旭川から35kmほど、車で約1時間
愛別町にある「愛別ダム」に
ちょっと泣ける物語が進行中なので、ここに紹介したい。
いきなりですが、これがキタキツネ。(お話とは無関係の個体です)
北海道では野良犬より数が多く屋外で見かけるよつあしは、殆どが
エゾシカかキタキツネかタヌキかと言うくらい生息数は多い。
北海道の道端で目が合ったら寄って来て、こんな顔して餌をねだるのが普通。
実にずるそうな顔立ちだが憎めないキャラで、今や北海道の代名詞となった。
ダム管理棟の管理人さんが言うには、「この子」との出会いは3年ほど前に遡る。
ある時からダム管理棟で、いつも同じキツネを見かけるようになったのだそうだ。
その子は、人に媚びる訳でもないが、懐くわけでも怖がるわけでもない。
観光客が通りかかると食べ物を貰ったりしていたが、媚びたり寄り付くわけではなく
かと言って必要以上に警戒し、逃げたりするわけでもない。
僕の印象では、人と程良い距離感を保っているという表現がピッタリの子だった。
いつも同じ子を見かける・・・というのは大げさではなく
それはこの子の「風貌」と「行動」が、他の個体と見間違うはずがないからだった。
この子がこのお話の主人公のキタキツネ。
皮膚病なのか顔面の毛が抜け、独特の風貌。
他の個体のような鋭い眼光はなく、何かを悟り自分の世界を見つけたかのような
優しいまなざしがそこにあった。
体全体の毛艶も悪く、明らかに体調を崩しているように見える。
ピョンピョンと弾むようなキタキツネの歩き方とは程遠く、足取りが重い。
歩く時に、尻尾を地面に引きずりながら歩く。
キタキツネを見た事がある人が見たら「あれっ?」と思うはずだ。
キタキツネは歩く時に尻尾を水平にし、決して尻尾は引きずらない。
やはり、身体を病んでいるのか、年老いたのか、いずれにしてもこの子は何かがおかしい。
胸が痛む。
生まれた子供を連れて来た時期もあったと言うから、おそらくメスなのだろう。
この子は私がすぐ横に居ても、こんな感じでよそを向いている。
1枚目の写真の子とは明らかに違い元気が無いし、餌をねだる様子も無い。
何より、この子が居る場所が問題なのである。
なんとダム管理棟の入り口ドアの脇に、置物のようにずっと座っているのだ。
管理人さんの車を見かけたら走って来て、管理人さんが帰るまで
雨が降ろうが風が吹こうが、ここ入り口に座り続けるというのだ。
ここが彼女の定位置なのだそうだ。
僕が会ったのは今日、愛別はあいにくの雨模様だったが
雨の中、体毛がビショビショになってもこうして玄関に座り続けていた。
管理人さんに媚びたり甘えたりしない様子から
管理人さんから餌を貰う目的で、ここに居るのではない事は直ぐ判った。
僕が近付くと(近付かないとドアの横に座られてるので、中に入れないw)
チラリと一瞥し「なぁにあんた・・・?見ない顔ね・・・」みたいな視線を絡まされ
「まぁいいわ、中に入りなさいよ」的な態度で、また無視される。
「あたしゃ管理人さんとこの建物を守るのに忙しいんだからっ!」と言わんばかりの
無視され様で、思わず、「こりゃ御邪魔してすみませんでしたm(__)m」と
すごすごと退散するしかないほどの存在感。
寄るでもなく離れるでもない管理人さんとの距離感が保たれ
それもいつしか3年の時が流れたと言う。
この場所は山奥と言うほどでもないが、里に近いわけでもない。
愛別中心部から9キロ、田舎の町で9キロといえば立派な山の中だが・・・・
自然豊かなこの辺り、数々の動物たちの棲家でもあるわけで
悲しい事だが、道端で車に接触し命を落とした数々のキツネやタヌキやイタチを
このダムの管理人さんは埋葬してきたという。
そんな心優しい管理人さんの行動をきっと「この子」は見ていたのだと思う。
もしかして、埋葬したのは「この子」の子供や家族だったのかもしれない。
推測でしかないけれど
「この子」はそんな管理人さんに、自分の出来る精一杯の恩返しをしているように思えてならない。
管理人さんも、この子の姿が見えない日は事故にでも遭っていないかなと身を案じるという。
「飼い主とペット」という」関係に麻痺してしまった都会暮らしの自分に
付かず離れずの良い距離感の管理人さんとキタキツネの、野生動物と人間の距離
相手の領域には踏み込まないが、相手を最大限に気遣う気持ち・・・
二人の関係が、そんな大切な忘れかけていたことを思い出させてくれた。
彼女(キタキツネ)は何を想い、この管理棟の玄関を守り続けるのか。
何を望んでここに座り続けるのか
人であり、さらに他人の僕は知る由も無いが
明日も彼女はきっとこの玄関で
管理人さんと管理棟を見守り続けるんだろうなと考えたら
また来週行きたくなってしまった(笑)
ちょっと素敵な絆の話(^^)
ちゃんとダムも見てきてね(笑)