
2008年を振り返ったとき、自動車に関するものを象徴する一文字として「油」を挙げたいと思います。
昨年からの投機的な原油市場の高騰を受け、石油製品は市場価格が大幅な値上がりを記録しました。
特にガソリンや軽油の値上がりは、通勤や買い物など生活の足に自動車が欠かせない地方において大きな影響を与えました。また、物流や製造コストの引き上げにつながり、色々な商品の相次ぐ値上げの一因にもなりました。
一方、政治的には
参議院で
民主党が第一派となったことから、"ガソリン税"の暫定税率が4月に限って廃止されるなどといった出来事もありました。
夏にはガソリンの小売価格もピークに達し、
石油情報センターの調査では2008年8月4日の週次調査でレギュラーガソリンの全国平均価格が185.1円となりました。
こうした高騰も世界的な経済状況の急激な悪化に伴い、投機筋の石油市場への資金流入が減少したことや、新興国の産業成長減退による石油需要の減少などにより、急激な暴落傾向に転じています。
●ガソリン値下がり拍車、激戦区は97円も 原油安や販売不振
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NIKKEI NET(日本経済新聞) 2008年12月6日 16時00分
国内の小売り価格を見ても、12月第1週のレギュラーガソリンの全国平均小売り価格を123.3円にまで下落しました。
この傾向は灯油なども需要のピークを迎えるこれからの時期、朗報と言えるものかもしれません。
しかし一方で、最近街中で閉鎖されたガソリンスタンドを頻繁に見かけるようになってきました。
急激な価格の乱高下や価格競争による生き残りの激化、自動車そのものの減少による顧客の奪い合い、低燃費自動車の普及などが要因として考えられます。
こうした競争の激化は市中のガソリンスタンドに限ったものではなく、元売りレベルでも競争力の確保などを目的とした業界再編が進んでいます。
新日本石油(ENEOS)と
JOMOを展開する
新日鉱ホールディングスは2009年10月を目処に経営を統合することを去る12月4日に発表しました。
●新日石・新日鉱統合 来年10月めど 石油 世界8位に
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YOMIURI ONLINE(読売新聞) 2008年12月4日
統合後はブランドを「ENEOS」一本に絞った上で、現在両社合わせて1万3千店以上全国にある給油所の数を、15~20%削減する可能性があると記者会見で公にされています。
●石油各社が追加減産 ガソリン需要戻らず
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MSN産経ニュース(産経新聞) 2008年11月28日 18時27分
なにしろ小売り価格が下がっても需要が回復しないのですから、小売店の絞り込みが実施されるのは致し方の無いところでしょう。
●柿本石油 県内GS全24店一斉休業
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Web東奥(東奥日報) 2008年10月6日
青森では地場の有力石油小売り会社が突然の破綻、割安な前払い券などを購入していた多くの消費者が損害を被る結果となりました。
こうした状況を見ていくと、ガソリンスタンドを取り巻く激しい生き残りを要する環境は当面変わることが無さそうで、まだまだ"淘汰の時代"が続くことになりそうです。
しかし地方の過疎地では石油小売店の消失が深刻な問題になりつつあります。
●過疎でガソリンスタンド消滅も 32都道府県の153町村
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47NEWS 2008年11月18日 21時27分
人口減少が進む地域では経営が成り立たなくなってきていることに加え、小売店の後継者問題などもあって、石油小売店が地域から無くなってしまうケースが増えてきています。
この記事では全国153町村でガソリンスタンド消滅の危機とありますが、平成の大合併を経て町村の面積が広くなっている現状を踏まえる必要があります。つまり広域化した町村においてですら消滅の可能性が高くなっているケースが多いというわけで、合併前の町村区域に当てはめると既に多くの地域でガソリンスタンドが無くなってしまっている可能性が高いということです。
こうした地域では自動車が生活する上で大きな意味を持っています。通勤、買い物、通院、とにかく車無しではまともに生活出来ないと言っても過言ではないでしょう。
また一次産業などに従事している人口も多いでしょうから、ガソリンや軽油が仕事上も必要であることも明らかです。
さらに冬季は暖房用の灯油需要もあるわけで、いくら定期配達などがあったにしても、いざという時に身近に小売店があるか否かは生活上の利便性や安心感を大きく左右します。
もちろん地元の生活者以外にとっては、人ごとでは済まない事となる場合もあります。
例えば北海道の例ですが、動物園の全国的な人気で観光地としても注目を集めている
旭川市から、
帯広市まで自動車で移動するとしましょう。
この間は国道も整備されています。ルートとしては国道39号で
上川町の
層雲峡まで走り、ここから国道273号で三国峠を超えて十勝管内に入ります。
実は
上川町の市街地から十勝管内・
上士幌町の市街地まで約106kmの間にガソリンスタンドは一軒もありません。
途中には
層雲峡や
糠平温泉といった観光地がある、全てが国道というルートであるのにも関わらずです。
元々は
層雲峡と
糠平温泉の両方にガソリンスタンドがありましたが、2年ほど前に廃業してしまったようです。
この情報を知らずに古い地図やナビゲーションを頼って旅行で訪れたドライバーやライダーは、時に閉鎖されたガソリンスタンドを目の当たりにして愕然としていることもあるそうです。
ガソリンの余裕が無い中、ようやく辿り着いた"あるだろうと思っていた給油所"がなかったということなのでしょう。
さらに気をつけたいのは、
上川町と
上士幌町にあるスタンドの営業時間。夜間は旭川や帯広など大きな街の周辺で満タン給油してから目的地に向かうのが必須のルートです。
100kmもの間、国道沿いに一件のガソリンスタンドも存在していない。
面積の広大な北海道という特殊な地域であることを考慮しても、途中に温泉街が2つもあることなどから、この状況は深刻であると言えるのではないでしょうか。
このブログでは常々、"地方における公共交通機関の確保の重要性"について記していますが、同様に"生活基盤インフラの確保"も数年先には大きな社会問題化するのではないかと思っています。
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Posted at
2008/12/08 01:21:25