
お待たせしました!
続きです!

いきなりですが西穂高岳の次のピーク、例の「P1」に到着。

飛んでも無い方向に書かれた矢印に沿って進んで行くと・・

いきなりの崖!
矢印は垂直方向に書かれています・・
ここが通常の登山道では無いって事を思い知らされます・・・・汗
そしてそんな崖を下り暫く進むと・・・

来ました~!
ここですね、西穂山荘のスタッフさんが言っていたP1からの下りの鎖場は!
足元の岩に真新しいアンカーとハーネス(赤と白の紐のような物)が取り付けられています。
そしてお話しの通り足元の岩が大きく一部崩落しています。
崩落部分を分かりやすく画像に線書いてみました。

オレンジ色の線で書かれた範囲の岩が崩落しており、赤の斜線の範囲の下は完全に奈落の底へ続いています。
今立っている所より一段低くなっている岩が幅1m近く完全に崩落して無くなっているのです。
本来ならその場所で腰を落としこれから下る為に鎖を手に取る動作を行う所です。

一段下の岩場に降りました。
鎖までの距離はこんな感じ。
少々分かりにくいかもしれませんが、鎖を取りに行くにはかなり前傾姿勢になり飛び込む勢い出ないと手が届かない距離です。
ザックなどの荷物無しにアスレチック的な動きなら取りに行くことも可能でしょうが、私の背中には約15kgのザックがあります。
そんな重荷を背負ってその様なアクションを起こすのはかなりのリスクがあります。
そこで、西穂山荘のスタッフさんが取り付けてくれたハーネスが役に立ちました。
左手で岩に取り付けられたハーネスを掴み、前傾姿勢を保ちながら右手で鎖を取りに行きます。
やはりザックの重みで多少上半身は下方向に振られましたが、なんとか鎖を右手で掴み、右足を大きく前方に出して体ごと鎖の方へ、ターザンロープのごとく移動します。

無事、鎖場に立つことが出来ました。
鎖を握りこれから下る方を見ると下は霞んでいますよ!
何処まで下るのか全く分かりません・・・・汗

鎖を握りゆっくり降下していきます。
そんな中、目の前の岩場にイワツメクサが花を咲かせています。
この緊張の連続の中で見るかわいらしい花に心癒やされます。

そんな癒やしも束の間でまだまだ降下は続きます。

p1の鎖場の降下完了!
見上げると、とてつもない高さがあります。
これ、鎖無かったら完全にロッククライミングの世界ですね・・・・汗
誰がこんなルートにしたの?って言うかここしかルートが付けられなかったのでしょうが、初めてルートを開拓した人凄い!

その後も岩に書かれたルートを示す矢印に注意しながら進みます、が・・
「矢印の先にほんとにルートあるの?!」って思える場所ばかりです。

切り立った断崖絶壁のトラバース
鎖無かったらかなり怖い・・

下っては登ってを繰り返していきます。

次に危険な箇所、間ノ岳の登りにさしかかりました。

西穂山荘のスタッフさんのお話し通り、ガレ場の急斜面はほぼ全ての石や岩が浮き石で歩みを進める度にガラガラと斜面を石が転がり落ちていきます。
なので、足にあまり加重を掛けないように傍の壁面に手を掛けようとしてもそこも崩れてくる有様・・
まるで蟻地獄です。
一歩一歩足裏感覚を研ぎ澄ませ滑落しないように慎重に歩みを進めて行きます。

