クラッチのトラブル 〜分解編〜
目的
修理・故障・メンテナンス
作業
DIY
難易度
初級
作業時間
30分以内
1
クラッチの切れが悪くなり、1速に入れた際にはエンストする様になりました。
レバーの握りに余裕は無く、エンジン側のプッシュレバーの位置がだいぶ前に来ています。
プッシュレバーは本来、遊びを無くした状態でグリーンのラインの位置にあるのが正常です。
クラッチの内部部品の摩耗が大きい場合や、摩耗に合わせたプッシュレバーの調整が出来ていないとこう成ってしまいます。
今まではプッシュレバーが前に出て来た分をワイヤー調節で引っ張り騙し騙し?乗っている状態でしたが、いよいよ限界を迎えた様です。
2
クラッチの調整には、「松」「竹」「梅」の3コースがあります。
「梅」 並
ワイヤー調整。クラッチ内部の摩耗には触れずに、プッシュレバーが前進した分をワイヤー調整で補います。←今までの騙し騙し。又はワイヤー自体の伸びを解消する為にワイヤーの交換。
「竹」 上
クラッチ部品の摩耗分をエンジン側のクラッチの調整機構を使用して修正します。これはエンジン外部から行う事が出来ます。
「松」 特上
摩耗したクラッチ部品をクランクケースカバーを開けて分解整備します。幾つかのパーツ交換が発生するのでコストが掛かりますが、フィーリングは大幅に改善します。クラッチの「キレ」が良くなるのでギアの入りまで改善されます。
エンジンを開けたついでに軽量クラッチスプリングやウィークポイントであるクランクケースの摩耗を防ぐ為に、クラッチボスナットの増し締めも同時に行ってしまうのが良いと思います。オイルポンプの点検もしてしまいましょうw
各パーツの価格は続編の その2 〜組み込み編〜 に記載しましたのでそちらをご参照下さい。
https://minkara.carview.co.jp/userid/2092714/car/3198268/7435212/note.aspx
3
プッシュレバーの点検方法をマニュアルで見るとこんな感じです。
合いマークが分かり難いので、レバーの向きが六角ボルトの方向と覚えると良いと思います。
4
先ずは「竹」コースを試してみます。
調整機構はプッシュレバーの下部、スプロケットカバーの中にあります。
17mmのナットを緩めてプラスドライバーで調整します。
https://youtube.com/shorts/yQyVoZ3-RfQ?feature=sharec
プラスネジを回すとプッシュレバーが上下に動きます。高い位置にある状態が摩耗分を補う位置になるので、マニュアルの点検方法の位置にレバーが来る様に調整をします。
内部部品の摩耗が少ない場合はコレで調整が効きます。
作業後は17mmのナットは偏心カムのボルトを止めているだけなので、緩まない程度にキュッと止めるだけでOKです。
5
最低の状態で10mm
最高の状態が15mm
でしたので5mm程調整幅がある様です。
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構造はこんな感じです。
プラスネジを回すと偏心カムがプッシュレバーを上下させます。
プッシュレバーと接触するカムの部分には摩耗が発生してしまうので、そのせいでプッシュロッドが下がりクラッチが近くなってしまう症状もあります。
大体のSRはここが摩耗していますので、摩耗が激しい様でしたら交換して調整してみましょう。
(ここが大きく摩耗する車両はオイルポンプに不具合がある説も有ります。発信源は私ですけど。)
と、この様にプッシュレバーの高さ調整でクラッチの有効ストロークが復活すれば取り敢えずの延命は成功です。
この車両では調整がしきれなかったので「松」特上コースに移行します。内部パーツの交換です。
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クランクケースカバーを開ける準備が整いました。
ステップとキックアームを外し、エンジンオイルを抜いてフィルターも外しておきます。
スタンドは斜めにする為にサイドスタンドにします。
たいした工具を必要とせずに分解整備が出来るところはSRの良いところですね。
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クランクケースカバーを開けました。
キックアームの所が抜け難いかな?なのでその辺りを中心に引っ張ると抜けやすい様です。
やはりオイルを抜いてフィルターを外し、サイドスタンドで立てるとオイルの流れ出しが段違いに少ないです。急がば回れです。
キックアームのシャフトに付くワッシャーが必ずケース側に張り付いて外れて来ますので、落とさない様に注意です。
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プレッシャープレートを外します。
ここのスプリングが重いとか軽いとかのスプリングですね。キャブ車はSR500と共通の ”白スプリング“ が標準で入っています。
