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三菱デリカD:5」のインプレッション、最終回は安全装備の紹介とバイヤーズガイドをお届けしましょう。
昨今、自動車に対する安全性向上にユーザーの関心が集まっていることから、環境性能と合わせて安全性能は車選びの大きな基準となってきています。
その昔は北米や欧州と比べると安全基準の低かった日本においても、諸外国と同等かそれ以上の安全性が求められるようになり、公的な基準の強化にもつながりました。
そのために最近は車の重量が増加する傾向にありますが、安全性は決して軽視出来るものではないので、しっかりチェックしておきたいところ。
一方で環境性能や省燃費性能も重要。ゆえに如何に安全性を高めながらも重量増加を抑えられるか、エンジンやミッションの改良で効率化を高めて燃費を向上させられるか、などを自動車メーカーは競い合っています。
では、「
三菱デリカD:5」の安全装備群をチェックしていきましょう。

まずはアクティブコーナリングライト(ACL)。
夜間、暗い交差点やカーブで進行方向を照らしてくれるコーナリングライトは一時期流行のように各車種が装備しましたが、最近では存在が薄くなってきています。
しかし、効果的な安全装備のひとつであることは確かです。そこで今回、「
三菱デリカD:5」では35wのランプをヘッドライトユニットに組み込みました。
作動は車速40km/h以下で、ターンシグナルランプ操作時に加え、一定以上のステアリング舵角を与えたときにもランプが点灯します。
なお、ヘッドライトのロービームは全グレードにディスチャージ式を標準装備。フォグランプはトップグレードである「G-Premium」のみに標準装備となっています。

最近の車は運転視界に無頓着なものが少なくありません。
それはミニバンも同様で、極端なキャビンフォワード化によるAピラーの前進とスラントノーズ化によって、前方車体直下や左コーナー部からフェンダーにかけて死角が大きかったり、車体感覚を掴みにくい車種が増えてきています。
そのため、死角を解消するためにミニバンやSUV系車種には、補助ミラーが備わるようになりました。
中には決してスタイリッシュといえないものもあり、一部自動車媒体の書き手には「日本独自の規格で馬鹿げている」とまで評する向きもありますが、安全性をどう思っているのか疑問です。
車のボディ形状が時代とともに変化している中で、予期せぬ事故を防ぐ手だてを講じるのは当然のこと。
例えそれが一過性のものであっても、効果を認められる以上は実行すべきであり、そこにデザイン要素を両立させられるかどうかは各自動車メーカーにゆだねるべきです。
死角の増加によって事故が発生するとしたら、その被害者の多くは小さな子供たちでしょうから、例え車の外観が多少デザイン的にスポイルされるとしても、必要な策を講じなければなりません。
閑話休題。
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三菱デリカD:5」もAピラーを前進させたスタイルのため、補助的な三角窓が設けられました。
またAピラーの左側根元部分には補助ミラーを装備。これによって左フェンダー付近の死角を解消しています。
さらに、「
三菱デリカD:5」の美点として、サイドミラーの実用鏡面積が大きいことが挙げられます。
ワイルドなテイストの車ゆえに、大きなミラーを備えていても違和感がありません。このミラー、とにかく天地方向も左右方向も広く後方を映し出してくれるので、何かと便利で安心出来るものとなっています。

死角の削減については、多くのカメラも一役かっています。
最近はカーナビゲーションの普及により、モニターが自動車にとって当たり前の装備になりつつありますが、それによって外部カメラも小型化と低コスト化が進んで装備が増えているのは歓迎すべきことでしょう。
「マルチアラウンドモニター」は「G-Premium」と「G-Navi package」に標準装備、「G」に装着車が設定されています。
ノーズ、リア、サイドビューと3つのカメラが装備され、インパネ中央最上部のモニターに映像を表示させることが出来ます。
写真はサイドと前方車体直下を表示させた状態。モニター手前の「CAMERA」ボタンを押下することで表示させられます。
もちろん夜間でも明瞭に映し出されるので、ぜひ装備したいアイテムです。

フロントグリル中央に備わるカメラ部。
この小さな突起から前方直下と、左右を映し出してくれます。
ここの他にはリアハッチゲートと、左サイドミラーにカメラが装備されます。

