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2014年02月11日

クロスオーバー・シンドローム

クロスオーバー・シンドローム “シンドローム”とは、もともとは医学用語で、そして“症候群”と和訳されていることからも、どうもそんなにいい意味ではないらしい。たとえば、複数の症状が重なって、さらに悪化するというような意味も含むようである。でも、ここでは本来の意味はちょっと忘れて、ポジティブに行きたいと思う。日本語として慣用になっている(?)“その種の傾向、多発中”といった感じで使ってしまうことにする。

……で、何が“多発中”かといえば「クロスオーバー」である。2014年、この言葉で分類されそうなモデルが相次いで登場した。ハリアー(これは2013年12月だが)、ハスラー、ヴェゼル、そしてエクストレイルである。おっと、このエクストレイルは「進化し続けるSUV」だそうで、メーカーとしては、クロスオーバーとは名乗っていなかったが。
(昨年の東京ショーに参考出品され、本年にプロトタイプが公開されたスバルの「レヴォーグ」も、メーカーが名乗るかどうかは別にして、クロスオーバーに分類できる)

これらのモデルは、どれもおもしろい。クロスオーバーにはもともと定義なんかないから、何と何を、そして、複数の要素をどの程度の“濃淡”で組み合わせるかは、すべて作り手に任される。ゆえに、コンセプト・ワークとそのリザルトにはそれぞれの工夫と答えがあって興味深いのだ。

* 

まず、いい意味で“やり放題”だなと思ったのはトヨタのハリアーであった。「高級クロスオーバーSUV」を自称しつつの、ここまでの大胆さ! いや、これは高級という立場だからこその開放と飛翔と見るべきか。スタイリングで興味深いのは、ちょうど二階のベランダからクルマを見下ろしたとき、その角度で最も美しくなるようなSUVにしたいというのが開発陣の狙いだったということ。

そこから発して、カタログの最初の見開きはその角度のフォトだし、上から見られるように、ボンネットの面はさまざまな“芸”をしてるし、わざわざ濃い色のボディ・カラーが選ばれてるし、ヘッドライトはどこに収まってると訊きたくなるようなフェンダーの処理になってるし、また、グリル中央のマークにしても、前じゃなくて“上”を向いて光ってるし……。

さらには、オーディオにしても、エリック・クラプトンの某曲が一番よく聞こえるようにしてくれと、チーフエンジニアがJBLに指示を出したとか? そのオーダーから、決して安価ではない(40万円とか)ものの、しかし本気で“すっごい音”がするオーディオのシステムが(オプションで)選べるようになっていたり……。

足の設定にしても、あえて従来型風のユラーとした感じのもの、そうじゃない、いまはもっとビシッとした足もやれるんだということからの、ロールを抑えた軽快なスポーツ・ライクな仕様、そしてその中間、ハイブリッド・バージョン用の足と、しっかり三種を揃える丁寧さ、もしくは贅沢さ……。ちなみに、このハリアーのHP(ヒップポイント=前席シート面の地上からの高さ)は700ミリ。

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そして、ハスラーの“クロスオーバー”はこれまた明白。自社の“財産”を活かしての「ワゴンR+ジムニー」の“クロス”である、と。つまり、トール・ワゴンとオフローダーのマリッジですね。ついでにネーミングも、同社のバイク史に燦然と輝く「ハスラー」を持ってきていて、聞く人が聞けば、それだけでオフ系のクルマであるとわかる仕組み。

四角とトールに拘って、Aピラーにしても今日のクルマとしては異例という“立ち方”で独自性を主張。たしかにこれはユニークで、運転席からは、あまりにも見慣れない景色であるために、ピラーが邪魔に感じるほど。まあ、こういうのは三日も乗っていれば、慣れてしまうとは思うが。

ちょっと残念なのは、オフ走行を想定しての大径タイヤの設定で、低速域での乗り心地は、ワゴンRほどのしなやかさはないこと。もちろん、その乗り心地は、このクルマのキャラを考えれば許容範囲ではあるのだが、こういうクロスオーバー車の場合、一生オフは走らないという可能性もあるわけで、このへん、ワゴンRで“できてた”ことは全部やる!……というような気合いもほしかったところだ。ちなみに、このクルマのHPは、ワゴンRより高い671ミリ。

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一方、オフの匂いは一切しないというクロスオーバーがホンダのヴェゼル。これはエクステリアにおいては、「SUVの安定感とクーペライクなスタイリングを融合」させ「多面的価値を高次元で融合した新しいジャンル」を創出したとする。クロスオーバーという言葉こそ使っていないが、異種の「融合」(クロスオーバー)は認めている。

このモデルは、コンパクトさも相まって、バーソナルな雰囲気の演出では他車の追随を許さない。ハッチバックをハイト系にデザインし直した……という造型でもあり、SUVは嫌いだが、しかし新種の乗用車には乗りたいという向きには、これは格好の検討車種となろう。

また、インテリアでは、「クーペのパーソナル感とミニバンの快適性」を「融合」したとして、手に触れる部分については基本的に柔らかい素材を使っているとする。また、パーキング・ブレーキは電子式となり、駐車時に、レバーをエイヤッと引き上げたり、ペダルをドスッと蹴っ飛ばしたりしなくて済むようになった。

乗り味は、ベース車とハイブリッド仕様車で異なるが、ベース車は車体の軽さが活きる。一方、車体の重量増を活かして、乗り心地をまとめているのがハイブリッド仕様。ただ、どちらの仕様とも、時速50キロ付近、そしてそれ以下の領域では、もう少し、足(乗り心地)のしなやかさと、滑らかさがほしいと思う。高速域でのハンドリングが良くても、一般市街地ではその“性能”は使えない。ちなみに、このモデルのHPは634ミリ。

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そして、この中では唯一、クロスオーバーを謳わない「進化し続ける本格SUV」であるのがニッサンのエクストレイル。よく考えると、このメーカーには、クロスオーバーさえ跳び越えたような「ジューク」という先制パンチがあるので、エクストレイルは安心して、単なるSUVに仕立てればよかった。

もちろん、そうは言っても、クロスオーバー時代の影響は受けていて、ヴェゼルとも共通するような、サイドビューでの“うねり”を盛り込み、新鋭SUVとしてのデザイン的な主張をしている。Dピラー付近での窓の“切り方”にもリズムがある。

注目なのは、カタログ上のグラフィックがほとんどオフロード上でのショットという、非・街中モードのはずのクルマが、意外や意外、市街地走行での乗り心地がいいこと。時速にして60キロ以下の領域で、柔らかく動くというタイプの足ではなく、むしろガシッと固められているようなサスであるにも拘わらず、“粘着足”とでも言いたい特有の乗り味で、乗員を市街路で快適にもてなしてくれる。

おそらく、そのフィールには新設計のシートも何かしら貢献しているはず。身体のどこの部位(一部)にも負担をかけないような、そして、全体で身体を支えるようなシートが、このモデルには装着された。聞けば、このエクストレイルがその新世代シート搭載の初号機であるという。

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クロスオーバー時代の、さまざまなクロスオーバー・モデル。カタチが変わり、パッケージングが変わって、新しい次元での、そしてこれまでとは異なるフェイズでの競争も行なわれて、この国のマーケットは、いま、非常におもしろい状況になっている。クルマは時代で変わる。あらためて、そんな感慨も持つ2014年である。
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Posted at 2014/02/11 02:09:09

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