流行りのFI用の青スプリングは6本で3,000円なので、クラッチのメンテナンスと同時に行うとコスパの良いチューニングになると思います。
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プレッシャープレートを外すとこんな感じです。外したプレートは16の項に写真があるので、見た事がない場合はそちらをご参照下さい。
軸に中心に「プッシュロッド1」という部品が見えます。これは手で抜けます。
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続いて軸の中から引っ張り出したのは「プッシュロッド2」という部品です。
この辺りが摩耗してしまう部品です。
磁石で引き抜きました。
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左 : 摩耗
右 : チョットだけ摩耗
この車両は摩耗が大きいのでとても分かりやすいです。
先端が潰れる様に摩耗するというのがクラッチが切れなくなる原因。理由は後述します。
これだけ摩耗していると全長で0.8mmの摩耗になっていました。
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続いてプッシュレバーを摘出します。
プッシュレバーに掛かっているスプリングをレバー側で外して、エンジン側に残す様にすると作業しやすいと思います。
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プッシュレバーは、先程のプッシュロッドと接触する部位も摩耗しちゃうんですね。
よく考えると分かると思いますが、プッシュレバーがプッシュロッドを押し切った時、すなわちクラッチレバーを握った時に双方が直角の関係を保てると摩耗が少なく済むことになるんだと思います。
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プッシュレバーとプッシュロッドの接触面はこの様に傾斜があるので、プッシュレバーの高さを調整すればある程度の摩耗した分の調整が効くって言う仕組みです。
でもこの形状のおかげでプッシュロッドを抜かないとプッシュレバーが抜けない構造になってしまって居るんです。
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① クラッチを握る。
② プッシュレバーが引かれて回転する。
③ プッシュロッド1と2がプッシュされる。
④ クラッチスプリングで押さえつけられているプレシャープレートをスプリングを縮める方向に押して、クラッチが切れる。
⑤ クラッチレバーを離すとスプリングがクラッチを繋ぎ、プッシュロッドとレバーが押し戻される。
分かるかな? こんな感じがクラッチの仕組みです。
https://youtube.com/watch?v=hRIuwL4Zx68&feature=sharec
スプリングで押さえつけられるクラッチプレートの仕組みは別途ですね。
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なのでプッシュロッドとプッシュレバーの先端が摩耗してしまうと正常にプッシュロッドをプッシュ出来なく成ってしまい、レバーを操作してもクラッチが正常に動かせない状況が出来上がって仕舞う訳です。
もう少し詳細に書くと、握り込みプッシュレバーの回り込みが大きくなった所でプッシュロッドの先端が摩耗して平坦に成っていると、プッシュ出来るストローク量が減少してしまいます。なので切れが悪い、握りのストロークが長い、変速時にチェンジペダルが重い、そんなフィーリングに成ってしまいます。
・クラッチが切れない
・切れ難い
・フィーリングが悪い
・切れが悪いのでミッションの入りも悪い。
以上の原因は、この摺動部の摩耗が原因の発端になっています。
なので、
・プッシュレバーAssy
・プッシュロッド2
の交換が必要になると言う事になります。
プッシュレバーAssy 10,048円
プッシュロッド2 2,574円
コレが結構な高額なんですね。
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プッシュロッド1も摩耗があれば交換。
今回交換します。
ブッシュ1とブッシュ2とプッシュレバーの摩耗がtotal 1mmに達すると、「竹」コースの調整範囲をフルに使用するレベルに達します。
なのでブッシュ系の摩耗はシビアに見る必要があります。
プッシュロッド1 1,111円
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あとは部品を新品にして組み戻すだけですが、折角ここまで開いたし、開いて閉じるだけでもガスケットやオイルシールのパーツ代は 4,000円程掛かってしまうので、ついでに?ではありませんが出来るだけの作業をして閉じたいと思います。
