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golgoyukippeの"E46" [BMW 3シリーズ セダン]

整備手帳

作業日:2023年5月14日

オイルディップスティックチューブを寒冷地仕様に交換

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目的 修理・故障・メンテナンス
作業 DIY
難易度

中級

作業時間 3時間以内
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E46の整備は大小いろいろとやっているのですが、久々に更新します。

オイルディップスティックのチューブを寒冷地仕様に交換しました。

右側が寒冷地仕様です。寒冷地仕様はれっきとした純正パーツです。パーツナンバーは11437565437。このパーツの存在は日本ではほとんど知られていないと思います。調べたところ、どうやら2009年に登場したパーツのようです。ということはE46の生産終了後です。

通常仕様でも寒冷地仕様でも、CCVのオイルセパレーターでブローバイガスから分離されたオイルがオイルサンプへ戻るための通路「枝」があるのは同じです。
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通常仕様と寒冷地仕様の違いは、「枝」の根元から先のチューブの造りのみです。通常仕様では、ディップスティックが通る内側のチューブの外側に同心円状にチューブが覆われていて、「枝」から来たオイルはこの内側と外側の壁の狭いスペースを通ってオイルサンプに戻ります。

通常版をわざわざ手の込んだ作りにした理由は、恐らくは、内側のオイルディップスティック先のゲージを汚さないようにという配慮でしょうか。

通常仕様では「枝」から先の経路が狭いために、カナダなどの寒冷地では、乳化してマヨネーズ状になったブローバイガスが狭いスペースを塞いで問題を起こすことがあるようです。

また、寒冷地ではオイル消費量が大きい問題が多数報告されているようです。この原因への推測としては、マヨネーズでオイル経路が塞がれるに応じ経路の実質断面が細くなり、表面張力の増大によりオイルサンプのオイルが負圧で吸い上げられやすくなる結果として、ついにはオイルがCCVからインマニへ吸われて燃やされてしまうのだと思われます。

イメージしやすい例としては、細いストローをコップの水に浸して上端を指で塞いだままストローを持ち上げると、ストローの中の水はそのまま持ち上がります。このとき水が持ち上がるのは、水がストローから落ちようとすることによりストローの中の水面と指の間が負圧となり、水の重量と負圧が釣り合っているからです。が、太いストローでは表面張力が負けるので、ストローの中の水面が破れて水を持ち上げられません。これと同じはずです。

寒冷地でちょい乗りが多いということは、オイルが十分に暖まらない状態での稼動が繰り返されるので、オイルの表面張力も高いため吸い上げられやすく、マヨネーズも溶ける間もないまま蓄積していき、、という悪循環を生むことでしょう。寒冷地だとエンジンが温まるまでの時間が長いので、ブローバイガスの発生量自体も多いでしょう。

チューブがオイルサンプに刺さる部分が必要以上に長いなと最初は思いましたが、その理由は恐らく、オイルの熱をチューブに十分に伝達してマヨネーズを溶かすためではないでしょうか。それでも寒冷地でのちょい乗りには効かない、ということかと思います。
他に考えられる理由としては、仮にチューブがオイルに浸かっていないと、CCVはブリーザーホース(エンジン上とCCVの間のホース)から気体を吸い込むことに専念しなくなり、チューブからオイルサンプ側の気体も吸い込もうとするでしょう(エンジン内のブリーザーホース側とチューブ側の気圧は同じなので)。狭義のブローバイガス、というかピストンリングから下に吹き抜けた未燃焼ガスはオイルミストよりも軽いので、有害な未燃焼ガスを多く含むブローバイガスを吸い込む量が減り、油面のすぐ上のオイルミストを多く含むブローバイガスが吸い込まれて燃やされてしまうでしょう。これを避けるためにもチューブの下の端はオイルに浸かっている必要があるんでしょう。

蛇足ですが、私の仮説では、オイルサンプからのオイルの吸い上げが起きうる状況は、ブリーザーホース(エンジン上とCCVの間のホース)がマヨネーズで詰まりを起こしている状況だけに限られるはずです。
というのは、ブリーザーホースが詰まりを起こしていなければ、オイルドレンホース内の負圧とオイルサンプ/クランクケースの負圧はブリーザーホースを通じ平準化されて殆ど等しくなるため、オイルドレンホースやチューブに詰まりがあろうと無かろうと、オイルを吸う力は発生しないはずだからです。
ブリーザーホースにマヨネーズ詰まりがある状況では、オイルサンプを含むクランクケース内の気圧だけが他より高くなっているため、インマニで発生した負圧は、ブリーザーホースには逃げられずにオイルドレンホースからオイルを吸い上げる形で解消されようとするはずです。このときに「太いストロー」だと、オイルサンプ側の気圧によりチューブ内の油面が多少押し上げられることはあっても、オイルの吸い上げまでは無理なので、ブリーザーホースに多少の詰まりがあっても頑張ってブリーザーホースから気体を吸い込もうとするので問題になりにくい、ということではないかと思います。
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対して寒冷地仕様では、チューブは二重になっておらず、「枝 」から来たオイルはディップスティックが通る太いスペースに合流します。ちゃんと測っていませんが、持った感じでは通常仕様よりやや軽いです。