エアバッグは今や常識的な安全装備のひとつになりました。
言うまでもないことですが、もちろん「
三菱デリカD:5」も運転席/助手席エアバッグは全車標準装備となっています。
さらに注目なのが運転席のステアリングコラム根元に備わる「ニーエアバッグ」。
衝突時にドライバーの下肢を保護するとともに、サブマリン現象の防止にもつながります。
サブマリン現象とは、衝突時にドライバーの身体が座面に強く沈み込み、さらにシートベルトの着装が正しくないと腰ベルトの下をすり抜けるように身体が前方に投げ出されること。
当たり前のことですが、正しいドライビングポジションを取ることとシートベルトを正しく着装することが安全運転の第一歩。
その上で、このようなニーエアバッグを全車標準装備としていることは、とても歓迎すべきポイントです。
なお、ミニバン車種では2列目/3列目席でのシートベルト着装率が非常に低く、衝突事故では重大な結果を招くケースが多く報告されています。
改めて乗車した全員が正しくシートベルトを着装するように徹底したいところです。
さて、最後にグレード展開と価格について。
本文を執筆している2007年3月30日現在、「
三菱デリカD:5」は2400ccのエンジンにCVTミッションを組み合わせた4WDモデルのみでグレード展開されています。
その内容は以下の5類別。
G-Premium 3,412,500円
G-Navi package 3,139,500円
G-Power package 2,887,500円
G 2,772,000円
M 2,614,500円
もっとも安価な「M」でも実用上何の不満もない装備レベルが確保されています。
4WDで高い悪路走破性を有するミニバンが欲しいという方には「M」という選択肢も十分にありだと思います。
しかし、このクラスのミニバンを購入するのであれば、ある程度の快適性や豪華な装備も欲しいところ。
そこで「G」シリーズとなりますが、基準となる「G」に対して「G-Power package」では助手席側電動スライドドア、キーレスオペレーションシステム、クルーズコントロール、パドルシフト式スポーツモード付CVTが追加されます。
価格的には「G」の約12万円高となりますが、「G」にメーカーオプション設定されている助手席側電動スライドドアキーレスオペレーションシステムは、それぞれ7万3500円。両方装備するとグレード価格差以上になります。
逆に言えば僅か12万円差でこれら装備に加え、前述のようにクルーズコントロールやスポーツモード付CVTが備わるのですから、お買い得なグレードであると言えます。
逆にコストパフォーマンスを重視するのであれば、「G」よりも「M」を積極的にチョイスするべきでしょう。
更に上級の「G-Navi package」は、その名の通りカーナビゲーションが追加装備されます。
このナビはHDD式でTVチューナー(地上アナログ)、CD/DVD、AM/FMラジオ、ミュージックサーバー機能を備えています。
ステアリングホイールに配されたボタンでオーディオ操作を出来るのはメーカー純正品ならではの便利さ。
さらに前述の安全装備「マルチアラウンドモニター」もセットとなっているので、私としては社外品のナビゲーションを装備するよりは、こちらのメーカー純正品をお薦めします。
価格差を見ても「G-Power package」に対して「G-Navi package」は25万2000円高。
最新のHDDナビであり、かつモニター機能が備わることを考えれば、社外品を購入・装着するよりもリーズナブルに、より多機能なものが手に入れられるのではないでしょうか。
そして最上級の「G-Premium package」では、三菱お得意のロックフォードフォズゲート社製高級オーディオシステム、運転席側電動スライドドア、電動リアパワーゲート、寒冷地仕様などが追加装備されます。
さすがにこの仕様はやや割高な印象。確かに運転席側スライドドアやリアゲートの電動化は便利ですが、それでも「G-Navi package」に対して27万3000円、「G-Power package」との比較では52万5000円という価格差は小さくありません。
この追加装備のうち、ロックフォードフォズゲート社製高級オーディオシステムについては「G-Navi package」に12万6000円のエキストラでオプション装着することが出来ますので、この選択もオーディオに拘る方にはお薦めです。
全体的に見て、私のお薦めはコストパフォーマンスに徹するのであれば「M」。このグレードをチョイスして実用4WDミニバンとして乗るも良し、タイヤ&ホイールやカーナビゲーションは好みのものを装着していくも良し。
そして一般的に広くお薦めしたいのは「G-Navi package」。
地方では「ナビなんかいらない」という方もまだいらっしゃるようですが、カーナビは先の道を表示する安全装備の一種という考え方も出来ます。
さらにこのグレードでは前後左右の死角を減少させるマルチアラウンドモニターが備わります。
オーディオ機能的にもHDDナビなのでミュージックサーバー機能がつき、先の事を考えればカーナビ装着車はリセールバリューにも良い影響がありそうです。
このほか、メーカーオプションとして人気が高そうなものでは、
SRSカーテンエアバッグ … 84,000円
コーナーセンサー … 42,000円(フロント&リア)
トリプルパノラマルーフ … 126,000円
DVD内蔵後席9インチ液晶ディスプレイ … 136,500円
などがあります。
またドレスアップパーツも実に多種多彩なものがリリースされていますので、自分の個性に合った一台をプロデュースする楽しみもあるでしょう。
ちなみに
三菱自動車工業の発表によると、発売開始から1ヶ月の時点で販売台数は当初目標の3倍にあたる7500台。
グレード別ではやはり「G-Navi package」が人気で44%、次いで最高級の「G-Premium package」が36%となり、両グレードで全体の80%を占めています。
ユーザーの世代は40代が30%、30代が26%、50代が20%、29歳以下が17%と、幅広い年齢層の支持を集めていることが伺えます。
またボディカラーについてはクールシルバーメタリック/ミディアムグレーマイカの2トーンカラーが19%と一番人気。
これにウォームホワイトパール/クールシルバーメタリックの2トーンカラーが16%で続き、2トーンカラーに人気が集まっているという傾向を見て取れます。
モノトーンではウォームホワイトが16%、次いでブラックマイカの14%。
極端に特定のカラーに人気が偏ってはいないようで、アウトドア派からシティユーザーまで、実に幅広いユーザー層を形成しているかを裏付けているようにも思えます。