崩れ易いガレ場の急斜面を細心の注意を払いながら登って来ました。
間ノ岳の山頂はもうすぐです。

6:50
標高2907m 間ノ岳登頂
崩れやすい地質の為かここの山頂には山頂を示す木の柱や看板はありません。
岩の壁面に山の名前がペンキで描かれているのみです。

山頂では休む事無く進んで行きます。

下りの鎖場

緊張の連続の中、絶壁の花にしばし癒やされます。

所々にこんなハイマツが広がる斜面があったりします。
雷鳥居ないかな~なんて辺りを見渡しながら歩いて行きます。

そんな緑があるのはほんの一部、ほとんどがこんな殺伐とした風景が広がります。

やってきましたよ、ここも難所と言われる箇所も「逆層スラブ」って言われる場所。
この画像の上部へとルートは上っていきます。

斜面の上から下がってきている鎖を頼りに登って行きます。

ちなみに逆層スラブって言われる由縁はこの岩の形状です。
この斜面の岩の層が登るには手や足を掛けることが出来ないような形状になっているのです。

しかも今日は岩が濡れており非常に滑り易くなっているので鎖だけを頼りに登って行きます。

この画像の場所、鎖を登り切ってからルートは鎖の無い岩の斜面を斜めに登って進んで行きます。
鎖から手を離して斜めに登って行くときは足を滑らさないように靴のソールのトラクションを目一杯利かせて一歩一歩進んでいきました。

逆層スラブを無事クリヤーすると、なんとも不思議な岩発見。
自然に出来たとは思えないような立方体な岩です。

逆層スラブから進んで行くと、木柱が見えてきました。
場所的に天狗岩と思われます。

木柱の傍に行きなんて書いてあるか見てみます、が・・
ここの山の名前は確認出来ません。
西穂から奥穂の縦走路って事しか分かりませんよ・・
本当は何処かに書いてあったのかもしれませんが消えかかっていたのかこんな天候だったので見つけられなかったのか・・不明です。
しかし、場所的に標高2,909mの天狗岩で間違い無いと思われます。
7:45 天狗岩登頂!

ここで、歩き初めてから3時間15分。
出発時から何も口にしていなかったのですが緊張の連続で空腹感はあまり感じず歩いてきました。しかしさすがにこのまま歩き続けるのもバテてしまっては駄目なので昨日購入した菓子パンを頬張ります。

菓子パンを完食したらすぐさま歩き始めます。
何時、雨が本降りになってもおかしく無い天候なので少しでも進んでおきたいのです。

天狗岩からの下り・・
ルートを示すペンキ印の先は断崖絶壁にしか見えませんが・・・汗

その断崖絶壁を降りてきて見上げた画像。
確かにホールドは沢山ありますが初めていきなり上から下ってくるのは非常に恐怖です。

さらに崩れやすい斜面を下って行きます。

下りきったと思ったら次は登り・・
それの繰り返し・・・
湿った岩は滑り易く、そして場所によってはもろく崩れやすい岩場が続きます。
とにかく一歩一歩の足裏感覚を研ぎ澄ませて慎重に滑らないよう、浮き石や浮き岩に足を乗せないように進んで行きます。
このガスに包まれた穂高の稜線に自分一人、何かあったら即遭難。
こんな天候です、万が一の時、運良くスマホで連絡が取れてもヘリは飛べません。徒歩にて救助隊が向かってくれたとしてもどれだけ時間がかかることやら・・
そんな事が脳裏をよぎると、この行程が永遠に続く気がして精神的にも体力的にもどんどん追い詰められていきます。

そんな精神状態の中とにかく集中力を切らさないように一歩一歩進んで行きます。
たまに画像の様に風に吹かれ辺りのガスが切れることがあります。
このままガスが晴れてくれれば良いのだが・・・って願いもむなしくすぐに辺りはガスに包まれます。

鎖場の下り。
もうどれだけクリヤーしてきたか分からない位の絶壁の降下。

しかしここの鎖場途中でもう一本の鎖へ移らないと駄目なのです。
アスレチックか?!

鎖場を降りて進んで行くと左手のガレ場の斜面に何やら道標の様な物が落ちているのを発見!

