
2011年は
東京モーターショーが開催される年。今回は初めて
東京ビッグサイトが会場となり、2年前と比べて海外メーカーの出展も復活したことから、賑やかさが戻ってくるのではないかと期待を集めることになりました。
一般公開を前に、11月30日と12月1日の両日は報道関係者向けのプレスディとなり、私も会場に足を運んでみました。
自動車メディアを中心にスポーツモデルなどへの注目度が高まっているところですが、会場に入って感じたことは「イベントそのものがコンパクトに凝縮されている」ということ。会場のスペースが前回までの
幕張メッセよりも小さく、そこに出展している各社のブースも僅かな例外を除いては無駄な装飾や演出を控えた機能的なレイアウトとなっていました。
各社のブースを順に撮影しながら見ていきましたが、国内メーカーについては企業姿勢の違いが明確に現れていたように感じます。電気自動車やハイブリッドを中心として、環境性能を向上させるための技術展示やコンセプトカーが多いのは最近の傾向ですが、より具体的な将来像をどのように描いているのかをコンセプトカーはもちろん、ブース全体の様子から見て取ることが出来ました。
その中で個人的に最も目を惹かれたのが
ダイハツのブース。ここではステージ上に何台かのコンセプトカーが並べられており、メディアの目はスポーツカーとSUVのクロスオーバースタイルを持つ軽自動車サイズの「D-X(ディークロス)」に集まっているようでした。確かに次期型コペンの方向性を見せているようにも思えるこのモデルも面白い存在ですが、それ以上に私が注目したのは「PICO(ピコ)」というシティコミューターです。
全長2.4m×全幅1.0mという超コンパクトサイズで、座席は縦方向に2席を用意するタンデム・スタイル。ここには大人2名、もしくは大人1名+子供2名の乗車が可能となっています。原動力は電気のみという完全なEV(電気自動車)で、家庭用100Vでの充電が可能。航続距離は50kmと発表されており、通勤や通院、買い物といった日常ユースのほとんどをこなしてくれることでしょう。
このようなシティコミューター像を提案するモデルは過去のショーでも各社から発表されてきましたが、今回の「PICO」は都市型というよりは地方のユーザー、中でも高齢者をターゲットとして開発されていることが、広報発表にも記されています。
ここが私自身とても共感を覚えた部分なのですが、日本市場に限って言えば近い将来の課題は「クルマの楽しさを追求」などといった話ではなく、現実的には超高齢化社会の到来と、地方における公共交通機関の衰退による個人移動手段の確保にあると思っています。今や地方の疲弊と過疎化は進み、今後は政治や行政の面からも例えば複数集落の集団化といった大がかりな改革も必要になるでしょう。
その上で高齢ドライバーの増加による交通事故防止策の構築や、安全で維持費などの負担も小さい日常的な個人移動手段の必要性も高まっていくことになるでしょう。
こうした課題へのひとつの提案として出展された「PICO」は、通常モード走行で最高速度50km/hを出せますので、市内や幹線道路の走行でも大きな支障は無さそうです。原付とは異なり4輪車ですから安定性も格段に高いですし、降雪地帯などでの使い勝手も悪くないでしょう。一方で混雑した都市部の商店街や住宅街の狭路においては、最高速度を6km/hに抑えた低速モードで安全に走ることが出来ます。こちらのモードは自動車というよりもセニアカーに近い感覚で利用できるでしょう。
安全策としては車両の周囲をレーダーで監視しており、障害物の接近に対して緊急時は自動停止する機構も備わっています。これは歩行者などとの接触事故を防げるのみならず、近年ニュースで報道されることも多い「ペダルの踏み間違い事故」を防止する為にも有効でしょう。ただ、個人的には完全に自動で停止させてしまうのはどうかという思いもあります。運転操作の中でも、安全性に最も直結している「停止」という行為について余りに自動化してしまうことは、逆に危険ではないかと思っているからです。
まだまだ全体的にはコンセプトカーでしか無い雰囲気も持っている「PICO」ですが、ミゼットIIをどこか思い出させるキャラクターでもあり、今後どのように進化・発展していくのかが楽しみな存在。とてもわかりやすく、日本限定かもしれませんが現実的な未来の自動車像をひとつ提案してくれた存在として、印象に残るものとなりました。
もっとも、こうしたまじめな提案の一方では、'80年代の感覚で未来を語っているかのようなブース構成のメーカーもあって、こちらには愕然とさせられました。往年の栄華を懐かしんでいるだけというか、子供の絵日記調というか。いい年をした大人が子供の頃を振り返って、その当時に見ていた未来の夢というか妄想を押しつけられているようにも感じられたブースからは、いまひとつ感銘を受けることはありませんでした。
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Posted at
2011/12/13 00:35:32