今日はどうでも良い話。お水のお話です。
↑こっちじゃ無いです。
アクアリウムを趣味でやっていると色々と水質に悩む事になるのですが、困った事に水をどんなに目を凝らして見ても水質って見えないんですよね。当たり前ですがコレがaquariumの楽しいところなんですけど悩む所でもあります。
エンジンも見えない吸気だったり燃焼だったり、見えない物を一つずつ紐解いて考えて、理屈を組み立てながら理解して行くのが楽しいところでも有り悩むところですが、コレは両者に共通する部分です。
今日はそんな調子で南アルプスの天然水のお水について調べていき、「お水」の楽しさについて書きたいと思います。
こちらはペットボトルの南アルプスの天然水のラベルですが、PHは「約7」となっています。
実際に試薬を使用してPHを測って見ます。
PHは専用の容器に5ccの試料を汲み取って試薬を7滴入れた時の色の変化で測ることが出来ます。
結果は 約7。ちょうど「中性」です。酸性でもアルカリでも無く丁度中性って、飲料水にすると印象が良いですね。
では容器をよく撹拌して水を空気に触れさせて見ましょう。するとどうでしょうか。
PHは8位まで上昇しました(写真と目視で少し色が違って見えています)。コレだとアルカリイオン水とか言う状態なのかな?ペットボトルの水は不純物が少ないので水中の少しの変化がPHに大きく影響してしまいます。
今回の場合だと水中に溶け込んだ炭酸ガスが撹拌することで飛び、アルカリ化した物だと思います。(炭酸は強い酸性)
ガスがない状態でPH7の水(精製水など)があるとしたら、容器内で撹拌して空気に触れさせると“酸化”が起こりPHは6位まですぐさま低下してしまいます。
なので 南アルプスの天然水 のPHは見せかけの7。ガスを抜いた安定状態でPH8。コレが本当のPHって感じ。 体内に入ると炭酸はすぐさま体に吸収されてしまうので、体内ではアルカリイオン水のようなものになってしまいます。
・水を炭酸ガスを抜かずにボトリングして中性を示す「南アルプスの天然水」として販売するサントリー
・炭酸ガスをきちんと?抜いてボトリングして、「アルカリイオンの水」として販売するKIRIN
両者同じような物なのですが、イメージはだいぶ異なりますね。
面白いかな?
この炭酸ガスを抜いたことによるPHの上昇を水の理屈から推測すると、
カルシウムやマグネシウムを多く含み、アルカリに傾きやすい水なのかな?と考えられるのですが、でもでもです。このお水は「軟水」を売りにしているのでカルシウムやマグネシウムの硬度となる成分が少ないと言う事なので理屈が合いません。。
( “ミネラル”と呼ばれるカルシウムやマグネシウムに代表される成分はアルカリの性質を持つと共に、水の硬度を上昇させると考えます)
もう一度ラベルを確認すると硬度は「約30mg」となっています。
この30はアメリカ硬度での表記なのでaquarium界隈で使用される単位のドイツ硬度に変換します。変換はアメリカ硬度を17.87で割るとドイツ硬度へ変換ができますので、
30/17.87=1.68 °dH となります。
と言ってもピンと来る人は居ないと思いますので水道水の硬度を測って相場を確認して見ましょう。
使用する試薬はこんな感じのGHの試薬です。硬度の事はGHと呼びます。容器に5ccの水を汲み取って試薬を1滴たらします。試薬の色が緑色をしていて水の硬度物質を中和する働きがあります。何滴で中和が完了するかで硬度を図ります。
こんな感じの作業風景になります。
では1滴目。
↓
緑色の試薬が赤に変化しました。コレが緑になるまでに何滴必要になるかで高度が測れます。
2滴目。
↓
さらに赤くなりました。
3滴目。
↓
濁った赤色。
4滴目。
↓
測定完了です。4滴でしたので硬度は3〜4の間という事になります。一般に言う軟水の定義ですが、硬度3.36までが軟水とされていますので水道水も概ね軟水の範疇に入るかと思います。
水道水3〜4 に対して南アルプスの天然水は1.68なので、天然水はかなりの軟水ですね。硬度成分が水道水の約半分。そんなスケール感です。天然水の30mg/L。
〜蛇足〜
横浜西部なので川井浄水場からの水でaquariumにとっては余り適さない浄水方式の浄水場なのですが硬度は少し高めの様です。夜中で流量が下がっているからかな?セラミクスフィルター方式の浄水場でフィルター中の成分が溶出してしまうと言う欠点?がある濾過方式を採用する浄水場です。セラミクスの保護のためにPHを上昇させるための薬剤を入れ、濾過後にはPHを下げる薬剤を投入しています。今はネットで調べても出てこないので隠匿?されているのかな?昼間は2.5〜3.0位が平常運転です。aquariumとしては硬度が高いので金魚やグッピーのお水は深夜に交換すると良いかも知れないです。まぁ一般の水道水はこんな感じです。