写真の中心に見えるクラッチボスナットですが、ここはSRのエンジン腰下の最大のウィークポイント!(私的に)に成っています。
https://minkara.carview.co.jp/userid/2092714/blog/46936285/
↑
詳細はこちらのブログに書いていますので興味のある方はご参照下さい。
・リンクが間違っていたのを修正しましたm(._.)m
https://youtube.com/watch?v=gN-VghXMFMs&feature=sharec
↑
締め付けトルクと緩みトルクを計測してみました。
緩みトルクとはナットが緩み始めるトルクの測定の事です。締め付けトルクは元々締まっていた位置までナットを戻してその時の締め付けトルクを測定します。何キロで締まっていたかが確認出来ますが共に1.5〜2kg/m程しか掛かりませんでした。このエンジンもだいぶ緩んでいました。
(締め付けの際に一旦レンチを外したのは緩める間につけた合いマークを確認しています)
振動の発生源にも成ってしまうと思いますので、ここは1JNのサービスマニュアルの指定トルクの上限値の7kg/m +α 位で締め付けておきます。
SRの振動が大きい小さいのレビューも、ここのナットがキチンと締まっているのか?緩んでいるのかで印象が変わって来るかも?しれませんね。気まずい話はスルーしがちですが、SRが持つ不具合の中でも結構大きい不具合だと思います。目を背けないで一度考えてみましょう笑😆 ミッションのワッシャーも摩耗しちゃいますので。
でも今回はもう少しだけ分解するので、ここのナットは外してしまいます。
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クラッチボスナットを外すとクラッチがAssyで外れます。簡単なので臆すること無く外しましょう。
そうするともうオイルポンプにアクセス出来ます。
オイルポンプの整備や交換は難しいイメージを持たれますけど、割に簡単?
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スナップリングを外してオイルポンプのスプロケットを外します。
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ポンプはショックドライバーでプラスネジを緩めて外します。
そんなには固くは締まっては無いのですが、中には固着して外れてこないネジもあります。結局ショックドライバーが必要になるので鼻からこれで行きます。舐めるのも何だしね。
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ネジが外れたらオイルポンプの摘出です。
ネジの長さが場所によってなので確認しながら外します。
ここ迄やって何ですが、
「オイルポンプなんて外す必要あるの?」
なんて思う方もおられると思いますが、
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この車両もオイルシールのリップが切れて飛び出していました。これにはこう成ってしまう理由があって、組み込みに注意が足りないとこんな事になってしまいます。
こうなってしまうとオイルがリークしてしまうので規定の量の吐出は望めません。
オイルシールの交換が必要です。
https://youtube.com/watch?v=mNGWjqJFQ2I&feature=sharec
これも気まずい話ですが現実はこんな感じです。
私の経験から言いますと、このエンジンでポンプを分解するのは3台目になりますが、3台ともオイルシールが切れていました。
折角クランクケースカバーを開けるのであれば、オイルポンプまで是非!。そうでなくても是非!
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左:分解2台目の部品取りエンジン
右:1台目SR500のエンジン
私的には全てのエンジンのオイルシールの点検と交換が必要なのでは? と思っています。そんなに漏れないでしょう?のそんなにはどれ位なんでしょうか? 即座には影響はないですけれど。
強化オイルポンプを入れる入れないの話や他の方法で油量を確保しようというのも有りますが、その前にノーマルオイルポンプの点検が必要なのでは?と思います。FIとかの高年式は大丈夫なのかな?
ここのシールが切れている車両、切れていない車両によって、SRの潤滑に対するレビューも変わって来るのかも?知れませんね。
SRを購入したらオイルポンプの点検は必要!
そんな所だと思います。
クラッチから脱線していますが、
その2へ続く。
https://minkara.carview.co.jp/userid/2092714/car/3198268/7435212/note.aspx
↑
その2はコチラからご参照下さい。
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