
昨年4月10日から始まった、いわゆる「エコカー購入補助金」。当初は今年3月いっぱいで終了の予定でしたが、現在の政権が半年間の延長を決めて、9月いっぱいまでの期間とされています。そろそろ終了の時期が近づいてきましたが、既報の通り補助金の残額は少なくなってきており、期限を迎える前にこの制度は終了となりそうな気配が濃厚です。
各自動車メーカーは事実上、"需要の先食い"をしてきた面もあり、補助金終了後の市場の冷え込みが心配されています。そこでメーカー独自に販売奨励金を設定して、値引き合戦がこの秋以降は激しさを増すことになるかもしれません。
市場はやはり自動車の環境性能や燃費性能などを重視する傾向が強く、登場が近いと言われるフィット・ハイブリッドなどは大いに話題を集めそうな気がします。
こうした"エコカー"が普及を進めることは環境保護の面から大変好ましいこと。これからは経済発展を続ける新興国の自動車も、なるべく環境性能に優れているものに代替させるための取り組みが必要となってくるでしょう。
ところで"エコカー"とは対極にある、とも言えそうなモデルがマイナーチェンジを受けました。
●TOYOTA、センチュリーを一部改良
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トヨタ自動車・プレスリリース 2010年8月23日
トヨタ自動車の頂点に立つモデルが「
センチュリー」。1967年に初代がデビュー、運転手付のショーファードリブン需要をメインターゲットとして、政財界で広く活躍し成功をおさめた人たちに愛用されてきました。
またこうしたステータスのあるセダンは公式な場面で欠かせない存在。皇室や政府関係などでも多く採用されていますから、ニュース映像などに映っているのを目にする機会も多い車種です。
もっとも最近では環境対応に加えて、自治体の財政悪化に伴って公用車として使っていた「
センチュリー」が公売にかけられることも多くなっています。
現行型は1997年にデビューした二代目。そう、初代誕生から40年以上を経ているのに、フルモデルチェンジは僅かに一度しか受けていません。
この二代目、内外装のデザインは初代のイメージをとても色濃く残したもの。これは保守的な立場の車種であることにもよりますが、例えば複数台で公式な車列を組んで移動する場合などに、新旧両方のモデルが入り混じっても見栄えが悪くならないようにという配慮があってのことと聞いています。
初代と現行型では見た目こそ同じテイストですが、もちろんメカニズム的には大きく飛躍しています。
その象徴となるのが専用設計された国産唯一のV型12気筒ガソリンエンジン。排気量は4,996cc、最高出力は206kW(280ps)と当時の業界自主規制値いっぱいのスペックを誇っています。もちろんこのスペックは"速さ"を第一に追求してのものではありません。国内外のVIPを乗せる機会も多い車種ゆえに不測の事態に備えての高いパフォーマンスも必要ですが、日常的な移動での快適性や静粛性を極限まで突き詰めた結果のV12エンジン採用だったと言えるでしょう。
今回の一部改良では、利便性の高い装備としてバックモニターやETCを標準装備化。いまや小型車でも珍しくないこれらの装備が「
センチュリー」で標準設定されていなかったのは驚きでもありますが、前者はプロの運転手がステアリングを握る機会の多い車種ゆえにそれほど需要が無かったのかもしれません。後者はたまたま二代目の開発設計時点で世になかった装備ゆえ、対応に時間を要したということでしょう。
ちなみに現在の「
センチュリー」には2006年の改良からテールランプにLEDが採用されていますが、ディスチャージヘッドランプが装備されたのは2008年からと、高価格な車両にしては遅いタイミングでした。これについては車格的に上位の車種、かつ皇室などでの利用も想定されることから、対向車や先行車に対して威圧感を与えるディスチャージ式のヘッドライトは全体的な普及が進むまで採用を見送ってきた、という話を聞いたことがあります。
確かに今ではトラックから軽自動車まで、街中でディスチャージヘッドライトは珍しくない存在になりましたから、この機を待っていたということになるのでしょうか。
決して一般のオーナーユーザーが自らステアリングを握ってドライブを楽しむような車種ではありませんが、個人的には一度くらいは乗ってみたいのが「
センチュリー」。
日本車ならではの"おもてなし"の精神を極限まで追求した存在、日本人ならではのクルマ造りを味わうならこのクルマに勝る存在は無いでしょう。そして世界的にも稀少なV型12気筒エンジン。これを堪能しようとしても選択肢はごく僅かしかなく、その中では最も信頼性が高く、安心出来るのが「
センチュリー」ではないかと思います。
そういえば、今も「
センチュリー」のボディカラー名称には日本語が使われています。
公用車に多い黒色は「神威(かむい)エターナルブラック」。濃紺は「摩周(ましゅう)シリーンブルーマイカ」、ダークグレーは「鸞鳳(らんぽう)グロリアスグレーメタリック」、青みがかったシルバーが「瑞雲(ずいうん)デミュアーブルーマイカメタリック」、そしてシルバーは「精華(せいか)レイディエントシルバーメタリック」となります。
5層塗装に5回焼き付けと手間をかけて仕上げられたボディ、さらには磨き上げられたドアサッシのアルミフレームはリアシートのVIPの表情を彩る"額縁"をイメージしており、こうした仕上げはネーミングに象徴されるように日本の工芸文化に通じる部分と言えます。
ちなみに車体色の日本語名といえば
三菱自動車工業が、ダークレッドに九谷焼をイメージして「クタニレッド」と名付けていたのは豆知識のひとつです。
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Posted at
2010/08/27 18:52:47