〜〜〜〜
続けて同じ事を“南アルプスの天然水”でやって見ます。表記の硬度は1.68です。
1滴目。
↓
赤色。
2滴目。
↓
グリーンに変わりました。
と言う事で硬度は、1〜2の間という事になります。
もうちょっと精度が欲しいので追い天然水で5ccから10ccに増量します。
増量しました。一度中和が完了してグリーンに変わった試薬が追い天然水に反応して再度赤色に変化しました。
5ccに対して一滴で1 °dHなので、10ccに対しては0.5 °dHという事になります。
このまま続けて3滴目行きます。
↓
まだ赤いです。
4滴目。
↓
グリーンに変わりました。
計測結果は4滴なので1.5〜2.0という事になりました。
このまま希釈を続けていけば精度が高まるのですが試薬が勿体無いのでこゝ迄です。
南アルプスの天然水の硬度は概ね表記通りだと確認出来ました。
軟水と言うことはマグネシウムやカルシウムからなるアルカリ物質の含有量が少ないので、冒頭でも言った様に何故PHが高いのか?と言う疑問が生まれます。。
因みに水道水のPHは
蛇口から搾りたての状態で7.5。結構高いんですよね。コレを撹拌してガスを抜くと、
PH8.0まで上昇します。
(デジタルのPH計では経験的に7.8近辺を示します)
アルカリ物質を水道水の1/2しか含まない天然水のPHが、水道水と同一のPHとは理屈が合いません。
〜また蛇足〜
aquariumを楽しんでいる人でも水道水のPHを気にする人は数年前までは「0」に等しい感じでした。それまでは水道水はPH7と言うのが古くからの通説でした。自分の経験の範疇で質問に回答してくれるショップの店員さんですら「水道水のPHが8なんて常識的にあり得ない」なんて口にしていました。難しいことを聞く物だから嫌がられたりもした。そんな事もあってaquariumにおける水質を真面目に?考えるキッカケにもなった次第です。
ちなみにコレ、GH試薬の裏拍子の文言です。
熱帯魚飼育に必要な硬度が6〜16と表記されていますがこんな事はリアルのaquariumではあり得ません。
一般的な水草がある水槽ではGHは1近辺まで低下させると途端に成長が早まります。
aquariumの世界でも商品紹介の理屈から水質の誠にたどり着くには無理があるので、自分で掘り下げて考えるしか答えに辿り着く道はありません。
事実と異なる謳い文句の商品が当たり前の様に流通。嘘と誠が共存しているのもaquariumと乗り物カスタムの世界の共通点です。
腕に絶対の自信を持つSHOPの店員さんの基本的な知識が間違っているとか普通に有る世界です。
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ここ迄のデータを纏めると
南アルプスの天然水
PH : 8
GH : 1.5〜2.0
水道水
PH : 8
GH : 3〜4
ここ迄は一般的に良く聞く感じの話ですね。
今日はもう少し天然水について調べたいと思います。
続いては炭酸塩硬度です。
何それ?ですが、私も良くは分かりませんが簡単に説明すると、アルカリ成分を酸成分から保護する物質になるかと思います。
PHは平たく言うと「酸成分」と「アルカリ成分」の中和のバランスで決まる。と置いた時に、酸とアルカリの一対一のガチンコ勝負の結果で余った成分の量がPHと考えた時、KHはアルカリ成分側の「盾」となる成分になります。
酸とアルカリが一つづつぶつかって中和される時にKHが存在するとアルカリよりも先に酸とKHが一つづつ中和されて、本来消費される筈のアルカリが残ります。この反応はKHが0になるまで続くのでKHが存在する限り酸成分は消費されてしまいPH7以下の酸性側には傾かない事になります。
(酸成分である水素イオンが、アルカリと結合するよりも先にKH(実際は炭酸水素塩)と結合して、CO2と水となってしまう事でアルカリを保護する)
なのでアルカリの緩衝作用(バリア)と言われます。
飲み水としてはKHは高い方が美味しいのか?低い方が美味しいのか? 水道水と比較したら何か分かるかも知れません。何と無く何も入ってない方が美味しいと感じるとすると、低い方が美味しいのかな?
