
今日は、本当に久しぶりに「読むことでアタマに来る文章」というものに出会いました。
webCG 「internet NAVI」 nvh volume2 『もっとプロ意識を!』
この文章、自動車メディア業界では老舗として知られ、ある種の権威も持っている
二玄社がソースです。
同社が制作するウェブ媒体「
webCG」内のエッセイコーナーに「internet NAVI」というコーナーがあり、そこに同誌の加藤編集長が寄稿したものです。
二玄社と言えば「CAR GRAPHIC」誌は日本を代表する自動車雑誌として有名。自動車を文化的側面からも捕らえ、特に小林彰太郎氏の文章には多くのファンが存在しています。
そして「NAVI」誌は、自動車を中心に、よりライフスタイルに注目した展開。"CG"よりもライトな感じで、時代の先端を行く内容の文章などは特に輸入車オーナーを中心に支持を集めているところです。
しかし、そんな「NAVI」誌の編集長が寄稿した今回の文章は目に余る酷さ。
内容をかい摘んで言うと、
・ポルシェケイマンSで首都高を走っていると、「追い越し車線をノロノロと走る個人タクシーに、進路をブロックされた(←原文ママ)」。
・背後に猛烈な勢いで旧型クラウンかセドリックが迫ってきた。
個人タクシーを抜いた後、「普段ならペースを上げて引き離しにかかっていただろう(←原文ママ)」ところを「その日は思い止まった。後ろを走るのは、ひょっとすると覆面パトカーの可能性だってある(←原文ママ)」。
・この際、心境としては「ルールを無視した個人タクシーにも腹をたてていたし、セダンの距離の詰め方にも傍若無人さを感じていた(←原文ママ)」のだが、取り敢えずスピードは抑えた。
・結局、背後の車の正体はハイヤーだった。そこで「すかさず僕も右にウインカーを出して、ハイヤーの後方につく(←原文ママ)」。
・「ハイヤーはこちらの存在を意識したのだろうか、コーナーが迫ってきてもペースを緩めない(←原文ママ)」。
・そして遂には「ケイマンSに乗る僕でさえブレーキングしようか迷ったほどの速度で、コーナーに進入して(←原文ママ)」、「ハイヤーは途中からコントロールを失い、スピン状態のままコンクリートウォールにクラッシュした(←原文ママ)」。
・「こういう結果になることが予想できたので、早めにスロットルを戻した結果、巻き添えを食わずにすんだ(←原文ママ)」。
ことの顛末はこのように記されています。
そして筆者の言いたいこととしては、
「日本の職業ドライバー、とりわけタクシーやハイヤーのドライバーに、プロ意識が欠ける傾向があまりに顕著だということを言っておきたいのだ。
むろん今回のケースに規制緩和は関係ないかもしれない。しかし都内近郊の道路で今最もマナーが悪いのは、トラックでもオーナーカーでもなく、タクシーや客を乗せないハイヤーだということを改めて主張しておく(←原文ママ)」。
皆さんは、どのように思われますか?
私はこんな大馬鹿者が編集長などという大層な肩書を名乗り、一定の影響力を行使している自動車メディア業界の馬鹿さ加減を知らしめている文章であるという印象です。
まず、首都高速道路は道路構造令や道路法によって、いわゆる「高速道路」とは別物とされています。ゆえに"走行車線"と"追い越し車線"という概念はありません。
もちろん道路交通法第18条(左側寄り通行等)によるキープレフトの原則はあります。
そこで個人タクシーに対して「キープレフト」を声高に言うのなら、自身がハイヤーに追い抜かれた後の「すかさずの右レーンへの車線変更」はどのように扱うつもりなのでしょうか。
さらに、自ら「個人タクシーに腹を立てつつ」さらに「距離の詰め方に傍若無人さを感じていた」相手であるハイヤーの後ろを走行して、「ケイマンSですらブレーキングを迷うほどの」ハイスピードでコーナーに進入。
ハイヤーはクラッシュしたわけですが、想像するにハイヤーからすれば「後方から輸入スポーツカーに凄い勢いで煽られた」ということになりそうな気がします。
しかも、クラッシュ後の措置には一切触れず、職業運転手の質の低下を主張する。
果たして道路交通法第72条に記されてる「車両等の交通による人の死傷又は物の損壊(以下「交通事故」という。)があつたときは、当該車両等の運転者その他の乗務員(以下この節において「運転者等」という。)は、直ちに車両等の運転を停止して、負傷者を救護し、道路における危険を防止する等必要な措置を講じなければならない。」という内容に従った行動をとったのでしょうか。
それとも自分は"当該車両等"に当たらないからということで、クラッシュ車両を横目に通過したのでしょうか。
昨年は速度違反に起因する警察署からの呼び出しに対応しなかった自動車ジャーナリストが逮捕され、全国にニュースとして報じられました。
この時も自動車メディア業界は雑誌、ジャーナリストともに同業者擁護の論調を強め、最高速度の設定そのものに疑問を呈したり、警察の強権的行為と非難の声を挙げました。
しかし、実際には自動車メディアによる傍若無人な運転は実例を挙げるとキリがありません。
そこにきて、今回の記事。
未だにスピードに価値観を求める傾向が強い自動車メディア/ジャーナリスト業界のレベルの低さに呆れるばかり。
私も関係のある業界で仕事をしていますが、そんな私の耳にすら自動車関係の企業に勤めるような方々からも、近年の自動車メディアの低落ぶりを嘆く声が聴こえてきます。
間違いなく、売り上げが減少傾向にある自動車雑誌。
インターネットにも多くの媒体が進出、ジャーナリストたちも新たなフィールドとしてインプレッション記事などを寄稿していますが、メディアが紙だろうと電子媒体だろうと、書き手や作り手の根本的な価値観がおかしいままでは、大衆に広く受け入れられることは難しいでしょう。
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Posted at
2007/04/03 18:04:07