Resolut X8-DSP
Resolut(リゾルト)の8chアンプ内蔵12chプロセッサーです。
同社のハイエンドDSPは定評ありと認めるとして(あまりの持ち上げられっぷりに少し警戒心があったのでそういう視点のレビューになってます)、こちらはスペースファクター重視のアンプ一体型。さて彼奴のアンプ設計力や如何に?
ティーダラティオからパサートに引き継いで延べ10年間、イイ音で楽しませてくれたソニックデザインの至宝Digicore808iはとうに終売。修理も難しくなったのに(泣)後継機は出ず(怒)、ユーザーの皆さんが単体DSP+外部アンプの構成に戻ってゆくなか代替機を探していました。
自分はフロントSPにアレイ駆動のフルレンジを使っているので4ch、加えてWFとSWに2chずつで計8ch欲しいのですが、高音質な一体型なんて選択肢は少なく困っていたところにこれ。デジコアとほぼ同寸、A4サイズのコンパクトな筐体に64bit/96kHz処理のDSPと160W x 8chのD級アンプ搭載、いや、数値にそれほど意味があるとは思わないけど待ってました!プリアウトも4chあり何とでもなるだろうと即決。初期入荷少数とは聞いていましたが自分の後しばらく欠品となり、こういうのを求める人はそれなりにいたようで。
先に出ていたX12-DSPと基本設計は共通で、違いは入出力ch数が減り横幅だけ少し小型になった他、アナログRCA・USB・Bluetoothが追加され入力端子の充実ぶりは同社ラインナップでも随一。価格はch数ほど変わらず迷いますが自分はUSB入力を使いたい(USB/BTモジュールの単品売りは無かった)のでこちらを選択しました。
なお画像で見えているUSB-Bは調整用で、オーディオ用のUSB-CとBluetoothのアンテナは本体側面にあるため配線に少々気を使います。USB規格の小型コネクタはどれも華奢で、長期の振動に耐えられるか不安です。BとC逆とか両方Bで良かったのに。
機能面はいたって普通、むしろシンプルなDSPアンプという感じで、FIRや位相補償など新機軸らしきものは見当たらず。オールパスフィルターがあるので、近頃話題の「純正ヘッド位相いじってる」問題には対応できそうですがこのクラスの製品で必要とされるかどうか。
デジコアと比較するとプレーヤーが無いのは(自分は近年使っていなかったので)問題ないとしても、リモコンが専用方式のため純正ステアリングスイッチで操作できなくなったのが痛い。多くのDSPで普通の事とはいえ、ステアリングから片手を離してコントローラを探りノブを回すあの操作に慣れません。ここだけ星マイナス1。
DSPチップはオーディオ専用設計により現在この種の製品でメジャーとなっているAnalog Devices製SigmaDSPシリーズ。ADAU1452のシングル構成と控えめなスペックながら、演算量を減らすことで高レートでの動作を可能にしているようです。例えば多バンドのグライコはなくパラメトリックEQが入力および出力のchごとに最大5バンド設定可能(これは同社製品で共通)となっており、至れり尽くせりの調整メニューは切り捨てて音質に全振り、こういうの好きです。調整者の腕は要求されるかも、と思いインストール後ショップに伺ってみたところ、通常のマルチウェイシステムで狙った調整を行う上で問題は無いだろうとのことでした。
64bitの倍精度演算で丸め誤差を排除する設計はまぁ正しいとは思いますがそこまで効くかなぁ。
他に使われているデバイスを見てもESS製DAC/ADCや「ハーモナイザー」なるその設定画面(調整用アプリにある)がちょっと目を引く程度で、アンプのICもごく一般的なもの(ただしBTL駆動のようです)。正直「それでこの価格?」と思いながら音を出せば、やわなアンプでは鳴ってくれないソニックデザインNクラスを軽々と歌わせました。
調整込みの音しか聴いていないのでアンプだけの音質を評するのは難しいのですが、低音部の制動力はデジコア以上に思えますし、アコースティック楽器のリアルで柔らかな響きなど良質なAB級アンプのようでもあり。これらはいったい何の効果なのか?カタログスペックでは説明できません。枯れた技術をひたすら丁寧に実装する職人タイプのメーカーなら、それはそれで魅力的なことです。
第一印象は良好で一安心。これからじっくり確かめたいと思いますが「デジコア難民」でまだ残っている方は次期候補に入れて良い出来かと。ただし述べたように車両との統合機能は(ドアミュートとかも)諦めましょう。