良く目を凝らして見てみると・・
「岳沢ヒュッテ」の文字が・・・
って事はここが天狗のコルでここから岳沢へ降りる唯一のエスケープルートの天狗沢があるのか、と気づいて稜線の信州側を見に行きます。

するとありました、岩壁に書かれた「岳沢」の文字。

天狗沢ルートの入り口には昔に存在していた避難小屋の石垣だけが残されていました。

このガスに霞んだ先に岳沢まで下れるルートが存在するようです。
しかしここのルートもかなりの難ルートで通常は登山道として通行はしない方が良いルートらしいのです。
そういう風な目で見るとこのガスに包まれたルートの先は奈落の底に見えてきます。

またもやガスの切れ間です。
下界の景色も確認出来ます。

過酷な環境でもしっかり花を咲かせる小さな高山植物たち。
私この季節に登る理由は過酷な状況でも綺麗に花を咲かせる高山植物達に癒やされるからです。

何処まで続くか分からないガレ場を辛い思いで登って行きます。
標高3,000m近い場所です。平地より息が上がってしまう事が多い気がします。

左に傾いた岩の上がルートです。
この岩、雨で非常に滑り易く、この左に傾いた傾斜が恐怖感を倍増させます。
足滑らせたら間違い無く数十メートル、いや、数百メートルも滑落かもしれません・・・・汗

この登りの斜面でルートのペイントを見つけられず登ったり下ったりを2~3度繰り返しなんとか進むルートを発見。
ここまでも2カ所ほどルートを見失い行ったり来たりする場所があり、周囲に誰も居ない状況でのルートロスはかなり精神的に追い詰められます。
そんなときは決して焦らず、冷静に確実に間違い無いルートまで戻り再度慎重にルートのマーキングを探すのです。
時間が掛かっちゃいますが焦りは禁物・・・
私が登山始めた頃は地元の鈴鹿の山でも何度かルートロスした経験があります。
そんな経験が今に活きているのかな・・・

ガレ場を歩いて進んでいると前方に動く物発見!

よく見ると、雷鳥ではありませんか!
雷鳥のつがいです。
目の上が赤いのが雄。
雄は私の気配を感じるとすぐさま岩の影に姿を消していきました。

雌の雷鳥は暫く岩の上で雄を呼ぶように微かな鳴き声を出しながらじっとしています。

今回も雷鳥に出会う事が出来ました。
悪天候の中頑張ったご褒美の様に思えます。

その後も不安定なルートを足を滑らさないように慎重に進んで行きます。

この岩を越えて下った先の岩壁に微かに見える白いペンキで描かれた
「←ジャン」と「オクホ→」の文字・・・
そうです、やっとあのジャンダルムのたもとまでやってきたのです。
思わず一人で「やった~!やっとジャンダルムや~!!」って声を出して喜んじゃいました。
昨年の9月、奥穂高岳山頂から眺めていたあのジャンダルム。
来年は必ずあの頂に立つと心に決めて一年間のトレーニングを行ってきたのです。
そのジャンダルムのたもとまでやっとたどり着く事が出来ました~!
しかし、ここで何と、霧の様な小雨だった雨が普通の雨になってきましたよ~!
こんな良いところでまさかの本降りになるとは・・・
この場でザック下ろしてレインウエアーに着替える余裕ももう私にはありません。
幸いウインドブレーカーを着ているので多少は撥水しているのでそれをレインウエアー代わりとしてそのまま進んで行きます。

奥穂高方面へのルートはこの絶壁に付けられた鎖を頼りに登って絶壁沿いに右手に進むようです。
このルートもこの雨ではかなり難易度高そう・・・
しかしその前にこちらです・・

そうです、「ジャン」と書かれた方向は左手です。
この矢印の方向に進んでいきます・・・
が・・・
進むルートの足元の岩を見てください。
平では無く崖下に向かって傾斜しているではありませんか~!
乾燥した岩ならさほど問題ないと思いますが、なんせ普通の雨が降ってきており完全ウエット状態。
この苔むした岩は濡れると途端に滑り易い岩に変貌しちゃいます。
右手の岩の壁面にも鎖どころか手を掛けられる様な突起もありません・・
雨の中早くジャンダルムに登頂したい気持ちと、足元のスリップへの恐怖心が入り交じってじれったい思いで慎重に歩みを進めます・・
良いところですが長くなってきたので続きはVol.5でお伝えします。
お楽しみに~(^^)/
続く