前回のエントリで,OpenECUはリスクを正しく理解されないまま使われつつあるという主張をしました.
なんで,こんなシラケるようなことを書くのか.それは,そのリスクが,エンジンの暴走という,致死傷的な事態を招きかねないからです.公道で暴発して一般人を巻き添えにするなんて事態は論外ですが,自損という場合ですら,自動車メーカにとっては由々しき事態です.彼らには,ディーラを経由して我々が受けられる一般的な保証に加え,製造物者としての責任が問われています.ドライバの無謀さえ,場合によっては連帯責任を負わされる気の毒な立場です.
世論に押されれば,自動車メーカとしても,対策を講じざるを得ないのは想像に難くありません.結果として,ECUへのアクセスが制限されることになるでしょう.自分の在庫を裁きたくてしょうがない人達は「自己責任」という逃げ口上を使うかもしれませんが,自分だけ責任をとれば済む話とは言えません.度が過ぎれば,ECUに興味のある全ての人の首が絞まります.
もちろん,首が絞まるのを喜ばしいと感じる人などいないでしょう.
そんな中で,OpenECUによるフラッシュメモリ書き換えに関する問い合わせに関し,上辺以上の情報を提供するのは,下記の3通りの場合のみに限定しています.これが私的ガイドラインです.
(これさえも許せないという人がいるだろうということは承知しています.あくまで「私的」ガイドラインです.)
1. 書き換えたいパラメータがはっきりしている.
典型例は「スピードリミッタを外したい」というものです.
確かに,フルサーキットを走れば,188km/hなんて制限は邪魔なばかりか危険です.
一般には外付けのリミッタカットを使いますが,外付けにはいろいろな副作用も予想され,それはそれでリスクがあります.
このケースの場合は,1回だけECU書き換えればOKなはずです.
もちろんリスクが無いとは言いませんが,目的を達するためのリスク全体を考えれば,個人的には許容だと思います.
2. 純正ECUを山ほど持っている.
書き換えに制限があるなら,制限が来る前にECUを載せ替えてしまえばよい.これは一つの正論です.もちろん,とんでもない数値を与えれば,フラッシュメモリが正常でも致死傷的状況になるかもしれませんが.
ここまでの財力がある人は,プロか,それに限りなく近い人でしょうから,サーキットの貸し切りも普通にするでしょうし,無茶なパラメータをECUに与えることもないでしょう.金持ちのボンボンでなければ,あまり心配は要りません.ていうか,うらやましい.
3. 後ろ盾となるデータを豊富に持っている.
フラッシュメモリの性質から,社外ECUでのA/F追い込みで行うようなtry and errorを繰り返すことは原理的にできません.
書き込み回数の節約こそ,純正ECU書き換えには求められます.具体的には,なぜその数値を変えるのかということに対して論理的な説明を自分にも他人にもできなければなりません.
その説明は,豊富なデータがなければ下せないはずです.
幸い,ecuExplorerやEnginuityを使えば,ロギングはできます.またロギングを繰り返す範囲では,(書き込みが無いので)フラッシュメモリの寿命を気にする必要がありません.
手持ちのUSBメモリでは容量が足りないくらいのデータを積み上げた上で,どうしてもここが不満ということがあれば,ECUのパラメータを変えることもありえるでしょう.
特に,低回転時の制御に関しては,STIといえども燃費や実用性を考慮したセッティングになっていますので….
(ということが骨身にしみてから,書き換えを考えるべきと思います.)
ここまでデータを読み解けば,そんなに変なパラメータを設定することも(たぶん)ないでしょう.
そんなこんなで,相変わらず推奨はしないのですが.書き換えられるなら書き換えたい.制限があるものは外したいという気持ちは解りますので…….ワタクシ的な落としどころはこの辺りです.
人様に押し付ける気はないのですが,各人のガイドラインを考える上でのテンプレートになればとは思っています.
何度も書きますが,リスクのあるツールです.世論に奪われない範囲で,かつ愛車と自分の寿命を縮めない範囲で,楽しく使って行きましょう.
…と無理矢理に円く纏めてみる.
2007年8月24日追記:
本エントリでいう安全・安心とは,純粋に技術的な側面についてのものです.ROMデータは,著作権を始めとする産業財産権により保護されています.産業財産権の侵害にまつわるリスクについては,当ブログの別のエントリでいくつか取り上げています.純正ECUチューンについて興味のある方は,そちらもご参照ください.
Posted at 2007/08/11 00:49:28 | |
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OpenECUのリスク | 日記