KH成分の詳細を調べると炭酸水素イオンとアルカリ/硬度成分の化合物のCa(HCO3-)2 だと言う事がわかるので、ミネラルを含有しているので低い方が美味しい水なのかな?と予測が立ちます。
炭酸水素イオンというのは平たく言うと水中の炭酸ガスの一つの形態になります。
これ以上のKHの説明は化学式無しでは出来ない難しいシステムになって来ますし私もしっかりと理解していないのでこの位までにしますが、水のPHを考える上でもっとも理解しなければならない要素になります。
では水道水から1滴目。
↓
今回は試薬の色が黄色で反応色がブルーです。黄色になるまでの滴数で測ります。
2滴目。
↓
3滴目。
↓
変わりましたね。KHは2〜3の間でした。
〜蛇足〜
aquariumでは弱酸性の軟水を目指す事になるのでKHは理屈上0ゼロを狙います。CO2添加の場合はPHが降下し過ぎると思うので、KHは適度にあった方が良いかな?
PHは、KHと溶存のCO2濃度の関係に依存して変動します。
↑
コレがaquariumの水質管理のキモになる部分です。上のPHの測定でガスを抜くとPHが上昇する理屈を考えると目から鱗が落ちるかと思います。逆にCO2を入れた時は?ガス濃度とPHの感度にKHはどう影響するのか?…
〜〜〜〜
続いて天然水。あ、水道水も天然水なんですけどね。「南アルプスの天然水」です。
1滴目は綺麗なブルー。
2滴でも足りない様です。
3滴で黄色く変化しました。水道水と同じ結果の2〜3の間でした。(色の変化から察すると2寄りの2〜3)
天然水と水道水ではKHの値に優位な違いは見られずとなりました。(←予想が外れました)
コレでは天然水の美味しさの理由が分からないのでもう少し悪あがきして見ます。
今度はコレ。
TDSメーター。 ←ドラえもん風にw。
純水は電気を通さない。と言うのはご承知だと思いますが、このメーターは電気の通り易さを測ります。H2Oに対して不純物の溶け込みが多い方が数値が大きくなります。
では天然水から
46ppm。 おー。どうなんでしょう?
続いて水道水。
↓
65ppm。 20上昇しました。
20の差の相場感の判断がムズカシイので私の水槽のTDSのデータを見てみると、大体90くらいです。小魚が6匹入った30L位の小さい水槽です。(立ち上げからの水質変化をモニターしています。)
この水は飲みたく無いので25の上昇の感じは水道水が水槽の水に変わるくらい。なので天然水と水道水の20の差はだいぶ大きいと言う事がわかります。
ここ迄のデータを纏めると、
南アルプスの天然水
PH : 8
GH : 1.5〜2.0
KH : 2〜3
TDS : 46
水道水
PH : 8
GH : 3〜4
KH : 2〜3
TDS : 65
天然水はGHとTDSが低いのが特徴の様です。
南アルプスの天然水は不純物の溶け込みが水道水に比べて極めて少ない、“岩清水”の様に磨かれた水と言うのが特徴なのかな?。
・ミネラルは水道水の約半分
・有機物から成る汚れ成分の含有が粗無い。言い換えると酸性成分がほとんど無い。
と言う事から、水中の電解質(不純物)が極めて少ないので少量のミネラル(カルシウム・マグネシウムの硬度/アルカリ成分)が溶け込んでいるだけでPHが高めのに出ている。と言うのは理屈通りで納得の行く所となります。
↑よく見るとそう書いてありました。
花崗岩とは、
御影石の事だそうです。Wikipediaより
御影石は、
「全体が細粒結晶の集合体で成分中にナトリウムとカリウムの含量が少ない、非アルカリ岩質」 だそうです。
重ね重ね納得です。
南アルプスは太鼓の昔に海底だった地層が隆起して出来た山々だと言われていますが、地下にはこんな岩の層も有るんだななんて思いながら飲むと少し味が違う感じがします。
ここ迄はaquariumの観点で見た「南アルプスの天然水」の美味しさの秘密でした。
〜おまけ〜