今度も長く付き合えるといいな。
【入力】ADC:ES9840 Sabre x 2(32bit)
AUX RCA x 2ch
HI or LO-level x 8ch(HIとLOは共用、うち1-2chはRCAとも共用)
TOSLINK(~96kHz)
COAXIAL(~96kHz)
USB-C(USB Audio Class)
Bluetooth(SBC/AAC/aptX/aptX HD)
【出力】DAC:ES9080Q Sabre x 2(32bit)
160W x 8ch @4Ω(7-8chのみ2Ω対応 240Wx2ch)
プリアウト RCA x 4ch(9-12ch)
出力周波数特性:2Hz~48kHz
【処理・制御】DSP:ADAU1452 x 1
動作モード 64bit/96kHz
専用コントローラ Resolut SRC(別売)
USB-B(調整用)
【外形・重量】
W277 x D200 x H64mm
3.5 kg
(2024/5/23追記)
導入1か月。DSP製品にありがちな動作の不安定さは全くなく優秀です。
(2024/7/26追記)
下の画像の通り、本機のUSB入力は44.1〜768kHzに対応していますが、では音質的にはどの周波数で入れるのがベストなのか?本国に直接問い合わせてみました。
「88.2kHzと96kHzを試してみることをおすすめします。USBへの96kHz入力時はASRCをバイパスして動作しますが、そのために外部でレート変換する位なら本機のASRCを使った方が多くの場合良いパフォーマンスを得られます。
我々の知る限り、内蔵ASRCを上回るのはRoonのようなultra long bufferを有するものだけです。」(以上意訳)
と、大変よく分かってらっしゃるw感じの回答をいただきました。
入力と出力のクロックが異なる非同期サンプルレート変換(ASRC)では、等倍や整数倍の周波数比はかえって音質に悪影響を及ぼす場合があり、
・ASRCをバイパスしてDSPと同期させた96kHzと、
・ASRCを使うならDSPと基本クロックの異なる88.2kHz
という選択は正しいと思いますし、前者はUSBのアシンクロナスモードを適切に使わなければ実現できず、きっちり作り込んであることがうかがえます。
(2024/9/16追記)
不具合なく夏を越せました。この猛暑でも過熱保護が働くようなことは一切ありませんでしたが、外観のヒートシンクが伊達ではない程度には熱くなるので放熱にはそれなりに気を使ってあげた方が良いかもしれません。
(2025/4/7追記)
ほぼ1年使ったので総括します。
癖がなくジャンルや楽器を選ばない自然な音質が魅力。またリモコンやソフトウェアを含め安定感は特筆したいところで、トラブルはもちろんバグの気配すら遭遇したことがありません。新興メーカーとは思えない完成度で裏方に徹してくれる良品です。
セダンの特権トランク天井インストールでデジコアと入れ替え。ケーブル類はそのまま使えて助かりました。
明るいグリーン表示が見易いコントローラ。音量・入力・プリセット・サブウーファーレベルを設定可能。
シンプルな調整用アプリ。メイン画面はレベルとTAで、グループ指定したchは調整値が連動します。
クロスオーバー設定は別画面(内容は適当)。各方式とも最大24dB/octと次数を抑えてあります。
パラメトリックEQの画面。使わないフィルターは「None」にして演算負荷を減らせと取説にあります。
デジタル入力の調整はTOS/COAX/USB/BTで共用。まぁ変える必要性も少ないから合理的?
アナログ入力設定。HiとLoは共用、1-2chはRCAとも共用となっています。これも合理的。
ルーティング(ch割り当て)設定。2ch入力・8ch出力の場合はこうなります。合成機能は無し。
リモコンの向きを上下反転可能。SWのレベル調整方法はクラシックとパラメトリックの2種類あります。
接続時のみ現れる「ハーモナイザー」画面。DACのフィルター特性の他、2次と3次の高調波成分を調整可。
USBの仕様が不明だったのでLinuxで調査。安定度と音の良さは本機の大きな魅力の一つです。
Bluetoothの仕様も確認。こちらはカタログ通り。
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