寒冷地仕様では、枝の根元から先の断面は太いため、マヨネーズが経路を完全に詰まらせる可能性が大きく下がることになります。太いストローです。

せっかくなら「枝」も太くすればよかったのにと思ってしまいますが、その必要はないと判断されたのでしょう。

参考までに、 アメリカのG.A.S.(German Auto Solutions)という業者が売っているM54 CCV Upgrade Kit というものがあります。これはM54エンジンのCCVに付きまとう詰まりの問題を解消でき、ついでにクランクケースの内圧も下げられるキットだそうですが、この商品のインストラクションページを見ると、オイルディップスティックチューブを寒冷地仕様へ交換することが強く推奨されています。

ちなみに、オイルがオイルパンから吸い上げられることへの対策として、海外のYouTuberが、CCVからのオイルドレンホースにワンウェイバルブをかませるアイデアを披露していました。外径12mmのワンウェイバルブがサイズ的には合います。ただ、個人的にはちょっとリスクのある方法かも知れないとは思います。バルブは上から一定の圧力を掛けないと開かないので、オイルセパレーターから来たオイルがワンウェイバルブの上に十分に溜まってもバルブが開かない可能性を気にする必要が出てきます。寒冷地仕様のチューブに交換しツーツーにしておくことの方が無難かと思います。
ブローバイガスによりクランクケースの内圧が高まれば、その圧力がブリーザーホースを通じて自ずとワンウェイバルブを押し広げてくれる可能性に期待してもいいのかも知れません。が、その圧力はワンウェイバルブを開く前にCCVのダイアフラムを押し広げる方に逃げてしまい期待外れに終わるかも知れません。そうなるとオイルはワンウェイバルブの上に溜まる一方になります。他にも、ワンウェイバルブ自体にマヨネーズが付着してスムーズに動作しなくなる可能性もあります。滅多にメンテできない場所にありますからね。
ただ、私は彼のYouTube動画は好きですw
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またちょっと脱線です。この写真で分かると思いますが、通常仕様(写真下側)ではオイルサンプに刺さる部分の上側に小さい穴が空いています。これは何のためにあるものでしょうか。

よく観察すると、穴の箇所で内側と外側のチューブが圧着されています。ということは、穴は「枝」には通じていないということになります。実際、チューブ下端を手で塞ぎ「枝」から息を吹き込むと、側面の穴からは息は一切出てきませんでした(というか息は吹き込めません)。チューブ両端を手で塞ぎ穴から吹き込もうとしても、息は吹き込めません。
この穴は少なくともCCVの動作とは何の関係も無さそうです。
となると、この穴の本来の目的と、寒冷地仕様でこの穴が無くなった理由が謎です。夜も眠れません。

脱線しまくりですが、私はこういうことを考えるのが好きなんです。
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さて、交換手順です。
ディップスティックチューブにアクセスするために外す必要があるものは、エアクリーナーボックス、インテークブーツの上流側(できればF字型のコネクターも外した方がやりやすい)、T40のトルクスボルト2本で固定されているDISAユニット、そして、DMEユニットの部屋との仕切板(チューブの穴が2つ空いているタブに固定されているホースクリップにアクセスするためには外す必要あり)です。

上記の外すものを外した後の大きな手順は、

1. チューブをエンジンに固定する13mmのヘックスボルト1本を外す。エンジンの下側にあってやや狭いので、小さ目のラチェットレンチ(もっと言うと、できればスイベルラチェットレンチ)があると便利です。

2. CCV本体の下側から来て「枝」に被さっているオイルドレンホースを外す。手でスポッと外れます。このホースは熱を受けやすいようで劣化が早いです。掴んだ手が汚れます。ホースをCCV本体から外す必要はありません。ホースがあまりに劣化して硬化しているとポキっと折れるかも知れませんが。海外のE46フォーラムをいろいろ読むと、CCV一式の中で最も劣化するホースはこのオイルドレンホースのようです。
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3. チューブのリア側のタブにある大小のホースクリップからホースを外した上で、クリップ2つを外す。どちらもラジオペンチか何かで摘んで圧縮すると、引っ掛かりがフリーになってタブから外せます。

4. チューブを上に抜き取る。エンジンオイルが必ず数滴溢れます。

5. チューブとエンジンの合わせ目のOリングを交換する場合はOリングも外し、Oリングが入る場所をキッチンペーパーなどできれいに拭き取る。ここにゴミや砂が残ったままだとここから負圧が逃げますので、入念に。
1つ飛ばして上の写真は、チューブがオイルサンプに刺さる箇所です。きれいに掃除した後です。手前に写っているのが「枝」に嵌めるホースで、CCVの下側に嵌めるオイルドレンホースです。私のはCCVもホースも寒冷地仕様なので、断熱材が巻かれて太くなってます。

