安定のUAPPも、イベント前にバージョンアップして音が出なくなったりすると焦るんですよね・・・)
デジタルプロセッサーもUSBで直接入力できる機種が登場しましたし、クルマでもUSBオーディオ、面白くなってきました。
(2017/7追記)
メーカーに問い合わせたところ、USBオーディオ出力中の充電は「設計的に定義されていない」との回答でした。残念。
とはいえ、本機はカタログ値の9時間ほどUSB再生してもまだバッテリー表示に余裕がある状態でした。スマホはクルマを降りる頃バッテリー切れでは困りますが、DAPの場合は運転中持ってくれたら良いわけで、このスタミナなら充電できなくても許せるかな・・・
満タン&高温状態での充電はバッテリーに負担がかかることもあってか、動作中の充電がサポートされる製品は少ないのが実情です。この点はスマホでもDAPでもUSBオーディオする場合の共通課題といえそうです。
(2017/8追記)
M2sのファームウェアがアップデートされ、スマホをリモコンにできるHiByLink機能に正式対応したので試しました。スマホ側のアプリはファームと共に配布されているHibyMusic(海貝音楽)のベータ版を使います。

HibyMusicの再生画面です(端末はXperia Z3C)。曲情報はもちろんアルバムアートもきちんと表示されています。スマホのファイルを再生しているように見えますが、実際にはM2sがM2sのSDカード上のファイルを再生しています。
HiByLinkでは、DAPとスマホはBluetoothでつながります。Bluetoothと言ってもリモコン専用で、音声はDAPから有線で出力されるため音質面のデメリットはありません。DAPがスマホと同期して動く様が面白い。

アルバム一覧はこんな感じ。タッチ操作によるスクロールは高速で、M2s本体で操作するより素早く選曲できます。
残念ながら一覧画面ではアルバムアートは表示されません。これは将来対応する予定なのか、あえてそうしている(Bluetoothの通信速度の制約とか)のかわかりませんが、表示が遅くなる位ならいっそテキストのみで良いのでは?とも思います。
ご覧の通りまだ日本語が若干不得手だったりはするものの(曲名等は問題なし)、操作性はスマホのそれで快適ですし、DAPをコンソールBOXあたりに設置すればUSBケーブルも隠せます。これはなかなか魅力的です。
(2017/9追記)
HibyMusicアプリの正式版がHiByLinkをサポートし、普通にGoogle Playからインストールできるようになりました。
(2017/11追記)
M2sのファームウェアが3.0にバージョンアップ。HibyMusicアプリのiOS版が同梱されていました。HibyMusicは、HiByLink機能を使うための「リモコンアプリ」にとどまらず、USB Audio Player PROやHF Playerと並びUSBオーディオ出力に対応する数少ない「高音質再生アプリ」でもあります。
(2018/2追記)
スマホより手軽ですしHiByLinkも便利なため、その後もスマホと共存して使用しています。
ただ「致命的」というほどではないもののイケてない点もあり記しておきます。
・アルバムやアーティスト一覧の表示順が中華仕様。「ピンイン順」というそうですが、漢字もアルファベットと一緒に(中国読みの)発音順で並ぶため、大量の楽曲を入れていると探すのに一苦労します。例えば、「花澤香菜」だと「花」は中国読みで「hua」となり「H」に並びます・・・あ、この場合は問題ないか。
日本語読みでこんなソートができれば、一般的なUnicode並びよりわかりやすいんじゃないかと思います。でも、そのためには「読み」という新たなタグが必要なわけで・・・漢字の読みが複数ある日本語の難しさですね。
・アルバムアーティストがない。
・
コールドスタート時、microSDカードの認識に失敗することがある。ファームウェアVer.3.2で解消
・再生一時停止状態でPCに接続すると「ファイルが壊れている」と警告が出る。(実際には問題ありません)
・AT-HRD500と接続した状態でコールドスタートすると再起動ループに陥る。AT-HRD5では問題なかったのに。
(2019/3追記)
お試しのつもりだった「DAPでUSBオーディオ」ですが、使い勝手が良いので我が車の主力音源となりました。スマホリモコンが気に入って、プレーヤーは引き続きHiByLink機能を使える機種を選定。Shanlingの他Cayinなど数社から出ています。最近FiiOも同様の機能をサポートしたようですね。
HibyのR3です。こんな感じでコンソールBOXに設置しました。
M2sのファームウェアの開発元が作った小型プレーヤーで、単体での操作感はスマホアプリのHibyMusicそっくりです。
この機種の場合、USB出力の音量はボリューム設定に関係なくMax固定となるので、ポータブル用途と併用するときにボリュームを戻し忘れて慌てる心配がありません。もちろん操作はHiByLinkでスマホから。プレーヤーを表示OFFで使えるためバッテリー持ちにも貢献します。
これでアルバム表示がピンイン順でなければ文句ナシ!なんですけどね・・・
つながっている怪しげなモノ達はパーツレビューにて。
(2020/3追記)
その後も中華DAPは元気で新製品もたくさん出ていますが、Shanlingの新製品はHibyLinkをサポートしなくなっています。ファーム開発元のHibyが自社ブランドでDAPを出すようになったので、戦略変更があったのでしょうか・・・
代わりにSyncLink(現在はベータ版)という同様の機能を用意するようです。