
久しぶりのインプレッション記事を書いてみようと思います。
今回ご紹介するのは
マツダの「
プレマシー」。
1999年春にデビューした初代は5ナンバーサイズで特に短めの全長に三列シートをレイアウトしたコンパクトなミニバン(言葉としては変な感じですが・・・)の先駆けとなりました。
2005年春、6年の歳月を経て現行型となる二代目にスイッチ。ボディサイズは一回り大きくなり、全幅が1.7mを超えたことから"3ナンバーボディ"になりました。またエンジンラインナップは初代の排気量2000cc/1800ccに対して、二代目は排気量2300cc/2000ccとされ、走行性能の向上を図っています。
またリアドアはそれまでのヒンジ式からスライド式に変更されたのも大きなポイントです。
2007年1月には一部モデルに直噴ガソリンエンジン(DISI)と5速オートマチックを搭載。同年9月にはマイナーチェンジを施し、5速オートマチックは2輪駆動の全モデルに設定を拡大しました。
まず全体的な印象としては、似たようなクラス(サイズ、三列シート、スライドドア)になる
トヨタ自動車の「
アイシス」や
日産自動車の「
ラフェスタ」と比べると、やや"大味"な印象を受ける部分もありますが、総じて良い出来ばえにあると言える商品力を誇っています。
走りについてはパワーに余裕のある2300ccエンジンはもちろんですが、日常的な使い方と高速道路を淡々と走るような一般的なシチュエーションにおいては2000ccエンジンでも不足を感じることは無いでしょう。
ここには5速オートマチックの採用が効果を発揮している面も大きいようです。この点は走行性能のみならず燃費性能にも差が生じる部分ですから、中古車も含めて購入を検討する際は、年式によってオートマチックが4速のものもあるわけですから気をつける必要があるでしょう。
ちなみにライバル勢はCVTを採用しています。CVTの方が燃費性能では絶対的に有利ですが、どうしてもコストは高くなってしまいがち。装備の差もあるにせよ、若干「
プレマシー」の方が安価なプライスタグという印象です。
なお「
プレマシー」の4輪駆動モデルは4速オートマチックとなりますので、4輪駆動についてはCVTを採用しているライバル勢の方が価格差を考えても走行/燃費の両性能面からお薦めとなってしまいます。
室内は拡がり感のあるデザインですが、遊び心や華やかさはあまりありません。この「
プレマシー」はヨーロッパ市場も"主戦場"となっていますが、特にドイツで評判の良い
マツダだけに、善くも悪くもドイツ車の風味も感じられます。
使い勝手で気になるのはポケッテリア。
運転席まわりにちょっとした小物を収納するスペースが不足している感じもあります。例えば財布や携帯電話など、日常的に持ち歩くものについては、すんなり収まるスペースというのが欲しくなるものです。
キャビン全体の使い勝手はなかなか高い実力を見せてくれます。
今回は朝から夜まで300kmほどを走りましたが、ドライバーズシートは長時間乗車でも疲れ知らず。
リアは二列目席は2人乗りに割り切った感じで、中央席は"補助席"という位置づけです。これによって4人の大人が前後左右全ての席で快適に移動できる点は大きな特徴になります。
三列目席はさすがにエマージェンシーの域ですが、それでも以外に全長が短い割りにはライバル勢と同等かそれ以上の空間が用意されています。
もし5~6人乗車するのならば、二列目の中央席を使うよりは三列目席を使った方が快適ではないかと思います。
「
プレマシー」の特徴のひとつに全長の"短さ"がありますが、この点は三列目席後ろのカーゴスペースにしわ寄せがきています。つまり、三列目を使用している場合のカーゴスペースは奥行きが短く積載能力は決して高くありません。
こうした条件を考えると、基本的には通常は三列目席を収納してステーションワゴン的に使うユーザーさんにお薦めです。実際にはこのクラスのミニバンユーザーの大半がそうしているのではないかと思いますが。
その上で先に記したように一列目&二列目の居住性はなかなか高いので日常ユースでの本質的な快適性を求める向きには打って付け。
さらに言えばスライドドアの開口面積が広いので、実は二列目席はもとより三列目席へのアクセス性能も非常に高いものがあることも隠れたポイントでしょう。
一般的に考えた場合、夫婦+子ども二人の家族にとって日常ユースではまず不満が出ることはないでしょう。その上で子どもがチャイルドシートを使うような年齢であれば別ですが、小中学生クラスであれば夫婦の両親を乗せるような場合でも、子どもたちを三列目、両親を二列目に乗せて食事などに出かけるような使い方にも充分に対応してくれるでしょう。こうした場面で三列目席への出入りや、高齢者の二列目席への乗降において広いドア開口面積は便利(ただし、若干サイドシルが高めですが)。
また、子どもがチャイルドシートを使うような年齢であったとしたら、広い開口部はお母さんが子どもを乗り降りさせる際にも有用でしょう。
ライバル比較で言えば、開口面積の広さだけでいえば左側センターピラーレスの「
アイシス」が圧勝。しかし私自身残念ながら検証するに至っていないのですが、このボディ形式は長年使っていく上での経年劣化について不安もあるのではないかと思います。
「
ラフェスタ」はCVTミッションながら安価なプライスが魅力。ただしスタイリングについては途中のマイナーチェンジで大がかりな"整形"を受けたりして、少々完成度が低いような感じも受けてしまいます。
結果的には二代目で"3ナンバー"になりましたが、まだ都心部でも日常ユースの許容範囲にあるボディサイズといえる(全高のみタワーパーキングには対応しませんが)、このクラスのミニバンモデル。
"zoom zoom"を標榜するクルマ造りも浸透、デザインの統一感も全社的に整ってきた
マツダの「
プレマシー」は、今改めて注目に値するクルマであると認識しました。
ただ、個人的に私の周りだけなのかもしれませんが、ディーラーの販売力が弱いのはライバルメーカーに対して未だに一歩遅れているところ。
値引き重視の販売姿勢にあるお店やセールスマンも多く、結果的にリセールバリューも高くないのは
マツダの全車に共通する弱点ゆえ、メーカーとして一層のブランド力向上と販売教育の徹底が望まれるところです。