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グラン・セニック」のインプレッション、最終回は"ミニバンの肝"ともいえるシートアレンジメントや室内の使い勝手を検証してみましょう。

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グラン・セニック」は2-3-2の3列シートを備え、乗車定員は7人となっています。
限られた全長ゆえに3列目シートはエマージェンシー的な要素を含んでいますが、それでも短時間であれば余程大柄な方でなければ大人でも充分に乗れる程度の空間は確保されています。
そして当然、7人分全てのシートにしっかりとした3点式シートベルトと高さ調整式のヘッドレストが備わります。
また、リアシートはISO FIXチャイルドシートに対応していますので、子育て中のファミリーも安心して使うことが出来ます。

シートアレンジメントの多様性や使い勝手の良さは日本製ミニバンの"お家芸"でもありますが、なかなかどうして「
グラン・セニック」も負けていません。
3列目席は日本ではお馴染みになった床下収納式。植毛されたフロアボードの下に、左右独立したシートが収納されています。使用時はレバー操作で女性でも簡単にシートを起こすことが出来ます。

一般的には通常は写真の状態、つまり3列目席を床下に格納しておいてステーションワゴン的に使われるケースが多いのではないでしょうか。
余程の大家族でない限りは3列目席はそうそう滅多に使うものでもないでしょうし、逆にちょっとした買い物なのでラゲッジスペースを活用する場面の方が多いように感じます。
写真にもあるようにトノカバーが備わるので荷物を搭載したときのプライバシー保護も万全。
ラゲッジスペースについては3列目席を使用した状態でも200リットル、3列目を収納すれば550~650リットルという空間が用意されます。なぜ3列目収納時の容量が一定ではないかというと、2列目席にはスライド機構が備わっており、前後に120mm(中央席は150mm)の調整幅があるのです。

日本のライフスタイルではそうそう無いかもしれませんが、大型のレジャー用品を積んで出かけたり、休日にちょっとサイズが大きかったり、多量の買い物をするようなシチュエーションは、フランス生まれのクルマ達がもっとも得意とするところ。
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グラン・セニック」の場合は3列目の床下収納に加えて、2列目も"背もたれ倒し"→"座面ごと前にはね上げ"→"椅子の取り外し"という3段階のラゲッジスペース拡大方法が用意されています。
しかも3列目が左右独立であったのと同様に、2列目席も左右と中央の3分割独立式。荷物と乗車人数の組み合わせが多様化して、色々なシチュエーションに対応出来るように配慮されています。
日本ではなかなか取り外した車の椅子を置く場所が無いかもしれませんが、2列目席を全て取り外した最大のラゲッジスペース状態でその容量は1920リットル。
日常生活においてこれ以上のスペースを必要とすることは、そうそうあり得ないのではないでしょうか。

