
お待たせしました!
続きです

気がつくと、前にも後ろにも人影は全くいません・・・汗
さっき追い越したソロの男性もいつの間にか引き返しているようです・・
極寒の強風吹きすさぶ独標手前の稜線
(風の音が大きいのでボリュームに注意して視聴してください)
確かに冷静になると「この極寒で強風吹きすさぶ中を進む意味って何?」って疑問が
沸いてくるのは事実・・
「例え独標へたどり着いても凍り付いた岩の斜面の登攀を行う事が出来るのか?」
って不安も常につきまといます。
しかしです、ここまで来たのです。
本当に手詰まりになるまで進んでみようと思い歩みは止めません・・

独標への取付きへの最後の登りにさしかかりました。
ここから見る限りでは登攀の難易度はさほどでも無く見えます。

雪面にそって正面の大きな岩の左手に回り込んでこの岩の雪と氷の斜面に取付きます。
ここで、初めて歩みを止めます・・・
1m程の大きな段差を越えたいのですが、しっかりした手のホールドが見つからないのです。
なんとか手を添えている岩はカチカチに氷付いちゃっておりアルパイングローブ装着している手ではほぼホールド出来ません。(勿論素手ではもっと無理ですが・・)
片手に持っているピッケルをダメ元で雪の斜面に振り下ろしますが雪の直ぐ下には岩があるようで「ガキッ!」っと金属音を響かせて跳ね返ってきます。
そして立っている足元の雪面をよく見るとアイスバーンの斜面の上にかろうじてアイゼンの爪だけで全体重を支えている状態・・・
その足元の先に目をやると・・・

「ゴヒュ~!!!!」
って不気味な音を響かせて極寒の強風が吹き上げてくる奈落の底が視界に入ってきます・・・・汗
ここで、ふっと冷静になります・・・
もしここでこのアイゼンの爪の引っかかりが外れたら・・・
そのままこの飛騨側の急斜面を・・
か・・
つ・・
ら・・
く・・
そう、滑落っていう四個のひらがなが頭の中をよぎりました・・
「滑落とは?」 登山の際に足を踏み外したりして、急斜面を滑り落ちること
そうですね、登山と滑落は付きもの。
端から見ると登山ってのんきに山を歩いているイメージですが実はかなり危険な趣味。
特に滑落は山に登る以上、今回のような難易度の高い山行に限らず、地元の低山でも起こりうる可能性はゼロではありません。
今の状況で滑落しようものなら、周りには誰も居ないため人知れず奈落の底に引きずり込まれます。
運良く一命を取り留めて斜面の途中で停止しても自力で登り返す事が出来なければそれは最悪の事態へ繋がります。
勿論スマホでのSOSの発信は可能ですが、この悪天候ではヘリ救助はまず無理・・
なので徒歩にて救助隊員が出ることになるのでしょうが滑落した場所に寄っては現場にたどり着く事も容易ではないこともよくある話し・・
天候の回復を待ってヘリで救出と判断された場合、この極寒の強風のなかをビバークで天候回復まで耐えなければなりません。
私にはそんな知識も経験も、勿論装備も無いのでそうなった場合、かなりの確率で天に召される事となるでしょう・・・
そんな事が頭の中を巡り巡って出たひらがな三文字・・・
て・・
っ
た・・
い・・
そう「撤退」です。
これ以上命賭けたく無いです、
所詮趣味ですから・・・

そうと決めたら他の登攀ルートを探すことも無く、独標の取付きからの斜面を下ります。

独標直下の危険なトラーバースも無事通過して一息付ける稜線に戻って来ました。
遠く上高地へと流れる梓川を見下ろせます。

後は落胆の思いを胸にひたすら強風に耐えながら人っ子一人居ない稜線をとぼとぼと歩みを進めます。
今、この穂高の稜線上にいるのは私一人だけなのかな・・?
そんな事を考えながら・・・

綺麗にエビの尻尾が付いた道標の竹ざお

こちらも木々に出来たエビの尻尾
この形、エビの尻尾に見えますね~。
いままでこの雪が氷付く現象をエビの尻尾って言うのか意味が分かりませんでしたが、この形状をエビの尻尾に例えたのでしょうね~。

丸山まで戻ってきました。
バックに見えるはずの笠ヶ岳がもう霞んじゃってます。
往路よりかなり天候が悪化しているのが分かりますね。

ここで、アルプスのパン屋さんで購入した「あんクロワッサン」を頂きます。
本当は独標登頂した暁に山頂で頂くつもりだったのですが・・
かぶりつくと・・・
う~ん、冷たい!

よく見るとあんこがシャーベット状になっちゃってますよ~!

