トヨタ・
iQ試乗インプレッションの第二弾はインテリア編。
決して実用性をおろそかには出来ないカテゴリーの車種であるがゆえ、数多のコンパクトカーや日本特有の"軽自動車"という手ごわいライバル勢に対して、購入を検討する上ではとても重要な項目がインテリアや使い勝手の部分。
まず乗り込んでみて驚くのは、極端とも言える車体の小ささを感じさせない室内空間が待ち受けていることに尽きます。
私は身長184cmと大柄ですが、運転席について適正なポジションに合わせても全く狭苦しさを感じることはなく。むしろ、比較的容易に適正なポジションをとることが出来たことに驚きです。
運転席シートは前後スライドとリクライニングのみで上下の高さ調整機能はなし。ステアリングは上下方向のチルト調整機能のみで、前後方向のテレスコピック機能はなし。こう記すと物足りなさを感じなくもないですが、比較的アップライトな着座位置を基本としたレイアウトゆえに、許容範囲が広く小柄な女性から大柄な男性まで、正しいポジションで運転することが出来るでしょう。この点は大いに褒めたい美点のひとつです。
ただ、やはりシート上下高さ調整機能くらいは、プレミアムコンパクトを謳う車種であれば装備しておいてほしかったところです。
また、底部をフラット化したステアリングホイールは乗降性に寄与していますし、しっかりしたステアリングのグリップ感は走りの安心感にもつながります。
もちろん1680mmという小型車として常識的な横幅を有するだけに、左右席間の空間にも余裕があり、大柄な男性二名乗車でも窮屈さを覚えることはありません。この点は全幅の制約を強く受ける軽自動車に対するアドバンテージであり、一方では
iQという車を日本で使う上でのデメリットにもなる部分です。
インパネは"マンタ"をモチーフとしたセンタークラスターが特徴的。
もっともカーナビゲーションを装着すると逆三角形のモチーフは若干個性を薄める結果になりますが、センタークラスター最上部に陣取るモニターは視認性も良く、タッチパネル式のスイッチについても操作性は良好です。
■大人3人乗車で得るものと諦めるもの
iQの法定定員は4人。
もっともメーカー側でも大人4人乗車は数値上のことであり、実質的には"3+1"のパッケージングであることを認めているようです。
しかしながら、たとえ"3+1"でも、少なくとも左後席は大人が実用的に乗車出来るということ。そのカラクリが助手席前にあるのです。
写真の通り、一般的な車にはほぼ確実に備わっている、助手席前のグローブボックスが
iQには備わりません。その代わりに大きくえぐられて空間が確保されており、助手席を前にスライドさせて左前後席の足元空間を確保して運転席と合わせた大人3人乗車を実現しているという仕組みです。
写真の状態は助手席を最前方にスライドさせた状態。確かに、関取衆クラスには無理がありますが、それほど大柄な人でなければ姿勢的には苦しいものの乗車することが出来るでしょう。
マイクロカーに3人乗車で長距離ドライブに出かけるというケースは余り考えられませんが、ちょっとそこまでの30分や小一時間程度であれば、大人3人が乗って移動出来ることのメリットは決して小さくありません。
そして重要なのは、3人乗車時の安全性。この点、
iQには9つのエアバッグが標準装備されており、助手席が例え最前部に位置している場合でも、しっかり衝撃吸収能力を有しているという点は、とても素晴らしい安全性能と言えます。
しかし、実用性という部分ではグローブボックスが装備されないことは正直に言って不便。
日本のユーザーは欧州のユーザーに比べて治安が良いこともあってか、何かと多くの物を車の中に持ち込む傾向があるようです。皆さんの車もグローブボックスには携行を義務づけられている車検証に始まり、整備手帳や色々な手回り品、ボックスティッシュなどが積んであるかと思います。
これら全てが行き場を失います。
車検証や整備手帳はリアシート下の収納スペースにおさめられそうですが、
iQのユーザーには日頃から車内の"整理整頓"が求められることになりそうです。
■この空間を巧く使うには・・・?

さて、写真をご覧ください。これはセンターコンソール後方を写したものです。
iQにはシフトレバー後方にカップホルダーが1個備わるものの、それ以外の物入れスペースというのは特に用意されていません。
その代わりに、ちょっとした"空き地"があるのです。
このスペース、使い方としてはリアシート使用時の後席住人の"足置き場"になります。本来、後席に座った場合、足の爪先は前席の下に入れるのが常ですが、
iQの場合は踵の高いヒールなどでは爪先を入れるのが少々困難。
そこで足を横にした"オネエ座り"も出来ますよ、というための空間として使えます。
もちろん、後席が空いていれば、この空間を物置きスペースに使わない手はありません。ちょっとしたバッグなどは充分に置けるだけのスペースです。
しかし、走行中に後席足元の隙間に物が転がっていく心配があります。そこでここには丁度おさまるサイズのトレーを置いて使うのがベストでしょう。
残念ながら純正用品にそのような設定は無いようですが、それこそホームセンターや100円ショップ、ちょっと洒落た雑貨屋さんなどで、トレーやバスケットを見つけてきてみてはいかがでしょうか。
スッポリはまるサイズならば転げ落ちる心配も無いでしょうし、必要に応じてマジックテープなどを活用する方法もあるでしょう。
こうすることで、たとえば小さなバッグや財布、携帯電話などを置く為のスペースとして活用出来るという算段です。
■リアシートは収納状態がデフォルト!?

全長が3mを切ったマイクロカーですから、ラゲッジスペースはごく限られた空間になるのも当たり前。
リアシートバックを起こした状態で、ラゲッジスペースの前後長は床面部で150mm程度、しかしシートバックが後傾しているので、実用空間はごくわずか。日常的なスーパーでの買い物をはじめ、ちょっとした物を運ぶことさえも難儀してしまいます。
そこで5:5で倒すことが出来るリアシートバックは、倒した状態で使うことが日常の姿になるかもしれません。
リアにも用意されたヘッドレストは、シート座面と倒したシートバックの間に巧く収納できるように設計されているので、拡大したラゲッジスペースはしっかり使い切ることが出来ます。
倒したシートバックは水平に近くなり、邪魔な突起もないので、狭いながらも使い勝手は悪くありません。
2人で二泊三日程度の旅行に出かける荷物ならば、それほど問題なく呑み込んでくれるでしょう。
また、短い全長ゆえにラゲッジスペースは運転席や助手席から充分に手の届く範囲におさまります。ゆえに例え土砂降りの日でも、雨に濡れることなく荷物を取り出したり出来るというのは、
iQならではのシチュエーションと言えるでしょう。
気になるインテリアと実用性は、全長3mを切ったマイクロカーという存在をどう捕らえるかで評価が分かれるところ。
ただ、あくまでも車そのものを見たときには、これだけ限られたサイズの中で安全性をしっかり確保し、かつ最低限+αの実用性を兼ね備えていることに、開発陣の情熱と工夫を感じられます。
次回は気になる装備や総評を記してみたいと思います。ちょっと間を置いて週明けにアップしたいと思っていますので、引き続きおつきあいください。