
年度末が近づいてきたこともあってか、経済に関する話題が何かと目立つ時期になろうとしています。
政府の発表では戦後最長とされた「いざなぎ景気」を超える景気の拡大傾向が続いているそうです。
確かに大手企業は増益となっているところが多いようですし、今年の春闘では労働組合側も強気の姿勢で交渉に臨むことになる模様です。
また、抑制が続いていた新卒者採用も増える傾向にあるようで、一時期の"就職大氷河期"は脱したとされているようです。
このように確かな景気回復の裏付けも見えてきてはいますが、往年のバブル景気のように日本列島が浮かれている感じではありません。
さすがにそこは、バブルに浮かれた後の痛いしっぺ返しを経験したことで、日本人が賢くなっているのでしょうか。
しかし、やはり同じ好景気といっても、バブル景気と現在では余りにも違った空気に日本が包まれているように思えます。
振り返ってみると、バブル景気の時代には「大量消費、高額商品消費」がもてはやされ、大なり小なり国民の多くは好景気の恩恵に預かったものだと思います。
自動車の世界でその象徴となったのが「初代・日産シーマ」であると言っても、強く異を唱える人はいないでしょう。
1988年、「セドリックシーマ/グロリアシーマ」と伝統あるブランドの系譜を名乗ってはいたものの、事実上全く新しいブランドとして登場。
当時のセドリック/グロリアのコンポーネンツを用いながらもオリジナルデザインの3ナンバー専用ボディをまとい、完全に個人ユーザーを対象として生まれた高級4ドアサルーン。
心臓部には排気量3000ccのターボエンジンを搭載、それまでの日本車におけるこのクラスでは考えられなかった圧倒的な動力性能(洗練されていたかどうかは別として)を誇り、誕生直後から大人気となりました。
その人気ぶりは「シーマ現象」なる言葉まで生んだほど。
1989年の自動車税改正で2000cc以上の排気量をもつ車両の税額が下げられたこともあり、まさに飛ぶような売れ行きを示しました。
また、この当時はいち早く3ナンバー専用ボディをまといつつ割安な価格と日本の大型セダンでは先駆けとなった4WDを採用した「初代・三菱ディアマンテ」も登場するや大人気に。
輸入車も都市部を中心に売れ行きが急増、BMW3シリーズには「六本木カローラ」などという呼び名までつけられました。
バブル時代は自動車がまだ「富の象徴」だったことの証のようです。
さて、時は21世紀に入り2007年(平成19年)。
まずはこのようなニュースが流れました。
●1月新車販売台数は10%減、19か月連続で前年割れ
-YOMIURI ONLINE(読売新聞) 2007年2月1日 19時22分
景気拡大とは裏腹に国内の自動車市場は軽自動車を除いて低空飛行が続いています。
1月の販売台数は、初代シーマ登場前年の1987年と同じレベルにまで落ち込みました。
ちなみに軽自動車の方は好調に推移しており、13ヶ月で前年実績を上回り、1月としては過去最高の販売を記録しています。
●日産、3月期減益予想…ゴーン氏「失敗は今回限りに」
-YOMIURI ONLINE(読売新聞) 2007年2月2日 22時30分
国内販売は厳しい状況の各自動車メーカーですが、特に
日産自動車の状況は注目を集めています。
バブル期などは好調な業績でヒットを立て続けに飛ばした
日産自動車ですが、バブル崩壊とともに経営が悪化。
1999年にフランスのルノーと提携を結び、カルロス・ゴーン氏が牽引役となって業績の建て直しが図られました。
徹底的なコスト削減や会社の体質改善などにより巨額の負債も無事に完済。
しかし、ここ最近は売り上げの不振ばかりが伝えられています。
私が思うに、やや日本市場のマーケティングで甘さがあるような感じがしています。
特に思うのは収益率も高そうな車種の設定。
例えば「
フーガ」はそれまでのセドリック/グロリアとは異なり、搭載エンジンの排気量は4,500/3,500/2,500ccとされています。
「
スカイライン」や「
ステージア」は排気量3,500/2,500ccの二本立て。
「
ティアナ」は排気量3,500/2,500(4WDのみ)/2,300cc。
「
エルグランド」や「
プレサージュ」は3,500cc/2,500ccとなりますが、初代が大ヒットとなった「
エルグランド」は現行型デビューからしばらくの間は3,500ccのみの設定で、ライバルの後塵を浴びる結果になりました。
もうお分かりですね。
日産自動車の大型車種には、排気量3,000ccの設定がないのです。
これがどのような結果を生むか。
購入を検討した場合、維持コスト(特に税金)が割高な3000cc超のエンジン搭載グレードか、車格の割に動力性能や静粛性で劣る2,500cc級のエンジンにするかを決めなければなりません。
すなわち、日本市場においてクラスでちょうど良いであろうと思われる「3,000cc」という選択肢がなく、逆にライバルメーカーの車種の存在感が際立ってくる結果にすらなるのです。
もちろん一定以上の価格の車を購入するようなユーザーであれば、多少自動車税が高くなっても気にならないという人もいらっしゃるでしょう。
また、ボディサイズで考えれば割安な価格設定の小排気量グレードに高い商品価値を見いだす方もいらっしゃるでしょう。
しかし、特に地方では排気量3,000ccの壁というのは明らかに存在しているのではないでしょうか。
過去、三菱自動車が大人気を誇ったパジェロをフルモデルチェンジして3,500ccエンジンを搭載した時、ある地方ディーラーでは営業マンが「これ、全然ユーザーのことをメーカーが考えていない証だね」と嘆いていたことがありました。
日産自動車の押し進めるインテリアに目をつけた開発というのは、私は非常に関心を持っており、期待していました。
確かに最近の日産車は凝ったインテリアが特徴で、好感を持てる車種もいくつか存在しています。
しかし、それ以外の部分が特に高価格車種では甘いような気もします。
技術的な要素ではなく、なんとなく商品企画がずれているような気がしてしまうのですが、皆さんは最近の日産車をどのようにご覧になっていらっしゃいますか?