もちろん缶コーヒーも・・・
コーヒーフローズンのようでした・・・・汗

冷た~い、コーヒーブレイクを楽しんだ?後も歩き通して西穂山荘の屋根が見えてきました。

山荘の入り口で装備を方付けた後に山荘におじゃまして本日の宿泊の手続きを済ませます。
その時の受付してくださった山荘のお姉さんが言うには今年に入って独標手前の危険なトラバース付近で滑落事故が数件起きているとのこと。
確かに独標登攀もさることながらその手前の斜面も油断すると足元すくわれてしまうような所でした。
無事帰還できて良かった・・・って安堵の気持ちになります。
その後宿泊の部屋を案内してもらいます。

部屋はこんな感じ。
で、ここでラッキーな事をお姉さんより告げられます。
「本日はこの部屋は一人で使っていただく事になります」
だって~!
やった~!
今日はイビキおじさんに悩まされずにのびのび眠ることが出来ますよ~!
天候は最悪でしたが部屋は最高ですね。
この広い部屋を独り占めです、とりあえず一人枕投げでもしますか!?・・笑

荷物整理した後、山荘の軽食コーナーへ向かいおでんを注文。
温かいおでん、とっても美味しかったです。

しかし、外は相変わらずの悪天候・・
おでんを頂きながら、登頂を断念した自分への不甲斐なさが頭の中を巡り巡ってます。
あの状況でも、登る人は登るのだろう・・・
悪天候だったのは紛れも無い事実。
それによって他の登山者も皆撤退した所考えると、登攀をするべきでは無い状況だったって事は間違い無いと思われます。
しかし、私が撤退した本当の理由・・・
それは何を隠そう、登攀の技術的な部分とあわせてメンタル的要因・・
次のホールドを見つけられず、それまでのイケイケな気持ちが折れたとたんに全てが不安に思える気持ちに変化しちゃった事。
たしかに強風ではありました、そして立ち止まっていると体の芯から凍えるような状況ではあったのですが熟練者ならしっかりとした登攀ルートを見つけ出し登る事も可能だった事でしょう。
おでんを頂きながらそんな事がずっと脳裏を駆け巡ってます。

そんなLOWテンションを引きずりながら部屋へ戻り、夕食の時間まで布団に入ってしばしの休憩タイム。
・・・
うとうとしていると、夕食の準備出来たとお姉さんの声が聞こえてきました。

昼間おでん頂いた軽食コーナーでの夕食です。
本来は大きな食堂がある山荘ですが、本日の宿泊者は私と、一組のカップルさんのみでしたのでここでの夕食のようです。

ビールも頂きながら夕食タイム~!
同席したカップルさん達と色々お話させていただきました。
そのカップルさんは明日天候が良ければ主峰、西穂高岳まで行くつもりだそう。
しかし天気予報では生憎の悪天候との予報。
山荘のお姉さんも明日は一日雪もしくは吹雪が続くと言ってます・・
残念ですが仕方ありませんね・・
食後、明日の天候の奇跡的回復を願って部屋に戻り布団に入ります・・・
zzzz
いつもよりかなり早くに床についたので午前2時過ぎに目覚めます・・
お手洗いついでにカメラ持って外の様子を伺いに部屋を抜け出します。
そこで、少しカメラ遊び・・・

ひっそりとした山小屋の雰囲気出てますね~。
そして外へ出てみると・・・

なんと!
雪止んでますよ~!
って言うか晴れてます!

満月に近い月が煌々と雪面を照らしていますよ~。
星空撮影がしたく思いこのオリンパスの一眼持ってきているのですが、このお月様だと明るすぎて他の星はあまり見ることが出来ません。
しかし、こんなに晴れているって事は明日の天気は期待出来るかも?

月の光に照らされる西穂山荘・・
しかし、この写真を撮った数分後にはお月様は雲に隠れちゃいました・・
その後、あまりに寒いので部屋に戻り再度就寝 zzzz
早朝5:00
スマホのアラームにて起床。

5:30
朝食の準備が出来たとのアナウンスで軽食コーナーへ・・
朝食メニューも気になりますが、もっと気になることが・・
それは・・

外の天気・・・
まだ、真っ暗ですが、雪がちらついているのは分かります・・
やっぱりダメか・・・
そんな残念な気持ちで朝食を終えます・・
食後、外は薄ら明るくなってきました。
部屋に戻る前に、外へ出て本日の天候の確認をしてみます。

山荘の玄関を出て外へと続く通路を歩いて行きます。
う~ん、なんとなくもう分かっちゃいますが・・・
本日の天気は・・・?
続きはVol.4でお伝えしますね~。
続く