さらに嬉しいことに「
グラン・セニック」のリアゲートには開閉式ガラスハッチが備わっています。
ちょっとした荷物の出し入れに便利ですし、比較的非力な女性にとってはリアゲートの開け閉めは面倒なもの。
また、例え電動式のリアゲートが奢られたとしても、小さな物を取り出すのには大げさですし開閉の待ち時間も長い。車庫事情などで車体後部のスペースに余裕が無いと、開けることさえもままならない。
そんな日本的な事情を考えてみても、このガラスハッチがどれほど便利なものかを想像するのは難しいことではないでしょう。
さて、このように見てきた「
グラン・セニック」。
私としてはもっとミニバンを求めるユーザーから注目を集めても良いように感じてなりません。
日本製のミニバンとは違いが多いことも事実。エンターテイメント的な装備は皆無ですから、子供が「友達の家の車では後ろでDVDを見られるよ」と言い出すと、お父さんとしては返す言葉が無いかもしれません(もっともメーカー純正設定が無いだけで、社外品対応は出来るでしょうが)。
また、車体のあちこちにカメラがついていたりもしません。その代わり、運転席からの見晴らしは良く、ミラーを含めた後方視界も良好なドライバーズシートが待っているだけです。ちょっとしたメーカーの気遣いとしては、バックソナーは装備されていたりもします。
収納という面では運転席まわりのユーティリティに不満が出るかもしれません。
もちろん助手席前にはエアコンの風を導いて飲み物を冷蔵できる機能を備えたグローブボックスがあります。
前席中央にはシャッター付センターコンソールボックスとカップホルダー。前席下にはシートアンダートレイ、床面にもアンダーフロアボックスが備わります。
しかし、日本車のように「キーレスの鍵はここ、携帯電話はここ、財布はここ・・・」という感じではありません。
キーについてはキースロットがありますが、携帯電話や財布の置き場には一瞬迷ってしまいます。
シートアレンジメントの多様性は日本車を凌ぐほど。
仲間の人数と荷物の量に合わせて、可能な限りのアレンジパターンが用意されているので「荷物を載せるために人を乗せない座席まで倒す」とか「人を乗せるために一体型座席を起こして座面に不安定な状態で荷物を載せる」などということはないでしょう。
安全面を見ると、ユーロN-CAPというヨーロッパの厳しい衝突安全試験で最高点の5つ星を獲得していることが大きなトピックです。
さらにABSやブレーキアシストは当然として、6つのエアバッグや乗員数/積載量に応じて適切な前後へのブレーキ力配分を行うEBD、悪天候下などでのスピン防止に効果的なESP(エレクトロニック・スタビリティ・プログラム)などを装備していあMす。
バカンスの国・フランス。
休日になるとそれぞれの家庭が思い思いのスタイルでレジャーを楽しむお国柄。街中でのショッピング、トレーラーを牽引して出かけるキャンプ、大きなツールを使うスポーツなどなど。
対する日本は例えば大型連休でも「どうやって過ごそうかな?」と悩んでしまって、テレビの行楽番組や観光ガイドブックを見るファミリーが多いことでしょう。
なんというか、日本の場合は車の使い方ひとつとってもオーナーの自由な裁量範囲が少なく、メーカーのお仕着せが強いように感じます。
先程のユーティリティの項でも触れましたが、車内での手回り品の収納にしてもメーカーがあらかじめ想定してポケットを用意、そこをオーナーみんなが同じように使っている。
それは確かに便利です。携帯電話や財布、カード類などある程度同じようなサイズのものがきちんと収納できるので、車内の整理整頓が進みます。
一方の輸入車ではそういった面はあまり考慮されていないとも言えるでしょう。
ただ、では使い勝手が悪いのかというとそんなことはありません。
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グラン・セニック」にしても必要以上どころか充分なボリュームのポケッテリアがありますし、シートアレンジメントやラゲッジスペースの使い勝手は日本車に全く引けをとりません。
しかし、メーカーの押し付けがないんですよね。
「これだけの空間、スペースを用意しました。充分でしょう?使い勝手も色々考えて作りました。あとはオーナーの皆さんがライフスタイルや価値観に合わせてご自由にお使いください!」
という感じでしょうか。
そのままの状態で活用する人もいれば、自らのアイディアを活かす人、DIYでちょっとした工夫をしてみる人など、色々なオーナー像が垣間見れます。
こうした面は日本とフランスの文化の違いなのかもしれませんが、ちょっと独創性があると自負するお父さんには、是非フランス生まれのミニバンで新しいライフスタイルを開拓して頂きたいと思います。
気になる価格はベースグレードで2,798,250円、グラスルーフ仕様でも3,090,150円(ともに消費税込)と、思ったよりも安価ではないでしょうか。
お薦めは圧倒的にグラスルーフ仕様。開放的なルーフに加え、アロイホイールの装備のみならず、センターコンソールボックスやドアポケットもグラスルーフ専用装備。エアコンもフルオートになるなど、価格差以上の満足度があるでしょう。
今や日産とのアライアンス関係にあるルノー、ゆえに日本国内でも全国にディーラー網が整備されています。
輸入車ということでメンテナンス面も気になるところですが拠点数の多さは安心感につながり、本当の意味でどこまでも長い距離をドライブ出来る楽しみが得られるというものです。
また、万一のトラブルに備えては3年/6万kmの長期保証に加え、有償で保証期間を最大2年間延長できます。
さらにトラブル発生時に修理から宿泊・代替交通手配までサポートしてくれる「ルノー・アシスタンスサービス」が新車登録から3年間無料でついてくるので、日本車と何ら変わらない条件で日々のカーライフを楽しむことが出来るでしょう。