6. Oリングを交換する場合はOリングを寒冷地仕様のチューブに嵌める(2つ飛ばしてその上の写真の通り)。私はRein製のViton素材のOリングを使いました。Vitonはゴムよりも耐油性に優れるそうです。今は純正品自体がVitonかも知れませんが、分かりません。ゴムは通常光沢がありますが、Vitonはマットな見た目です。ECS Tuningで他の買い物のついでに買いました(https://www.ecstuning.com/b-rein-parts/dipstick-o-ring/11431740045~crp/)。
なお、私は念のためにOリングにウレアグリスを塗りました。

7. チューブをエンジンに差し込む。ちなみに、Oリングの上の部分が寒冷地仕様では太くなっています。ゴミや砂が隙間に入り込みづらくする効果も若干はあるかもしれません。

8. Oリングに多少の圧力がかかるようにチューブを上から押さえつけながら、13mmのヘックスボルトを締め付ける。ここに隙間ができるとエンジンルームの空気や埃を吸い込み放題です。エンジンオイルも埃で汚れるでしょう。

9. ホースクリップ2つをタブに嵌め、ホースクリップにホースを嵌める。
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10. オイルドレンホースを「枝」に被せる。ここの嵌め合いもしっかりしていないと負圧が逃げることになりますので、入念に。

11. オイルディップスティックを新しいチューブに移し替える。
ちなみに、寒冷地仕様にすると、「幹」の太い部分にオイルディップスティック先のゲージが多少引っ掛かります。ただ、2・3回出し入れして試したところ、多少の引っ掛かりがある程度で、抜けなくなるということはありませんでした。ただ個体差はあり得るので、交換を検討される方はご承知の上でお願いします。海外のE46フォーラムでは語られているので私は知っていましたが。

また蛇足です。
Orange Wolfのワンウェイバルブ(中身はマエカワエンジニアリングのレデューサーのようですが)をE46のブリーザーホースに付けるとオイルディップスティックを抜きづらくなるとのレビューを拝見しました。この理由は恐らく、通常仕様のチューブでは、オイルディップスティックが入っている「幹」(の油面の上)がクランクケース内の負圧に引っ張られて負圧になり、かつエンジン停止後もクランクケースの負圧は(Orange Wolfのバルブとチューブの二重壁の間のオイルにより)閉じ込められていて、かつ「幹」の空間と「枝」の間にもオイルがあるからでしょう。クランクケース内の負圧がエンジン停止後も閉じ込められているということは「幹」(の油面の上)も負圧のままです。
もし寒冷地仕様のチューブにした場合、「幹」の空間は、チューブが浸っているオイルを介さずに「枝」と直接通じているので(※エンジンオイルを入れ過ぎていなければ)、エンジンを停止しインマニが大気圧に戻れば、「枝」を通じ「幹」(の油面の上)も大気圧に戻り、クランクケースに閉じ込められた負圧はそのままに、スティックは簡単に抜けるでしょう。まあ、引っ掛かりがあって別の意味で抜きづらいですが。

あとは外したときの逆です。

これで、寒冷地でも安心ですねw

固くなったオイルドレンホースが破損したりする可能性もあるので、できればCCV一式の交換と同時にやった方が安心でしょう。

CCV本体やホースにも断熱材で覆われた寒冷地仕様はありますが、個人的にはあまり効果はないのではと思っています。というのは、断熱材で覆われていても結局は中のホースやCCVは冷えてしまうからです。熱いブローバイガスがせっかく温めたホースが冷やされづらくする意味はあるんでしょうが。とは言っても私が以前に交換したのは寒冷地仕様ですが(2016年の整備手帳に書きました)。個人的には「太いストロー」の方には意味があると思っています。

さらに蛇足ですが、CCV一式を交換する際は、もしそのうち交換する予定があるなら、インマニ上に付いているエアディストリビューションピース(11611440318)のOリング(11617502761)6個も同時に交換したほうが安心です。というのは、エアディストリビューションピースのOリングを外すには、CCVからインマニに向かう2本のホースを外さないと作業できず、この2本のホースを外す際には熱での劣化により指で摘む部分が割れる可能性が高いからです。ここのOリングも負圧が漏れる可能性のある箇所です。ただ、ここのOリングは、11万kmを超えて初めて交換した私のE46ではまだ十分な弾力を保っていました。
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ちなみにこういう作業の際には、劣化しやすいエアインテークブーツにラバープロテクタントを吹いてます。ツヤツヤになりますw

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この記事へのコメント

2023年5月18日 0:04
まさか寒冷地仕様があるとは知りませんでした👍
知ってしまうと気になりますね😁
コメントへの返答
2023年5月18日 0:14
地味な存在ですし、話題になることもないですね。性能アップにはつながらないかも知れませんが、安心感を得られる交換にはなると思います。

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