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2011年12月03日

義務と責任

義務と責任 2011年11月27日付のエントリに記したように、ツインリンクもてぎのロードコースで開催されたスーパー耐久シリーズ最終戦(第6戦)は、ST-2クラスについてのみレース結果が暫定のままとなっていました。

これは決勝終了後に優勝した車両に対して技術面の抗議が出されたことによるものですが、去る11月30日付で大会審査委員会は公式通知を発表しました。結果の行方については私も気になっていたのですが、発表された文書によると抗議対象となった車両から「再車検辞退の申告があったため、ツインリンクもてぎ四輪一般競技規則 第24条 ~6) (再車検辞退) により失格とする」というものでした。

この文書を見て、正直に唖然とさせられました。
今回の件で受理された抗議により、優勝車両についてシリーズ技術規則への適合を確認する必要が生じました。そのため、確認用資料の用意などもあるため、対象車両はサーキットの車検場に留め置きされて車両保管を継続し、後日用意が整ったら技術委員などが再車検を行って最終判断をする、という流れになる筈でした。

ここでおさらいすると、レースでは公式日程の最初に全ての参加車両を対象とした公式車両検査が行われます。ここでは技術委員によって安全面や車両重量などを中心に技術規則への適合が確認され、不備がある車両については改善できなければ競技への参加は認められません。
そして決勝レースが終了した後には「再車検」が行われ、基本的に各クラスの上位入賞車両について改めて規則への適合を確認されます。この「再車検」に合格することで初めて順位が認定されて、正式結果が発表されます。ちなみにレースを象徴するシーンのひとつであるシャンパンファイトなどが行われている表彰式は「暫定表彰式」であり、この間に行われた「再車検」の結果によっては順位の変動が生じる場合もあるわけです。

そして抗議についてですが、これは全ての参加者に平等に認められている権利のひとつ。モータースポーツは全参加者がひとつの規則の下で競っていますが、仮になんらかの規則違反であったり、競技運営団のジャッジに疑義を持った場合には、チームとして書面で抗議料を添えて抗議をすることが出来ます。これについての裁定は一般社会でいう「裁判所」の役割を担う「大会審査委員会」という独立した組織が関係者からの事情聴取や必要に応じてビデオでの検証、技術的なものの場合は技術委員による検査確認などを経て、最終的な判断を下します。

今回は正式な手続きを経て抗議が受理され、規則への適合を確認するために「再車検」が行われることになりました。
ここで今回の件で失格の根拠とされたツインリンクもてぎ四輪一般競技規則の該当条文を見てみると、「第24条 競技終了後の車両保管と入賞車の車両検査」という条文には6つの項目があり、その中の「~6) 車両検査に応じない車両は失格とされる。」という規則が適用されての失格処分となっています。
しかし、公式通知では「再車検辞退」という表現がされていますが、これは甚だ不適切な表現であるとしか言いようがありません。そもそも第24条には「~3) 入賞車および抗議対象車は、レース終了後または大会審査委員会の求めに応じて随時車両の分解その他必要な方法による車両検査を受けなければならない。」と明記されています。

そうです、「受けなければならない」。つまり、再車検は義務なのです。そのことは今回のレースの決勝正式結果でも明白で、公式通知では「第24条 ~6) (再車検辞退)」と書かれていますが、正式結果のペナルティ欄には「第24条 ~6) (車両検査義務) 違反」と失格の理由が記されています。
私がもっとも今回の件で残念に思ったのはこの部分です。当たり前のことですが、“義務”を“辞退”することは出来ません。ちょっと飛躍し過ぎた例えかもしれませんが、一般社会において例えば「納税の義務」を辞退することなど、出来るはずもありません。義務に対して意志を持って満たさないという行為は、辞退ではなく“拒否”と表現するべきなのです。

そして、モータースポーツはスポーツである以上、厳格に規則の下で競われるべきものです。この規則については完全な平等というのは難しく、必ずそれぞれの立場から大なり小なりの不平不満が出るものですが、それでも限りなく平等性を考慮して作られるものであり、それに従うことも参加者や主催者の義務です。
この義務を拒否するというのは、スポーツにおいて非常に深刻な事態です。そして、その深刻な事態を曖昧な言い回しで発表する主催者側の姿勢にも疑問を抱かざるを得ません。

