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2015年12月24日 イイね!

ちょっと寂しいプリウス「4代」の“旅” その1

ちょっと寂しいプリウス「4代」の“旅” その1最新の4代目となったトヨタのプリウス。その「プロトタイプ」というかたちで実車に乗って以後、時間だけが経ってしまった。試乗した感想をなかなか書けなかったのは、何をどう書いたらいいか決められなかったからだ。端的には、その感想・評価の文にどんなタイトルを付けるか。それが見えなかった。でもようやく、その“揺れている”こと自体を書けばいいのではないかと思い至った。

新型プリウス、実車を見ての最初の印象は「低い!」ということ。これは全高のことである。そして、昨今のモノサシとして、このモデルにはいったい何が「クロスオーバー」しているかをイメージしてみると、どうも「クーペ」くらいしか思いつかない。この点が私を戸惑わせた。

2010年代半ばに世に出る新型車、今回のプリウスが採り入れなければならなかった要素、それが「クーペ」なのか? そうだとしたら、初代からこの4代目まで、プリウスというモデルが強いられた“旅”は、あまり真っ直ぐではなかったことになる? なぜ、そうなってしまったのか? また、その“旅”の結論は果たして必然なのか?

こんないくつかの「?」が私の中で一気に噴出して、まとまりが付かなかった。そして、初代(1997年)からの十数年という、長くはないが、でもそんなに短くもない時間。その間、このモデルが直面した“ロング・アンド・ワインディング・ジャーニー”を思うと、一種の寂しさも含む複雑な感覚にとらわれる。ちなみに、新プリウスをここで書くにあたってタイトルとした「ちょっと寂しい」は、クルマ(4代目プリウス)やその内容のことではなく、書き手(私)のココロである。

       *

1997年、初代のプリウスが世界に「提案」したことは、大きく二つあった。ひとつは省燃費をめざして、「ハイブリッド」という一台のクルマに複数のパワーソースを搭載する方式を選択したこと。そしてもうひとつは、「21世紀のセダン」はかくありたいという新レイアウト&新パッケージングである。

プリウスなるモデルが登場して、世の中が沸いたのは、たしかに「ハイブリッド」だった。だからこそ、開発陣は悔しがっていた。「21世紀のセダン」は「人」を優先に設計する。まず「人」が座りやすい椅子とその座面の高さを探究し、そういう椅子に座った「人」を、クルマとしてどう「包み込む」かを考える。プリウスではこれを行なったのだが、この点に関しての世のリアクションは薄かったからだ。

1990年代の後半、トヨタの中で、いわゆるHP(ヒップポイント)は「600ミリ」付近がいいということが発見された。クルマのレイアウトやスタイリングはそこを出発点として、ラウムをはじめとするいくつかのモデルが生まれ、そのひとつがプリウスだった。

そのようにして高い着座位置を設定すると、「人」は自然とアップライトに座るようになる。そのような「人」を車室内に収容するべく、クルマの全高が変わる。高さについては、少なくとも数値として1500ミリ以上が必要だ。新機構のいわゆるセンターメーターにしても、HP600ミリの着座姿勢とリンクしてのものだと、初代の開発陣は語った。

公表された最新「4代目」の全高は1475ミリ。従来型(3代目)に対して「20ミリ下げた」とメーカーは言う。ただ、こういう全高にするとした時点で、「HP600ミリ」でクルマを作る(まとめる)ことはほぼ不可能になる。

今回のクルマ、ヒップポイントはいくつなんですか? 「4代目」の開発陣にこう問いかけたが、トヨタのクルマとしては極めて珍しいことに、即答が返ってこなかった。(メーカーとしては、今回は「HP」という言葉を使わず、そして、その数値も公表しないということにしているようだ)試乗後に、私の体感から「ヒップポイントは520~525(ミリ)くらいですかね?」と振ってみると、開発陣はとくに否定はしなかった。新プリウスのHPは、たぶんそのへんの数値であるのだろう。

何よりメーカーは、新プリウスは「低重心パッケージのスタイリング」をめざしたと謳い、その基本諸元として「重心高:約20ミリ改善」を挙げている。また、歴代プリウスの「強みと弱み」では、その「弱み」として、「走りの楽しさ/乗り心地」があったとしている。

つまりこの4代目で、トヨタとプリウスは、これまでの自身の歴史であった「高姿勢のセダン」というコンセプトを捨てた。もしくは、「弱み」であったとするプリウスの「走り」の問題を解決するには、「高姿勢」のままではやれない。このように判断したとも見える。そうした決定や判断、そのどちらもが、短い言葉で言えば、やはり寂しいのだ……。

(つづく)
Posted at 2015/12/24 12:17:15 | コメント(1) | トラックバック(0) | New Car ジャーナル | 日記
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