なぜ"酒酔い"や"酒気帯び"運転はなくならないのか？

カレンダーが12月に入ったことで、何かとお酒を口にする機会が増える季節になりました。
忘年会やクリスマスなど、アルコールが一年で最も身近になる時期であると言えるでしょう。

●酔って車で線路150メートル走る 60歳容疑者を逮捕
－asahi.com(朝日新聞社)　2008年12月2日　19時57分

しかし、残念ながら酒酔いや酒気帯び運転が増える時期でもあるようです。

このニュースでは酒酔いで線路を走った60歳の男性が往来危険と道交法違反で現行犯逮捕されました。
記事を見ると客を乗せた普通列車と衝突寸前の状態だったようです。


一方、近年は飲酒や酒気帯び運転に対する厳罰化が社会的に求められたことから、2007年6月に道路交通法が改正されました。
ご存じの通り酒酔いや酒気帯び運転に対する罰則が強化されたほか、飲酒検知拒否の厳罰化、免許欠格期間の延長、車両や酒類を運転者に提供した者や飲酒と知りながら同乗した者への罰則が設定されるなどしています。

こうした動きに合わせて、官公庁も民間企業も飲酒・酒気帯び運転に対しては厳格な処分で臨むようになり、これらで検挙された場合には懲戒免職処分を課すケースも珍しくなくなりました。

しかし、酒酔いや酒気帯び運転が激減したという印象がいまひとつありません。

●飲酒運転、懲戒免職取り消し 元神戸市消防士 地裁判決
－神戸新聞 2008年11月26日　20時25分

それどころか、このような裁判についてのニュースもありました。

海外旅行先からの帰りの機内で飲酒した神戸市消防局の元消防士が、翌朝の出勤時に追突事故を起こし、その際に呼気1リットル中に0.2mgのアルコールが検出され、酒気帯び運転で摘発された事例。
これに対して神戸市は懲戒免職処分を課しましたが、元消防士が不服を申し立てて訴訟を起こし、神戸地方裁判所は訴えを認めたというもの。

確かに0.2mgという検出値は、道路交通法改正前の基準では酒気帯びにあたらないものです。しかし現状の法規では酒気帯び運転になるのです。

次に前夜の飲酒から相当の時間を置いていたということですが、これとて数値的にアルコール分が検出されたのですから何の言い訳にもなりません。
人間は個人差もあるので飲酒したことによるアルコールがぬけるのに必要な時間は一概に言えませんが、検知結果として間違いなく体内にアルコール分が残っていたことは確かでしょう。

まして公務員、その中でも消防士という責任ある職についている人が、勤務前日に航空機内という特殊な環境で飲酒したのはどういうことなのか。
航空機内は気圧が低いため、地上の倍以上"酔いやすい"環境になります。そこで
どれだけの量を飲酒したのか。
翌日の勤務に向けての心構えが著しく欠落していたと言えるかもしれません。


こうした"油断"や"心の隙"がある人がいる限り、酒酔い運転や酒気帯び運転はなくならないような気がします。
自動車は1～2トン以上の鉄の塊、それを人間が歩いたり走ったりすることでは絶対に実現できない速度で走らせているのです。

ただでさえ慎重な運転操作や判断力が要求される"運転"という行為、飲酒が影響を与えることで大惨事を招く可能性が高いということを認識できないものなのでしょうか。

神戸の裁判については、市側の対応などが気になるところ。

この年末年始も全国で飲酒・酒気帯び運転の摘発が行なわれるでしょうが、警察には精力的に活動してもらいたいものです。
また、当然ですが改正道路交通法の内容を再認識して、飲酒・酒気帯び運転を"しない・させない"ように一人一人が心がけることが重要です。

特にモータースポーツをはじめとした、自動車に関する仕事をしている身であれば、なおさらのことでしょう。