下の写真は先ほどと同じ、天然水のKHの検査が終わった状態です。
3滴滴下したので2〜3と言う検査結果となりましたが、ちょっと数値が荒いのが気になっていました。2倍量の10ccに希釈して検査を行なっても0.5単位にしかなりませんし、試薬の使用量も2倍になってしまいます。例に漏れずこの様な試薬は高価なのであまり使いたく無いんです。
そこで追加の試薬無しに検査の精密度を飛躍的に向上させる方法をこのブログを書きながら思いついたので紹介させて頂きます。
まず、検査終了の薬液と注射器に取った天然水を5cc用意します。
試薬の色が元のグリーンに戻るぎりぎりまで天然水で希釈します。
ぎりぎり緑に戻りました。この時の容量を読み取ります。
今回の場合は元の5ccから7ccまで希釈した所でした。
計算します。
3滴/(7cc/5cc) = 2.14 °dH
通常の検査では2〜3だった検査結果が試薬の追加無しに2.14という数値まで精度が向上しました。2~3と言うか殆ど2ですね。
続けて水道水も
6.1ccかな。
3滴/(6.1cc/5cc) = 2.46 °dH
この方法結構使えますね。
こういう自分なりの方法を思いついた時はとても嬉しいです。
薬液の追加無しに希釈だけで出来るなかなか良い方法だと思うのでaquariumを楽しむ方はお試しいただければと思います。
我が家では他にNH4:アンモニアとNO2:亜硝酸とNO3:硝酸塩と残留塩素を計れますが、コレは天然水を測っても意味ないので省略です。
aquariumの世界では他に珪酸や燐、鉄、他、各々の濃度を測定するキットが販売されていますが、必要/不必要含めて私の探求はまだそこまで及んではいません。
最近はエンジンにハマり有効圧縮比やバルブタイミングの事を考えていましたが、私の見えない物を見ようとする思い?。いちいち調べるしつこさはアクアリウムで鍛えられたのかも知れません。
車のディーラーなどは間違った診断で修理などをしてしまうと責任を問われていまいますが、アクアリウムの世界では店員さんの間違った知識で商品を紹介されて間違った商品を買わされたとしても責任は問われません。自由な物に店員さんの知識でアドバイスを貰っただけですからね。また実際の機能を果さないアイテムも多く販売されていたり、逆に有用な物だけれど知識の不足から使用方法を誤る人が多く悪く言われている商品があったりもします。そういう物は一旦通説が出来上がってしまうと正しい評価が広まるのは難しくなってしまいます。その逆も然り。
↑こちらは水槽の水の不純物を吸着してくれるaquarium用として販売されている活性炭です。
容器に水を入れた所に活性炭を入れて、何か汚れの様なものを吸着して水を綺麗にしてみます。活性炭処理水とでも言いますかね。炭を入れてお米を炊くとかも有るますよね。
小一時間吸着して水道水中の不純物が吸着されたはずなのでPHの検査をしてみましょう。
PHは9.5となりました。活性炭に付いていたアルカリが水に溶出してしまいました。
活性炭の生産方法には色々な方式と特徴がありますが、アルカリ薬剤を使用して生産される活性炭ではこの様な事が起こるのかな?。それとかアルカリ性のガスの吸着に使用された物の再利用品だったり。(活性炭は高レベルの工業用途として使用された中古品が低レベルの他用途向けとして流通している。)
参考になるサイト
↓↓↓
https://www.i-dash.co.jp/products/kassei/info/
一生懸命水作りした水槽にこんな物は入れられません。アルカリ汚染水とも言えます。ですがそうとも知らずに水槽に入れたプラセボ効果で清々しく綺麗として眺めている事も?
物事は経験則や目に見える物だけでは判断が出来無いって事の一例です。
なので「本当に機能する必要なモノを見抜く眼」は自分で磨くしかありません。
エンジンとaquariumって似てますよね。
アクアリウムへの探求もまだまだ続きます。