個別案件のひとつとして今回の出来事を捉えたときに、多くの人がそれぞれの立場で色々な意見を持っておられることでしょう。
しかし、厳格で公正な規則の運用はスポーツにおいて基本中の基本、大前提なのです。そういう大局的な観点で見たときに、今回の問題は単なるひとつの大会におけるひとつの出来事として簡単に片づけるのではなく、この問題をしっかり解決して将来に向けて善処すべき点は正していくという姿勢が、スーパー耐久シリーズという20年以上に渡って続いているカテゴリーにとって、とても大切なことではないかと考えます。

結果的には規則に従った抗議があり、再車検拒否という前例が無いと思われる対象側の対応により、規則に従って失格という処分が下された今回の事案。私自身としてはどこのチームがどうとか、個別の誰がどうとかいうのではなく、義務を放棄したという今回の結果は非常に後味の悪いものであり、悪しき前例とならないことを願って止みません。
モータースポーツはスポーツであり、エンターテイメントです。しかしエンターテイメントという要素を多分に含んでいますが、あくまでもスポーツ。ならば規則に従うのは当然のことですし、もしも規則をないがしろにするような運営や参加形態がまかり通るのであれば、モータースポーツを称して入場料を徴収して観客を動員するというのは、ファンを愚弄する以外の何物でもないと思えます。
 
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Posted at 2011/12/14 23:40:22

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この記事へのコメント

2011年12月15日 7:26
さすがにモータスポーツを良く知ってますね。
あの表彰台は、まさに暫定表彰なので、正式結果が出るまでは暫定のままです。
最終戦だとチャンピオン争いなので、暫定のままだと本当にもやもやしますね。
最近のドライバーは、モラルが無くなっているんでしょうか!?
昔のレースでは接触しないように相手のラインを少し残しておくドラーイバーが多かったですが、最近のワカテドライバーはそのことすらしないドラーバーが増えてきました。
オフシャルとしては難しい判定する場面が多いですね。
でも再車検拒否は論外です。(それでも、講義するんだろうな。。。)
コメントへの返答
2011年12月22日 17:45
モータースポーツには仕事で関わっていますので、こういった知識が無ければやっていけません。
2011年12月15日 8:25
こう言う事実が現在のMSの成りたちの一つなので悲しいの通り越して寂しいです。

スポーツと名の付いているにも関わらず、スポーツ業界で唯一スポーツと認められていない『モーター・スポーツ』です。
各国・各主催者によりルールが異なり、余りに普遍性が無いからだそうです。
モーターバイクやバイク(チャリンコ)はスポーツ範疇。
・・・ルールの普遍性もそうですが腰で加重移動するか否かにもかかっているそうです。

非公認では、旗信号無視は普通、黄旗後緑旗解除無く自己判断でバトル再開、自分が下手で抜けないからと(先行車には旗支持無しにも関わらず)ラインを譲らないからと後で先行車に文句言いに来る馬鹿、黒旗無視自爆スピン後管制呼び出し後SCCNの競技長に逆切れ恫喝する馬鹿。
変則ルマン式スタート後1コーナー迄はバトル可、1コーナー立ち上がり最終迄はイエロー、最終立ち上がり管制前の緑信号目視確認後バトル可と言う超変則ルール。
そういうエリアで遊んでいますの↑の事等何とも感じなく成ってしまいました。。。
そこで怪我事故無く過ごすには相当タフで注意深く無いと生きて行けません。
こう言う自分も滅茶苦茶に慣れてきてしまい相当逝ってしまいました。
コメントへの返答
2011年12月22日 17:44
世界基準であろうとローカルであろうと、オーガナイザーもエントラントもひとつの規則の下で行うのが「スポーツ」である筈です。

当然そこには権利、義務、責任という3つがそれぞれの立場に課せられるわけですが、今回のように義務と責任を放棄するような事例が生じたことは残念でなりません。

しかもこの行為に対して、規則に従って「失格」となるのはあたり前として、場合によっては「一定期間の参加資格喪失」くらいのペナルティが別途科せられてもおかしくないほどの内容だと私は思います。

これはひとつのカテゴリーの一大会における出来事ではなく、JAF公認競技会全てに関わる大問題の筈なのですが、どうも穏便に済ませようという事なかれ主義が色濃く見えて、日本のモータースポーツが患っている病のようなものから脱せない現状に呆れる次第です。

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